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169. 第35階層、再び

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 ダイヤモンドスライムをペットにし、俺達は次の日から、再び、第35階層に向かった。

 ダイヤモンドスライムも、一緒に連れて行こうとしたのだが、お宝大好きなダイヤモンドスライムは、梃子でも動かなかったので、アジトに置いてきた。

 まあ、俺達の居ない間とかに、女悪魔スルトとかが襲ってきても、ダイヤモンドスライムなら勝手に逃げるだろう。
 最初にログハウスを燃やされた時も、普通に逃げてたみたいだし。

 そして、第29階層で1日レベル上げした後、俺達は久しぶりに第35階層に戻ってきた。

 早速、ゴールデンスカル号を魔法の鞄から取りだし、船に乗り込む。

「やっぱり、故郷の空気は最高だな!」

 メアリーは、伸びをして海を見渡す。

「何か、アムルーダンジョンの空気が不味いみたいな言い方だな……。
 アムルーダンジョンは、シロとオリ姫の生まれ故郷で、俺の家がある場所なんだけどな」

「言葉のあやだよ! 分かるだろ!
 勿論、湖畔のログハウスの空気は最高に美味しかったぞ!」

 メアリーは、ジト目の俺とシロに、必死に弁明する。

「まあ、そう言う事にしといてやろう。
 取り敢えずは、第2アジトのドーナツ島に向かうぞ!」

 俺達は、早速、ドーナツ島に向かう。
 ドレークに襲われたドーナツ島がどうなってるか分からないが、ミレーネとミレーネ海賊団、改め、ゴールデンスカル海賊団のクルーのお墓を建ててやらなくてはならないのだ。

 ゴールデンスカル海賊団の新しいクルーだった、元ミレーネ海賊団のクルーも、気のいい奴らがたくさん居た。
 皆、俺と関わらなければ、死なずに済んだのだ。

 少しだけ責任を感じるが、海賊稼業をしていれば、突然死んでしまう事も覚悟できていたであろう。
 流石の俺も、全ての事に責任は持てない。
 ドレークと双子を殺して敵討ちは果たしたし、やる事はやってやった。

 まあ、こんなにクールに感じられてしまうのは、やはり俺が魔物になってしまったからだろう。

「ご主人様、魔物でも悲しみは感じますよ。悲しみを感じないのは、ご主人様だけです!」

 すかさず、シロが俺の頭の中を読んで酷い事を言ってきた。

「分かってるよ!だがしかし、悲しみを感じないんじゃなくて、悲しみが直ぐに消えるだけだからね!」

 俺はシロの言葉を正しておく。
 俺だって、ミレーネが死んだと聞いた時、凄く悲しかった。
 しかし、今ではそれ程だが……。
 兎に角、悲しい事は悲しいのだ。

 ただ、人より長く続かないだけ……。
 そんな所が、一番悲しかったりするのだが……。

 そんな事を思っていたら、いつの間にかドーナツ島が見えて来た。

 ドーナツ島に上陸したら、少しは悲しくなるのかな……。
 まあ、そんな事をウジウジ考えてても仕方が無い。

 もうこれは、魔物の特性というか、不死者の特性なのだ。諦めるしかない。

 俺達は、秘密の入口から、ドーナツ島の中に入る。

「ん?!」

 何か、凄く薄暗い。
 日光を覆う何かが、そこに居る。
 黒船?

「ご主人様! ドーナツ島の中に、大きな黒い海賊船が居ます!」

 シロも、黒船に気付いて、俺に報告して来た。

「クッ! ヤバいぜ! アレは黒髭海賊団の母艦アン女王の復讐号だ!
 早く、引き返せ!」

 メアリーが、相当焦っている。
 同じ五公でも、メアリーアン海賊団より、黒髭海賊団の方が格上なのだ。
 実際、黒髭海賊団は、同じ五公の赤髭海賊団を潰しているというし……。

「オリ姫!」

「キュイ!」

 俺は、オリ姫の名前を呼ぶと、オリ姫は全速力で、ゴールデンスカル号をバックさせる。

 しかし、直ぐにドーナツ島の中に入る入口が、どこからともなく現れた、黒髭海賊団の配下と思われる船に塞がれてしまった。

「キュイ!」

 オリ姫が、目をウルウルさせて、どうするの?って、聞いてきている。

「そのまま、突き破れ!」

「キュイ!」

「ご主人様! 船尾にはゴールデンスカルが付いてませんよ!」

「しょうがないだろ! 兎に角、ぶちかませ!」

「キュイ!」

 ドッカーーン!

