運命だけはいらない

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そんな俺の運命が変わる日。
今日、バース性の診断結果が渡される。

朝、家を出る時に珍しく奏と親父が揃って見送る。
いや、意識しすぎだって。

「心……結果がαでもβでも、もちろんΩでも、俺は……お前のこと変わらず愛してる」
分かってる。
奏はものすごく思い詰めた顔をしている。
奏の、自分がβだと思っていたら判定がΩで人生がひっくり返った話を小さい頃から何度も聞いた。
自分のあの日のことが重なって、辛いんだろう。

いつの間にか背を追い越していた奏を正面から抱きしめる。
「俺は大丈夫。バース性がどうあれ、奏が俺のこと愛してくれてるから」
腕の中で、奏がこくんと頷いた。

「はい、離れてー。親子なのに、恋人同士みたいな空気、やめてくれる?奏は俺のだから」
親父に引き剥がされた。
俺と奏の間に割り込むと、人気俳優らしからぬ不遜な態度で言い放つ。

「お前のバース性はどうでもいい。何であれ、飲み込んで前を向け。奏に不安を与えたら、分かってんな?あと、今日は海里と山中さんがバース性の祝いに来るらしいから、どこも寄らず帰れ」
「え!海里さんもタロさんも?」
「山中さん!」
すかさず奏に注意される。

海里さんとタロさん(山中さん)は、小さい時から頻繁に家に遊びに来ている二人だ。
海里さんはΩでタロさんはβだが、こっちが目のやり場にこまるくらいラブラブだ。
二人の元々の関係は、海里さんは有名な小説家でその編集担当がタロさんらしい。
タロさんは奏の編集担当でもある。
文が海里さん、イラストが奏の絵本は、俺がボロボロになるまで読んだ大好きな絵本だ。

奏も親父も親戚付き合いをあまりしないため、二人が俺にとって親戚みたいな感覚だ。
大好きな二人。

「やった!何をお祝いするのか分かんないけど、終わったらすぐ帰ってくるよ」
「海里が飲んで騒ぎたいだけだろ。……どこにもよるなよ?」
「はいはい」
前に学校帰りに声かけてきた女とヤって帰ったら、その女がΩだったみたいでフェロモンの匂いがすると親父にキレられた。
俺はまだソレが分からないから気を付けようがない。

不安そうな奏に笑顔で手を振り、高校へ向かう。

俺は正直、ウキウキしている。
どんな結果だろう。
Ωでもいい。
もし、Ωならガラッと人生が変わる。
それも面白いんじゃないか?

足取り軽く高校へ向かっていると、同じクラスの奴らに絡まれる。
「おい、シン。お前なんかぜってーαだろ」
「余裕だなー」
「αだったらΩの可愛い子とエッチしまくりかぁ……うらやましー」
いや、もうしてる。

「うるせぇよ。もしかしたら、βやΩかもしれねぇだろ?」
「まっさかー!」
「こんなデカイΩいねぇよー」
げらげら笑いながら校門を抜け、クツ箱の前に立つと、「おはよ」と声をかけられる。
見ると、こぼれんばかりの大きな二重の瞳にグロスをたっぷり塗った小振りな唇ではにかむ美少女が立っていた。
「あぁ、おはよ」
……誰だっけ?
とりあえず挨拶を返す。
美少女は嬉しそうに笑うと、小走りで教室へと戻っていった。

「おいおい、早速かよー」
「あれ、誰だっけ?」
「うぉい!俺らの学年一の美少女の紗世ちゃんだよ!あの美少女っぷりから、Ωじゃねぇかって言われてる」
ふぅん。
まぁ、興味はない。
「今日、お前がαで紗世ちゃんがΩって分かるんじゃないかってみんな噂してんだよ」
「相変わらず、無関心だなー」
「紗世ちゃん……処女だってよ?あんな可愛い子の処女なんて、お前っ!羨ましすぎるわっ」
いやいや、処女なんてめんどくせーだけだろ。
それに、何で俺がαであの子がΩならセックスするって決めつけてるんだ?

確かに、αもΩも数が少ない。
学年でそれぞれ一人か二人だろう。
だからといって、なぜαとΩがそれだけで運命の番のような扱いをされないといけないのか。

そもそも、運命の番ほど信用ならないものはない。
本能に勝手に決められるんだ。
そんなの、ごめんだ。

教室に入ると、男どものからかう声と女達のひそひそと噂する声がウザイ。
うんざりしていると、ようやく担任が入ってくる。

「えー、もう気になって授業もできないだろうから、バース性の結果を先に渡す。言ってもムダだが、個人情報だからなー」

ようやくだ。
俺の人生が変わるとしたら、今日しかない。
久しぶりに鼓動が早まった。
担任から渡された紙。
何かごちゃごちゃと書いてある最後に一行

バース性:α

……ははっ。
つまらなすぎて、笑えてくる。
なぁんだ。
何も、変わらない。
人生は、イージーモードだ。
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