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71. 黒光り
しおりを挟む俺達は、現在、第31階層に来ている。
遂に、アムルーダンジョンの攻略に本腰をいれたのだ。
魔王が、何階層を根城にしてるか気になるし、いつまでも受け身の戦いをする訳にはいかないのだ。
それにどうやら、シロはアラクネ以上の存在に進化しなそうなのも理由である。
イキナリLv.1に戻って、弱くなったら怖いし。
オリ姫の場合は、進化してもステータス自体が振り切っているせいなのか、数値が全く変わらないしね。
そんな訳で、俺達は下層に向けて攻略しているという訳だ。
「ニャ~」
ミーナが、俺の頭の上で欠伸をしている。
今回は長い遠征になりそうだから、ミーナも連れてきているのだ。
次いでに、ミーナのパワーレベリングもしておきたかったしね。
そんなミーナは、最初、シロの頭の上で寝ていたのだが、途中でシロが戦う事に気づいて、俺の頭の上に移動してきた。
相当、シロの頭の上は寝づらかったのだろう。
ミーナは、ダラける事において決して手を抜かないのである。
そんな訳で、俺は、シロとオリ姫の戦いを見ながら、のんびり後に続いている。
ん? 俺もダラけてるだって?
そんな訳ある筈ないだろ!
俺は、後衛として、ちゃんとシロとオリ姫の支援をしてるし。
ただ、支援する事が、今まで無かっただけだし。
だって、シロとオリ姫、強過ぎるんだもん。
そんな感じで俺達は、第31階層をマッピングしながら進んでいるのだ。
「グゥ~」
暫く探索してると、ミーナの腹の虫が聞こえてきた。
勿論、紳士である俺は、スマートに事を進める。
「今日は、疲れたし、これくらいで止めとくか!」
「ご主人様は、何もしてないのに疲れるんですか?」
シロが痛い所をついてくる。
「ミーナタンが、寝疲れたんだよ!」
「何ですか? それ?」
「お前、知らないのか? 同じ体勢でディスクワークし過ぎると、肩が凝るし、下手したらエコノミー症候群になってしまうんだぞ!」
「ディスクワーク? エコノミー症候群?
また、僕が知らない知識をひけらかして、頭が良いフリをする!」
「何だと! お前! ご主人様に向かって!」
「自分でも言ってたじゃないですか! 今は、脳ミソないからアホになってるって!」
「確かにアホになってる気はするが、それを下僕が言ったら駄目だろ!」
俺は少し悲しくなってきて、瞳から涙が溢れてくる。
「だから、涙は出てきませからね! 泣くフリしても無駄ですよ!」
「泣くフリじゃなくて、泣きたくても涙が出ないんだよ!」
本当に悲しい時に涙がでない事が、こんなに辛い事だなんて……。
もう、死にたい……。
というか、見た目 死んでるし、これを口に出して言ってしまうと、また、シロにディスられてしまう。
俺は、とてもとても悲しい気持ちになった。
「ご主人様、今日の夕食は何にしますか?」
「勿論、肉ーー!!」
実際、肉を食べてはいないのだが、『肉』という言葉を発しただけで、俺は肉に心を奪われ、一瞬にして悲しい気持ちが吹き飛んでしまうのだった。
まあ、そんな感じで、夕食が肉に決まったので、野営係のシロが、チャッチャッと野営の準備を進める。
いつもの遠征では、俺が寝なくても問題無い為、不眠不休で戦い続けるのだが、
今回はミーナも連れてきてるので、シッカリ睡眠を取るのだ。
シロは、魔法の鞄からシロお手製のテントを取り出す。
このテントは、この遠征の為にわざわざシロが製作したテントで、防水、防火、魔法耐性が付与されており、尚且つ、ミスリル並に丈夫であるらしい。
多分、このテントを売り出せば、1000万ゴルは下らないと思う。
なにせ、シロの糸で編んでるせいか、魔物よけの効能まで付いているのだ。
俺の見立てだと、第20階層ぐらいまでなら、見張り無しで野営できてしまうだろう。
そんなこんなで、野営の準備が終わると、料理係でもあるシロが、ミスリル製のデッカイ鉄板を取り出し、次々に色んな種類の肉を焼いてくれる。
「ハイ! ご主人様、牙狼族の肉が焼けましたよ!」
「ウッヒョーー! 肉肉ぅーー!!」
俺は再び、一瞬にして、肉に理性を持っていかれる。
「ちゃんと、ご主人様が大好きなレアで焼いてますからね!」
俺は我慢出来ずに、鉄板の上に焼かれているレア肉を素手で掴み、ペロリと食べる。
「肉ウメェェェーー!」
こんな時、俺は、体に肉が付いていない事を嬉しく感じるのだ。
なにせ、肉が無いから火傷しようもないし。
「ご主人様は、肉さえ食べさせとけば、いつでも機嫌がいいですよね!」
何気に、シロにディスられてる気がするが、今の俺には肉の事しか考えられない。
「肉ウマウマーー!!」
「ほれほれ、ご主人様、レア肉ですよぉーー!」
俺は完全に、シロに餌付けされてる。
怒りたいのだが、俺は、完全に肉に心を支配されてしまっているので無理な話だ。
「ウッヒョーー! レア肉ーー!」
俺達は、こんな感じでアムルーダンジョンの攻略を続け、遂に、迷宮ステージの第33階層に到達した。
第33階層は、薄暗くカビ臭い、石造りの迷路のようなステージだ。
石造りの廊下は、静寂に包まれ不気味な雰囲気を醸し出している。
「ご主人様。魔物は疎か、人っ子一人居ませんよ!」
「そうだな! このステージは、安全安心セーフティーステージかもしれないな!」
そんな事を言ってた、5分前の俺を殴り飛ばしたい。
「糞っ! 斬っても斬っても湧いて出る!」
「ご主人様! 無理です! このままだと全滅してしまいます!」
そう、セーフティーステージと思われた第33階層には、シャカシャカ素早く動き回る、黒光りするアイツらが居たのだ。
ーーー
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旧タイトル「父に殺されタイムリープしたので『お父様は悪くないの!お父様は愛する人と一緒になりたくてお母様の食事に毒をもっただけなの!』と叫んでみた」
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