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オルレラ侯爵~バーン視点~
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何度か転移を繰り返し、ようやく侯爵家の屋敷にたどり着く。
私の姿を確認した屋敷の使用人達が慌てて家令を呼びに行く様を横目で見ながら、息を整える。
繰り返しの転移で、かなり魔力を消耗した。
「バーン様!何事ですか!」
家令のクレインが慌てて出迎える。
「父上はご在宅か?」
「いらっしゃいますが……」
「火急だ。取り次いでくれ」
「分かりました。執務室へ」
私の様相を見て、ただ事ではないと判断したクレインは詳細は尋ねない。
そのまま共に足早に執務室へ向かう。
執務室の扉を数回ノックし、「バーン様がお帰りです」と声をかけると扉を開く。
私の入室後は自らは退室し、そっと扉を閉めた。
何も言わなくても、これから内密の話をするであろうと、人払いをするだろう。
父上の側でずっと支えているクレインを私も信頼している。
「父上、突然で申し訳ありません」
「……何事だ?」
父上は執務室の椅子に座り、何かの書類に目を通している。
顔はこちらを向かない。
「教えて、頂きたいことがあります。白装束の男のことです」
書類を見るのを止め、こちらをちらりと見た。
しかし、すぐに書類に目を戻す。
「どうして、それを?」
「以前、書斎で少し目にしました。その者が先ほど、私の学友を拉致しました。それを追うために、もう一人学友も共に転移を。……私は何もできませんでした。二人を救出したい!父上!教えて下さい!」
必死の訴えにも、その反応は芳しくない。
「そいつらを助けて侯爵家になにか利があるのか?」
「……いえ。共に転移したのはロレーヌ辺境伯の子息ですが、拉致されたのは……平民です」
「ほぅ」
なぜか父上は興味を持ち、手を止めた。
「お前が平民を学友と?」
「寄宿生に身分は関係ありません」
「綺麗事だな。……では、お前が差し出せ」
「差し出す?」
「この侯爵から情報を得たいのだろう?ならば、お前がその対価を差し出せ」
対価……。
「なんなりと」
何でもする。
父上はふんっと笑うと唇の端を少し上げる。
「では、フィーナ嬢と婚姻を結べ」
……!
「お前は何度勧めても侯爵家の発展は自分の実力で、などと青臭いことを言って断っていたからな。侯爵家のために、一番条件の良い相手だ」
貴族社会において、婚姻関係によって力を強めることはよくあることだ。
しかし……。
母上の悲痛な顔がよぎる。
拳を握りしめ、強く目蓋を閉じる。
「お受け、します」
お許し下さい、母上。
どうしても……どうしてもルカを助けたいのです……。
「ふっ、ははははは。お前が!好きでもない女と婚姻すると?あれほどカトレアのことで私を責め立ててきたお前が!」
「父上!一刻を争うのです!あの白装束の男についての情報を!」
私の翻意を笑うならいくらでも笑えばいい。
執務室の机を両手で強く叩き、詰め寄る。
「……いいだろう。お前の覚悟は分かった。……あの男は聖教の使役している者だ。あの白装束は聖教に全てを捧げた者の証」
「聖教!?」
あのような者を使役しているのか!
最近力をつけてきているとクリフトと話をしたばかりだった。
なぜ、聖教の者がルカを……。
「まぁ、誰かがその平民を拐うように依頼していたんだろうな。金であいつらはどんなことでもやる。しかし、身元の知れた権力のある者の依頼しか受けない。聖教の支部については……クレイン!」
「はい」
父上の呼び掛けにすぐさま家令のクレインが扉を開ける。
「バーン様、地図に印をつけています。お持ち下さい」
「すまない。父上、失礼します」
即座に転移する。
「クレイン、バーンが固執する平民について探れ」
「御意」
私の姿を確認した屋敷の使用人達が慌てて家令を呼びに行く様を横目で見ながら、息を整える。
繰り返しの転移で、かなり魔力を消耗した。
「バーン様!何事ですか!」
家令のクレインが慌てて出迎える。
「父上はご在宅か?」
「いらっしゃいますが……」
「火急だ。取り次いでくれ」
「分かりました。執務室へ」
私の様相を見て、ただ事ではないと判断したクレインは詳細は尋ねない。
そのまま共に足早に執務室へ向かう。
執務室の扉を数回ノックし、「バーン様がお帰りです」と声をかけると扉を開く。
私の入室後は自らは退室し、そっと扉を閉めた。
何も言わなくても、これから内密の話をするであろうと、人払いをするだろう。
父上の側でずっと支えているクレインを私も信頼している。
「父上、突然で申し訳ありません」
「……何事だ?」
父上は執務室の椅子に座り、何かの書類に目を通している。
顔はこちらを向かない。
「教えて、頂きたいことがあります。白装束の男のことです」
書類を見るのを止め、こちらをちらりと見た。
しかし、すぐに書類に目を戻す。
「どうして、それを?」
「以前、書斎で少し目にしました。その者が先ほど、私の学友を拉致しました。それを追うために、もう一人学友も共に転移を。……私は何もできませんでした。二人を救出したい!父上!教えて下さい!」
必死の訴えにも、その反応は芳しくない。
「そいつらを助けて侯爵家になにか利があるのか?」
「……いえ。共に転移したのはロレーヌ辺境伯の子息ですが、拉致されたのは……平民です」
「ほぅ」
なぜか父上は興味を持ち、手を止めた。
「お前が平民を学友と?」
「寄宿生に身分は関係ありません」
「綺麗事だな。……では、お前が差し出せ」
「差し出す?」
「この侯爵から情報を得たいのだろう?ならば、お前がその対価を差し出せ」
対価……。
「なんなりと」
何でもする。
父上はふんっと笑うと唇の端を少し上げる。
「では、フィーナ嬢と婚姻を結べ」
……!
「お前は何度勧めても侯爵家の発展は自分の実力で、などと青臭いことを言って断っていたからな。侯爵家のために、一番条件の良い相手だ」
貴族社会において、婚姻関係によって力を強めることはよくあることだ。
しかし……。
母上の悲痛な顔がよぎる。
拳を握りしめ、強く目蓋を閉じる。
「お受け、します」
お許し下さい、母上。
どうしても……どうしてもルカを助けたいのです……。
「ふっ、ははははは。お前が!好きでもない女と婚姻すると?あれほどカトレアのことで私を責め立ててきたお前が!」
「父上!一刻を争うのです!あの白装束の男についての情報を!」
私の翻意を笑うならいくらでも笑えばいい。
執務室の机を両手で強く叩き、詰め寄る。
「……いいだろう。お前の覚悟は分かった。……あの男は聖教の使役している者だ。あの白装束は聖教に全てを捧げた者の証」
「聖教!?」
あのような者を使役しているのか!
最近力をつけてきているとクリフトと話をしたばかりだった。
なぜ、聖教の者がルカを……。
「まぁ、誰かがその平民を拐うように依頼していたんだろうな。金であいつらはどんなことでもやる。しかし、身元の知れた権力のある者の依頼しか受けない。聖教の支部については……クレイン!」
「はい」
父上の呼び掛けにすぐさま家令のクレインが扉を開ける。
「バーン様、地図に印をつけています。お持ち下さい」
「すまない。父上、失礼します」
即座に転移する。
「クレイン、バーンが固執する平民について探れ」
「御意」
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