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第2話
057. 剣と魔法ってこんな感じなんだ6
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店内はピカピカと光り輝いていた。
それは新品ばかりが置いてある、とか輝かんばかりに美しい、というだけではなく、本当に照明の数が多いのだ。
なんなら目が痛いと言ってもいいくらいに。
「ピッカピカだねー」
「まぶしいくらいですね」
それもそのはず、ラギの背ほどもあるガラス張りのショーケースには宝石の様な石のついた杖やらアクセサリー、金や銀の装飾が施された魔術書の様なもの、はたまたいかにも魔法使いが好みそうなドレスや帽子、ホウキまでがきっちりかっちりと収められ、先ほども言ったように過剰な光源で照らされているのだった。
「うわぁ。
本当に魔法のお店だ。
こんなのいくらするんだろう……」
そういってガラスのケース越しに占いに使うような水晶玉に映る逆さまになった自分の顔に問いかけていた。
「お目が高い!
そちらは当店おすすめの逸品でして――」
奥から現れた男性が、頼んでもいないのに商品の紹介を始めた。
男性は細身でシャツとベストと蝶ネクタイといったさっぱりとした風体にもかかわらず、撫でつけたような七三分け、ちょび髭、ねっとりと神経質そうなメガネ。そしてそれを体現する声の質感の持ち主だった。
ボクたちが呆気にとられて説明を受ける間、ねっとりとした目つきで、つま先から頭までつぶさにボクたち三人を値踏みしていた。
「と、いう訳で……
ワタクシが店長のラザワーヤと申します。
こちらの御品物ですが、お気に召されましたか?」
最後に形だけの営業スマイルを付け加えて話を終えた。
ここまで約5分。
「えっと、まだ、よくわからなくて……」
正直なところ、説明は頭に入ってこなかった。
専門的な用語と、どことなくテレビで見た芸人さんの使う関西弁に近いイントネーションで、この店長と名乗ったラザワーヤの言葉は右の耳から左の耳に抜けていった。
ボクが返答に困っていると、ラザワーヤの表情はへばりついたような笑顔から途端に顔の中央にしわが寄る様に不機嫌な顔になった。
「シロートか。
これだからペーペーは困るんだよねぇ。
こんなに懇切丁寧にご説明差し上げても、理解できないだなんて。
せめて最低限の知識と教養を身に着けてから、当店にお越しいただきたいものですねぇ。
なんといっても、当店はこの王国に展開するマジックストア『アナタの友人』のソルトイル初進出店なんですから!?
まったく、ワタクシ自ら接客をしてるって言うのに……」
頼んでもいない難解な説明を勝手にされた挙句に、一方的なこの物言い。
ボクの中での魔法使いに対するイメージは、もっと神秘的で穏やかなものだったがどうやらこの店主には当てはまらないらしい。
カラン、とドアの開く音がするとラザワーヤのメガネがきらりと光った。
「あーら、いらっしゃいませ~。
あぁ、どうもどうも。
ようこそいらっしゃいました。
ささ、どうぞこちらへ~」
まるでコインの表と裏のように表情を使い分けて、新規来店の客に営業スマイルを向けた細身の男は、ボクたちを通路の端にグイと押しやった。
「店の品を勝手に触って手垢をつけないようにな」
まるで小銭だと思って拾い上げたものがちぎれた服のボタンだったのでそのまま投げるかのように言い捨てると、金づるを見る目で手もみをしながら違う客の方へと向かっていった。
「なんだい、あの言い方」
「あらあら。
イツキさんもそう思いましたか?」
ボクもラギも思いは同じだったようだ。
血色の良いまるほっぺも、青い瞳も、すべてがそのままガラスのショーケースに映っていたが、そこに映るラギの顔は、悲しそうに見えた。
「ん~」
マグはマグでラザワーヤの言ったことなど気にも留めずにガラスにべったりと両の手を付けて店の陳列物を見ている。
「このお店って、なんなんだろうね。
国に展開するって言ってたから人気のある店んだろうけど、店長さんはあんなふうだし、おいてる品物は高級品ばかりだし、ボクたちが入っていい店じゃなかったのかもしれないね」
それは新品ばかりが置いてある、とか輝かんばかりに美しい、というだけではなく、本当に照明の数が多いのだ。
なんなら目が痛いと言ってもいいくらいに。
「ピッカピカだねー」
「まぶしいくらいですね」
それもそのはず、ラギの背ほどもあるガラス張りのショーケースには宝石の様な石のついた杖やらアクセサリー、金や銀の装飾が施された魔術書の様なもの、はたまたいかにも魔法使いが好みそうなドレスや帽子、ホウキまでがきっちりかっちりと収められ、先ほども言ったように過剰な光源で照らされているのだった。
「うわぁ。
本当に魔法のお店だ。
こんなのいくらするんだろう……」
そういってガラスのケース越しに占いに使うような水晶玉に映る逆さまになった自分の顔に問いかけていた。
「お目が高い!
