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239. 神の遊び

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「レディースandジェントルマン!
 アムルーダンジョンのラスボス、大悪魔アマイモンさんの登場ですよ!
 皆さん、拍手をお願いしまーす!」

 パチパチパチパチパチパチパチパチパチ!

 女悪魔スルトが、すぐさま異界の悪魔アマイモンの元に駆け寄り、全力で拍手する。

「ご主人様……」

「ああ……」

 異界の悪魔アマイモンは、思ってた以上にチャラかった。

「えっと、セドリック君とシロちゃんだったよね!
 初めまして!
 君達がアムルーダンジョンを攻略するのを、首を長くして待ってたよ!」

 どうやら、異界の悪魔アマイモンは、俺達の名前を知ってるようだ。
 というか、鑑定スキルかなんかで、思いっきりステータスを確認されてる気がする。

 逆に、俺がアマイモンを鑑定しても全く見えないし。

「へえ、成程ねぇ! 不死者、思い出すのが遅すぎた男、骨なのに勇者、運の無い男、陰陽を極めた骨、チ〇コの皮を切り過ぎた男、面白い称号をたくさんもってるね!」

 何だと……俺の超隠蔽スキルが全く効いてない。
 俺は、普段からステータスを隠蔽してるのだ。
 特に、恥ずかし過ぎる称号は完全に消している。

「口に出して言うな!」

 俺は、大悪魔アマイモンを思わず怒鳴りつける。

「称号なんて、普通は中々持てないものなんだよね!
 しかも、セドリック君の場合、見た事も聞いた事もないレアな称号が盛りだくさん!
 チ〇コの皮を切り過ぎた男って、セドリック君、君、一体何したの?」

 アマイモンが、無邪気に質問してくる。

「五月蝿い! 俺は何も聞こえないぞ!」

「ご主人様、現実逃避しても無駄ですよ……。
 全て受け入れましょう!
 オチンチンだって、今は皮が余ってダブつき気味ですし」

 シロがいつものように、悪気なくトドメを差してきた。

「五月蝿いー! 聞こえない!」

 俺は、アマイモンと、ガチの戦闘も有り得ると密かに思っていたのだが、違う感じで、精神的な攻撃をモロに受けてしまった。

「ハッハッハッハッハッ! スルト君から報告を受けて知ってたけど、実際この目で見てみたら、セドリック君は、僕の想像を越える面白い人物だったようだね!」

 異界の悪魔アマイモンは、お腹を抱えて大笑いしている。
 何が面白いんだ?
 俺は、ちっとも面白くないのだけど。

「すみません。これから僕達どうなるんですか?」

 シロが、精神的にダメージを受けてる俺の代わりに、大笑いしてる異界の悪魔アマイモンに質問する。
 こんなに下手に出るシロは珍しい。
 異界の悪魔アマイモンが、完全なる強者だと魔物の勘で解っているようだ。

 完全に魔力やオーラを押さえ込んでいるが、見る人が見れば異界の悪魔アマイモンのヤバさは解る。
 俺やシロの高位の鑑定スキルや鑑定眼をもってしても、異界の悪魔アマイモンのステータスを読み取れないというのが、その証拠だ。

「何もしないよ! ただ、冒険者の天国『南の大陸』を楽しんで欲しいんだよ!
 僕が作ったダンジョンから生まれた君達が、南の大陸で、どんな行動をし、冒険するのか興味が有るだけなんだよね!
 僕は、ただ、君達が紡ぎ出す物語を特等席で覗き見して、ワインをくゆらせながら、クスリと、ほくそ笑みたいのさ!」

 俺達の創造主様は、相当、浮世離れしてる人物だという事が分かった。
 自分で作ったダンジョンから生まれてきた俺達を、興味本位で観察する。

 異界の悪魔アマイモンは、どうやら育成ゲーム感覚で、俺やシロの成長を見守ってるように思われる。

 人間を作った神様が、子である人間を見守るように、
 アマイモンも俺達のような魔物を作り、見守るのが趣味のようだ。

 神の遊び?
 違うか。アマイモンは悪魔だった。
 兎に角、ちょっと次元が違う。

「お父さん?」

 シロがアマイモンに向けて、おかしな事を口走る。

「シロ、それは違うから!」

 確かに、アマイモンがアムルーダンジョンを作ったのは確かみたいだけど、別に俺は、アマイモンの子種から生まれてない。
 俺は孤児で、父親も母親の顔も知らないけど、ちゃんとした生みの親は居た筈なのだ。

「僕が、君達の親みたいなもので間違いないよ!」

 アマイモンも全く否定しない。

「お父さんー!」

 シロはアマイモンに抱きつく。

 何、この展開?
 シロに親は無く、ある時アムルーダンジョンから生まれ落ちたたらしいから、アマイモンが親で間違いないのか?

「ほら!セドリック君も、パパの胸に飛び込んできなさい!」

 アマイモン、アホなのか?
 何で、俺が見ず知らずのオッサンに抱き着かなければならないのだ?

 まあ、兎に角、アマイモンが俺達の敵で無い事は分かった。
 息子に、ソープランドの無料優待券をくれる程の砕けたパパである事も分かった。

 だから何?
 意味が分からない?
 俺的には、異界の悪魔アマイモンが、心底恐ろしいのだけど。

 アムルーダンジョンで生まれた住民は、所詮、創造主であるアマイモンの玩具。ボードゲームの盤上の駒なのだ。

 要らなくなったら使い捨て。
 崇高なる悪魔の遊び?

 人の人生を何だと思っている。
 俺は心底気に入らない。

 俺をこの世界に送り込んだ、転生の神様舐めてるのか?
 俺を、アマイモンのダンジョンなんかに転生させやがって!

 もしかして、俺を転生させたのは南の大陸とかいう場所で、たまたま俺が、アマイモンのダンジョンの中で生まれたというパターンがしっくり来るのか?

 まあ、確かに、アマイモンのダンジョンというか、アムルーダンジョンは緩い世界だった。
 ハーレムプレイを楽しむなら、難易度は最下級。

 第35階層とかはヤバ過ぎたが、他の階層はハッキリ言ってヌルゲー。
 直ぐに最強になれて、間違わなければ簡単にハーレム作れた筈だし。

 そう、俺が間違わなければ……。
 骨になる前に、勇者だと気付けていれば……。

 俺は思い出して、再び、精神的なダメージを受けてしまう。

「シロちゃん……セドリック君、大丈夫?」

 四つん這いになって落ち込んでる俺を、アマイモンが覗き込んでくる。

「いつもの事ですから。暫くしたら、スグに忘れて元通りになります」

 シロは、いつでもクール。

「それじゃあ、僕も忙しいから、南の大陸についてレクチャーするよ!」

「お父様任せて下さい! 記憶力には自信がありますから!
 ご主人様が、あのような状態でも、私に教えてくれれば何も問題ありません!」

 なんかよく分からないが、シロとアマイモンが話し合っている。

 俺を完全無視して……。

 俺って、この物語の主人公じゃなかったのかよ!
 実は、悪魔の箱庭で培養されてた魔物だったって……。
 俺、相当ショックだったんだよ!

 ーーー

 ここまで読んで下さりありがとうございます。
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