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昨日の幸せな気分のまま朝起きて朝食を食べ登校したらお弁当を頼み忘れていたことに気付いた。仕方ないから昼休みに食堂に向かう。
けど人が多すぎて近付けないでいた。入口辺りで僕はオロオロしていた。
「アバーテ様どうしたんですか?」
そんな僕に声をかけてきた人がいた。
「バルバロ君」
僕に声をかけてきたのはゲームの主人公のミコトだった。
「僕のことはミコトでいいですよ」
「じゃあ僕のこともユーマって呼んでよ」
「えっ、でも......」
「いいから」
渋っているミコトに僕は笑顔で無言の圧をかける。
「じゃあ、ユーマはこんな所でどうしたんですか?昨日はお弁当でしたよね」
圧に屈したミコトは僕のことを名前で呼んでくれた。
「お弁当頼むの忘れちゃったから食堂に来たんだけど......」
僕は言いながら食堂の中をちらっと見る。
ミコトも僕の視線の先を見て僕の言いたいことを理解してくれた。
「上級生ばかり大勢いますね。体格の良い人ばかりであの中に小柄な侯爵家のユーマが入って行くなんて想像できません。というか止めておいた方がいいですよ」
「僕のお昼ご飯......」
泣きたい。
「よかったら僕のお弁当半分食べますか?」
涙目になった僕を哀れに思ったのかミコトが自分が持っていたお弁当を差し出してくる。
「いいの?」
「いいですよ、昨日多めに入っていたから今日も多めだと思うし」
「やったー、嬉しい。ありがとう」
僕は思わずミコトに抱き着いた。
「ユーマって最初の印象と大分違いますね」
抱き着いてきた僕に困惑しながらミコトは言う。
「ミコトは先に教室に帰ってて。悪いけど僕の机にお弁当準備してて」
僕はそう言うと食堂の中の人気のない所に走って行った。
「お待たせ」
僕が教室に帰るとミコトはお願いした通り僕の机にお弁当を広げて待っていてくれた。
僕はそこに買ってきた紅茶とプリンを並べる。
「これお弁当のお礼。よかったら食べてね」
「ありがとうございます。てっ、えっ、これものすごく高いやつじゃないですか」
僕が渡したプリンと紅茶を見たミコトはものすごく驚いている。
「そうなの?僕初めて1人で買い物したから値段よく知らないんだ。でもそれ買ったとこ人がいなくて買いやすかったよ」
「それはこれが簡単に手を出せるような値段の物じゃないから人が集まらないんです。これだから侯爵家のお坊ちゃまは」
僕なんか貶されてない?
「でもこれものすごく美味しいよ。よかったらまた買ってくるよ」
僕はプリンを一口食べて言う。ほんと美味しいんだこのプリン。
「そんなに簡単にこのプリン買ってくるなんて言わないで下さい!」
ミコトはなんだか疲れている。僕はプリンを一口食べさせてあげる。
「あっ、美味しい」
「でしょ」
プリンを口に含んだミコトは途端に笑顔になった。でも慌てて真顔に戻る。
「買ってきてくれるなら特別な日だけにして下さい」
ツンデレか。
昨日のテンションが抜け切れていなくて心の中で変なツッコミをしてしまう。
「ところで僕の印象が違うってどういうこと?」
「ユーマって498点という過去最高点で首席入学したじゃないですか」
「そうなんだ知らなかった」
「えっ、知らなかったんですか。入学式の日に掲示板に貼ってましたよね」
「首席入学は知ってたけど、過去最高得点だとか点数とかは今初めて知った。掲示板見てないし」
そう言うとミコトは驚いた顔をしていた。
「他の人の点数気にならなかったんですか?」
「うん、全く」
「そうなんですね」
僕が素直にいうとミコトは苦笑いしていた。僕は入学できて退学にさえならなければいいから点数はともかく順位は深く気にしていない。そりゃあ少しでもいい点数取った方が教師が甘くならないかな、なんて下心はあるが。
「ユーマが498点で1位。2位のビアシーニ様が470点2人が断トツの1位2位で僕が3位なんですが僕から下は450点台で1,2点差なんですよ。2人とも優秀だし、爵位も高いから軽々しく近寄れないんですよ。それに2人とも笑顔を見せないしユーマは特に髪色とか目の印象からかな、冷たい印象があったんですよ。話してみるとそんなことはなかったんですけど」
僕の見た目が冷たそうなのは自覚してます。
「家を出るときに両親からなぜか笑顔を振りまくなって言われたから言う通りにしてたんだ」
「ご両親がそんなこと言った理由分かる気がします」
2人で一つのお弁当を食べながらそんな話をする。
甘えん坊の僕は家族と離れて寂しかったんだろうミコトと話をするのが楽しくて仕方なかった。終始ニコニコとしていた。
「そろそろ午後の授業も始まるし自分の席に戻りますね」
食べ終えたお弁当を片付けたミコトは席を立つ。
僕は思わずミコトの手を取った。
「明日は僕がお弁当用意するから一緒に食べてくれる?あと明日から敬語もなしね」
上目遣いでお願いする。
「......分かりました」
「やったー」
午後の授業も終わり今日も図書館に行く。貸し出しカウンターの中では昨日のトイレの2人が並んで座っていた。
見えないけどカウンターの中ではあの2人は手を繋いでいるんだと1人妄想していた。
入学から一週間後にテストがある。これは退学には関係はないが試験後サボらず勉強していたかどうかが試される。
僕は毎日放課後図書館で勉強と読書を閉館ギリギリの時間までしていた。
沢山の本に囲まれ適度に雑音があるこの空間が僕にとってはものすごく落ち着いた。
明日テストだというこの日いつもと同じように図書館で勉強していた。
