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告白される陰キャ
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ん?空耳かな?
なんか、とんでもない話が聞こえたような……。
なんか、僕と付き合いたいみたいな。
これ、夢?
「春澄くん、めちゃめちゃパニクってる顔してる……可愛い……キス、してもいい?」
いいわけないだろーーー!
ど、どうしよう……徐々に尚さんが近づいてきてる!
キスするつもりない!
ファーストキスは京平さんで、セカンドキスは尚さんって、豪華なイケメンでラッキー~なんて思えるほど、人生謳歌してないんだよ!
あぁ、もう腰に手が……。
「何も言わないなら、オッケーだと思ってしちゃうけど、いい?」
喉の奥に声がはりついてる感じで何も言えない。
嫌だって言いたいのに。
その代わりに、何度も首を横に振る。
「嫌なの?俺じゃダメ?春澄くん……恋人になろ?大事にする……ずっと一緒にいるよ」
ずっと一緒に……?
本当に……?
尚さんのことを好きでもないし、ちょっと怖いとすら思ってるのに、その言葉にグラグラ揺れてる。
僕が一番欲しい言葉だから。
「ほ、んと、に?」
「うん」
「ずっと?」
「うん」
一人じゃ……なくなる?
それなら……僕が頷こうとした時に、部屋が激しくノックされる。
チッと尚さんは舌打ちすると「はいはーい」と扉まで行き、施錠を解いた。
いつの間に鍵を!?
「春澄!大丈夫!?」
京平さん!?
京平さんが部屋に飛び込んできた。
「何も、されてない?」
僕の両肩を両手でさすりながら、しっかりと目を見てくる。
ちょっと展開についていけてない僕は何度もコクコク頷いた。
はぁーっと、脱力した京平さんは次に背後の尚さんを振り返ると僕を後ろ手に庇う。
「尚!帰ってこないからスマホに連絡しても出ないし、周りに聞いたらお菓子持って会議室にこもってるって言われて、もしかしてって思ったら……」
「京平~人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られるよ?」
「何が恋路だ!」
手を取ろうとした僕なのに、京平さんが来てくれて、ちょっとホッとしている。
欲しかった言葉を貰えて、ちょっとダメなことしようとしてた。
尚さんのこと好きでもないのに、自分の逃げのために利用しようとしてた。
それは、尚さんにも失礼だ。
京平さんと尚さんは二人でギャンギャン言い争いをしてる。
「尚はダメだよ!コイツはとっかえひっかえだから、ダメ!」
「だから、邪魔するなって」
尚さんは秘書なのに、そんな口のきき方で大丈夫?
僕の方が心配になる。
「あのっ、お仕事は?」
「あぁ、春澄のおかげで無事に契約できたよ。ありがとう」
良かった……!
京平さんの役に立てた。
僕はほっとして、笑みがこぼれた。
「……うーわ、京平にはそんな笑顔見せちゃうんだ?ジェラシー」
京平さんはふふんと笑った。
「羨ましいか?やっと春澄と打ち解けてきたんだから、お前こそ邪魔するな。仕事に戻れよ」
尚さんは肩をすくめると、
「はいはーい。春澄くんまたね。そこのお菓子はぜーんぶ持って帰っていいよ。じゃあ、次こそ、ね?」
投げキッスをして、会議室を出ていった。
投げキッスて……イケメンの陽キャしか許されないな。
華やかな尚さんだから、絵になるけど、僕がやったら気持ち悪い。
嵐のような時間から解放されて、ほっと一息つく。
「ごめんね、春澄。仕事のことも尚のことも、負担かけた」
