上 下
107 / 146

慣れない交渉

しおりを挟む
『差し上げます、と言いたい所ですが、この変化はセリアン商会でこれからも代々受け継がれるであろう禁呪。それを記した書物はどうしても所持しておきたい。ここで解呪の法を読んで頂くので許して頂けますか?』
「仕方ないな……いいだろう。しかし、条件がある!」

まずは、強気だ!
商人相手に交渉……できるかな……?
交渉の基本は高値をふっかける!んだよな?
望みよりも高いものを要求して、却下されたら本当の望みを言うと受け入れられやすい……んだっけ?

俺の望みは俺が救国の騎士であることを秘密にして欲しいってことだ。
中央に関わるつもりはないし、俺は木こりになるんだから。
それよりも、高い要求……どうしよう。

『……何をお望みですか?』
「……本当はこんなこと言いたくないんだが……」
わー、まだ決まってないんだよー。
もうちょっと考える時間が欲しい!

『……ま、まさか、あの木を取り上げるおつもりですか!?』
ん?

『あの木は、あの木は、このセリアン商会にとって、なくてはならないものなのです!取り上げないで下さいっ!お願いします!』
んん?

『……もしかして、あの木を質にセリアン商会の利権をお望みですか?』
いや、言ってないし。
そんな気もないし。

『確かに、その権利がルカにはあるかもしれません。これは、僕の一存では何とも……両親に相談し、禁書の所持共々、一族で話し合いを……』
「待て!そんなことダメだ!!」
『え?』
俺、めちゃめちゃ悪者じゃないか!?
あの木は確かに俺が古代魔法で造ったんだろうし、それでセリアン商会が大きく発展したのかもしれないが、それは俺の力じゃない。
今のセリアン商会になり得たのはすべてセリアン商会の奴らの努力だ。
それをぶん盗るって、そんなこと俺には……。

『……ふふふ。やはり、先代の言っていた通り』
「へ?」
『救国の騎士ルカは尊愛すべき愚者』
……何だ、ソレ。
『先代はいつも言っていたそうです。ルカは見た目も美しかったが、中身には遠く及ばない、と。立場に傲らず、人のために行動し、自らが得るものを放棄してでも人民に尽くす愚か者』
ん?それ褒められてる??

『すみません。貴方がそんなことを望んでいないのを承知で、試すようなことをしました。ご希望を承ります。我々ができ得ることであれば』
うん。
慣れないことはよくない。
とりあえず、正直に言おう。
「あの、俺が救国の騎士のルカだってことは秘密にして欲しい。クリフトにも。できれば、兄さんだけの胸に留めておいて欲しい」
『そんなことですか!?』
そんなこと!?
『クリフトが言及していない時点で貴方がそれを隠匿していることは分かっていました。商売をする身として、秘密保持は基本です。そんなことは言われなくても当然だと』
そうなのかー。
悩んで損したー。

「じゃあ、あとは禁書読ませてくれたらいいよ」
『ふふ、本当に無欲ですね。クリフトが惹かれたはずだ。我々のように、常に損得を考えているような人間に貴方は眩しすぎる。……救国の騎士ルカ、貴方が希望する物は今後すべてセリアン商会が無償で提供します。なんなりと、お申し付け下さい』
こわっ。
後から何か言われそう……。
「と、とりあえず、すぐ禁書を読ませて貰えたら……」
『……分かりました。禁書は机の上に置いてありますよ』

小鳥の兄さんに言われてちょうど部屋の真ん中に置いてあった机を見てみると、古びた本が一冊置いてあった。
「全然隠してないじゃないか!」
『まさか、禁書をこんなに平然と置いてあるなんて思わないでしょう?』
た、確かに。

『どうぞ、お好きに読んで下さい』
「ありがとな!」

これで、テオドールを治してやれる!
しおりを挟む
感想 62

あなたにおすすめの小説

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います

たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか? そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。 ほのぼのまったり進行です。 他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

【完結】もふもふ獣人転生

  *  
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。 ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。 本編完結しました! おまけをちょこちょこ更新しています。 第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

【完結】乙女ゲーの悪役モブに転生しました〜処刑は嫌なので真面目に生きてたら何故か公爵令息様に溺愛されてます〜

百日紅
BL
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でしたーー。 最後は処刑される運命の悪役モブ“サミール”に転生した主人公。 死亡ルートを回避するため学園の隅で日陰者ライフを送っていたのに、何故か攻略キャラの一人“ギルバート”に好意を寄せられる。 ※毎日18:30投稿予定

処理中です...