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309. ゴールデンスカル海賊団VSブラックバード海賊団(5)
しおりを挟む「さあ、見せてやろうぞ! 日本男児の生き様を!」
俺は、ゴールデンスカル号の船首に立って、ブラックバード船団に突撃を仕掛ける。
「ご主人様! 敵船の砲弾が来ます!」
「そのまま行けぃ! 最強海賊、倭寇の頭セドリック様が叩き斬る!」
「倭寇の頭? ご主人様は、ゴールデンスカル海賊団の頭じゃなかったんですか?」
聡いシロが、俺の言葉を正してくる。
「最強倭寇、ゴールデンスカル海賊団の頭だった!」
「何で、いつもいい所で間違えるんですか!」
「五月蝿いわい!」
スパーン!
俺は目の前に来た砲弾を、シロと話しながらも真っ二つに叩き割る。
「今宵の虎徹は、よく斬れる」
俺は目を閉じ、渾身のセリフを吐く。
「ご主人様! その刀、新撰組隊長 近藤勇の愛剣『虎徹』じゃないですからね!
僕が打った、白蜘蛛ver.2.0ですよ!
それから、戦闘中に格好付けて、目を閉じないで下さい!」
「いちいち、五月蝿いわい!
気分良く浸ってるのに、俺の気分を一々害すな!」
いつにも増して、砲弾の雨嵐が、ゴールデンスカル号に降り注ぐ。
まあ、今回の突撃は、正攻法。
真正面から、全く避けず敵船に突撃しようとしているのだ。
「兎に角進めぇ! 行けば分かるさ!」
「もしかして、ア〇トニオ猪木? ご主人様、ブレブレですよ!」
俺は、シロにディスられながらも、砲弾、剣撃、魔法攻撃を叩き斬っていく。
俺は、ハッキリ言って強い。
滅茶苦茶強い。
しかしながら、今迄、活躍の機会が無かっただけなのだ。
この物語の中で、修行シーンは殆ど割愛されてしまっているが、俺の異世界転生人生の殆どは、修行に費やしている。
骨になる前も、ケンジに追い付く為に修行。
精神と時の部屋の中でも修行。
俺ほど、物語以外の時間を修行に費やした主人公は居ないと思う程に。
「そして、その修行を全く活かせない主人公も、ご主人様ぐらいですよね!」
シロが、俺の頭の中を読んで、一々、ディスってくる。
「五月蝿いわい! お前、この戦いが終わったら、絶対にマストに宙吊りにして、サンドバッグにしてやるからな!」
「本当ですか! 久しぶりのご主人様の折檻、嬉しいです!」
どうやら、真性M幼女のシロにはご褒美だったようである。
兎に角、今日こそ、俺の本当の実力を見せる時!
「オリ姫、スピードを上げて突っ込め!」
「キュイ!」
ゴールデンスカル号は、ブラックバード海賊団の結界が張ってない船に向かって突撃する。
ドッカ~ン!
ぶつかった瞬間、大破したブラックバード海賊団の船から大勢の荒くれ海賊共が、ゴールデンスカル号に乗り移ってくる。
「ご主人様、来ましたよ!」
「八幡大菩薩の旗を掲げよ!東アジアをビビりあがらせた最強倭寇と、カリブの海賊と、どっちが強いか白黒つけてやるぞ!」
「八幡大菩薩って、侍大将 源氏の守護神ですか?」
シロが、戦いの最中だというのに、質問してくる。
「倭寇の船には、八幡大菩薩の旗が掲げられてたんだよ!
即ち、前期の倭寇は、元寇の仕返しをする為に、侍もたくさん参加してたという事だ!」
俺は、ここぞとばかりに、歴史豆知識を披露してやる。
「始祖様! シロ様! 喋ってないで、早く応戦して下さい!」
俺とシロが、共通の趣味の歴史話で盛りあがっていると、1人で必死に応戦していたミレーネが、業を煮やして注意して来た。
「ああ! 分かってる。主役は遅れて登場するものなのだ!」
「登場って、最初から船首に立ってたでしょ!」
戦争中でも、シロの突っ込みは鋭い。
冷静に観察すると、ゴールデンスカル号に乗り込んで来た敵海賊は60人くらい。
甲板いっぱいに蠢いている。
そして、その海賊達が狙ってるのは船尾にある動力部。
今の感じは、動力部を狙う海賊共を、ミレーネが1人で抑えている感じだ。
まあ、敵海賊が全員船尾に向かったので、船首付近にいる俺とシロは、のんびりお話が出来てたという訳だ。
ドキューン! ドキューン! ドキューン!
二丁拳銃使いのミレーネが、魔法弾を撃ちまくる。
ハッキリ言って、格好良い!
やはり、女海賊は、拳銃使いが様になるのだ。
シロは、器用に糸を使い、マストに飛び移り、頭上から糸を飛ばして敵海賊を釣り上げ、そのまま海にリリースしていく。
まあ、リリースといっても、戦争の血の臭いに釣られた人喰いサメがウヨウヨしてるので、海にリリースと言うか、撒き餌みたいになっているのだけど。
「やあやぁやぁ! 何を隠そう、前世で苗字検索したら、何と、俺の苗字は源氏の末裔の苗字だったのだ!
侍と言えば源氏! 源氏と言ったら侍!
侍の末裔の、このセドリック様が、へっぽこカリブの海賊共を叩き斬ってやるぞ!」
俺は主人公らしく、戦いの前の口上を垂れる。
「ご主人様。大層な事言ってますけど、日本人のほとんどが、源氏、平家、藤原、橘の四つの氏『源平藤橘』に収まるって知ってましたか?」
結構、離れてるのに、シロが一々突っ込みを入れてくる。
「知ってるわい! だから、侍の末裔の源氏に連なる苗字で、良かったという話をしてるんだろ!」
俺は、シロにキツめに言い返す。
「あの……始祖様。シロ様。いい加減にして下さいますか?」
いつも優しい、ミレーネの堪忍袋の緒が切れたようだ。
何故、分かるかだって?
だって、ミレーネの背後に、燃え盛る炎を纏った、怒り狂う不動明王が見えてるんだもん。
ーーー
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