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93. パワーレベリング

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 俺は、何とか体裁を整え、第22階層の鉄スライムがいる坑道で、『鷹の爪』を鍛えている。

 まだ、『鷹の爪』が、下層で戦うには、レベルが低過ぎるからだ。

 とは言っても、『鷹の爪』は強い。

 流れるような連携で、鉄スライムを倒していたりする。

「オラ! こっちだ!」

 まず、ラインハルトが、鉄スライムを挑発して、ヘイトを稼ぐ。

 これで、もう、鉄スライムに逃げるという選択肢はなくなる。

 そこへ、アナスタシアが、第5階位闇属性魔法ザ〇を放つ。

 ザ〇は、言わずど知れた、死の魔法である。
 それで、運良く鉄スライムが倒せれば問題ないのだが、ザ〇は、ランダムで効く魔法。鉄スライムに効かない場合があるのだ。

 しかし、『鷹の爪』の場合は、天才剣士ケンジが控えている。
 ケンジの剣は、全てが会心の一撃。

 すかさず、目にも留まらぬ一撃で、鉄スライムを倒してしまうのだ。

 という訳で、『鷹の爪』は、ザ〇と、会心の一撃という、メタル系スライムを倒すのに必須の技を持ってる。
 後、ラインハルトが、毒針とか持ってたら、メタル系スライム必須技をコンプリートしてしまう所だった。

 そんな訳で、『鷹の爪』は、鉄スライムを苦にしていない。

「じゃあそろそろ、ミスリルスライムにチャレンジするか!」

「オシ!」

 ラインハルトが、待ってましたとばかりに、両の拳をぶつける。

「そうね。もうそろそろ、鉄スライムじゃ、レベルが上がらなくなってきたものね!」

 アナスタシアも、賛成のようだ。
 ラインハルトやケンジは、鉄スライムを倒し続けて、レベルが結構上がったように見えたが、アナスタシアは1つしか上がってなかった。
 アナスタシア的に、もう、鉄スライムでは満足できないのであろう。

「流石、セド兄!」

 何故ここで、流石なのか分からないが、アホなケンジはスルーして、ミスリルスライムの狩場に向かった。

「言っとくが、ミスリルスライムは、鉄スライムの比でないほど硬く、速いからな!」

 俺は、ミスリルスライムの狩場に着くと、一応、ラインハルト達に忠告しておく。

「フン! 誰にものを言ってるんだ?
 俺達は、アムルー冒険者ギルド、最強パーティー『鷹の爪』だぜ!」

 ラインハルトは、そう言うと、早速、ミスリルスライムに向けてヘイトを稼ぐ。

「オイ! そこのツルピカ野郎! お前、髪の毛はどうしたんだ?」

 ラインハルトが、意味の分からない事を言いだした。
 というか、スライムには元々、髪の毛など無いだろ?
 ラインハルトの奴、今の悪口でミスリルスライムからヘイトを稼げると、本気で思っているのか?

「キュイーー!」

 と、思ったが、しっかりと、ミスリルスライムからヘイトが稼げたようだ。

 ミスリルスライムは、怒り心頭で、ラインハルトに体当たりしてくる。
 よっぽど、ミスリルスライムは、髪の毛が無い事を気にしていたみたいだ。

 そこへ、アナスタシアが、第5階位闇属性魔法ザ〇を放つ。

 しかし、アナスタシアの死の魔法はミスリルスライムに効かず、
 ヘイトを稼いでいたラインハルトは、そのままミスリルスライムに、盾ごと吹っ飛ばされてしまった。

「ケンジ! お願い!」

 それを見ていたアナスタシアが、すぐにケンジに指示を出す。

「承知!」

 アナスタシアにお願いされたケンジが、ミスリルスライムの前に素早く飛び出し、攻撃を仕掛ける。
 しかし、ケンジの攻撃は、ミスリルスライムに全く当たらない。
 ケンジの剣は、全て会心の一撃なのだが、当たらなければ意味がないのである。

「クッ! 速い!」

 シュン! シュン! シュン!

 ミスリルスライムとケンジの激しい攻防が続く。
 ミスリルスライムは、ケンジの素早い攻撃を、その俊敏さで全て避け続けている。

 これは、もう、時間の問題だ。
 ミスリルスライムは、全く本気を出していない。

 バキッ!

 と、思っていたら、突然、ミスリルスライムから触手が飛び出し、ケンジの鳩尾《みぞおち》に強烈なアッパーカットを食らわせた。

「グフッ!」

 ケンジは、前のめりに屈し、口から血反吐を吐く。

「ここまでだな」

 ミスリルスライムの一撃は強力だ。
 S級冒険者でも、規格外のケンジだからギリギリ死なずに済んだが、普通のA級冒険者なら即死レベルの攻撃だった。

「オイ! シロ!」

「了解です!」

 俺の言葉に、シロが速やかに動き出し、慣れた手つきで、すぐさまミスリルスライムを蜘蛛の巣で拘束した。

「ミーナ! ケンジに回復魔法を!」

「ヤダニャー! ロリコンケンジなんかに近づいたら、妊娠するのニャー!」

 どんだけ、ケンジは嫌われてるんだ?
 流石のロリコンケンジでも、猫になったミーナには手を出さないと思うんだけど……。
 まあ、いつもの行動が行動だから、俺もしょうが無いと思うけど。

 俺は仕方が無いので、ケンジにヒールを掛けてやる。

「アッ! 身体が痛くなくなった! 流石、セド兄!」

 ウン。確かに、ケンジに感謝されても全く嬉しくない。ミーナの気持ちも少しだけ分かった。

 ヒールを掛けるのがケンジじゃなくて、可愛い女の子だったら、絶対に惚れられているシュチュエーションの筈なのに……。

 俺は、これからは女の子だけにヒールを掛けると、心に誓った。

 そんな感じで、もう俺は、金輪際ケンジにヒールを掛けたくないので、
 シロにミスリルスライムを蜘蛛の巣で捕らえてもらって、トドメだけを『鷹の爪』に刺させる方式に変えた。

 とっとと第22階層と第29階層で、パワーレベリングをしてもらって、ゴキを倒して欲しいしね。


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 ここまで読んで下さりありがとうございます。
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