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108. 王子になりたい
しおりを挟むそんな感じで第33階層の攻略を終えると、俺の依頼を終えた『鷹の爪』は、クエスト完了を報告する為に、冒険者ギルドに戻って行った。
アナスタシアは、最初、俺と一緒に行動を共にすると駄々をこねたが、ラインハルトとケンジに説得されて、何とか冒険者ギルドに戻って行った。
クエストが終わったら、出来るだけ早くギルドに報告するのが、冒険者の義務なのである。
ケンジも、俺に着いて行くとか言いそうだが、ケンジは俺と同じく孤児院出身。
ブルース兄貴の怖さを知っている。
ブルース兄貴は意外と真面目で、ホウレンソウに五月蝿いのだ。
まあ、孤児院出身者は、基本時間厳守。
飯の時間に遅れれば、飯も食えないし、消灯時間も決まってて、いつまでも起きてたら、シスターに拳骨を食らう。
そんな訳で、ケンジはアホだけど、意外と規則を守るのだ。
「やっと、邪魔者が帰っていきましたね」
「邪魔者では無いけどな。奴らがいなかったら、ゴキブリの死骸処理する奴いなかったし……」
「そうですね! 僕もご主人様の頭の中を覗いて、やっとゴキのキモさを理解しましたから!」
「シロさん……あんまり勝手に、俺の頭の中、覗かないでくれるかな……」
「無理ですね! ご主人様の事を知る事こそ、僕のライフワークですから!」
「ライフワークって……そんな事を、人生の仕事にしなくてもいいんじゃない?」
「好きな人の事を知りたいと思うのは、普通の事だと思います!」
俺に何を言われても、シロは全く悪びれない。
「そんなこと言ってたら、世間の人に重い女だと思われてしまうぞ?」
「ご主人様は、そんな重い女も好きだったりするんですよね!」
確かに、俺はストーカー女も有りだと思ってる。
とは言っても、美人さん限定だけど。
まあ、ストーカーは、ケンジで慣れてるしね。
それに、ハーレム勇者を目指す俺としては、俺の魅力で女をメロメロにする予定なので、必然的に俺のハーレムに加わる女は、全員、俺のストーカーになってしまうのだ!
「フン! よく知ってるな!」
「何でもは知らないですけど、知ってる事だけは知ってますよ」
どうやら、シロは、完全に委員長の決めゼリフをマスターしたようであった。
そんな止め処も無い話をしつつ、俺達は下層の攻略を進めていく。
「結構余裕ですね」
「まあな。俺達、火山スライムキングを倒しまくったからな。
普通、俺達みたいなレベル上げする魔物なんか居ないしな!」
「ドラ〇エ様々ですね」
「まあ、そうだな。スライムでレベルをカンストさせるのはドラ〇エの基本だからな!」
なんか、シロに勝手に頭を覗かれても、良い事もある。
前世の話が、普通に通じる所だ。
まさか、異世界で地球の話を出来るようになるとは思わなかった。
まあ、俺の記憶にある事、限定だけど……。
そして、ちょうど第35階層に下る階段を見つけた所で、ずっと、オリ姫の頭の上で惰眠を貪っていたミーナが、一言呟いた。
「お腹空いたニャ~」
ミーナは、尊敬するアナスタシアが居た時までは、セッセッとマッピングしたりと役に立っていたが、アナスタシアが居なくなった途端、元のグータラ猫に戻ってしまったのだ。
「ご主人様、ミーナさんが、なんか言ってますよ!」
「だな」
「ここで野営しますか?」
「だな」
シロは、俺に確認を取ると、セッセッと野営の準備を始める。
ホント楽チン。シロ、様々である。
まるで、王子様になったみたい。
前の世界で、『星〇王子ニューヨークに行く』という映画を見た事があったが、俺の理想は、その王子様。
目覚ましは時計はオーケストラで、お風呂もお手伝いさんが体を洗ってくれ、チ〇コまで手洗いしてくれるのだ。
確か、お尻拭き係や、歯磨き係とかもいたような。
あんな王子様に、俺はなりたい!
「なるほど、なるほど。ご主人様は、星の王子様がご所望なのですね!」
シロは、夕飯の準備をしながらも、俺の考えを勝手に読んでいたようである。
「だけと、ご主人様。アジトのログハウスに、お風呂ってありませんよね?
ご主人様は、お風呂大好きの元日本人なのに、何でですか?」
確かに、俺は元日本人で、風呂好きである。
本来なら、異世界で家を建てたら、凝った風呂を作るのが、異世界モノの鉄板であろう。
しかし、俺は骨だった。
お風呂なんかに入ったら、良いダシが出てしまう。
そして、良いダシなんか出てしまったら、ダシ文化の元日本人として、自分の骨で取れたダシを使って、思わず人骨ラーメンとか作っちゃうだろ!
そう、そんな恐ろしい事は、俺には出来なかったのだ。
だから、俺は、お風呂には決して入らず、たまにシロに骨を磨いて貰っていたのだ。
「なるほど、ご主人様にそんな葛藤があったとは、知りませんでした」
またシロが、俺の頭の中を読み取った。
しかし、俺の深層心理までは、読み取れなかったようである。
「何でもは知らないですけど、知ってる事は知ってますよ」
すかさず、俺の心を読みとって、アノ台詞。
ウン。俺も分かった。
どうやらシロは、委員長の名ゼリフが、かなり気に入ってるという事を。
ーーー
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