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240. 漆黒の森

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 シロが何やら、アマイモンに、南の大陸のレクチャー受けた後、
 俺とシロは即座に、魔法陣が床に描かれた石造りの小部屋に連れていかれた。

「それじゃあ! 南の大陸の大冒険の始まり始まり!」

 異界の悪魔アマイモンは、楽しみを待ちきれない子供みたいにはしゃいでいる。
 しかし、底の知れない恐ろしさを感じてる俺は、そんなアマイモンに対して冷や汗しか出てこない。

「ご主人様、魔力をこの魔法陣に流して下さい」

 シロが、俺に命令してくる。

「こんな得体の知れない魔法陣に、魔力なんか流せる訳ないだろ!」

「聞いて無かったんですか! この魔法陣は転移魔法陣なんです!
 この魔法陣を使えば、すぐに南の大陸の『漆黒の森』という王国の領地内に転移出来るんですよ!」

「お前はアホか! 何であんなド派手なスーツを着たおちゃらけた奴の言う事が信用できるんだ!」

「お父さんだからです!」

 シロは、異界の悪魔アマイモンを信じきっているようだ。

「俺とアマイモンとどっちが大切なんだよ!」

「それは……」

 シロが言葉に詰まる。
 嘘だよな……。
 シロだけは、いつも俺の味方じゃなかったのかよ。

「まあまあ、別に僕の眷族の者なら誰が魔力を流しても この魔法陣は起動するから、シロちゃんが魔力を流しちゃってよ!」

「そうですね!」

「おい! ちょっと待てよ?!
 俺が、お前の眷族だって聞こえたぞ?」

 俺は、自分がアマイモンの眷族だと聞いて動揺する。

「当たり前じゃないですか!
 セドリック君は、僕が作ったダンジョンから生まれたのだから、生まれた時から僕の眷族ですよ!」

 アマイモンは、イタズラっ子のようにニッコリ笑う。

「嘘だろぉーー!!」

 思わず、驚きで魔力を帯びてしまった俺の叫び声と連動して、異界の悪魔アマイモンの眷族である証拠に、移転魔法陣が青白く光り輝く。

 そして、数秒後には、俺の目の前に居たアマイモンは居なくなり、今までに見た事もない、鬱蒼うとした薄暗い森の中に、俺とシロは転移させられていたのであった。

「さてさて、セドリック君とシロちゃんが、南の大陸でどんな冒険をするのか、今からとても楽しみでたまりませんね」

 異界の悪魔アマイモンが、青白く光り輝く誰も居なくなった魔法陣を見つめながら、とても楽しそうに呟いた。

 ーーー

「何で、主人公である俺様が、悪魔なんかの眷族なんだよ!」

 俺は、よく分からない森の中で絶叫する。

「仕方が無いですよ。
 僕達は、お父さんが作ったダンジョンから生まれたんですから」

 何故かシロは嬉しそうだ。
 自分のルーツが分かった事が、そんなに嬉しいのか?
 もし仮にアマイモンが俺の父親だったとすると、シロとS〇Xしたら近親相姦になるのだぞ!

「ご主人様は飛躍し過ぎですよ!
 全てを受け入れれば、楽になりますよ!
 だって、お父さんと戦っても、どう足掻いたって勝てないでしょ!」

 確かに、異界の悪魔アマイモンは、今迄の敵とは次元が違った。
 俺の絶対破られる事は無いと思ってた超隠蔽スキルも易々破られたし、この、移転魔法陣だっけ?
 一瞬に、よく分からない森の中に移転させられてしまったのだ。

「確かにそうなんだが、納得いかないんだよぉーー!」

「まあまあ。兎に角、ご主人様は、『漆黒の森』の王都のモフウフにあるソープランド兼、デリヘルの『三日月』に行きたいんですよね!」

 シロが、アマイモンへの怒りと恐怖ですっかり忘れていた、『三日月』無料優待券の事を、俺に思い出させてくれた。

「そうだ! 俺はサキュバスのエロいお姉ちゃんとあんな事やこんな事がしたいんだった!」

 俺のイラつきが、一瞬で消える。

「お父さんの事は、もう良くなったんですか?」

「五月蝿い! これとそれとは別だ!
 ただ、無料優待券のお陰で、アマイモンへの怒りが和らぐのも確かだ……」

「ご主人様の頭の中は、どこまでエロに埋めつくされてるんですか!」

 シロが、俺の言葉に呆れる。

「エロで何が悪い! 単純明快、 俺は、エロい事したいからハーレム勇者を目ざしてるんだよ!
 分かったなら、早く行くぞ!」

 シロの小言はスルーして、早くサキュバスのお姉ちゃんとエロい事したいので先を急ぐ。

「ご主人様、『漆黒の森』の王都モフウフがどこにあるのか知ってるんですか?」

「この森のどこかだろ?適当に歩けば着くんじゃないのか?」

「ご主人様、分かってるんですか?
『漆黒の森』は、南の大陸の5分の1を占める大国家らしいですよ」

「そうなんだ……森なのに国なのな」

 俺は、完全に『漆黒の森』の事を、その辺にある小さな森だと勘違いしていた。

「『漆黒の森』は、ダークエルフの女王が治める国だとお父さんが教えてくれたでしょ!」

「ダークエルフって、なんかエロそうだな」

 アマイモンの話など、聞いてもないし、聞きたくもないが、ダークエルフという言葉に思わず反応する。

「お父さんの話によると、そのダークエルフの女王様が、お父さんの主らしいですよ!」

「嘘だろ! ダークエルフが、アノ悪魔より強いのかよ!」

 俺は、メチャクチャ驚愕する。

「何せ、魔王を越える、大魔王をやってるみたいですから」

「だ……大魔王だと?! いきなり魔王を越えてるのかよ!
 魔王も見た事ないのに、世の中には段階ってものが有ると思うんだけど……」

「アッ! それから、ダークエルフの女王の部下にも大魔王が2人居るみたいですよ!」

 またまたシロが、驚愕の事実をぶち込んでくる。

「何それ? 大魔王のインフレ?
 なんか、モフウフに行くの嫌になってきてるんだけど……」

「大丈夫ですよ! 殺されそうになったら、お父さんの名前だしとけば何とかなると言ってましたから!」

「その人達、人を簡単に殺すような人達なのかよ?」

 俺は少し不安になってくる。

「身内以外には容赦ないって、言ってましたよ!」

「だったら一応、俺達は身内って事になるよな」

「お父さんが言うには、微妙らしいです」

「何でだよ! アマイモンは、その『漆黒の森』のダークエルフに仕えてるんじゃないのかよ!」

「それが……押しかけみたいなんで……」

「何だよそれ!」

 言ってる意味が分からない?
 押しかけって、押しかけ女房的な何かか?
 勝手に、アマイモンが、『漆黒の森』のダークエルフの事を主と言ってるだけ?

「兎に角、メイド服着た猫耳族の女には気を付けろと言ってました!」

「何だそれ?メッチャ興味が湧くんだけど」

 俺は、猫耳とメード服というパワーワードに興味が惹かれる。

「その猫耳族の女が、『漆黒の森』の女王に仕える大魔王の一人で、デカチンの男を見つけると、問答無用でオチンチンを100枚にスライスする有名なサイコ女らしいです!」

「何だそれ! そんなヤバい人間が、この世界に居るのかよ!」

 ーーー

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