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208. 語り
しおりを挟む「はい。ございます。まだ、私共が十字軍に従軍してた頃、勇者だったアルトリア様にお仕えしておりましたので」
初老の双子バンパイアのまさかの言葉。
どうやら、この初老のバンパイアの二人は、勇者であった始祖と、十字軍で共に戦った仲間であったらしい。
俺は少し興奮する。
聖剣エクスカリバーを持つ勇者アーサー王。
真名は、アルトリア·ペンドラゴン。
言わずと知れたアーサー王物語の主人公である。
そのアルトリアの仲間と言ったら、円卓の騎士。
「お前達、もしかして円卓の騎士じゃないのか?」
俺は、恐る恐る初老の双子に質問する。
「はい猊下。その通りでございます」
どうやら、俺の予想は当たってたようである。
「ランスロットじゃないよな?」
「違います。私共は、」
「待て! 当てる」
ファンタジーの王道中の王道。全てのファンタジー小説や映画の元祖。そのアーサー王物語の円卓の騎士の主要メンバーを当てられないようでは、異世界ファンタジー好きだとは言えない。
俺は、なろう系異世界モノだけを読んでる、エセファンタジー好きではないという事を、今ここで、証明してやるのだ!
「さようで」
「兄弟なんだよな」
「そうでございます」
「円卓の騎士で兄弟と言ったら、ガウェイン兄弟だよな!」
「はい。ガウェインは、長兄でございます」
ガウェイン兄弟と分かれば、もう余裕だ。
後は、誰だか当てるだけ。
アーサー王物語で、ガウェイン兄弟に双子がいるという記述は無い筈だが、f〇teとかでも、アーサー王役のセーバーを、勝手に女に変えたりしているし、普通に有りなのだろう。
というか、始祖も女だから、今更か。
元ネタ男の主人公を女にするのは、定番中の定番で(沖田総司が、実は女だったとか)、主要キャストが双子になっていても問題無いのである。
「それでは当ててみせよう! お前達は、ガヘリスとガレスだろう!」
「おみそれしました。猊下がおっしゃる通り、私がガヘリス」
「私が、ガレスでございます」
二人の初老の執事が頭を下げる。
まあ、俺程のアーサー王通なら簡単に分かる。
ガウェイン兄弟の、どちらが三男か四男なのか問題。
大昔の事だから、本当に、どっちが兄か弟か分からなくなっているのだろう。
双子で同じ顔だし。
因みに、ガウェイン兄弟の父親の名前はロト。
そう、ガヘリスとガリスは、ロトの血を引く者なのだ。
少なくとも、ドラ〇エ好きな俺は、そう信じている。
「それでは質問しよう。ロトの血を引く者よ。
どういう経緯で、お前達はバンパイアになったのだ?」
俺は、ただ、『ロトの血を引く者』というパワーワードを使いたいばかりに、
この後、初老の執事二人の長い話を聞く羽目になる事を、滅茶苦茶後悔する事になる。
そう、初老の執事の話は、まる2日間にも及んだのだ。
子供の頃の話から、勇者アルトリアとの出会いの話。
アルトリアやランスロットと従軍した十字軍の話。
まあ、俺の元いた世界と若干違う世界なので、違う所もたくさんあるが、殆どアーサー王物語を読んで知ってる話。
俺は、眠くて眠くて仕方が無かったのだが、大広間に居たのは全員、始祖であるアルトリアの血族。
時に興奮して、時には涙し、時には憤慨して、身を乗り出して聞き入っているのだ。
「殆ど知ってる話だから、もう話さなくていいぞ!」とは、言えない雰囲気。
何で俺はガウェイン兄弟に、バンパイアになってしまった経緯を聞いてしまったのだ……。
そう、ガウェイン兄弟の父親の名前が、ロトだと知っていたのがいけなかったのだ。
思わず、知ったか病が発動して、知識を振りかざしてしまった。
そのせいで、こんな目に会ってしまうとは……。
「本当にそうですよ、ご主人様! ご主人様はいつもそうなんです!
どんだけ司馬遼太郎が好きだか知りませんが、やたらと最近、昔読んだ司馬遼太郎の知識を振りかざしたりしてきますよね!」
「それは、お前もそうだろ!
