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というわけで、

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「――というわけで、今飲んだお茶に自白剤をいれた。今から洗いざらい語ってもらうので、そのつもりで頼む」

 ミアは自分が飲みきってしまったティーカップに視線を落とす。
 良い茶葉で入れてくれたものだからと、ミアは味わって最後の一滴まで飲みきってしまっていた。

「わたしに薬を盛ったのですか? なんてこと……常々頭がおかしいと思っていましたけど、そこまでやりますか? わたし、自白剤を盛られるような罪人じゃないですから!」

 ミアは思ったことが全て口の外に出てしまった事に驚き、自分の口を塞いだ。

「ほう、頭が……そう思われていたのか」

 ニコラはひくりと頬を引き攣らせる。
 暴言は、覚悟していたことだが、実際に聞くとさすがに堪えた。

「ニコラ様、わたしの口元ばかりじろじろと見ているから、またキスを御所望かしらって、馬鹿なことを考えていて損しました。思い通りにならないから自白剤を飲ませるだなんて、お貴族らしい発想ですね……ああ、だめ、また……」

 辛辣なミアの心の声は止まらない。
 もう後戻りはできないと、ニコラは自分でも展開の予想ができない状況に身を投じた。

「薬が効いてきたな。ミアは何も悪くないのだ。私がミアの本心を知りたいだけで」
「そんなことでギルドまで行ったんですか? ああ、もう、傷が治るまでじっとしていてくださいって言っていたのに。わたしが言いつけを守らなかったら不機嫌になるくせに、わたしのお願いは無視ですか。ニコラ様は何でもできるのに、わたしの話は聞けないんですね――もう! やだ、なんで勝手に口が動くの!」

 間髪を入れずにミアの心の声がニコラを突き刺す。ミアに叱られるのはなんだか悪くないぞと、ニコラはもぞりと足を擦り合わせる。

「だいぶ胸に仕舞っていたことが多いようだな……さて、心の準備は出来た。では、色々と教えてもらおうか」

 ニコラは逃げ出そうと腰を浮かせたミアの腰を抱き、ソファに戻す。

(もしや、私は本当にミアに好かれていないのでは?)

 ニコラはもうこの最初のやり取りだけで、だいぶ絶望的な気持ちだった。









「ミアは花街の仕事に戻りたいのか?」

 ニコラの最初の質問は、ミアを困らせるものではなかった。

「――わたし、ニコラ様に恩がありますので、ニコラ様の負担になるようなことはしたくないんです。ロイさんに借金って、ニコラ様の矜持がへし折れる事でしょ? 次は家を売るだなんて、馬鹿野郎です。だからわたしは花街に戻ります――もういいですか。こんなことを知りたいなら普通に訊いてくださいよ」
「馬鹿野郎か……まあ、その通りだな。ミアの主張はよくわかる」

 かなり飾り気のない言葉遣いになったが、今までミアが言っていたことと矛盾はない。

「……ミアは、本当に花街の仕事を続けたいのか? 花街の仕事が好きで、生涯の仕事にしたいと本気で思っているのか?」

 それについても、ミアの答えは淀みない。

「ニコラ様、仕事について良し悪しを深く考えるのは、余裕のある人だけです。わたしなんかは、何でもやらなきゃ、食えなくて死ぬだけで――ただ、花街の仕事は長く衣食住が保証されていますから、そこが魅力です。王都に来た時に真っ先に住むところをくれたのも花街だったし、恩もあります」

 過酷さの中で、ミアは貧しくとも善良であることを捨てなかった。義理堅く、ズルはしない。そうあろうとするミアを、ニコラは誇らしく思う。

「それでは、城の仕事は?」

 今度の質問では、話を始めるまで、少し時間がかかった。

「……お城は、毎日楽しいです。もうすぐお城の仕事が終わってしまうのは悲しいけど、仕方ないことです。世の中には、こんな仕事もあるんですね。体が痛くなったり、暑すぎたり寒すぎたりしないし」
「それが王都の普通だ」

 ミアは、仕事を楽しむことに罪悪感がある。ニコラにはそれが切ない。

「色々な人が声をかけてくれるんです。わたし、ちっとも疲れてなんかいないのに、頑張っているねって、偉いねって。あんまり楽しいから、わたし、もしかしてもう死んじゃうのかなって不安になるくらい」
「ミアは立派に城での務めを果たしている。本当に皆、心からミアの働きを称賛しているんだ。それは間違いない」
「ほんとですか? そうなら嬉しいけど」

