13 / 72
13
しおりを挟む
「ねぇレン、魔法ってどう思う?」
「魔法ですか?ユーマ様は恋愛小説ではなくファンタジー小説も読み始めるんですか?日常では起こらないような話なので普段は感じることのないワクワクを感じると思いますよ」
「図書館でね気になる本を見つけたんだ」
僕の就寝の準備をしていたレンに魔法のことを聞いてみたけどレンは何も知らないみたいだし、最初の僕と同じように話の中だけの存在だと思っている。
ゲームの制作に関わっていた僕も知らないことだしもしかして続編から語られることなのかな。
「では次回行った時に借りてみてはどうですか?ユーマ様就寝の準備ができましたよ。ではおやすみなさいませ、また明日」
「おやすみ」
僕は綺麗に整えられたベッドの中に入り部屋から出て行くレンの後ろ姿を見送った。
その日はいつもよりはっきりした夢を見た。その夢は僕の部屋から出たレンの前にカイトが現れ物影で抱き合う、という夢だった。
その夢は次の日起きてもはっきりと覚えていた。いつもの夢ならぼんやりとしか覚えていないのに数日経っても細部まで覚えていた。
「こんにちは」
1週間後図書館に行くと先週もいた5階の奥にあの子はいた。
「こんにちは、君が聞いた人は魔法のこと信じてなかったでしょ」
会ってすぐ僕が約束を破ったことを見破られた。
「約束破ってごめん。どうして誰かに言ったことが分かったの?」
「魔法を使ったから、って言いたいけど君見てたらバレバレだよ。僕を見た時からおどおどして落ち着きなかったし。これは魔法を使ったんだけど図書館に入ってからの君の鼓動は凄く早かったよ。今もほら、こんなに早い」
目を閉じて僕の胸に手を当ててくる。
「誰に言ったの?」
「えっ、えっと、いつも一緒にいるメイドだけど、本の話だと思われたんだ」
僕の胸に手を当てたまま顔を覗き込んでくる。近い、けど少し長めの前髪の間から輝いている凄く綺麗な澄んだ青い目が見えた。
「魔力も魔法もかなり大昔に忘れ去られたものだからね。知ってるとしたら王族ぐらいじゃないかな」
「王族しか知らないことをなんで君が知ってるの?」
今日もレンとカイトの2人にはおやつを買いに行ってもらっていてこの場には2人しかいないのに僕は声を潜めていた。
「僕の家にね古代語で書かれていた本があったんだ。何十代も前に城で働いていた人の本らしいんだけどね。そこに読めない本があると読みたくなるじゃないか。だからね、必死に研究したよ。そしたら魔法っていう力があると分かって、そこからは魔法って言葉が書いてある本を探しては読んで。最後にこの場所で魔力を手に入れる呪文が書かれてある本を見つけたんだよ」
簡単そうに言うがまず古代語を解読するのが難しいと思うんだけど。
そこを聞くと古代語が段々と変化して現代語ができたはずだから逆に年代を遡って文字を追っていったらしい。文字だけでなく発音も変化していくし、消えた文字や新しく作られた字もあったはずなのに解読していくなんて天才だ。
僕が褒めるとその子は笑う。
「君は変わってるね。僕の家族は物心ついた頃から普通の子供が興味を持たないようなものばかりに興味を持つ僕のことを避けてたし、古代語の研究をしだしてからは気味の悪いものでも見るような目で見てたのに」
僕は何も言えなくなる。
「ほんと君の感情は分かりやすいね。僕は大丈夫だよ。悲しくなんかなかった。好きなことが思う存分できてたから干渉されなくて逆によかったぐらいだよ。だから君がそんな悲しそうな顔をしないで」
僕の暗い顔とは反対にその子の笑顔は明るかった。
「魔力はこの間感じたと思うけどあれから何か変わったことあった?」
話は変わった。そのことに僕はちょっとだけホッとしてしまった。
暗い話は苦手だ。前世も今も気の利いた言葉なんてすぐに思いつかない。
「変わったことなんて無かったと思うけど、あっ、君に会った日の夜に妙にリアルな夢を見たかな。いつもの夢ならすぐ忘れるのにその夢は何日経っても細部まで覚えていたんだ」
