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110. バトルシップ

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 俺達は、セッセッとバトルシップを作っている。
 まあ、俺達と言っても、ミーナはウッドデッキで昼寝してるけど。

 俺は、バトルシップに使う木をジャンジャン風魔法で切っていく。

 どんなバトルシップにしようかと結構悩んだが、俺のイメージだと、小さな海賊船ぐらいの大きさがいいんじゃないかと思う。

 そう、ワ〇ピースのゴ〇イングメリー号ぐらいの大きさ。

 最初、小さな漁船ぐらいの大きさにしようと思ったけど、クラーケンとか大型の魔物に襲われた場合、簡単に沈められてしまうと思ったからだ。

 ならば、ある程度の広い甲板があり、地に足を付けてしっかり戦える場所が必要である。
 そうなると、最低、ゴ〇イングメリー号ぐらいの広さは必要だと思ったのだ。

 俺は、そんな訳で、ジャンジャン木を切っている。

 そしてその木を、シロが、オリ姫カンナを使ってどんどん製材していく。

 オリ姫カンナは、やはりオリハルコン製なので切れ味抜群だ。
 刃の高さも、オリ姫が勝手に調整するので、何も考えずに削っても完璧な製材に仕上がるのだ。

 俺とシロは、木の製材が終わると、チャッチャッと船を組み立てていく。

 俺が想像するバトルシップのイメージは、俺の頭の中まで読めてしまうシロと、完璧な形で共有出来ている。

 シロはどうやら、俺の心の声が聞こえるだけじゃなく、俺の脳ミソの中まで見る事ができるようだ。
 という事は、いちいち説明しなくても、ラーメンを食べたいと言えば、普通に俺の脳ミソを検索して、ラーメンの作り方まで分かってしまう事なのである!

 超便利!

 と、思ったら、何故か、隣でシロが照れている。
 シロは、俺の役に立つ事が、至上の喜びなのだ。

 そんな訳で、便利メイドのシロを使って、チャッチャッと、バトルシップを組み立てる。

 シロは、流石アラクネだけあって、滅茶苦茶手先が器用。
 アラクネは、ギリシア神話では、神をも凌ぐ織物の名手だったらしいし。

 俺はちょっと手伝っただけで、シロが殆ど1人で、バトルシップの船体を組み立てしまった。

 そして、次の工程は、船のボディーにミスリルコーティングする作業である。
 この作業をする事によって、海の魔物に体当たりされても、ちょっとやそっとで、沈没しないようになるのだ。

 コーティング方法は簡単。ストックしてるミスリルスライムの死骸を塗るだけ。

 本来なら、加工が難しいミスリル板を、船のアールに合わせて溶接しなくてはならないので相当大変な作業である。
 まあ、実際は、溶接とかしないので相当楽なのだが、俺達のバトルシップは、それなりの大きさなので結構面倒臭い。

 猫の手も借りたいぐらいだ。

 俺は、ふと、ウッドデッキで日向ぼっこをしてるミーナを見る。
 しかし、ミーナは我関せずで、「フニャ~」と、大きな欠伸をしてるし。

 うん。ミーナはミーナだ。
 期待すると苛つくので、居ない人と考えよう。
 まあ、人では無く猫なんだけど。

 そんなこんなで、船体のミスリルコーティングが済んだら、次は動力部の製作に取り掛かる。

 動力には、風を生み出す魔道具を使う。
 俺の地球の記憶にあった、ホバークラフトをイメージして、超絶器用なシロが製作した魔道具だ。

 シロは、織物から始まって、服にカーテン、料理に掃除、家造りに家具作り、武器に防具、遂に魔道具までも作り出すようになってしまった。

 流石は、神をも凌駕する織物を製作してしまうアラクネである。

 シロは、チャッチャッと、風を生成する魔道具を船の船尾に取り付け、一応、俺達のバトルシップは完成した。

「ご主人様! ご主人様のイメージ通りのバトルシップが完成しましたよ!
 後は、居住性を考えて、船内空間をちょっと弄りたいですね!」

 俺的には、もう十分なのだが、凝り性のシロ的には、内装まで完璧に仕上げたいみたいだ。

「まあ、船内の内装は、航海中にでもやればいいんじゃないか?
 それより、早く湖に浮かべて見ようぜ!」

 俺は、内装なんかより、早くバトルシップの乗り心地を確かめたい。

 男の子は、海賊に憧れるものなのだ。
 早く、海賊ごっこがしたい。

「俺は、海賊王になる!」

 気分は、既にワ〇ピース
 実際、俺のバトルシップは、帆が要らないホバークラフトなのだが、海賊船に憧れるあまり無駄な帆を付けてしまっているし。

 勿論、帆には、髑髏のマークをシロにお願いして描いて貰ってる。

 どうやらシロは、俺の髑髏を忠実に再現して描いたらしく、ミョーに生々しく感じてしまうのが、玉に瑕。
 髑髏も勿論、金色だし。

 まあ、そんな事は置いといて、早速、入水だ。

 船尾に付けられた、2つのドーナツ型の魔道具から風が吹き出る。
 地球のホバークラフトの動力部には、扇風機のような羽が付いてるが、俺達のバトルシップには、羽など付いてない。

 そう、ダイ〇ンの扇風機をイメージしたのだ。
 そのせいか、普通のホバークラフトは結構五月蝿いのだが、俺達のバトルシップは無音。

 因みにドーナツ型の魔道具を反転させて、帆に当てれば、普通の帆船のように進ませる事も出来たりする。

「良し! シロ、船を出せ!」

「了解! キャプテン!」

 シロも俺に合わせ、ノリノリで返事をする。

 シロがドーナツ型の魔道具を操作すると、風が吹き出し、バトルシップが地面を走りだした。
 船底はミスリルコーティングしてるので、破損する事なく、普通に地面をグリグリと抉りながら進んでいく。
 後で、整地するのが大変そうだ……。

 バシャン!

 無事、バトルシップが沈む事なく入水した。

 そして、そのまま猛スピードで進みだす。

 すると、

「ヤバっ!」

 帆に逆風がモロに当たって、船首が浮き上がりウイリーしてしまった。

「オリ姫! 直ぐに帆を畳め!」

「キュイ!」

 オリ姫が帆を畳むと、浮き上がっていた船体が元に戻る。

 これは、フルスピードで進む時は、帆を畳まないと沈むな。

 しかし、それでは、折角の海賊旗が……。

「ご主人様。帆の方に、魔道具の風を当ててみますか?」

「それな!」

 流石はシロ、頭がいい。

 魔道具の風を弱め、帆に当てると、ホバークラフト程の猛スピードは出せないが、中々の速さで俺のバトルシップが進んでいく。

 意外とこれでいいんじゃない?

 急ぐ時はホバークラフトに、普段は帆船として使えば良いだけだしね。

「これで、バトルシップのメドは立った。
 後は、このカッコ良すぎるバトルシップで、第35階層を攻略するだけだ!」

 こんな感じで、俺達の海賊生活が始まった。


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