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過保護な陽キャ
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「セックス、してみる」
そう、宣言したのはいいものの。
どうすれば??
缶ビールを飲み干し、二缶目にいこうとしてる元ちゃんはめんどくさそうに僕を見下ろす。
「なら、とっとと先輩の所に帰って準備でもしろ。こっちは疲れてんだからな。あ、片付けは最後までやっとけよ」
「ちょ、元ちゃん!」
元ちゃんは後ろ手に振りながら、缶ビールを持って寝室へと消えた。
うぅ。
これ以上のアドバイス、なし!
どうしよう……。
デートの最後に「セックス」それしか決まってない。
問題のデートは!?
陰キャの僕に外のデートは無理だし、お家デートって一緒に住んでるし。
うぅ。
八方塞がり!!
とりあえず、元ちゃんの部屋を片付けながらぐるぐる同じようなことを考えてると、ソファの上に置いていた僕のバックが振動してる。
スマホに着信かな……ってことは、京平さんだ!
慌ててスマホを取り出し、通話をタップする。
『春澄!?』
スマホから聞こえてきたのは、京平さんの焦ったような声で……。
「あ、う、うん。ごめ、何も言わずに……」
『どこにいるの!?』
「げ、元ちゃんの、マンションに」
『元?……まさか、ココが嫌になったの?あんなこと言ったから……』
「ち、ちがっ、違う!元ちゃんの部屋が汚くて、掃除に呼ばれて、それでっ」
京平さんに誤解されたくなくて、必死で弁明する。
京平さんの声から傷ついてるみたいな雰囲気が察せられて、胸が苦しい。
「それにっ、も、う、帰る所だからっ」
『そうなんだ……良かった。帰ってきてくれるんだね』
胸が、苦しい。
きゅうぅぅっとしめつけられる。
京平さんが、僕が帰るって言っただけで、ほっとしたような、安心したって声を出すんだ。
あんなに大人でかっこよくて、すべてが完璧な京平さんが。
『気をつけて。待ってるから』
「うん」
通話を切った後、その場で苦しくなった胸を押さえる。
着ていたシャツがぐしゃっとなるのも構わずに強く握りしめた。
なんで、僕なんかであんなに焦ったり、安心したりするの?
そんなことされたら……僕は……。
「はぁーるーとぉー」
背後から聞こえた地響きのような低音に、ちょっと滲みかけた涙がひゅっと引っ込む。
「てめぇ、何先輩にチクってんだ?あぁ!?」
「ひっ」
元ちゃんがめちゃめちゃキレてる。
何のこと!?
「先輩から春澄を部屋の掃除させるために呼ぶなって怒られてなぁ?あの怒った所を見たことがない聖人君子の先輩に!この俺が!!お前のせいで!!!」
「ご、ごめっ」
つい、元ちゃんにデートのことを相談しに来たって言えなくて、掃除に来たって思わず言ってしまった。
「先輩が金を出すからお前呼ばずにハウスクリーニング雇えってよ!……ま、そこはありがたいよなっ」
「いや、せこっ。お金あるでしょ!」
怒ってたのに、京平さんのお金で掃除できるって喜んでる……器が小さい。
「……何か言ったか?」
「なんでもありません」
顔の圧!!
「掃除はもういいから帰れ。何かあったらいけないからタクシー呼べってよ。美女じゃあるまいし、こんなの誰も何もしねぇって」
うぅ、バカにされた。
京平さんは優しさで言ってくれたのに。
「おら。早くしろ。まだ帰ってこないって連絡きたらまたお前のために俺が謝らないといけないだろーが」
ペコペコしてる元ちゃんが容易に想像できた。
弱者には強くあたるくせに。
そんなことを思っているのが顔に出たのか、また元ちゃんがイライラしてきた。
それを察知して「またね~」と言いながら慌ててマンションを出る。
マンションの下にはタクシーがすでに待機していた。
そのタクシーに乗り、予約の名前と行き先を告げると、運転手さんは無言のままゆっくりと発進する。
会話しないタイプの運転手さんに安心し、僕はシートにもたれふっと息を吐く。
結局、デート、どうしよう。
もう、素直に京平さんに言おうかなぁ。
楽しんでもらえるようなデートができる気がしない。
……ん?
僕、目的間違えてない??
セックスするのって、京平さんに僕なんか性的対象じゃないって思ってもらうためにしようって思ったのに、なんかデートは楽しんでもらおうとしてた。
いつの間にか、僕の提案したデートに喜んでもらいたいって。
違うっ。
早く京平さんに好きじゃないって思ってもらわないといけない。
じゃないと……僕はどんどん……。
「お客さん、着きましたよ」
運転手さんの声にハッと顔をあげる。
もう、到着してしまった。
うぅ。
お金を払おうとしたら、もう事前に登録してあるカードで支払いするからと、金額を確認してサインだけ求められた。
しっかり確認してサインする。
京平さん……タクシー代くらい払えるのに。
タクシーを降り、マンション前から部屋前までゆっくり歩きながら同じようなことをぐるぐる考える。
僕は、どうしたいんだ?
早く僕の本当の価値に気づいて欲しい気持ちと、良く思われたい気持ちと。
結局答えが出ないまま、僕は京平さんが待ってる部屋に戻った。
そう、宣言したのはいいものの。
どうすれば??