 楽しいこと、幸せなことに対するミアの恐怖心は未だに変わらずにいる。ニコラはそれが不憫でならない。

「ミアが望むなら、私はミアが城で働き続けることを保証する。ずっとだ。それは、騎士棟の者たちも望んでいる。私に支援されるのは嫌か? その、私が……嫌いか?」

 本当は「好きか」と訊こうとしたのだが、直前でニコラは怯んだ。
 ニコラがすがるようにミアの手を握ると、ミアは照れたような困ったような顔をした。

「ニコラ様のことは嫌いじゃありませんよ。むしろ好きです。立派な騎士様様ですし……愛らしい方です」
「そ、そうか!」

 喜んだのも束の間、ミアからもたらされる「愛らしい」の内容に、ニコラは徐々に顔色を変えていった。

「酔うと愚痴っぽくなるところとか、ロイさんに全然勝てないところとか、誘惑に勝てないところも。それから、外でのお仕事の時に子どもに遊ぼうといわれて断れなくなるのも――あ、ごめんなさい。リリアム様街に連れ出されて、覗きました――それに、カブがそんなにお好きじゃないところも。お姫様遊びが好きなのは変態だな、とは思いますけど、すぐ達しちゃうのも……」

 そうやって並べられるのは、どれもニコラが欠点だと思っていることばかりだ。
 詰られながら、同時に褒められているような、複雑な羞恥心はニコラのミアを慕う心に薔薇の蔓のように絡まって、その棘は抜けないほどに深く刺さった。

「カブは克服したと思っていたのだが……」
「ふふ……苦手なものは真っ先に食べてしまうことにしているんですよね?」

 ミアが片眉だけ上げ、ニコラが見たことのない表情で笑う。こういう笑い方をするのが、素のままのミアなのだろう。
 ニコラはミアを愛していると思っていたが、まだその愛に深度があったのかと、内心身悶えた。
 今すぐ全てを投げ出してミアに平伏し、劣情を発散させてしまいたいような気になる。

「そんなの、ミアしか知るものか……」

 もぞもぞと身を寄せると、ミアはあきれた顔をする。

「なんですか? 今の話でどうしてそんな物欲しげになるんです? いつも、変なところで情緒が変化しますね。ニコラ様のそういうところ、全然わからない」
「ミアが、私をよく知っているようだったから、嬉しくなったのだ」

 ニコラはますますミアとの距離を近くする。
 いつもならじっとしているミアは、ニコラをドンと突き放した。

「隙があればキスするのやめてください。支援がどうのって話だったでしょう? ですからね、ニコラ様が好きとか嫌いとかじゃなくて、不相応に支援されるのが嫌なんです。ニコラ様がわたしにくれるものは、いつも多すぎる」
「私はミアになんでもしてやりたいんだ!」

 ミアはこの件に関してとても頑固だ。
 ニコラはミアの慎ましい生き方を尊いと思っているが、融通が利かないことを、もどかしくも思っていた。

「私のことが嫌じゃないなら、なぜ私との結婚を拒む? 理由がわからないんだ」

 それこそが全く答えを出せずにいた質問だった。

「娼婦を妻にだなんて本気でおっしゃっているのですか? ニコラ様が求めているのはお姫様のような存在なんでしょ? わたしが代わりになんか、なりゃしませんよ」

 本心からそう思っていたのだと知って、ニコラの心は痛んだ。
 もっと、何か甘いものが隠されているのを期待していた。

「他の誰かじゃなくて、私はミアがいいんだ」
「あ……えと……ん、ん……」

 ミアはそれまですらすらと内心を吐露していたが、言葉に詰まり、苦しげに唸る。
 隠したいことが引き出されるときの合図だ。しきりに頭を振っている。

「なんだ? 教えてくれ」
「ん……や……ア、アディアール家はとても良い家です。皆、優しくて、わたしのような者にも良くしてくださいます。でも、わたし、アディアール家の跡取りの妻になる事が怖くて……あまりにも違いすぎる世界で。やっぱり、わたしがアディアール家の妻になんてなっちゃいけない――ニコラ様、もう、やめて――」
「すまない。全て聞きたいんだ」

 話はニコラ個人のことから、養子先のアディアール家の話へ移った。
 ニコラは、ミアの手を握って、ミアの口から何が出てくるのか見守っている。
 ミアは口を押えたり、瞬きをしたりして次の言葉を抑えようとしたが、薬の効果はそれを許さなかった。

