上 下
11 / 72

11

しおりを挟む
 今日はとうとう街へ行く日だ。
 前日までにレンとカイトとの3人でルートの確認やお店の確認などが行われていた。
 あの騎士の心配とは反対にカイトは真面目に恥ずかしがることなくレンと今日のことを話し合っていた。

 「楽しみだな」

 街へと走る馬車の中で僕は1人はしゃいでいた。
 馬車の中には私服に着替えたレンとカイト、そしていつもより質素な服装をしている僕の3人がいる。

 「今日馬車を停める場所からユーマ様が行きたい図書館までは少し歩きますが大丈夫ですか?」
 「鍛えてるから大丈夫だよ」

 カイトの言葉に僕は笑顔で答えた。
 街の所々に馬車を停める場所、前世の駐車場のような所があった。今日は1番の目的地である図書館のすぐ近くではなく少し離れた馬車止めに停めてもらうことにしていた。
 それは僕が街をぶらぶらしてみたかったから頼んだ。

 「ユーマ様着いたみたいですよ」

 レンの言葉通り馬車は止まった。
 外から扉が開けられる。
 まず護衛であるカイトが降り周りの様子を確認する。次に僕が降りて最後にレンが降りた。

 「私はここで馬の世話をしながら待っていますのでごゆっくり楽しんできてください」

 御者の言葉に見送られ僕達は図書館の方へと歩き出した。

 「うわぁー、いい匂いがするね」
 「そうですね、この辺りはお茶やお菓子を扱うお店が集まっている所ですから甘い香りがしますね。帰りに何か買って帰りましょうか」
 「うん、何がいいかな」
 「図書館に行くまでの道のりでユーマ様が1番気に入ったものを帰りに買いましょう」

 馬車から降りた僕が見た街並みはまるで前世の中世ヨーロッパのようだった。レンガ造りの家が並んでいてとにかく可愛い。見ているだけでわくわくしてくる。
 街は図書館を中心にしてそれぞれ区画に分かれている。この辺りは食料品を扱う区画の中でも特にお茶とお菓子を取り扱っている店が集まっている場所だった。馬車を降りた時から焼き菓子の甘い香りがしてきていた。
 僕が本を読む時いつも紅茶を飲んでいるから気を利かせてこの場所に馬車を停めてくれたんだと思う。

 「さぁ、行きましょうかユーマ様」

 レンが僕の手を握って歩き出す。カイトは僕達の後ろを付いてくる。

 「ユーマ様、あのお店のマドレーヌ美味しそうですね。それにあちらのお店のマカロンはメイドの仲間内で人気なんですよ。いつもユーマ様が飲まれている紅茶の茶葉はあのお店で買っているんです」

 全てが初めての僕にこの辺りによく買い物に来ているレンが色々説明してくれる。図書館までの30分の道のりなんてあっという間だった。
 カイトは僕達にぶつかりそうな人がいれば間に入ってくれたりとスリに合わないよう注意していた。

 「わぁー、大きい建物。ここ本当に図書館?」

 たどり着いた図書館は僕の想像以上の大きさだった。
 5階立てで1階分の広さは東京ドームぐらいだろうか、正確な広さは分からないけどとにかく広い。

 「......大きいね」
 「ここには世間に出回っている本全てと歴史的に貴重な本など本という形になっているものは全て存在していると言われていますからね。でも安心してくださいユーマ様が読みたい本があるエリアは分かっていますから」

 あまりの大きさに驚いている僕を安心させるようにレンは言った。
 敷地に入るための門にも騎士はいるし、扉の前にも2人の騎士がいる。中に入ると騎士が巡回していた。

 「騎士の人も多いんだね」
 「高位の貴族やたまにですが王族も訪れますからね。特に一般書が置いてある1、2階へは訪れる人も多いので警備も厳重になっています」

 1、2階が一般書、3、4階が専門書、5階は他の階に入りきらず、そして誰も読まないような人気のない本が置いてあった。だから他の階は騎士が巡回しているのに5階だけは扉の前に2人の騎士が立っているだけだった。
 これも全てレンが教えてくれた。
 レンの説明を聞きながら目当てのエリアへ行く。
 そこは宝の山だった。
 レンの説明によると沢山の利用者がいるようだが広すぎるからか人は散らばっていて多いという感じはしなかった。そのおかげでゆっくり本を選ぶことができた。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

弟いわく、ここは乙女ゲームの世界らしいです

BL
――‥ 昔、あるとき弟が言った。此処はある乙女ゲームの世界の中だ、と。我が侯爵家 ハワードは今の代で終わりを迎え、父・母の散財により没落貴族に堕ちる、と… 。そして、これまでの悪事が晒され、父・母と共に令息である僕自身も母の息の掛かった婚約者の悪役令嬢と共に公開処刑にて断罪される… と。あの日、珍しく滑舌に喋り出した弟は予言めいた言葉を口にした――‥ 。