「すごいよ、それ魔法だよ。何も知らないのに使えてるなんて本当にすごい。夢じゃなくて君が見たのは実際に起こったことだと思うよ。多分意識だけ飛ばして見たんじゃないかな。それを見た時何を考えてた?」
僕はあの日のことを思い出してみた。
寝る前にレンの後ろ姿を見ながらカイトとのデートはどうだったんだろうと考えていた。
「夢に出てきた人たちのことを考えてた」
「魔力は自分の本来持っている力を増幅させたり、こうしたいという思いや創造を魔法という形で実現させる。君は強い思いの持ち主なんだね。ただ単に思っただけでは魔法にはならないはずなんだ。僕は1週間練習してこんな感じかな」
そう言うとその子の差し出した右手の手の平に小さな竜巻が生まれた。それは動くし、大きさも変わる。
「すごい」
僕も手を広げて竜巻を考える。
「できた!」
さっきの竜巻とは違って安定してなくて今にも消えそうだし自在にも動かせないけどちゃんとした竜巻がそこにはあった。
「本当にすごい。君の想像力はすごいね。君の、んっ?君の名前聞いてなかったね。僕の名前はケイン」
やっとここで自己紹介みたいだ。
「僕の名前はユーマ」
「ユーマ、古代語で『美しい人』君にぴったりの名前だね」
「魔法ですか?ユーマ様は恋愛小説ではなくファンタジー小説も読み始めるんですか?日常では起こらないような話なので普段は感じることのないワクワクを感じると思いますよ」
「図書館でね気になる本を見つけたんだ」
僕の就寝の準備をしていたレンに魔法のことを聞いてみたけどレンは何も知らないみたいだし、最初の僕と同じように話の中だけの存在だと思っている。
ゲームの制作に関わっていた僕も知らないことだしもしかして続編から語られることなのかな。
「では次回行った時に借りてみてはどうですか?ユーマ様就寝の準備ができましたよ。ではおやすみなさいませ、また明日」
「おやすみ」
僕は綺麗に整えられたベッドの中に入り部屋から出て行くレンの後ろ姿を見送った。
その日はいつもよりはっきりした夢を見た。その夢は僕の部屋から出たレンの前にカイトが現れ物影で抱き合う、という夢だった。
その夢は次の日起きてもはっきりと覚えていた。いつもの夢ならぼんやりとしか覚えていないのに数日経っても細部まで覚えていた。
「こんにちは」
1週間後図書館に行くと先週もいた5階の奥にあの子はいた。
「こんにちは、君が聞いた人は魔法のこと信じてなかったでしょ」
会ってすぐ僕が約束を破ったことを見破られた。
「約束破ってごめん。どうして誰かに言ったことが分かったの?」
「魔法を使ったから、って言いたいけど君見てたらバレバレだよ。僕を見た時からおどおどして落ち着きなかったし。これは魔法を使ったんだけど図書館に入ってからの君の鼓動は凄く早かったよ。今もほら、こんなに早い」
目を閉じて僕の胸に手を当ててくる。
「誰に言ったの?」
「えっ、えっと、いつも一緒にいるメイドだけど、本の話だと思われたんだ」
僕の胸に手を当てたまま顔を覗き込んでくる。近い、けど少し長めの前髪の間から輝いている凄く綺麗な澄んだ青い目が見えた。
「魔力も魔法もかなり大昔に忘れ去られたものだからね。知ってるとしたら王族ぐらいじゃないかな」
「王族しか知らないことをなんで君が知ってるの?」
今日もレンとカイトの2人にはおやつを買いに行ってもらっていてこの場には2人しかいないのに僕は声を潜めていた。
「僕の家にね古代語で書かれていた本があったんだ。何十代も前に城で働いていた人の本らしいんだけどね。そこに読めない本があると読みたくなるじゃないか。だからね、必死に研究したよ。そしたら魔法っていう力があると分かって、そこからは魔法って言葉が書いてある本を探しては読んで。最後にこの場所で魔力を手に入れる呪文が書かれてある本を見つけたんだよ」
簡単そうに言うがまず古代語を解読するのが難しいと思うんだけど。
