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297. 円卓の騎士

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 俺とシロとミレーネは、セバスチャンによって、石造りで無骨な雰囲気がするキャメロット城の会議室というか、円卓の間に案内される。

 そこには、前に見た時より威厳に満ちた雰囲気を漂わせるアンが、会議室の最奥の円卓に座っていた。

 その両隣には、メアリーとアナスタシア。
 そして、ケンジとラインハルト。
 ドレークとラムネム姉妹が、既に座っている。

「到着しましたね」

 アンが、俺とシロとミレーネに話し掛けてきた。
 何故か、アンの背後が光ってるというか、後光がさしてるような気がして気後れしてしまう。

「円卓会議とはな」

 俺は、妙に威厳が増したアンに負けないように、強気な態度で答える。

「ええ。セドリックさんとシロさんとミレーネさんを、ブリテン王国女王として、円卓の騎士に任命しますわ」

 アンは立ち上がり、俺とシロとミレーネの傍まで歩いてくる。
 それに続くように、アナスタシアも何故か付いてきている。

「エッ? 何する気だ!」

 俺は、思わず後ずさる。
 人に使役されるなんて、まっぴら御免。

「セド君。今から騎士叙任式を始めるのよ」

 アナスタシアが、俺に端折って説明する。

「何で、俺がアンの騎士なんかにならないといけないんだよ!」

 俺は、断固拒否する。
 騎士になんかなりたくない。
 俺は、自由に生きたいのだ!

「大国であるブリテン王国のナイトの地位を得る事は、何かと便利だと思うわよ!」

 なんかよく分からないが、アナスタシアが凄く勧めてくる。

 というか、騎士になるって、もしかして、ナイトの受勲という奴か?

 確か、ミック·ジャガーとか、007のショーン·コネリーが貰った奴。
 所謂、一代貴族。
 昔のトヨタ自動車の会長とかも貰ってた筈だ。

 まあ、そう考えると、軽い感じがする。
 絶対に、トヨタの会長とか、イギリスの女王に忠誠を誓ってないし。

「良いだろう! ナイトになってやる!
 というか、是非下さい!
 ナイトって準貴族だから、それほどアンに忠誠を誓わなくていいんだろ!」

 俺は責任は要らないが、地位と名誉だけは欲しい男なのである。

「ご主人様、ゲスいですよ!」

 シロが俺の頭の中を読み、すかさず窘めてくる。

「ナイトというのは、形の上だけです。
 セドリックさんは、始祖様のお兄様にあらせられるのですから、実際は、大公の爵位を用意してます」

「ん? 大公? 大公って、確か、公爵の上の地位の事だよな?」

「ハイ。形の上だけ、円卓の騎士になってもらわないといけないのでナイトの称号になってしまいますが、十字軍との戦争が終わったら、セドリックさんには大公になってもらう予定です」

 アンは、慈愛に満ちた天女様のように、微笑みながら答える。
 ブリテン王国の王女になったアンは、何を言うにも一々威厳というか、風格が出てしまうようだ。

「大公って、責任とか色々しがらみ有る?」

「それなりには」

 大公の地位は惜しいが、俺は責任という言葉が一番嫌いな言葉なのだ。

「だったら大公要らん! ナイトだけくれればいいよ!」

「そうですか。それは全然構わないですが」

「エッ?! 引き留めないの?」

「引き留めませんよ。私としては、ただ、円卓の騎士になってくれれば良いだけなので。
 大公にすると言ったのは、タダ働きさせるのはセドリックさんに悪いと思ったからで。
 他の人達にも、全員、男爵の地位を約束してますし」

「アンさん! 僕も男爵になれるの?」

 シロが、すかさず質問する。

「ハイ。勿論、シロさんもミレーネさんも、男爵になってもらうつもりです!」

「ヤッター!」

 シロは大喜び。

「俺の下僕の癖に、男爵とか生意気なんだよ!」

「ご主人様。ブリテン王国では、僕の地位の方が高いんですよ!
 ご主人様って、ただのナイトですよね?
 準貴族が、正真正銘の貴族の僕に向かって、そんな態度を取っていいんですか?」

「クッ! 畜生ーー!」

 俺は遂に、身分でシロに負けてしまった。
 これからは、俺がシロの命令を聞かないといけなくなる。

 俺がしてきた、今迄の不当な命令が、全て自分に跳ね返ってくるのだ。
 これから、シロの食事を作ったり、シロの為に家を建てたりしなくちゃならないのか?

 俺が1人で家とか建てたら、普通に10年とかかかっちゃうぞ……。

「そんな事、頼みませんよ!
 ご主人様にやって貰う事と言ったら、S〇Xして貰うぐらいですよ!」

「そんな事出来るかよ! 俺は未成年者に絶対、手を出さない男なのだ!
 例え、ジャンルがエロファンタジーでも、越えてはならない線ってものがあるんだよ!」

「分かってますよ。冗談です。
 僕の方が地位が高くても、今迄どおりに接してくれて問題ないです」

 シロが良い子で助かった。
 今更、便利メイドであるシロが居ない生活なんて考えられない。

 だって、俺1人ではマトモにお金稼げないし、朝食だって作りたくないし、風呂から上がった後に自分で体も拭きたくないし、後、歯磨きとかも自分でしたくないしな!

「歯磨きぐらい、自分でしてください!
 バンパイアなのに、虫歯になって歯抜けになってしまったら、血も吸えなくなってしまいますよ!」

「別にバンパイア公爵だから、血なんか吸わなくも生きていけるんだよ!
 アッ! 俺って、よく考えたら普通に公爵だった!
 別に、ブリテン王国の爵位なんて要らないじゃん!」

「今頃気付きましたか」

 シロは、呆れ顔で答えた。

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