お前だって、司馬遼太郎先生が大好きで、歴史知識を振りかざすぞ!」
「ご主人様、知らないんですか?
歴史を知らない民族に未来は無いんですよ!」
「違うな。歴史は知ってて当然。歴史を改竄されるのに、気付かない奴がいけないのだ!
歴史は、悪意を持って日々改竄されていく。
それを気付いた時に、日々訂正していかないといけないのだ!」
俺は胸を張り、言い切ってやる。
「なんか今日は、難しい事をいいますね。ご主人様の癖に」
「馬鹿者! 俺は生粋の歴史好きなんだよ!
そんな俺は、日々ムカついているんだ!
偉い歴史の先生が、新説だとか言って有り得ないトンデモ歴史を発表して、それが標準常識になったり、他国民が自分達に都合がいい、理想的なファンタジーな歴史を作ったりする事が!
歴史は1つしかないのだ!
過去には、行けないから真実は分からないけど!
だからと言って、過去の真実が分からなからと言って、悪意を持って歴史を改竄する奴は、歴史好きとしては絶対に許せない!」
「ご主人様、いつになく熱いですね」
「当たり前だ! 俺の趣味は歴史を妄想する事なのだ!」
「どんな感じに?」
「お前、日ユ同祖論って、知ってるか?」
優しい俺は、シロに例え話をしてやる事にする。
「勿論、知ってますよ! 日本人とユダヤ人の祖先が同じという話ですよね?
僕は、ご主人様の頭の中を全部読んでますからね!」
シロは、ムフフンと無い胸を張って、話を続ける。
「日ユ同祖論は、所謂、日本人の祖先が2700年前にアッシリア人に追放されたイスラエルの失われた十支族の一つとする説ですよね!
そして、天皇家や秦家がユダヤ人と関係があるんでしたよね!」
「俺の説は、もっと先を言っている。
というか、俺が色々な歴史を調べて、導き出した説こそ、本当の真実なのだ!」
「ご主人様が、トンデモ新説を考えたという訳ですね!」
「馬鹿者! 俺が考えた説が正しいに決まっている!
俺は歴史が得意で、学生の時、世界史の教科書をひたすら授業中に繰り返して読んでただけで、世界史の教科書をいつの間にか全部丸暗記してた男だぞ!」
「自慢ですか?」
「自慢じゃないやい! それだけ歴史が好きだという事だよ!
それに、世界史以外の教科はからっきしだったから、三流大学しか入れなくて、コーピー機のリースをお願いする会社しか入れなかったんだよ!」
「それは知ってます。ご主人様の頭の中を読んでますから。で、司馬遼太郎を読んでたせいで、日本史選択にした方が良かったかもと思いながらも、実は世界史も得意だったご主人様の日ユ同祖論の見解はどうなんですか?」
「まず、間違ってるのは、天皇家や秦家とユダヤの関係。
実は、もっともユダヤ人と関係があるのは、古代安倍家。
安倍家の家紋は、五芒星。イスラエルの国旗は六芒星で似ている」
「それぐらいなら、誰だって気付きますよ!」
「それだけではない! 源義経を知ってるだろ?」
「牛若丸ですよね?」
「そうだ! 牛若丸が幼少期預けられてた場所は?」
「鞍馬山でした? 確か、天狗に修行をつけてもらって強くなったんですよね?」
「そうだ! 天狗の格好は、まんまユダヤ教の聖職者と同じ格好なのだ!」
「それも知ってます。そんなのネットを見れば、誰だって分かりますよ!」
「まあ、普通の人間ならこの程度で満足するだろう。
しかし、歴史の探求者である俺は、ここで終わらないのだ!」
俺は力強く言い切り、話を続ける。
「古代阿部氏(安倍氏)は、大化の改新に出てくる蘇我氏や物部氏より古い、最も古い日本の豪族だという事を知ってるか?」
「それゃあ、知ってますよ。何せ、僕はご主人様の頭の中を読めるんですから!
