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 「うーん、んっ。よく寝た」

 僕が体調不良で寝込んでから今日で一週間が経った。
 吐き気はその日のうちに治ったけど3日間は体調が優れなかった。
 4日目には体調も良くなったのに心配した周りが僕がベッドから出ることを許可しなかった。
 野菜スープの中に薬が入っていたのだと思うけどこんなに体調不良が続くとは思わなかった。何かしてくると思っていたけどまさか薬を盛られるとは思わなかった。
 スープを持ってきたのはジェイドだったけど僕が苦しんでいる時に見たあの涙は本物だと思っている。

 「ユーマ様体調はどうですか?」
 「もうばっちり、大丈夫だよ。寝すぎて逆に体がバキバキ」

 寝起きの僕に水と薬を差し出しながらレンが僕に体調を聞いてくる。

 「お医者様に頂いたお薬はこれで終わりです。昨日お医者様ももうベッドから出ても大丈夫と仰っていたのでお着替えしましょうか」
 「お父様とお母様に挨拶に行かないとね」

 寝込んでいた一週間の間に色んな人がお見舞いに来てくれた。クロードとアキも来てくれたけど2人の本性を知っているから心配は口ではしていたけどそのセリフは白々しい気がしていた。
 ジェイドだけは短時間だけど毎日来てくれたけど。
 僕が寝込んだ2日目の帰り際にこっそりとレンに僕宛の手紙を渡していた。その手紙を読むとそこには今までのことに対する謝罪とクロードが何を企んでいるか分かれば教えてくれるといったことが書かれてあった。
 ゲームの中の僕のような気持ちいい事が好きな淫らなやつにならずに目を覚ましてくれてよかった。手紙の中にはクロードにばれないように今までと同じ態度を取るけど嫌いにならないでとも書いてあった。
 僕はその手紙を大切に机の引き出しの中に入れてある。

 「ユーマ、学園から合否が書いてある手紙が届きましたよ」

 夕食の席で食後のお茶を家族で飲んでいる時に執事から渡された手紙をお父様は僕に渡した。

 「ありがとうございます」

 お父様は僕にその手紙を渡すとき悲しそうな顔をしていた。
 僕はその手紙を受け取り破らないよう慎重に開封する。

 「やりましたよ。お父様、お母様合格しましたよ。しかも首席合格だから入学式で代表挨拶してほしいって書いてあります。大人数の前で挨拶って何喋ればいいんだろ、緊張しますね」

 隣からガタッと音がしてクロードが椅子から勢いよく立ち上がった。そのまま僕が持っていた手紙を奪い取り見る。

 「合格。どうして、ユーマは試験には行けなかったはずでは」

 クロードは破りそうな勢いで紙を握りしめて震える声で呟いている。

 「そうだな、確かに試験の日にユーマは寝込んでいて試験を受けていないはずなのになぜ合格しているんだい?」

 クロードの呟きを拾ったお父様は皆が気になっているだろうことを聞いてきた。僕はそれに対して不思議そうな顔をして答えた。

 「僕ちゃんと試験受けましたよ。なんでみんな悲しそうな顔してるのか不思議だったんだけどみんな僕が試験受けてないと思ってたんですか?」
 「試験受けたって試験の日ユーマは寝込んでたじゃないか」
 「僕が試験受けたのはあの2日前ですよ。みんな勘違いしてたんですね」
 
 僕はそう言ってレンが持っていた試験の日程が書かれてある紙をテーブルの上に置いた。3人はそれを覗き込む。

 「確かにあの2日前だね。でも最初に見た時は寝込んだ日の日付だと思っていたんだけどな」
 「俺もそうだと思ってた。勘違いか」

 お父様とお母様は不思議そうな顔をして見ているし、クロードは悔しそうな顔をしてその紙を睨んでいた。

 「もうこうやって合格通知来たんだからいいじゃないですか。それよりお父様入学式の挨拶一緒に考えて下さいよ」
 「おめでとうユーマ、首席なんてすごいね。挨拶のアドバイスはするけどちゃんとユーマの言葉で考えるんだよ」

 僕は笑顔でお父様にお願いをする。お父様も笑顔でお祝いを言ってくれた。席を立ったお母様には頭を撫でられ体を持ち上げられ回された。

 「さすが俺たちの息子。これからが楽しみだな」
 「お母様目が回ります。やめてぇ~」

 家族にも使用人にも一部を除いて笑顔が戻った。

 「ふふふ、ふふ」

 食後のお茶も飲み終わり部屋に帰ってくるとベッドにダイブした僕は笑い出した。

 「上手くいってよかった。みんなの驚いた顔面白かったな」

 僕は授業を妨害することに失敗したクロードが何かしてくるとするなら試験の日だと思っていたから試験日が書かれてある紙に魔法を使い試験日を誤魔化した。
 そうすると案の定クロードは誤魔化した試験日の前日に僕に薬を盛ってきた。でも試験を受けた後なので合否に影響は無かった。
 上手く出し抜けたことが嬉しくてしばらく笑いが止まらなかった。
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