上 下
11 / 30
始まりの章

11.ヴェズの森の探索。ドム視点

しおりを挟む
森の生態調査とBランク級のレッドボアが複数出てるって事で、冒険者ギルドから討伐の依頼も兼ねて、俺たちはヴェズの森に来ていた。

レッドボア単体ではそこまで強くない。しかし、複数出るとなると、危険なため、一応俺たちSランクへの依頼となった。


街から往復で2週間の工程を組み、レッドボア討伐へ出た。ヴェズの森の中心部に近いところまで進み、レッドボアを把握できる範囲は倒しきり、気が楽になっていた時だった。

仲間のディーが、巨大鳥を見つけたと言って弓を出した。
人族ではあるがディーは、かなり目が良く大分離れてると思われる鳥らしき影に向かって弓を射た。

鳥に当たったのだろう、落下していく姿を2人で追いかけた。
今日はさっぱり鳥料理だ、なんて言いながら。レッドボアは、美味いが脂身も多い。連日となると、2人とも飽きていた。

段々と血の匂いが近づいていくが、ディーは、人族でもあり、数日前から鼻水が出ているようで匂いが辿れないみたいだ。

血痕のあとと匂いで大体の位置がわかった俺は、気配を研ぎ澄まし、一瞬で距離をつめて鳥の羽根を掴みあげた。


そして、俺たちは驚くことになる。
かなり大きな羽根であったこともそうだが…


そこには、肩を押さえて震え、痛みに呻く少女がいた。


ディーが人なのか、と問う。
人に見える。
羽根さえなければ…


羽根を離せば倒れていく。無意識に支えると、そこには額に汗をかきながらも、天使のような美貌の少女がいた。

うぅっ。

呻く少女の声にはっとなり、少女を抱え、急いで拠点としている洞窟へ戻る。


洞窟でポーションを準備し、矢を抜こうとしたが、矢が肩を貫き羽根まで到達していた。

矢じりが羽根に刺さっている状態であり、肩部分の服を慎重にナイフで破る。そして、まずは羽根から矢じりを抜く。そして、矢をおり、肩からも抜く。

出血は思ったよりなかったが、かなり顔面蒼白となっている。

すぐにポーションをかけたが、中級であり、傷はまだ深い。

中級ポーションでは、せいぜい深めの切り傷を治すのが精一杯で、今回のように貫いた傷を治すためには、最高級ポーションか、エリクサーしかない。

エリクサーは、無理でも、最高級ポーションを用意しなかった事が悔やまれる。

普段の俺たちなら中級ポーションでも余裕だった。Sランクはそれくらい強い。

念の為に、と用意したくらいであり、今回実際に使用する機会もなかった。
後悔しても遅い…

油断したつもりはなかったが、慢心していたようだ。


ディーはその間に、薬草を探しにいく。

薬草を探すのにも時間を要する。
中心部ともなると、魔物も強くなり、薬草が育つ環境は少ないのだ。見つかれば恩の字、というくらい見つかりにくい。


このような少女だ。高熱が出ており、どこまで体力が持つか分からない。

それに…羽根を傷つけてしまっており、今後飛べるのか…

傷のある肩と羽根に当たらないよう、下に布を敷き込み、彼女を横たえる。

ディーがしばらくして、幸運にも薬草をみつけ、戻ってきた。
薬草で薬を作り、肩と羽根に塗る。他にも足首が腫れている状態であり、骨折がないことを確認して薬を塗って固定した。

パッと見は他には傷がないことを確認した。息は荒いが、少しはマシになっているはず…

時間の経過が長く感じる。
神に祈りながら、帰りの行程を2人で立てる。すぐにでも街に戻るべきだが、ここは、ヴェズの森の奥深く、未踏の地も多いところだ。

治療や薬草を探すのに時間を要したため、もう日が落ち始めている。

今から出れば夜を森で過ごすことになる。それに、レッドボア討伐後であり体力はあるにはあるが…
いくら俺たちでも彼女を護りながら安全に通れるかは、分からない。

このまま待機し、朝一で出ることにした。
いても立っても居られず、ディーが少女が起きた時に食べれるようなものを探しに行く。

俺は、彼女の側で夜に向けて焚き火の準備をしながら、彼女が少しでも不快にならないよう汗を拭いたり、口元に水を垂らす。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!

町島航太
ファンタジー
 ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。  ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。

世界樹の下で

瀬織董李
ファンタジー
神様のうっかりで死んでしまったお詫びに異世界転生した主人公。 念願だった農民生活を満喫していたある日、聖女の代わりに世界樹を救う旅に行けと言われる。 面倒臭いんで、行きたくないです。え?ダメ?……もう、しょうがないなあ……その代わり自重しないでやっちゃうよ? あれ?もしかしてここ……乙女ゲームの世界なの? プロット無し、設定行き当たりばったりの上に全てスマホで書いてるので、不定期更新です

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

転生王女は現代知識で無双する

紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。 突然異世界に転生してしまった。 定番になった異世界転生のお話。 仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。 見た目は子供、頭脳は大人。 現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。 魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。 伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。 読んでくれる皆さまに心から感謝です。

聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!

幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23  女性向けホットランキング1位 2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位  ありがとうございます。 「うわ~ 私を捨てないでー!」 声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・ でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので 「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」 くらいにしか聞こえていないのね? と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~ 誰か拾って~ 私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。 将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。 塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。 私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・  ↑ここ冒頭 けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・ そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。 「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。 だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。 この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。 果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか? さあ! 物語が始まります。

辺境伯令嬢に転生しました。

織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。 アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。 書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。

処理中です...