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135. 始祖の指輪

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「あぁぁぁ……気持ちイイニャ~」

 始祖の指輪を諦めていないミーナは、俺から始祖の指輪を奪おうとする度に、
 奴隷契約に付随している、俺に逆らうと、オ〇ニーしたくなってしまうという呪いに苦しんでいる。
 というか、気持ち良くなってしまっている。

「オイ! この猫大丈夫なのか?」

 オ〇ニーに夢中のミーナを抱いているメアリーが、心配そうに聞いてくる。

「ああ。ミーナが始祖の指輪を諦めれば大丈夫だ」

「ていうか、このお金にガメツそうな猫が諦めるのか?」

「さあな?」

 俺はメアリーに返事をしながら、早速、始祖の指輪を指にはめてみる。

 すると、始祖の指輪から、赤い光線が東に向かって伸びて行った。

「これは……」

「ご主人様! その指輪は、お宝の場所を指し示す魔道具なのでは!」

 シロが、興奮気味に話し掛けてきた。

「きっと、そうニャーー!」

 オ〇ニーに夢中だったミーナが、カッ! と、目を見開き、メアリーの腕の中から飛び下りて、俺の代わりにシロに答える。

「成程な」

 俺は、試しに、指から始祖の指輪を外してみる。

 すると、始祖の指輪から放たれていた赤い光線が消えてしまった。

「メアリーもはめてみろ!」

「エッ? いいのか?」

 メアリーは、嬉しそうに始祖の指輪をはめる。
 しかし、俺がはめた時のように、赤い光線は出なかった。

「どうやら、このお祖母様の指輪は、お前の物のようだな」

 メアリーは、始祖の指輪を外し、俺に返してきた。

「私も付けさせるのニャーー!」

 ミーナは、俺の手から始祖の指輪を奪い、自分の指に付けようとした。

「は……入らないのニャ~」

「そりゃあそうだろ。猫の肉球に、人間用の指輪が入る訳ないだろ……」

 俺は、放心気味のミーナから、始祖の指輪を奪い取って、再び、自分の指に付けてみる。

 すると、

 再び、始祖の指輪から、赤い光線が放たれた。

「ヤッパリ、その始祖の指輪は、ご主人様の為の指輪なんですね!」

 すかさずシロが、俺を称えてくれる。

「まあ、俺は正真正銘の勇者だからな!」

「流石は、ご主人様です!」

「始祖様、素敵です!」

「キュイ!」

「やはり、お前がお祖母様の兄貴で間違いなさそうだな……。
 お祖母様の指輪を装備できる訳だしな……」

 よく分からないが、メアリーが複雑な顔をしている。

 まあ、メアリーとミーナは置いといて、俺は何かに認められた気がしてとても嬉しい。

 今まで、死ぬまで勇者と気付けなかったり、骨になってしまったり、チ〇コの皮を切り過ぎたりしてツイてなかったが、やっと、俺にも運が向いてきたようだ。

「じゃあ行くか!」

 俺は、始祖に認められた勇者らしく、始祖の指輪をはめた左手を突き上げる。

「海賊らしく、お宝探しですね!」

「お祖母様が隠した、宝探しか!
 盛り上がってきたぜ!」

「私は、始祖様に何処までも着いていきます!」

「キュイ!」

 放心したままのミーナ以外が、俺の声に答える。

「オイ! ミーナ行くぞ!
 お宝探しだ!」

「お宝は、全て私の物ニャーー!」

 どうやら、お金にガメツイミーナが、お宝と聞いて現実に戻って来たようだ。

 そんな感じで、アダマンタイトスライムを倒しながら、ゴールデンスカル号に向かって戻っていると、突然、メアリーが立ち止まった。

「どうした?」

 俺は、メアリーに質問する。

「どうやら、私たち以外の者が、スライム島に来ているみたいだぞ」

「そうなのか?」

「ご主人様! ゴールデンスカル号の横に、大きな海賊船が見えます!」

 シロも、千里眼で確認したようだ。

「早く、指輪を外すニャ!
 他の海賊達に、お宝の場所が知られてしまうニャ!」

 お宝の事に関してだけ頭が回るミーナが、慌てて俺に指輪を外すように言ってきた。

「ああ! 確かにそうだな!」

