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 「うーん。眠い。やだ、やめて」

 僕は体を揺すられて目を覚ました。でもまだ寝ていたくてその手を払う。振り払ったのに相手は諦めずに僕を揺すって起こそうとしている。
 目を開くとお父様の顔が近くにあった。
 お父様は何か言っているみたいで口が動いているけど僕には何を言っているのか全く聞こえてこなくて何を言っているのか分からなかった。
 段々と頭も起きてきてそういえばと昨日のことを思い出す。慌てて耳栓を解除する。

 「ユーマ、ユーマ、起きて。今日はお買い物に行くんでしょう」
 「ふぁい、お父様おはようございます」

 眠い目を擦りながら挨拶をする。
 
 「おはようユーマ。なんでこんな所で寝ているんだい?」
 「なんででしょう?覚えてません」
 「寝ぼけてたのかな。顔洗っておいで、朝ごはん食べたら今日はお買い物に行くよ」

 いつもよりはっきりしない頭でふらふらと自分の部屋まで帰る。
 顔を洗うと多少はすっきりしたがまだ怠い。
 いつもより遅くしかも床で寝たから疲れたのかも。
 準備を済ませ玄関に行くとお父様だけがいた。

 「あれ、お母様は一緒に行かないんですか?」
 「お母様は体調が悪いって寝てるんだ。お父様だけだけどいい?」
 「もちろんですけどお母様は大丈夫ですか?」
 「1日寝てればすぐ良くなるよ。お母様には何かお土産買ってこようね」

 お父様、僕が寝た後お母様に無理をさせ過ぎましたね。
 でも僕が毎日2人と寝ていて2人を我慢させ過ぎたのが原因なんですよね。反省します。でも仕方ないんです。僕が入学した後は存分に2人の世界を作って下さい。

 「何がいいかな」
 「ユーマが選んでくれたものならお母様はなんでも喜んでくれるはずだよ」
 
 僕はお父様と手を繋いで馬車に乗り込んだ。
 馬車の中では少し寝てしまった。でもそのおかげで街に着くころには元気一杯になり買い物を楽しんだ。
 買ったものは寮生活に必要そうなものばかりだ。
 服なんか今あるものを持っていけばいいと思っていたのにユーマに似合いそうだ、とか言ってお父様が沢山手に取り買う。オーダーメイドで頼んでいた分を合わせるとかなりの量になった。お父様はお店の人に屋敷に届けるよう言っていたけど僕はあれ全部学園に持って行かないといけないのだろうか。

 「お父様ちょっと多すぎじゃ」
 「毎日同じ服着ていたら駄目じゃないか。それに成長するんだからサイズも色々必要だからね」
 「学園は制服だから同じ服ですよ。それに1年に一度の長期の休みには帰ってくるんですよ」
 「あとはあっちの店であれを買って」
 
 お父様は買い物に夢中で僕の話を聞いてくれない。もうお父様を止めることは諦めて黙って着いて行くことにした。
 一緒に着いて来ていた騎士さんの両手が荷物で一杯になっていく。

 「そろそろお昼にしようか」
 「......はい」

 最初は楽しかった買い物も最後はお父様に着いて行くのに必死で疲れた。
 お父様が予約していたお店に入り食事をする。出された飲み物を僕は一気に飲み干してしまった。かなり喉が渇いていたみたいだ。
 昼食が終わった後もお父様はお母様へのお土産と言い、沢山のお店を回りお母様が好きなお菓子や飲み物をこれまた大量に買っていた。
 帰りの馬車の中は行きはかなり余裕があったのに今は荷物で一杯でお父様と2人身を寄せ合って座っている。

 「ただいま帰りました」
 「お帰り、沢山買ってきたな」

 お屋敷に帰り玄関に入るとお母様が出迎えてくれた。お母様は僕を抱き上げようとするが腰を押さえ抱き上げることができないでいた。
 そんなお母様をお父様はいたわるよう抱き締める。

 「エリアスにお土産も買ってきましたよ」
 「悪いな、ありがと」

 2人の間には甘い雰囲気が漂っている。

 「僕疲れたからちょっとお昼寝します」
 「そうか、レンに荷物の整理は頼んでおくけど後でユーマも確認しておくんだぞ」
 「はい、おやすみなさい」

 僕はそう言って僕の荷物を持つレンと他何人かのメイドと一緒に自分の部屋へ戻る。お父様はお母様の腰を抱いて自分の部屋に戻って行った。
 自分の部屋に戻った僕は昼寝を始めた。隣の部屋で何人かのメイドが荷物の整理をしているから今は自分の部屋で安心して眠ることができるがまた夜になると両親の部屋へと行く。
 僕がお昼寝している間2人は昼間買ってきたお菓子をお互い食べさせ合っていた。部屋にいたメイドもその甘すぎる雰囲気に耐え切れずそっと部屋の外へ逃げていた。
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