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懐かしさと後悔

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ちょっとドキドキしている。
フォルクスに会える。
もちろん、自分がルカだと明かすつもりはない。
シュルツは例外だ。
シュルツの時は突然で、心の準備が出来ていなかった。

今回は大丈夫だ。

フォルクスかぁ……今、どんな感じかなぁ……。
もう、壮年だよなぁ……。

フォルクスとは同世代だった。
だが、今の俺と三人みたいに切磋琢磨しあった……とは言い難い。
お互い認識していたし、フォルクスとはいろいろな話はしたが、どこか一線を引かれているような気がしていた。
それが何か寂しくて、俺はよくフォルクスの所に押しかけ、相談したり、頼ったりしていた。

あいつが俺を頼ったのは、一度だけだ。

フォルクスはとにかく優秀だった。
魔法も剣術もそつなくこなしていたが、なによりもその知識と情報量がすさまじく、一度見たり聞いたりした事柄はすべて覚えているような男だった。
そういえば、シュルツの時もあいつに助けてもらったな。

宰相か……さすが。
クリフトがフォルクスについて熱く語っていたが、善政をしいているようだった。
それが、とても嬉しい。
俺はフォルクスのことをやはり特別に思っていたんだな。
フォルクスは……最後にあんな姿を見せてしまったから……俺のことを恨んでいるかもしれない。

テオは父親が同行しているということで、シュルツと一緒にフォルクスを出迎えていた。
俺とバーンとクリフトは三人で自主勉強。
バーンとクリフトが聖教について議論している。
聖教は俺はよく知らないが、昔から政治との意味合いが強いとかなんとか。
正直、興味がない。
それに、難しい……。

なので、白熱している二人を置いて素振りでもしようかな、と外に出るとちょうどシュルツとテオ、あと二人の男性が庭園を歩いていた。
あのどちらかがテオの父さんとフォルクス……って、一目瞭然だ。

テオの隣にいるのが、テオの父さんだな。
髪色が淡い金色だし、顔立ちもどことなく似ている。

シュルツの隣にいるのがフォルクスだ。
暗めの栗色の髪で、短く切り揃えられているので魔法は使っていないんだろう。
背はシュルツと並ぶと同じくらいだが、シュルツが高いヒールのブーツを履いているため、実質はフォルクスの方が高い。
瞳は翡翠色で、高い鼻梁と共に涼やかだ。しかし、薄く目の下に隈が出来ている。
青年であったフォルクスは、その見目と博識さに加え、物腰も柔らかいため婦女子に人気だった。
しかし、今の壮年となったフォルクスは……なんと言うか色気があった。
絶対、嫁以外にも女いるだろ……。
くそ!俺だって、前はそこそこ人気あったけどな!

シュルツと並ぶと美女と美男でお似合いだ……まぁ、シュルツは男だしフォルクスもそのことは分かっているから発展しないんだろうけど。
二人はこちらには気づかず、並んで何かしら話ながら歩いているが、その姿が小さな少年と青年だったあの日と重なる……。
こんなに、時が流れてしまったんだな……。
少し感傷に浸っていると、テオが俺に気付き、軽く手を振る。
俺も笑顔で手を振った。
すると、他の三人も俺に気づく。

テオの父さんは一瞥してすぐに興味をなくし、シュルツも無表情で何も反応無し。
フォルクスはその翡翠色の瞳で俺をとらえると、何かシュルツに話している。
シュルツの返答を聞くと、なぜか俺の方へと歩いてきた。

「君が、水晶玉を割ったらしいな」

わーーー、フォルクスの声だ!
相変わらず、腹の底に響くような低い声音で、耳に心地よい。
そして、懐かしさが込み上げてくる。

「は、はい」
ちょっと、感動していて反応が遅れてしまった。

「なぜ、割れた?魔力量がそこまで多いのか?」
「たっ、たまたまです!」
「たまたま?」
フォルクスが訝しげに見る。
いや、もうたまたまくらいしか言うことがない。
そこは気にしないで忘れて欲しい。
「そんな言葉で流されるほど愚か者ではないが?」
険を含んだ言葉と声音。
表情も、目を細め、何か汚らわしいモノを見ているかのようだった。

「……まぁ、いい。後で、少し君のことは見させて貰う。大人しく、待っているがいい。……失礼」
三人の元へ戻っていくフォルクスをそのまま呆然と見送った。

えぇー!?
フォルクスって、自分よりも下の者に対してあんな嫌な態度取る奴じゃなかったんだが……。
会わなきゃ良かった……のかなぁ……。
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