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泣き虫

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魔力が……ない?

めっずらしいな。
魔力量の差はあるが、全くない奴もいるのか……。


ん?
なんで、クリフトは寄宿学校に来たんだ?

「クリフト、お前の夢は何だ?」

クリフトが息をのむ。

え、そんな難しいこと聞いたか?

「な、んで、そんなこと」

「魔力がないのに、寄宿学校に来るって夢でもないとしないだろー?」

魔力がないと、金がかかるんだ!
まぁ、俺みたいに無料を知らずに来たってパターンも……ありか?
もしかして、それを知られたくなかったのか?
俺も一緒だから、恥ずかしくないぞ!

「いや、言いたくないならいいんだ。でも、自分の胸に置いておくのもいいが、ココにはいろんな奴がいるんだから、言って楽になるのもいいんじゃないか?」

「楽、に……は、はは……」

クリフトが力なく、笑う。

どうしたんだろう?
もしかして、家が貧しくてお金が足りないんだろうか?
何か、思い詰めてそうだ。

とりあえず、俺のもう一枚の予備の服は売って、一日くらいならこの部屋代にはなるか?いや、ならないか。

この辺に、木はあったかな……?

考え込んでいると、ポタポタと音が聞こえた。
ん……?
な、泣いてる!!
クリフトが真顔で涙を流し続けていた。
メガネにもうっすら貯まっていて、目からもメガネからも涙が流れている。

「ど、どうした?クリフト」

俺は泣かれると弱い。どうしたらいいのか分からない。
オロオロしながら、幼子にするように背中をさする。

「どこか痛いとかか?それとも、俺が何か気に触ることを言ったのか?」

「ルカ……」

「ん?」

なるべく、優しく!
テオは何をしてるんだ?
助けて欲しい!

「宰相に……なりたいんだ」

クリフトは、弱々しく俺の服の袖を掴みながら、小さな声で言った。
宰相。
だから??

「そうか。宰相になりたいのか。クリフトなら、良い宰相になれるさ」

「そんな口だけのことっ」

おぉ!ちょっと元気になった。
どこか痛い訳じゃないのか。
泣いてる理由が分からないが、このまま泣き止んで欲しい!

「口だけで、言ってないぞ?心から思ってる。さっきまで読んでた本、国史だろ?俺がこの部屋に来るまでに、自分の荷物も片付けてるし、移動もあって疲れているだろうに、ベッドを使った形跡はない。そんな寸暇を惜しんで国史の本を読むような勤勉な奴が宰相になったら、ますます良い国になるさ」

俺は安心してもらえるように明るく笑った……内心は早く泣き止んで欲しくてビクビクしていたが。

……ひっ、余計に泣き出した!
なんでーー!!

「なれない!魔力もない平民が、宰相なんて、なれるわけないっ」

えー、なんで自分が宰相になりたいって言い出したのに、次はなれないって泣き出すんだ!?

ちょっと腹立ってきた。

「あのなぁ!世の中のほとんどが平民なんだぞ?平民の暮らしを守るために中央では必死に政治をしてるんだ!なのに、なぜその平民が宰相になれないんだ?一番気持ちが分かって、一番最適だろ!」

「最適……」

あ、泣き止んだ。
押せ!押せ!

「中央には魔力多いやつなんかいくらでもいるんだ。術師だって、騎士だって。なら、魔力はそいつらに任せておいて、別のもので勝負しろ!宰相に魔力なんていらないだろ?」

「ルカ……ルカ……」

俺にすがり付いて泣き出した。
も、もうお手上げです……。
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