そこを聞くと古代語が段々と変化して現代語ができたはずだから逆に年代を遡って文字を追っていったらしい。文字だけでなく発音も変化していくし、消えた文字や新しく作られた字もあったはずなのに解読していくなんて天才だ。
僕が褒めるとその子は笑う。
「君は変わってるね。僕の家族は物心ついた頃から普通の子供が興味を持たないようなものばかりに興味を持つ僕のことを避けてたし、古代語の研究をしだしてからは気味の悪いものでも見るような目で見てたのに」
僕は何も言えなくなる。
「ほんと君の感情は分かりやすいね。僕は大丈夫だよ。悲しくなんかなかった。好きなことが思う存分できてたから干渉されなくて逆によかったぐらいだよ。だから君がそんな悲しそうな顔をしないで」
僕の暗い顔とは反対にその子の笑顔は明るかった。
「魔力はこの間感じたと思うけどあれから何か変わったことあった?」
話は変わった。そのことに僕はちょっとだけホッとしてしまった。
暗い話は苦手だ。前世も今も気の利いた言葉なんてすぐに思いつかない。
「変わったことなんて無かったと思うけど、あっ、君に会った日の夜に妙にリアルな夢を見たかな。いつもの夢ならすぐ忘れるのにその夢は何日経っても細部まで覚えていたんだ」
「すごいよ、それ魔法だよ。何も知らないのに使えてるなんて本当にすごい。夢じゃなくて君が見たのは実際に起こったことだと思うよ。多分意識だけ飛ばして見たんじゃないかな。それを見た時何を考えてた?」
僕はあの日のことを思い出してみた。
寝る前にレンの後ろ姿を見ながらカイトとのデートはどうだったんだろうと考えていた。
「夢に出てきた人たちのことを考えてた」
「魔力は自分の本来持っている力を増幅させたり、こうしたいという思いや創造を魔法という形で実現させる。君は強い思いの持ち主なんだね。ただ単に思っただけでは魔法にはならないはずなんだ。僕は1週間練習してこんな感じかな」
そう言うとその子の差し出した右手の手の平に小さな竜巻が生まれた。それは動くし、大きさも変わる。
「すごい」
僕も手を広げて竜巻を考える。
「できた!」
さっきの竜巻とは違って安定してなくて今にも消えそうだし自在にも動かせないけどちゃんとした竜巻がそこにはあった。
「本当にすごい。君の想像力はすごいね。君の、んっ?君の名前聞いてなかったね。僕の名前はケイン」
やっとここで自己紹介みたいだ。
「僕の名前はユーマ」
「ユーマ、古代語で『美しい人』君にぴったりの名前だね」
14
お気に入りに追加
299
あなたにおすすめの小説
弟いわく、ここは乙女ゲームの世界らしいです
慎
BL
――‥ 昔、あるとき弟が言った。此処はある乙女ゲームの世界の中だ、と。我が侯爵家 ハワードは今の代で終わりを迎え、父・母の散財により没落貴族に堕ちる、と… 。そして、これまでの悪事が晒され、父・母と共に令息である僕自身も母の息の掛かった婚約者の悪役令嬢と共に公開処刑にて断罪される… と。あの日、珍しく滑舌に喋り出した弟は予言めいた言葉を口にした――‥ 。
転生マザー♂の子育て論
田中 乃那加
BL
ブラック企業で限界社畜だった琴里 肇(ことり はじめ)は同窓会の帰り道、見知らぬ男に刺されて死亡。
転生して村のモブ男『オルニト』としてのんびり田舎生活をしていた。
あの日、森で行き倒れていた男『イドラ』との出会いで運命が変わる。
旅人で魔獣に襲われたという彼を手当てして、村の教会で面倒をみることになった。
村の者たちとも少しずつ親交を深めいく中、いつしかオルニトとイドラは惹かれ合う。
そして一線を越えて結ばれた翌日、ある事件によりイドラは村を追われた。
そして発覚したのは、なんと男でありながらオルニトの妊娠。
身元も知らぬ、しかも村に害を成した男との子どもを産み育てるのか。それとも――。
さらに降りかかる転生者の受難!
果たして平穏無事な人生を送ることが出来るのか!
