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94. 賢者

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『鷹の爪』の面々が、難なくミスリルスライムを倒せるようになったので、俺達は第29階層に移動し、今度は、火山スライムにチャレンジさせている。

 火山スライムは攻撃的なので、ヘイトを稼がなくても逃げないが、その攻撃威力はミスリルスライムの比ではない。

 結局、ラインハルトにヘイトを稼がせて、火山スライムの攻撃をラインハルトに集中させる、いつもの作戦だ。

「第5階位水属性魔法、アイスシールド!」

 アナスタシアが、『鷹の爪』のメンバーに、防御魔法アイスシールドを掛けた。

 これで、火山スライムから受けるダメージを軽減できる。

 まあ、軽減できると言っても、火傷は負ってしまうんだけど、熱で身体が溶けてしまうよりマシだろう。

 そして、アイスシールドを掛けた後、続けてアナスタシアが、ドラ〇エでお馴染みの死の魔法ザ〇を、火山スライムに放つ。

 すると、今度はザ〇が効いたのか、口からマグマを吐いていた火山スライムが、呆気なく死んでしまった。

 メッチャ羨ましい。

 俺も今度、第5階位闇属性魔法を覚えたら早速使おう。
 パーフェクトリッチーの時、1度、第5階位闇属性魔法を覚えたが、その時は、ザ〇の存在を忘れていたのだ。

 まあ、ザ〇を使わなくても、火山スライムより格上の火山スライムキングを、シロが普通に倒していたから、使う必要が無かったのだけど。

 そんな感じで、難なく火山スライムを倒せたので、続けて火山スライムキングに挑ませる事にする。

 まあ、アナスタシアのアイスシールド魔法があれば、死ぬ事はないだろう。
 ミーナにも、この修行が終わったら、アムルー城塞都市で仕入れておいたマタタビをやると言っておいたので、ケンジにもヒールを掛けてくれる筈だ。

 そんな感じで、俺とシロとオリ姫は、シロが入れてくれたお茶と、煎餅を食べながら、『鷹の爪』を見守るのであった。

 ーーー

「アッ! やったわ! 私、遂にLv.100に到達した!」

 そうこう、おやつを食べて眠くなってた所に、アナスタシアの声が響く。

「ホントかよ! やったな!」

「ウム。良かった」

 ラインハルトとケンジも喜んでいる。

 まあ、一般職の魔法使いが、火山スライムキングを30匹も倒したら、それはLv.100にも到達するだろう。

 シーフだったミーナだって、スーパーキャットに進化したんだし。

 俺は、取り敢えず、鑑定で、アナスタシアのステータスを見てみる事にした。

 種族: 人族 lv.100
 職業: 賢者
 称号: 魔道を極めし者、セドリックの愛人
 スキル: 鑑定
 魔法: 第2階位光属性魔法。第6階位水属性魔法。第6階位闇属性魔法。
 力 650
 運 120
 HP 1200
 MP 2800

 オッ! 職業が賢者に変わってる。
 それに、鑑定も覚えたのか。
 ん?! それに光属性魔法まで。
 というか、職業が変わったのに、Lv.1に戻らないのか?
 まあ、進化じゃなくて、職業が変わっただけなので、レベルまでは下がらないという事か。
 それから、称号のセドリックの愛人は、スルーしておくのが無難だな。

「アナスタシア。職業が賢者に変わってるぞ! それから鑑定スキルも覚えてるみたいだぞ!」

「賢者になるのは、分かってたけど。鑑定スキルまで!」

 アナスタシアは、興奮しながら、自分のステータスを、ゲットしたばかりの鑑定スキルで確認してるようだ。

「アッ! 光属性魔法も覚えてる!力とHPも大幅に上がってるわ! 称号も魔道を極めし者と……」

 アナスタシアの言葉が、止まる。

「セド君、私のステータス見たよね」

「ああ……」

 俺は気まずく答える。

「私は、この称号通り、セド君の愛人だと思ってるから、セド君は、今まで通り好きな娘に手を出していいからね!」

 俺の初恋のお姉さんだった少女は、都合の良い女でもあったようだ。

 ハーレム勇者を目指している俺は、元々、そのつもりだったから今更だけど……ここは、アナスタシアに乗っておくのが、ダンディーなバンパイア紳士というものだ。

「本当に、それでいいのか?」

 俺は、思ってもない事を口にする。

「ええ。私に、セド君の覇道を邪魔する事は出来ないわ!」

 アナスタシアは、感情を抑えた作り笑いで答える。

「すまない。お前には迷惑をかける……」

「私の押し掛けだから。気にしないで」

「本当にすまない……」

 決まった!

 俺は、哀愁漂うダンディーでニヒルな、バンパイア紳士を演じられた。

 骨だったスケルトン時代には、決して届く事がなかった格好良さである。

 俺も遂に、ここまでの男になったのだ。

 俺のハーレム勇者に向けての道程は、どうやら盤石のようである。


 ーーー

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