 俺は慌てて、始祖の指輪を外す。

「で、船は何隻だ?」

 俺は、シロに質問する。

「一隻だけです! けれど、船全体に鉄板を貼って船が強化されてます!
 それから、船首に少女の彫刻が付いてますね!」

「もしかして、海賊旗は、髑髏が口から血を流してる意匠か?」

「そうです!」

 メアリーの質問に、シロが答える。

「間違い無いな。その船は、ドレーク海賊団の母艦。アイアンメイデン号だな!」

「嘘だろ! 何で五公が、こんな辺鄙な場所にいるんだ!」

「辺鄙言うな! 丁度このスライム島辺りが、メアリーアン海賊団と、ドレーク海賊団の縄張りの境目なんだよ!」

「で、メアリーアン海賊団とドレーク海賊団は、友好関係にあるんだろ?」

「まさか。メアリーアン海賊団とドレーク海賊団は、犬猿の仲だ!
 ミレーネ海賊団とかも、ドレーク海賊団に相当やられてたよな」

「ハイ。私共も、ドレーク海賊団に目を付けられてました……」

「何でだ?」

 俺は気になり質問する。

「ドレーク海賊団のキャプテンは、サー·フランシス·ドレークです。
 またの名を、ドラコ。ドラクル。ドラキュラ。
 大昔は、ヴラド・ツェペシュ、ヴラド・ドラキュラ公爵と名乗っていました。
 今は、ブリテン王国で騎士爵の称号を貰い受け、海賊家業をやっているという訳です」

「成程……。まさかのドラキュラ伯爵とは……」

 俺は、サー·フランシス·ドレークが、まさかの吸血鬼界のスーパースターだった事に驚愕する。

「エッ? ドラキュラ伯爵とは?
 ドラキュラは公爵ですよ?」

「ああ、別の話だ」

 ミレーネが、不思議な顔をする。
 俺が知ってるドラキュラ伯爵は、ブラム·ストーカーの小説に出てくる創作された人物だ。
 実際のドラキュラ伯爵のモデルは、ヴラド・ツェペシュ、ヴラド・ドラキュラ公。

 ルーマニア王国の公爵だった人物である。
 こちらの世界の情報で、間違い無い。

「メアリー。それでドレークは強いのか?」

「強いな。何せ、始祖から直接血を分けて貰った純血種だからな。
 しかも、部下共も全員吸血鬼だ!
 公爵自ら血を分けてるので、ある程度の日光の耐性まで持っていやがる!」

「なんか、面倒くさそうだな……」

「ああ。奴らは面倒くさい。毎度毎度、ちょっかい出してくるし。
 奴ら、自分達こそが始祖の直系とか言って、鬼人族を目の敵にしてくるんだ!」

「成程な。ダンピールのミレーネだけでなく、鬼人族とも仲が悪いのか……」

「ああ。だから、敵の敵は味方という事で、ミレーネ海賊団とは、一応友好関係を築いてたんだけど、ウチらの傘下の奴らを襲ったんだよな!」

 メアリーは未だに、俺達が聖飢魔ツリー海賊団をオネエにした事を根に持っているようだ。

「だから、アレは謝っただろ!
 彼らからも、目覚めさせてくれて有難うと、礼を言われたぞ!」

「私は、男らしかった聖飢魔ツリー海賊団が好きだったんだよ!」

「アレが男らしいか? 世紀末的な格好をしたマッドマッ〇ス野郎だろ?」

「言ってる意味が分からねーんだよ!」

「これだから、地球を知らない奴は!」

「お前、いつも、私の知らない事を知ってるからと言って、デカい顔をするんじゃねーよ!」

「ご主人様! メアリーさん! 今は、目の前の敵に集中しましょうね!」

 冷静なシロが、俺とメアリーを諌めてきた。

「まあ、そうだな……」

「私も言い過ぎた……」

「で、どうするんだよ。メアリーは、奴らと何度も戦ってるんだろ?」

「ああ。兎に角、倒しまくれば何とかなるだろ!
 今日は、母艦のアイアンメイデン号しかいないみたいだからな!」

 脳筋メアリーの作戦は、単純だった。
 しかし、ドレーク海賊団の事を知らない俺達は、メアリーの作戦に従うしかない。

「じゃあ、作戦も決まったし行くぞ!」

「ラジャー!」

「オー!」

「始祖様が行く場所へなら、どこへでも!」

「キュイ!」

 俺の号令に、駄猫のミーナ以外のメンバーが、元気よく応えた。

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