「――リシル様もケイトリン様もニコラ様も好きです。家の使用人の人たちも、皆、立派な方です。でも、わたしが、ニコラ様の妻としてその中に入ればアディアール家の評判は間違いなく落ちます。それが恐ろしい。だって、わたし、少し前まで道端に転がっているような娘だったのですよ。お忘れですか?」
「関係ない。母上もミアを気に入っているんだ」
「そりゃ、ありがたいですけど、やりすぎです」

 ミアはニコラから顔を背けて吐き捨てる。

「ケイトリン様もリシル様もわたしを憐れんでくれて、菓子をくれたり、本を読んでくれたり。色々なことを教えてくれて。ケイト様はわたしが何か出来るようになる度に頭を撫でてくれます。お……お母さんってこんな感じかなって……ニコラ様が羨ましくなります」

 ミアは羞恥に耐えているのか、顔を赤くして言葉を絞り出した。

「そうか、母上が……」
「ニコラ様に婚姻を申し込まれるよりずっと前に、ケイトリン様が『うちの子におなり』とおっしゃって……わたし、家族になろうなんて言ってくれる人は、一人だっていなかったから……冗談でおっしゃったにしても、本当に嬉しかった。そんな人たちに恩を仇で返すようなこと、できません」

 ニコラが仕事でアディアール家にミアを預けているうちに、ミアはアディアール家で絆を作っていた。
 ケイトリンは冗談でミアを養女にと言ったのではないだろう。ニコラの母は愛情深い女性だ。本気だったに違いない。

「家のことなど、ミアが気に病む必要はないんだ。私がどうにでもする」
「気にしますよ! 普通気にするでしょ? アディアール家には――ニコラ様には、貴族とかお姫様とか、キラキラしたお嬢様がお似合いです。ニコラ様は憐れみを愛情とを取り違えているだけなんです」

 本心からそう思われていた事実は、残酷にニコラの心を傷つける。

「可哀想な人に劣情を感じるっていうなら、可哀想な貴族のお嬢様を助けて、物語みたいな結婚をすればいいんですよっ!」
「本当にそう思っているのか?」
「心から」

 ミアは睨みつけるようにニラの目を見る。一歩も引く様子はなかった。

「それでも、私はミアがいいのだと言ったら?」

 ニコラの問いに、ミアは一つ身震いをした。

「恐ろしいです。わたしがニコラ様の騎士道を汚してしまったのなら。いつか罰が当たって死んでしまうでしょう」
「な……」

 ミアは言いたくないようで、口を開けたり閉じたりして苦しんでいる。

「ん……ぐ……わたし、死ぬのが怖いです。パンを盗んで井戸に落ちたハンスが夢に出てきて、途中からハンスがわたしで、暗い井戸の中に沈んでいくのです。すごく、こわい。だから、なんでもやろうと思って。娼婦も死ぬよりはマシだから。でも、もっと怖いものがあった……」

 ニコラは自白剤を使ったことを少し後悔していた。
 もしかしたら自分はとても許されないようなミアの心の深淵を覗いてしまっているのではないだろうか。思い出したくないようなことまで言わせてしまっているのではないかと、恐ろしくなった。

「何が怖いんだ?」
「ニコラ様が傷つくことが……ニコラ様の善良でまっすぐな騎士道を傷つけることが怖いのです。ニコラ様に死なれるのは、わたしが消えて無くなるよりもっと怖い。わたしが死んで、ニコラ様がつまらない熱病から覚めて、幸せになるほうがずっとよかった。あの時、代わりにわたしが剣に当たって死んでしまえばよかったのに……」
「なんてことを……」

 ニコラは自分でも苦しくなってミアを抱き寄せる。
 ミアの死への恐怖は想像上のぼんやりとした不安ではない。身に迫る飢えや苦しみを知った上での恐怖だ。
 自らの死よりもニコラの死を恐れたという告白は、もうそれだけで欲しかった答えを兼ねていたが、ニコラの喜びにはつながらなかった。

「恐ろしい目に遭わせて、すまなかった……」
「ニコラ様は国の重要な仕事をされています。わたしがそれを台無しにすれば誰かに――きっと神からでしょうけど――罰を与えられます。わたし、身の丈にそぐわないことをやって命を失うのは嫌です」

 ニコラはミアの話を吟味するようにひとつ息を吸って目を閉じた。
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