転生×BL×ドタバタ子育てファンタジーコメディ。
※「え、これ転生設定いらなくね?」と思ったそこのアナタ!
大丈夫、ちゃんと生きてきますから!
【完結】悪役に転生した俺、推しに愛を伝えたら(体を)溺愛されるようになりました。
桜野夢花
BL
主人公の青山朶(あおやまえだ)は就活に失敗しニート生活を送っていた。そんな中唯一の娯楽は3ヵ月前に購入したBL異世界ゲームをすること。何回プレイしても物語序盤に推しキャラ・レイが敵の悪役キャラソウルに殺される。なので、レイが生きている場面を何度も何度も腐るようにプレイしていた。突然の事故で死に至った俺は大好きなレイがいる異世界にソウルとして転生してしまう。ソウルになり決意したことは、レイが幸せになってほしいということだったが、物語が進むにつれ、優しい、天使みたいなレイが人の性器を足で弄ぶ高慢無垢な国王だということを知る。次第に、ソウルがレイを殺すように何者かに仕向けられていたことを知り、許せない朶はとある行動を起こしていく。
※表紙絵はミカスケ様よりお借りしました。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
18禁BLゲームの攻略対象の弟に転生したら皆(攻略対象)が追ってくるんですが?!
雪白 ひな
BL
ごく普通?の男子高校生がBLゲームに転生しちゃいます!
誤字がありましたらコメントで教えて下さると嬉しいです!!
感想書いてくれたら嬉しいです✨やる気スイッチにします!
それと少しでもこの作品を面白いなど思ってくれたら、拡散もお願いします!!
投稿する日にちは2日に1話にします!
父親に会うために戻った異世界で、残念なイケメンたちと出会うお話【本編完結】
ぴろ
BL
母親の衝撃の告白で異世界人とのハーフであることが判明した男子高校生三好有紀(みよしあき)が、母と共に異世界に戻り残念なイケメン達に囲まれるお話。
ご都合主義なので気になる方にはオススメしません。イケメンに出会うまでが長いです。
ハッピーエンド目指します。
無自覚美人がイケメン達とイチャイチャするお話で、主人公は複数言い寄られます。最終的には一人を選ぶはずだったのですが、選べないみたいです。
初投稿なので温かく見守って頂けたら嬉しいです。
大好きな乙女ゲームの世界に転生したぞ!……ってあれ?俺、モブキャラなのに随分シナリオに絡んでませんか!?
あるのーる
BL
普通のサラリーマンである俺、宮内嘉音はある日事件に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
しかし次に目を開けた時、広がっていたのは中世ファンタジー風の風景だった。前世とは似ても似つかない風貌の10歳の侯爵令息、カノン・アルベントとして生活していく中、俺はあることに気が付いてしまう。どうやら俺は「きっと未来は素晴らしく煌めく」、通称「きみすき」という好きだった乙女ゲームの世界に転生しているようだった。
……となれば、俺のやりたいことはただ一つ。シナリオの途中で死んでしまう運命である俺の推しキャラ(モブ)をなんとしてでも生存させたい。
学園に入学するため勉強をしたり、熱心に魔法の訓練をしたり。我が家に降りかかる災いを避けたり辺境伯令息と婚約したり、と慌ただしく日々を過ごした俺は、15になりようやくゲームの舞台である王立学園に入学することができた。
……って、俺の推しモブがいないんだが? それに、なんでか主人公と一緒にイベントに巻き込まれてるんだが!?
由緒正しきモブである俺の運命、どうなっちゃうんだ!?
・・・・・
乙女ゲームに転生した男が攻略対象及びその周辺とわちゃわちゃしながら学園生活を送る話です。主人公が攻めで、学園卒業まではキスまでです。
始めに死ネタ、ちょくちょく虐待などの描写は入るものの相手が出てきた後は基本ゆるい愛され系みたいな感じになるはずです。
美少年は異世界でヤンデレに囲われます
mmm
BL
高校一年生の佐藤真生(さとうまお)は昔から、誘拐されかけたり、ストーカーに付きまとわれるチビな美少年。しかし、本人はまったくの無自覚で無防備。そんな真生が突然異世界に転移してしまい、周りから愛される話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる