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285. 家出

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 俺とシロは、アマイモンとの悪魔の契約を交して、再びアムルーダンジョンの湖畔のログハウスに戻ってくる事が出来た。

「やっぱり、自分の家が、一番最高だな!」

「元々、風光明媚な避暑地なような立地条件ですから、必要以上にのんびり出来ちゃいますね!」

 俺とシロは、湖畔のログハウスのウッドデッキに設置されているガーデンソファーで寛ぎながら、のんびり話している。

「それにしても、まさか、アムルーダンジョンの入口が、王宮カジノのトイレの物置の中に、有るとはな!」

「まあ、お父さん的に便利だったからじゃないですか?」

「便所掃除係だからな」

 親とは認めてないが、俺の親と名乗る人物の仕事が、トイレ掃除というのが悲し過ぎる。
 というか、俺の生まれ故郷のダンジョンの入口が、トイレの物置という方が、もっと悲しい。

「兎に角、これで何時でも南の大陸に行ける!」

 俺は、悲しい気分を払拭させる為に、頭を切り替える。
 南の大陸には、ソープランド兼、デリヘルの『三日月』も有るし、俺のハーレム要員のハラ·マサコも居るのだ。

 そんでもって、南の大陸では、上級結界と、ダンジョン内の移転装置を設置出来るアーキテクト、『冒険者ブレスレット』を手にいれたし。
 これで、アムルーダンジョンの移動も楽になる。

 一応、湖畔のログハウスに戻るついでに、アムルーダンジョンの最下層と、メアリー達が居る第35階層、狩場である第29階層、そして湖畔のログハウスの有る第22階層に、移転装置を設置した。

「これで、いつでもお父さんに会いに行けますね!」

「お前、どんだけファザコンなんだ!」

「焼き餅焼かないで下さいよ! ご主人様の方が好きですから!」

 とか、話ながら、ガーデンソファーで寛いでいると、

「キュイ!」

 オリ姫が、トロピカルジュースを、器用に頭の上のお盆に乗せて持ってきた。

「暫く見ないうちに、気が利くようになったな!」

「ぐうたらなミーナさんが、オリ姫をお手伝いさんみたいにこき使ってたんじゃないですか?」

 シロは、相変わらずミーナに厳しい。

「というか、家に帰ってからミーナ見てないな?」

「自分の部屋で、金貨でも眺めてるんじゃないですか?」

 キュイ!

「ウソ?!」

 シロが、オリ姫の言葉を聞いてガーデンソファーから飛び上がる。

「どうした?」

「ミーナさん。金銀財宝とダイヤモンドスライムを連れて、家から出て行ったって、オリ姫が言ってます!」

「何だと!」

 まさかの家出。
 というか、泥棒?
 お金が大好きな、ミーナぽいと言えば、ミーナぽいけど。

「追いかけましょう!」

「追いかけましょう! たって、何処に行ったか分からないだろう?」

 俺的に、金銀財宝を盗まれても何とも思わない。
 だって、金の成る木が目の前にいるのだから。
 実際、シロがいれば、幾らでもお金を稼ぐ事が可能だし。

「ご主人様の為なら、幾らでもお金を稼いでみせますよ!
 だけど、泥棒はダメなんです!」

 俺の頭の中を読んだシロが窘めてくる。
 シロは真面目で、道徳に厳しいのだ。

「まあ、ミーナを探すにしたって、何処に居るか分からないだろ?」

「そんなのアムルー城塞都市に決まってますよ!
 第35階層に行っても周りは海ですし、金銀財宝をお金にするんだったら、アムルー城塞都市に行くしかないんですから!」

「確かに」

 だけど、面倒臭い。
 折角、我が家に帰って来たばかりなのに、何故、また、出掛けないといけないのだ。
 俺は、お家大好き。オタクさんなのだ!

「ご主人様。第1階層に移転装置を設置したくないですか?」

「それはしたいかも……」

 拠点である湖畔のログハウスの欠点は、アムルー城塞都市から遠い事。
 既に、最下層と、第35階層には移転装置を設置してある。
 後、1階層に移転装置を設置したら、滅茶苦茶便利になるのだ。

「それじゃあ、急ぎましょう!
 早くしないと、ミーナさんがダイヤモンドスライムを売っちゃいますよ!」

「それは別にいいけど」

「何でですか!」

「アイツ、俺に懐いてないし、元々、ミーナのペットだろ?」

「僕は、ペットを捨てる飼い主を認めてないです!」

「捨てるんじゃなくて、売るんじゃないのか?」

「売るのも捨てるのも一緒です!
 一度、飼ったら最後まで面倒をみるのが、飼い主としての務めです!」

「ペットって、結構、お金掛かるしな……」

 俺が、日本のペット事情を思い出してると、突然、シロが、堰を切ったように語り出した。

「犬2匹分の狂犬病の注射と、フェラリアの薬と、癲癇のクスリで、1回の支払いが10万越えてビビったんですよね!」

「それは、作者の話な」

「しかも、ヘルニアの手術やら、血液検査やらで、年間20万以上は必要なんですよね」

「それも、作者の話な」

「餌も、結石が出来ちゃうから、高いの買わないといけないし、よく考えたら、20万じゃ足りないんですよね?」

「それも、作者の話ね」

「軽い気持ちで、ペットを飼って、思ったよりお金が掛かるからと、捨てる人が居るのが許せないんですよね!」

「作者がね」

「なので、僕もミーナさんが許せないんです!」

 なんかよく分からないが、作者の話を絡めて、シロは怒り心頭である。

「ミーナの場合は、売る人も買う人も、儲かって、win-winじゃないのか?」

「ダイヤモンドスライムちゃん、殺されて指輪にされるかもしれないじゃないですか!」

「この世界では、魔物を殺して素材や道具にするの、普通だと思うけど」

 俺の意見に、シロは言葉に詰まる。
 どうやら、自分が言ってる事がおかしいと気付いたようだ。

 そう、ダイヤモンドスライムちゃんは、魔物。
 殺して素材にするのは、普通の事なのだ。

 俺達の食卓には、牛や豚の肉が、普通に出てくる。
 しかし、その肉は、誰かが殺した牛や豚の肉なのだ。

 それからこんな話もあった。

 ある原油・ガス採掘技術会社が、ある有名アウトドアブランドに、社員向けクリスマスプレゼントとして自社ロゴ入りジャケットを発注したところ、「うちのジャケットには化石燃料企業のロゴを入れたくない」という理由で、注文を拒否した事件があった。

 その有名アウトドアブランドのジャケットも、思いっきり石油製品なのに。

 時代の流れに乗って、リベラルぽい事を主張したは良いが、自分達の製品の殆どが、まさかの石油製品。

 有名企業なのに、頭が悪い。

 まあ、世の中こんな感じ。

「ご主人様、また、脱線してますよ!」

「頭の中で考えただけだし、問題無いだろ?」

「ただでさえ、政治主張が激しいって言われてるのに!」

「俺は右でも左でもなく、尊敬する大魔王ゴトウ·サイトと同じく、中庸を目指してるんだよ!」

「ご主人様の頭の中を全て読んでるので、知ってますけど」

「まあ、兎に角、アムルー城塞都市に行くんだろ!」

「そうです! ダイヤモンドスライスちゃんを、助けるのです!」

 てな訳で、俺とシロとオリ姫は、ミーナがダイヤモンドスライムちゃんを売るのを阻止する為に、アムルー城塞都市に向かったのだった。

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