陽キャの国の王子様

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二人目の陽キャ

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だ、誰!?
知らない奴に突然肩を組まれて軽くパニくっている。
視線を泳がせまくってる僕に見知らぬ陽キャはようやく気づいてくれた。

「ん?あぁ、ごめんね~気安かった?」
とりあえず、肩を組んでた手を下ろしてくれた。
よ、良かった……。

「あ、あの……僕の名前……」
「京平から聞いてきたんだよ~もう到着してるはずなのに連絡ないから、ちょっと近くを見て来いって~。過保護だよねぇ~」

な、なんか、僕のことバカにしてる?
子供に話してるみたいに言うの止めて欲しい。
……って、思うだけで言えないけど。

「どうして受付で揉めてたの?」
「あの、スマホをわ、忘れてきてしまって。京平さんに連絡取れなくて」
「え?受付で言ったの?名前」

あっ……そうだった!
名前を言えば分かるようにしておくって言われてたんだった……焦りすぎてすっかり忘れてた!

「すみません!京平さんを呼んで下さいとしか言ってなくて……」
「……受付から名前は聞かれなかった?」
「あ、名前は聞かれなかったんですけど、僕から言わないといけなかったのに……」
「……名前を聞くのは基本だよ。受付として、怠慢じゃないのかな?その人の雰囲気や容貌で線引きしてはいけないなんて、常識だと思うけど?」
「申し訳ありません!」
その名前も知らない塩顔イケメンが受付のお姉さん達を叱責し始めた。
さっきまで、僕のことを怪しい奴だと思って対応が少し怖かったけど、それは仕方ないと思う。
こんな陰キャが突然社長に会わせろって怪しすぎる。

「あのっ、僕の対応が悪かったんです!これ以上、僕のことで責めるのは止めて下さい」

塩顔イケメンは何度も頭を下げる僕を見て、仕方ないな、とため息をついた。
「春澄くんに免じてもう言わないよ。
で?封筒、持ってきてくれてるよね?」

そうだ!早く京平さんに渡さないと!

「持ってきました!あの、京平さんは?」
「京平は社長室にいるよ。絶賛仕事中で手が離せないから俺が取りに来たんだ。もらうよ」
「はい!」

……と、手渡そうとした時に、ふと思った。
この人のことを、僕は知らない。
京平さんの名前も僕の名前も知ってたから大丈夫だと思うけど……でも、きっとこの封筒はとても大切な物だから……確認、しなきゃ。

「あ、あの、疑ってるとかじゃないんですけど、京平さんに確認させてもらいたくて……」
「……何を?」
さっきまでの子供に言うような高い声音じゃなくて、ちょっと声が低く変わったような?
顔も笑ってるけど、何か、怖い……。

「この封筒、京平さんに渡したいんです!」
「……だから、今社長室で仕事してるって言ったよね?俺だって忙しいんだよ?そんな中わざわざ来たのに、その上京平じゃないと渡せないって子供じゃないんだからさぁ!」

怖いっ……。
さっきまでの穏和なムードが一変した。
顔を見られなくて、自然と俯き、身体を強張らせる。
どうしよう。
渡した方がいいに決まってる。
でも……でも……。

「や、やっぱり、渡せないです!京平さんに直接確認できないと!あの、電話でもいい、からっ、京平さんに渡す許可をっ……」
俯いていた顔を上げ、その陽キャを見ると僕を忌々しげに睨んでいた。
「俺に恥をかかせる気か……?」

怖い、怖い。
どうしよう。
僕は間違えたかもしれない。
すぐ渡しておけば、怖い思いもしなかったのに。
でも、僕を頼ってくれた京平さんの大事な封筒だから、責任を持たなきゃって……。
でも、この人を怒らせてしまった。
とても、失礼なことをしてしまった。

「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ」
僕は何度もあたまを下げた。
目尻に涙が滲む。
「ちょっ……ストップ!!」
「え?」

顔を上げると、困惑気味の顔……。

「こちらこそ、ごめん~!泣かないで~」
「へ?」

塩顔イケメンは目の前でパンッと手を合わせて頭を下げた。

「え?え?」
さっきまでの怖い雰囲気はどこにいったのか、ペコペコと何度も頭を下げ謝ってきた。
「ほんとーにっ、ごめん。春澄くんがさぁ、ビクビクしながらも俺に反抗してきたのが可愛くて。ちょっとからかうつもりが楽しくなっちゃって、悪ノリしちゃったよ~。ホントにごめんね?怖かったよね?」
「あのっ、いやっ、僕が失礼なことをっ」
「いやいや、正解!面識ない知らない俺に大事な封筒を渡せないって判断は正しいよ~えらいねぇ」

笑顔で頷いてる。
また最初の子供対応になってるし……。

「ちょっと待ってね?」

スマホを取り出し、操作している。
「あ、もしもし?春澄くんいました。ちゃんと封筒持ってきてくれましたよ。ちょっと代わります」

僕に笑顔でスマホを渡してくれる。

「もしもし」
『春澄!良かった~心配してたんだ。封筒は目の前の奴に渡してくれる?本当にありがとう!何かお礼するからね』
「いや、そんなの、いい。役に立てて、良かった。じゃあ、封筒渡して帰るから」
『気をつけて。目の前の奴にタクシー呼んでもらってね』
「電車で帰れるから大丈夫。じゃあね」

話し終わると、また塩顔イケメンにスマホを渡す。
笑顔で受け取ると、また京平さんと話し出した。

「はいはい。分かった、分かりましたー。封筒受け取ってすぐ戻る。じゃあ、後で」

話は終わったみたいだ。
ほっとする。

「あのっ、お手間とらせてすみませんでした」
僕は持っていたバックから封筒を取り出し、渡す。
「はい。確かに」
「じゃあ……」

ペコリと頭を下げて立ち去ろうとすると、がしっと腕を取られる。
「え?」
「春澄くん、時間あるよね?さっきのお詫びをしたいからちょっと付き合ってね!」
「ええ?」
笑顔で僕の腕を持ったまま歩きだす。

拒否権は!?
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