「眠い」
でもこの日は終わりの授業が剣術だったから疲れていつの間にか眠ってしまっていた。
けど人が多すぎて近付けないでいた。入口辺りで僕はオロオロしていた。
「アバーテ様どうしたんですか?」
そんな僕に声をかけてきた人がいた。
「バルバロ君」
僕に声をかけてきたのはゲームの主人公のミコトだった。
「僕のことはミコトでいいですよ」
「じゃあ僕のこともユーマって呼んでよ」
「えっ、でも......」
「いいから」
渋っているミコトに僕は笑顔で無言の圧をかける。
「じゃあ、ユーマはこんな所でどうしたんですか?昨日はお弁当でしたよね」
圧に屈したミコトは僕のことを名前で呼んでくれた。
「お弁当頼むの忘れちゃったから食堂に来たんだけど......」
僕は言いながら食堂の中をちらっと見る。
ミコトも僕の視線の先を見て僕の言いたいことを理解してくれた。
「上級生ばかり大勢いますね。体格の良い人ばかりであの中に小柄な侯爵家のユーマが入って行くなんて想像できません。というか止めておいた方がいいですよ」
「僕のお昼ご飯......」
泣きたい。
「よかったら僕のお弁当半分食べますか?」
涙目になった僕を哀れに思ったのかミコトが自分が持っていたお弁当を差し出してくる。
「いいの?」
「いいですよ、昨日多めに入っていたから今日も多めだと思うし」
「やったー、嬉しい。ありがとう」
僕は思わずミコトに抱き着いた。
「ユーマって最初の印象と大分違いますね」
抱き着いてきた僕に困惑しながらミコトは言う。
「ミコトは先に教室に帰ってて。悪いけど僕の机にお弁当準備してて」
僕はそう言うと食堂の中の人気のない所に走って行った。
「お待たせ」
僕が教室に帰るとミコトはお願いした通り僕の机にお弁当を広げて待っていてくれた。
僕はそこに買ってきた紅茶とプリンを並べる。
「これお弁当のお礼。よかったら食べてね」
「ありがとうございます。てっ、えっ、これものすごく高いやつじゃないですか」
僕が渡したプリンと紅茶を見たミコトはものすごく驚いている。
「そうなの?僕初めて1人で買い物したから値段よく知らないんだ。でもそれ買ったとこ人がいなくて買いやすかったよ」
「それはこれが簡単に手を出せるような値段の物じゃないから人が集まらないんです。これだから侯爵家のお坊ちゃまは」
僕なんか貶されてない?
「でもこれものすごく美味しいよ。よかったらまた買ってくるよ」
僕はプリンを一口食べて言う。ほんと美味しいんだこのプリン。
「そんなに簡単にこのプリン買ってくるなんて言わないで下さい!」
ミコトはなんだか疲れている。僕はプリンを一口食べさせてあげる。
「あっ、美味しい」
「でしょ」
プリンを口に含んだミコトは途端に笑顔になった。でも慌てて真顔に戻る。
「買ってきてくれるなら特別な日だけにして下さい」
ツンデレか。
昨日のテンションが抜け切れていなくて心の中で変なツッコミをしてしまう。
「ところで僕の印象が違うってどういうこと?」
「ユーマって498点という過去最高点で首席入学したじゃないですか」
「そうなんだ知らなかった」
「えっ、知らなかったんですか。入学式の日に掲示板に貼ってましたよね」
「首席入学は知ってたけど、過去最高得点だとか点数とかは今初めて知った。掲示板見てないし」
そう言うとミコトは驚いた顔をしていた。
「他の人の点数気にならなかったんですか?」
「うん、全く」
「そうなんですね」
僕が素直にいうとミコトは苦笑いしていた。僕は入学できて退学にさえならなければいいから点数はともかく順位は深く気にしていない。そりゃあ少しでもいい点数取った方が教師が甘くならないかな、なんて下心はあるが。
「ユーマが498点で1位。2位のビアシーニ様が470点2人が断トツの1位2位で僕が3位なんですが僕から下は450点台で1,2点差なんですよ。2人とも優秀だし、爵位も高いから軽々しく近寄れないんですよ。それに2人とも笑顔を見せないしユーマは特に髪色とか目の印象からかな、冷たい印象があったんですよ。話してみるとそんなことはなかったんですけど」
僕の見た目が冷たそうなのは自覚してます。
「家を出るときに両親からなぜか笑顔を振りまくなって言われたから言う通りにしてたんだ」
「ご両親がそんなこと言った理由分かる気がします」
2人で一つのお弁当を食べながらそんな話をする。
甘えん坊の僕は家族と離れて寂しかったんだろうミコトと話をするのが楽しくて仕方なかった。終始ニコニコとしていた。
「そろそろ午後の授業も始まるし自分の席に戻りますね」
食べ終えたお弁当を片付けたミコトは席を立つ。
僕は思わずミコトの手を取った。
「明日は僕がお弁当用意するから一緒に食べてくれる?あと明日から敬語もなしね」
上目遣いでお願いする。
「......分かりました」
「やったー」
午後の授業も終わり今日も図書館に行く。貸し出しカウンターの中では昨日のトイレの2人が並んで座っていた。
見えないけどカウンターの中ではあの2人は手を繋いでいるんだと1人妄想していた。
入学から一週間後にテストがある。これは退学には関係はないが試験後サボらず勉強していたかどうかが試される。
僕は毎日放課後図書館で勉強と読書を閉館ギリギリの時間までしていた。
沢山の本に囲まれ適度に雑音があるこの空間が僕にとってはものすごく落ち着いた。
明日テストだというこの日いつもと同じように図書館で勉強していた。
「眠い」
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