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始まりの章

28.前兆。ドム視点

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紅い鳥を見た瞬間、不味い、と思った。

何から逃げているのか…。取り敢えずギルドで確認しようと、考えディジーを宿に置いて出る。


ギルドに着くと、冒険者で溢れていた。異常事態にどう動くのかギルドに集まっていたのだ。緊急召集がかかる前に集まっているのは、たまたまなのか優秀なのか。

こういった異常事態では、緊急クエストが発令される。命の危険も大きいが、稼ぎ時と集まるもの達もいる。

はたしてなにが起きているのか。

そこへ、ギルド長が降りて来て、事情説明が始まる。

数日前に東門付近で魔物の動きがおかしかったため、調査団を出している最中だったと。調査員は、魔物のスタンビートが始まり命からがら逃げてきたと言う。

その調査団は、ちょうど紅い鳥、通称カーマインバロンと同時くらいに街に到着、スタンビートの規模としては小規模~中規模程度で予測されていた。

このカーマインバロンだが、通常森の中間~浅い所に棲息している鳥で、頭が良いとみなされている。何故なら、自分たちより強い魔物や多数の魔物が移動する時、どうやってか姿を見ずとも把握し、群れで逃げていく。しかも、逃げる際も自分たちが襲われにくいよう綺麗に固まって飛び、巨大な敵のように擬態する。また、逃げている間でも狩りも同時にしていることもわかっている。

通常であれば、スタンビートで餌が確保出来なかったり、押し潰されたりなど様々な理由で魔物の殆どが死ぬとされる。しかし、このカーマインバロンは、殆どが生きてスタンビートを乗り越えるとされる。


つまり、カーマインバロンが群れで移動しているというのは、何らかの脅威から逃げていることが予測される。


スタンビートは確実に起こっていると言えるだろう…



スタンビートは、小規模であれば街中の冒険者でいけるくらい。

Aランクチームが2~3チームいればいいが…。ディーが既に街を出ている事が悔やまれる。


中規模だった場合はやばい。
街中の冒険者では、この街を守りきることは厳しいだろう。その場合は、戦うものと街の人々を逃がすものに分ける必要があるだろう…。

とりあえずは1番強い魔物が何か把握することと、どれくらいの群れかを把握しなければならない。


調査団が確認した魔物の傾向からは、小規模のようだが…。

取り敢えず、ディジーを安全なところへ移動させてから、討伐に参加するか…。


考えている間にも、ギルド長を中心に対策が立てられていく。

街の各門への配置が決まる。魔物が街中まで来るのに時間があればいいが、カーマインバロンがもう街を通り過ぎていることから、あまりないだろう。
30分もあればいいか…。


ランク上位者を数名分けて、配置が決まる。

俺は、東門への配置。
何チームかのメンバーで行くが、冒険者であり統率は取れないこと、それぞれの特色もあるため戦闘方法はその場での判断となる。


東門のメンバーに、俺に連れがいることと、逃がしてから行くことを伝える。

ガヤガヤと騒がしいギルドを出ると、街の人々の避難はほぼ終わりかけているのか、まばらにしか人はいない。


大抵カーマインバロンを見れば皆、避難所へ逃げていく。スタンビートの規模が分からないことから、街から逃げるかどうかは、騎士団の采配によるところが大きい。

避難所は幾つかあるが、街の人全員は入らない。そのため各々家の近くに穴を掘りシェルターのような物を作る人々もいる。
ただ、魔物が暴れた場合、穴が壊されることがある為、強化魔法の魔石を配置することは多いが…。魔石は安価ではない。

スタンビートは、数年から数十年置きにやってくるためそれぞれが工夫している。

なんとか被害が最小限に収まればいいが…。


とにかくまずは、ディジーを安全なところに連れていかなければ。

ダッと走り出し、宿へと向かう。



………?

ディジーの姿が宿の前にはない。
中に入ったのか?

1階に姿は見えず、部屋にもいない……?!

シェルターが近くにあったのか?
でも、ディジーの性格から1人で逃げることは考えにくいが…。とにかく近くにいないか探す。

そこへ屋根伝いに走るジンを見つけ、声をかける。ジンは、ギルド職員の1人だ。
街の中の状況を把握してギルドへ伝えるなど、偵察役を担っているのだろう。この時分に屋根伝いに走っていることから斥候に近いか…。


「ジン!俺の連れがいないんだ。人族の少女で、見かけたら教えて欲しい!!街に不慣れなんだ!」

ジンは走りながらも、了承したというように手を挙げ去っていく。


近くを探していると、少しして口笛が聞こえる。

…ジン…か??

ディジーがいたのか、要救助者を見つけたか。
とにかく口笛の聞こえた方角に向かって走る。


直ぐにディジーの気配を感知するが、近くに誰か他の気配もある。


と、視界に男と子どもか?小さな姿を見つけるがディジーはいない。



ハッとしたと同時、ディジーが屋根にぶら下がり、キラキラと光り出す。

不味いっ!

「ディジー、待てっ!」

咄嗟に叫ぶが間に合わなかった。
他の人の前で、ディジーは羽根を広げ、舞う。

屋根に舞い降りる姿は、天使が舞い降りたかのように綺麗だった。








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