どんなご主人様が知ってるマニアックな知識だって、なんでも知ってますよ!」
「それもそうか……。兎に角、安倍氏(ユダヤ人)は早い段階で日本に到着して、土着の宗教(ユダヤ教)を広めた」
「それが、鞍馬寺の天狗というか山伏なんですか?」
「そういう事」
「で、それは分かりましたけど、源義経と安倍氏の関係は?」
「実は、鞍馬寺と安倍氏の関係が滅茶苦茶深かった事は分かるよな?」
「現在は、全く伝えられていませんが、安倍氏が本当にユダヤ人なら、関係が深いどころの話では有りませんよね。
何せ、ユダヤ人=安倍氏ですから」
「そう。関係が滅茶苦茶深いんだ」
「で、源義経と安倍氏の関係が全く分からないんですけど?」
「源義経の最後の死に場所を知ってるか?」
「奥州藤原氏の本拠地平泉ですよね。松尾芭蕉で有名な、つわものどもの夢の跡の」
「そうだ。で、奥州藤原氏の前身って知ってるか?」
「勿論、知ってますよ! 元々奥州を支配してた安倍氏ですよね!
前九年の役で滅亡したんですよね。清原氏に裏切られて!
因みに、安倍首相の先祖は、この戦いで負けて、九州の島に島流しになったんですよね!」
「その通り、なので、東北には安倍の姓は少ない。
安倍氏は滅亡した事になってるから。
安倍姓を名乗っているのは、安倍首相のように島流しになった一派や、京都などにいる安倍晴明とかの一派だけなのだ。
東北に今も住んでる安倍姓の人々は、大体、昔名乗っていた阿部姓に改名というか元に戻したり、似た名前に改名しているのだ!」
「安倍氏本流の安東氏のように?」
「よく知ってるな! そういう事だ!」
「でも、それって、ご主人様の説で、誰も言ってないんですよね?」
「いちいちつべこべ言うな!
兎に角、俺の説が正しいんだよ!」
「それで、安倍氏の娘と婚姻関係にあった、安倍氏の血を引く奥州藤原氏が、源義経の跡見人になったと」
「そう、ユダヤ人(安倍氏)と血の繋がりのあった奥州藤原氏が、源義経の跡見人だった為、ユダヤ人と関係深い鞍馬寺に預けられたり、平泉に逃げて来たりしたのだ!」
「そんな妄想を考えたのって、もしかしてご主人様が、初ですか?」
「多分な」
「これは正真正銘の新説ですか?」
「俺の中では、既に10年前から考えてたので、俺の中では新説じゃないけどな!」
「10年前って、骨になる前の冒険者だった時ですか?」
「そんなの、話の流れで分かるだろ!
日本に居た時の10年前だよ!」
「兎に角、安倍氏は前九年の役で、天皇家に滅亡させられたので、過去の歴史は定かでないと?」
「ああ。歴史は勝者が改竄するものだからな!
だけれども、奥州安倍氏が古代に日本で力を持ってた事は確かだ。
平泉が、黄金郷と言われてたのは知ってるか?」
「安倍氏が、渤海国と天皇家を通さず密貿易して、莫大な利益を得てたからですよね!
そういう事も原因で、安倍氏は天皇家に目をつけられ滅ぼされたんですよね!」
「その通り。天皇家はユダヤ人の血を引く、有能な安倍氏を恐れたのだな!」
「安倍首相が、天皇家と親戚だから右翼的だと言う人がいるけど、安倍一族の括りで考えたら、天皇家は敵という事になりますね。
安倍首相の祖先を島流しにしたのも天皇家だし」
「そういう事。安倍首相は、長州閥だから右翼的なの。
みんな歴史を知ってる振りをしても、表層しか知らないんだよ。
歴史は全て繋がりがある。
日本の歴史だけでなく、世界の歴史や、細かいマニアックな歴史とか、全て繋げて考えると気付かなかった歴史に気が付くのだよ!」
「そうやって、ご主人様のなんちゃって日本史が出来上がるんですね!」
「なんちゃって。って言うな! 俺の説が、世界一正しいんだよ!」
ーーー
ここまで読ん下さりありがとうございます。
今回は、脱線回でした。
本当は、新説日ユ同祖論について、もっと語りかったのですが、一話では全然足りないのでこのへんにしておきます。
完全に、私の主観なので信じないで下さいね。
まあ、私の新説が、一番正しいと思うけど。
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