そちらは当店おすすめの逸品でして――」
奥から現れた男性が、頼んでもいないのに商品の紹介を始めた。
男性は細身でシャツとベストと蝶ネクタイといったさっぱりとした風体にもかかわらず、撫でつけたような七三分け、ちょび髭、ねっとりと神経質そうなメガネ。そしてそれを体現する声の質感の持ち主だった。
ボクたちが呆気にとられて説明を受ける間、ねっとりとした目つきで、つま先から頭までつぶさにボクたち三人を値踏みしていた。
「と、いう訳で……
ワタクシが店長のラザワーヤと申します。
こちらの御品物ですが、お気に召されましたか?」
最後に形だけの営業スマイルを付け加えて話を終えた。
ここまで約5分。
「えっと、まだ、よくわからなくて……」
正直なところ、説明は頭に入ってこなかった。
専門的な用語と、どことなくテレビで見た芸人さんの使う関西弁に近いイントネーションで、この店長と名乗ったラザワーヤの言葉は右の耳から左の耳に抜けていった。
ボクが返答に困っていると、ラザワーヤの表情はへばりついたような笑顔から途端に顔の中央にしわが寄る様に不機嫌な顔になった。
「シロートか。
これだからペーペーは困るんだよねぇ。
こんなに懇切丁寧にご説明差し上げても、理解できないだなんて。
せめて最低限の知識と教養を身に着けてから、当店にお越しいただきたいものですねぇ。
なんといっても、当店はこの王国に展開するマジックストア『アナタの友人』のソルトイル初進出店なんですから!?
まったく、ワタクシ自ら接客をしてるって言うのに……」
頼んでもいない難解な説明を勝手にされた挙句に、一方的なこの物言い。
ボクの中での魔法使いに対するイメージは、もっと神秘的で穏やかなものだったがどうやらこの店主には当てはまらないらしい。
カラン、とドアの開く音がするとラザワーヤのメガネがきらりと光った。
「あーら、いらっしゃいませ~。
あぁ、どうもどうも。
ようこそいらっしゃいました。
ささ、どうぞこちらへ~」
まるでコインの表と裏のように表情を使い分けて、新規来店の客に営業スマイルを向けた細身の男は、ボクたちを通路の端にグイと押しやった。
「店の品を勝手に触って手垢をつけないようにな」
まるで小銭だと思って拾い上げたものがちぎれた服のボタンだったのでそのまま投げるかのように言い捨てると、金づるを見る目で手もみをしながら違う客の方へと向かっていった。
「なんだい、あの言い方」
「あらあら。
イツキさんもそう思いましたか?」
ボクもラギも思いは同じだったようだ。
血色の良いまるほっぺも、青い瞳も、すべてがそのままガラスのショーケースに映っていたが、そこに映るラギの顔は、悲しそうに見えた。
「ん~」
マグはマグでラザワーヤの言ったことなど気にも留めずにガラスにべったりと両の手を付けて店の陳列物を見ている。
「このお店って、なんなんだろうね。
国に展開するって言ってたから人気のある店んだろうけど、店長さんはあんなふうだし、おいてる品物は高級品ばかりだし、ボクたちが入っていい店じゃなかったのかもしれないね」
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