京平さんが僕に頭を下げる。
僕は慌てて否定した。
「全然!負担なんかじゃない!京平さんの役に立てて……嬉しかった。尚さんもちょっとあの感じに慣れなかったけど、良い人、だと思うし。もう、お会いすることないと思うけど、僕のことも褒めてくれたから、ありがとうございますって伝えて欲しい」
京平さんは胡乱な目で僕を見る。
「ほんっとに、何もされてないね?アイツが人を褒めることは少ないし、手を出すのは早いんだ。絶対、春澄のことを狙ってるから。もう、会わせないけどね!」
手を出すのが早いは頷ける。
あんなに簡単にキスってするもの!?って思わされた。
でも、京平さんが対等に話すことを許してるくらい、有能で信頼してる秘書さんなんだろう。
「じゃあ、尚が言ってたみたいに、お菓子は持って帰って。って、甘いの、好きなの?」
僕はぶんぶん頷いてしまった。
「それなら、またいろいろ買って帰るよ。……でも、尚より後で知ったって悔しいな。春澄のこと、何でも一番知ってたい」
また、甘い顔で笑う。
僕は鼓動が早まってるって、気づいてないふりをする。
「タクシー、会社の前に呼んだから。もう尚とは会わせないから今日のことは気にしないで。気をつけて帰ってね」
僕は頷き、見送られながら会議室を後にする。
受付の前を通る時はお姉さん達に申し訳なくてペコリと頭を下げたら、お姉さん達も頭を下げてくれた。
ほっとした。
会社の前から京平さんが呼んでくれたタクシーに乗り、マンションに帰る。
マンションの扉を閉めた瞬間に、どっと疲れが出た。
時間としてはそんなに長い時間じゃないのに、慣れないことをいろいろしたせいか、精神的疲労が半端ない。
カフェオレを作り、行く前に広げていた参考書の前に座るも、やる気が出ない。
ソファーにごろ寝して、今日のことを思い出す。
尚さん……典型的な陽キャだったなぁ。
よく考えたら、もしかして初告白されたのでは!?
……いや、あれは本当の気持ちが入ったやつじゃないな。
京平さんも言ってたけど、とっかえひっかえしてるんだから、ちょっと毛色の変わったのにも手を出してみたって所か。
ま、もう会うこともないし。
そんなことを思っていた僕と尚さんが、それからすぐにまた会うことになるなんて。
なんか、とんでもない話が聞こえたような……。
なんか、僕と付き合いたいみたいな。
これ、夢?
「春澄くん、めちゃめちゃパニクってる顔してる……可愛い……キス、してもいい?」
いいわけないだろーーー!
ど、どうしよう……徐々に尚さんが近づいてきてる!
キスするつもりない!
ファーストキスは京平さんで、セカンドキスは尚さんって、豪華なイケメンでラッキー~なんて思えるほど、人生謳歌してないんだよ!
あぁ、もう腰に手が……。
「何も言わないなら、オッケーだと思ってしちゃうけど、いい?」
喉の奥に声がはりついてる感じで何も言えない。
嫌だって言いたいのに。
その代わりに、何度も首を横に振る。
「嫌なの?俺じゃダメ?春澄くん……恋人になろ?大事にする……ずっと一緒にいるよ」
ずっと一緒に……?
本当に……?
尚さんのことを好きでもないし、ちょっと怖いとすら思ってるのに、その言葉にグラグラ揺れてる。
僕が一番欲しい言葉だから。
「ほ、んと、に?」
「うん」
「ずっと?」
「うん」
一人じゃ……なくなる?
それなら……僕が頷こうとした時に、部屋が激しくノックされる。
チッと尚さんは舌打ちすると「はいはーい」と扉まで行き、施錠を解いた。
いつの間に鍵を!?
「春澄!大丈夫!?」
京平さん!?
