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茫然自失~バーン視点~

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目の前で起こったことが信じられない。
ルカが、突然現れた全身を白い布で覆った者に背後から手刀で気絶させられた。
まるで荷物でも運ぶかのように担ぎ、転移の魔法を呟いた瞬間にテオドールがその者を掴み、三人が一瞬で消えた。

私は……それを呆然と見ていただけだ。
一歩も動けなかった。

「ルカ!テオ!」
クリフトの叫び声を放心した状態で聞く。
「バーン!」
クリフトに名を呼ばれ、はっと現実に帰ってきたような感覚になる。
「シュラ先生に報告してきます!」  
クリフトは足早にシュラ先生の執務室へ向かった。

テオドールは咄嗟に転移を察知し、危険ではあるがルカと共に相手と転移をした。
ルカは気絶させられていた。
最悪の場合、転移先でそのまま無抵抗に殺される可能性だってある。
たとえ自身が危険にさらされようと、ルカを守りたいという想いは……私も持ち合わせているつもりだったのに……!
瞬時の判断……テオドールと自分にはこんなにも差があった。

クリフトも魔法が使えない自分は上の立場の者に報告し助けを求めた方が救出できる確率は上がると判断し、行動している。
もしかしたら、あの時クリフトも動けたかもしれない。
テオと同じく転移したかったが、魔法も使えない自分はむしろ足手まといになると判断し、留まったのかもしれない。
誰かが詳細に報告する必要がある。
ルカを救出する確率は自分が残った方が上がるとの判断……そこまで、クリフトなら考えた上で行動できる。

私は……何をしている。
情けない!                

……いや、まだだ。
これから、自分ができる最善のことをする。
この失態を取り戻す。
二人を……助けるのだ!

あの、白装束の男……見覚えがある。
父上が書斎で会っていた男に間違いない。
異様な出立ちだったから覚えている。
秘密裏に何かを依頼していた。 
きっと、闇の部分なんだろうと見て見ぬふりをしていた。

まさか、父上がルカを……?      
私が毒を口にした一因がルカだと知って……いや、そんなことで父上が行動を起こすとは思えない。
寄宿生を拐うなど、シュラ先生を巻き込む大事件になると分からない父上ではない。
私が命を落としたというならまだしも、その程度のことで侯爵家の暗部を晒すはずがない。
しかし、父上ならあの白装束の男の詳細を知っているはず。

考えている時間が惜しい。
今にもテオドールが害され、ルカに危険が迫っているかもしれない。

「バーン、シュラ先生の指示で……」
「クリフト!私は一度オルレラに戻り情報を探る!お前はシュラ先生と共に二人を助ける道を!」

クリフトの返事を待たずに、オルレラへと転移した。
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