 ゴールデンスカル号は、全速力で黒髭海賊団の配下の船にぶち当たった。

 しかし、

「ご主人様! 船が何隻も重なっていて突破できません!」

「それでも進め!」

「駄目です! 動力部が破損してしまいました!」

「クッ! ここまでか……」

 俺は、黒髭海賊団に捕まる事を覚悟する。

「諦めるな! ここで捕まったら、黒髭に皆殺しにされるぞ!」

 メアリーが、物騒な事を言ってきた。
 黒髭は、謝っても許してくれないのか?
 というか、何で俺達は、黒髭海賊団に狙われてるんだ?

「俺達、何で逃げてるんだ?」

「お前が何かしたんだろ!
 兎に角、絶対にアイツは私達を殺そうとする。
 黒髭は、そういう残忍な奴なんだよ!」

 俺達は仕方が無いので、ゴールデンスカル号を塞いでいた敵の船に乗り込み、海を目指す事にする。

 しかしながら、強い。

 下っ端と思われる海賊の中に、たまにメッチャ強い奴がいたりするのだ。

「メアリーでも苦戦する奴が居るって、どんだけレベルが高いんだよ!」

「無駄口叩くな!母艦にいる一軍が、追い掛けてきてるぞ!」

 確かに、本当にヤバそうな奴らが、船を伝って追い掛けてきている。

「シロ! 本気だせ!」

「了解です!」

 ハルマン王都のドレーク戦でも、アラクネに変身してなかったシロが、本来の蜘蛛型に姿を変える。

 そして、一番海側に停泊していると思われる海賊船のマストに糸を飛ばす。
 そして、俺達も糸で巻つけ、一気にその海側に停泊している海賊船の場所まで飛んで行こうとした。

 しかし、

「斬!!」

 ミスリルより硬いと思われるシロの糸が、黒い影が見えたと思った瞬間、誰かに斬られてしまった。

「痛っ!」

 俺達は、海賊船の甲板に、思いっきり体を打ち付けられる。

「何で、シロの糸が斬られちゃうんだよ!」

 俺は、痛さに耐えながら叫ぶ。

「侍だ……」

 メアリーが、ポツリと言う。

 俺は恐る恐る、メアリーが目を向けてる方向に視線を向ける。

 そこに居たのは、ちょっとヨレヨレな着流しを来て、その着流しの胸元から鍛えられた筋肉が見て取れる、後ろでポニーテールのように髪を結んでいる黒髪の浪人風の侍が、のんびり煙管をくわえて立っていた。

 ヤバい、コイツはどう考えてもヤバい。
 ヤバそうな雰囲気がプンプン臭う。
 シロの糸を簡単に斬ってしまうのもそうだが、ケンジやメアリーと違って、どう見ても本物の侍なのだ。

 その圧倒的な殺気。
 凄まじい闘気も隠そうとしない。
 伝説の人斬り集団。現役の侍で間違いない。

 そして、侍から少し遅れる事、3分。

「ヨオ! 小次郎、俺様の部下に舐め腐った事してくれた、あんぽんたんを捕まえたかよ!」

「ああ」

 侍は、煙管を吹かしながら、気だるそうに、遅れて来た男に答える。

「オオ。よくやった」

 屈強そうな、黒髭海賊団の一軍と思われる団体を引き連れた、3メートルを越える巨体で、立派な黒髭を生やした眼光鋭い隻眼の海賊が、俺達の前に現れた。

 ーーー

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