京平さんが部屋に飛び込んできた。
「何も、されてない?」
僕の両肩を両手でさすりながら、しっかりと目を見てくる。
ちょっと展開についていけてない僕は何度もコクコク頷いた。
はぁーっと、脱力した京平さんは次に背後の尚さんを振り返ると僕を後ろ手に庇う。
「尚!帰ってこないからスマホに連絡しても出ないし、周りに聞いたらお菓子持って会議室にこもってるって言われて、もしかしてって思ったら……」
「京平~人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られるよ?」
「何が恋路だ!」
手を取ろうとした僕なのに、京平さんが来てくれて、ちょっとホッとしている。
欲しかった言葉を貰えて、ちょっとダメなことしようとしてた。
尚さんのこと好きでもないのに、自分の逃げのために利用しようとしてた。
それは、尚さんにも失礼だ。
京平さんと尚さんは二人でギャンギャン言い争いをしてる。
「尚はダメだよ!コイツはとっかえひっかえだから、ダメ!」
「だから、邪魔するなって」
尚さんは秘書なのに、そんな口のきき方で大丈夫?
僕の方が心配になる。
「あのっ、お仕事は?」
「あぁ、春澄のおかげで無事に契約できたよ。ありがとう」
良かった……!
京平さんの役に立てた。
僕はほっとして、笑みがこぼれた。
「……うーわ、京平にはそんな笑顔見せちゃうんだ?ジェラシー」
京平さんはふふんと笑った。
「羨ましいか?やっと春澄と打ち解けてきたんだから、お前こそ邪魔するな。仕事に戻れよ」
尚さんは肩をすくめると、
「はいはーい。春澄くんまたね。そこのお菓子はぜーんぶ持って帰っていいよ。じゃあ、次こそ、ね?」
投げキッスをして、会議室を出ていった。
投げキッスて……イケメンの陽キャしか許されないな。
華やかな尚さんだから、絵になるけど、僕がやったら気持ち悪い。
嵐のような時間から解放されて、ほっと一息つく。
「ごめんね、春澄。仕事のことも尚のことも、負担かけた」
京平さんが僕に頭を下げる。
僕は慌てて否定した。
「全然!負担なんかじゃない!京平さんの役に立てて……嬉しかった。尚さんもちょっとあの感じに慣れなかったけど、良い人、だと思うし。もう、お会いすることないと思うけど、僕のことも褒めてくれたから、ありがとうございますって伝えて欲しい」
京平さんは胡乱な目で僕を見る。
「ほんっとに、何もされてないね?アイツが人を褒めることは少ないし、手を出すのは早いんだ。絶対、春澄のことを狙ってるから。もう、会わせないけどね!」
手を出すのが早いは頷ける。
あんなに簡単にキスってするもの!?って思わされた。
でも、京平さんが対等に話すことを許してるくらい、有能で信頼してる秘書さんなんだろう。
「じゃあ、尚が言ってたみたいに、お菓子は持って帰って。って、甘いの、好きなの?」
僕はぶんぶん頷いてしまった。
「それなら、またいろいろ買って帰るよ。……でも、尚より後で知ったって悔しいな。春澄のこと、何でも一番知ってたい」
また、甘い顔で笑う。
僕は鼓動が早まってるって、気づいてないふりをする。
「タクシー、会社の前に呼んだから。もう尚とは会わせないから今日のことは気にしないで。気をつけて帰ってね」
僕は頷き、見送られながら会議室を後にする。
受付の前を通る時はお姉さん達に申し訳なくてペコリと頭を下げたら、お姉さん達も頭を下げてくれた。
ほっとした。
会社の前から京平さんが呼んでくれたタクシーに乗り、マンションに帰る。
マンションの扉を閉めた瞬間に、どっと疲れが出た。
時間としてはそんなに長い時間じゃないのに、慣れないことをいろいろしたせいか、精神的疲労が半端ない。
カフェオレを作り、行く前に広げていた参考書の前に座るも、やる気が出ない。
ソファーにごろ寝して、今日のことを思い出す。
尚さん……典型的な陽キャだったなぁ。
よく考えたら、もしかして初告白されたのでは!?
……いや、あれは本当の気持ちが入ったやつじゃないな。
京平さんも言ってたけど、とっかえひっかえしてるんだから、ちょっと毛色の変わったのにも手を出してみたって所か。
ま、もう会うこともないし。
そんなことを思っていた僕と尚さんが、それからすぐにまた会うことになるなんて。
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