缶ビールを飲み干し、二缶目にいこうとしてる元ちゃんはめんどくさそうに僕を見下ろす。
「なら、とっとと先輩の所に帰って準備でもしろ。こっちは疲れてんだからな。あ、片付けは最後までやっとけよ」
「ちょ、元ちゃん!」
元ちゃんは後ろ手に振りながら、缶ビールを持って寝室へと消えた。
うぅ。
これ以上のアドバイス、なし!
どうしよう……。
デートの最後に「セックス」それしか決まってない。
問題のデートは!?
陰キャの僕に外のデートは無理だし、お家デートって一緒に住んでるし。
うぅ。
八方塞がり!!
とりあえず、元ちゃんの部屋を片付けながらぐるぐる同じようなことを考えてると、ソファの上に置いていた僕のバックが振動してる。
スマホに着信かな……ってことは、京平さんだ!
慌ててスマホを取り出し、通話をタップする。
『春澄!?』
スマホから聞こえてきたのは、京平さんの焦ったような声で……。
「あ、う、うん。ごめ、何も言わずに……」
『どこにいるの!?』
「げ、元ちゃんの、マンションに」
『元?……まさか、ココが嫌になったの?あんなこと言ったから……』
「ち、ちがっ、違う!元ちゃんの部屋が汚くて、掃除に呼ばれて、それでっ」
京平さんに誤解されたくなくて、必死で弁明する。
京平さんの声から傷ついてるみたいな雰囲気が察せられて、胸が苦しい。
「それにっ、も、う、帰る所だからっ」
『そうなんだ……良かった。帰ってきてくれるんだね』
胸が、苦しい。
きゅうぅぅっとしめつけられる。
京平さんが、僕が帰るって言っただけで、ほっとしたような、安心したって声を出すんだ。
あんなに大人でかっこよくて、すべてが完璧な京平さんが。
『気をつけて。待ってるから』
「うん」
通話を切った後、その場で苦しくなった胸を押さえる。
着ていたシャツがぐしゃっとなるのも構わずに強く握りしめた。
なんで、僕なんかであんなに焦ったり、安心したりするの?
そんなことされたら……僕は……。
「はぁーるーとぉー」
背後から聞こえた地響きのような低音に、ちょっと滲みかけた涙がひゅっと引っ込む。
「てめぇ、何先輩にチクってんだ?あぁ!?」
「ひっ」
元ちゃんがめちゃめちゃキレてる。
何のこと!?
「先輩から春澄を部屋の掃除させるために呼ぶなって怒られてなぁ?あの怒った所を見たことがない聖人君子の先輩に!この俺が!!お前のせいで!!!」
「ご、ごめっ」
つい、元ちゃんにデートのことを相談しに来たって言えなくて、掃除に来たって思わず言ってしまった。
「先輩が金を出すからお前呼ばずにハウスクリーニング雇えってよ!……ま、そこはありがたいよなっ」
「いや、せこっ。お金あるでしょ!」
怒ってたのに、京平さんのお金で掃除できるって喜んでる……器が小さい。
「……何か言ったか?」
「なんでもありません」
顔の圧!!
「掃除はもういいから帰れ。何かあったらいけないからタクシー呼べってよ。美女じゃあるまいし、こんなの誰も何もしねぇって」
うぅ、バカにされた。
京平さんは優しさで言ってくれたのに。
「おら。早くしろ。まだ帰ってこないって連絡きたらまたお前のために俺が謝らないといけないだろーが」
ペコペコしてる元ちゃんが容易に想像できた。
弱者には強くあたるくせに。
そんなことを思っているのが顔に出たのか、また元ちゃんがイライラしてきた。
それを察知して「またね~」と言いながら慌ててマンションを出る。
マンションの下にはタクシーがすでに待機していた。
そのタクシーに乗り、予約の名前と行き先を告げると、運転手さんは無言のままゆっくりと発進する。
会話しないタイプの運転手さんに安心し、僕はシートにもたれふっと息を吐く。
結局、デート、どうしよう。
もう、素直に京平さんに言おうかなぁ。
楽しんでもらえるようなデートができる気がしない。
……ん?
僕、目的間違えてない??
セックスするのって、京平さんに僕なんか性的対象じゃないって思ってもらうためにしようって思ったのに、なんかデートは楽しんでもらおうとしてた。
いつの間にか、僕の提案したデートに喜んでもらいたいって。
違うっ。
早く京平さんに好きじゃないって思ってもらわないといけない。
じゃないと……僕はどんどん……。
「お客さん、着きましたよ」
運転手さんの声にハッと顔をあげる。
もう、到着してしまった。
うぅ。
お金を払おうとしたら、もう事前に登録してあるカードで支払いするからと、金額を確認してサインだけ求められた。
しっかり確認してサインする。
京平さん……タクシー代くらい払えるのに。
タクシーを降り、マンション前から部屋前までゆっくり歩きながら同じようなことをぐるぐる考える。
僕は、どうしたいんだ?
早く僕の本当の価値に気づいて欲しい気持ちと、良く思われたい気持ちと。
結局答えが出ないまま、僕は京平さんが待ってる部屋に戻った。
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