転生マザー♂の子育て論

田中 乃那加
BL
 ブラック企業で限界社畜だった琴里 肇(ことり はじめ)は同窓会の帰り道、見知らぬ男に刺されて死亡。  転生して村のモブ男『オルニト』としてのんびり田舎生活をしていた。  あの日、森で行き倒れていた男『イドラ』との出会いで運命が変わる。  旅人で魔獣に襲われたという彼を手当てして、村の教会で面倒をみることになった。  村の者たちとも少しずつ親交を深めいく中、いつしかオルニトとイドラは惹かれ合う。  そして一線を越えて結ばれた翌日、ある事件によりイドラは村を追われた。  そして発覚したのは、なんと男でありながらオルニトの妊娠。  身元も知らぬ、しかも村に害を成した男との子どもを産み育てるのか。それとも――。  さらに降りかかる転生者の受難!  果たして平穏無事な人生を送ることが出来るのか!  転生×BL×ドタバタ子育てファンタジーコメディ。  ※「え、これ転生設定いらなくね?」と思ったそこのアナタ!   大丈夫、ちゃんと生きてきますから!    

【完結】悪役に転生した俺、推しに愛を伝えたら(体を)溺愛されるようになりました。

桜野夢花
BL
主人公の青山朶(あおやまえだ)は就活に失敗しニート生活を送っていた。そんな中唯一の娯楽は3ヵ月前に購入したBL異世界ゲームをすること。何回プレイしても物語序盤に推しキャラ・レイが敵の悪役キャラソウルに殺される。なので、レイが生きている場面を何度も何度も腐るようにプレイしていた。突然の事故で死に至った俺は大好きなレイがいる異世界にソウルとして転生してしまう。ソウルになり決意したことは、レイが幸せになってほしいということだったが、物語が進むにつれ、優しい、天使みたいなレイが人の性器を足で弄ぶ高慢無垢な国王だということを知る。次第に、ソウルがレイを殺すように何者かに仕向けられていたことを知り、許せない朶はとある行動を起こしていく。 ※表紙絵はミカスケ様よりお借りしました。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

18禁BLゲームの攻略対象の弟に転生したら皆(攻略対象)が追ってくるんですが?!

雪白 ひな
BL
ごく普通?の男子高校生がBLゲームに転生しちゃいます! 誤字がありましたらコメントで教えて下さると嬉しいです!! 感想書いてくれたら嬉しいです✨やる気スイッチにします! それと少しでもこの作品を面白いなど思ってくれたら、拡散もお願いします!! 投稿する日にちは2日に1話にします!

大好きな乙女ゲームの世界に転生したぞ!……ってあれ?俺、モブキャラなのに随分シナリオに絡んでませんか!?

あるのーる
BL
普通のサラリーマンである俺、宮内嘉音はある日事件に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 しかし次に目を開けた時、広がっていたのは中世ファンタジー風の風景だった。前世とは似ても似つかない風貌の10歳の侯爵令息、カノン・アルベントとして生活していく中、俺はあることに気が付いてしまう。どうやら俺は「きっと未来は素晴らしく煌めく」、通称「きみすき」という好きだった乙女ゲームの世界に転生しているようだった。 ……となれば、俺のやりたいことはただ一つ。シナリオの途中で死んでしまう運命である俺の推しキャラ(モブ)をなんとしてでも生存させたい。 学園に入学するため勉強をしたり、熱心に魔法の訓練をしたり。我が家に降りかかる災いを避けたり辺境伯令息と婚約したり、と慌ただしく日々を過ごした俺は、15になりようやくゲームの舞台である王立学園に入学することができた。 ……って、俺の推しモブがいないんだが? それに、なんでか主人公と一緒にイベントに巻き込まれてるんだが!? 由緒正しきモブである俺の運命、どうなっちゃうんだ!? ・・・・・ 乙女ゲームに転生した男が攻略対象及びその周辺とわちゃわちゃしながら学園生活を送る話です。主人公が攻めで、学園卒業まではキスまでです。 始めに死ネタ、ちょくちょく虐待などの描写は入るものの相手が出てきた後は基本ゆるい愛され系みたいな感じになるはずです。

美少年は異世界でヤンデレに囲われます

mmm
BL
高校一年生の佐藤真生(さとうまお)は昔から、誘拐されかけたり、ストーカーに付きまとわれるチビな美少年。しかし、本人はまったくの無自覚で無防備。そんな真生が突然異世界に転移してしまい、周りから愛される話です。

異世界でチートをお願いしたら、代わりにショタ化しました!?

ミクリ21
BL
39歳の冴えないおっちゃんである相馬は、ある日上司に無理矢理苦手な酒を飲まされアル中で天に召されてしまった。 哀れに思った神様が、何か願いはあるかと聞くから「異世界でチートがほしい」と言った。 すると、神様は一つの条件付きで願いを叶えてくれた。 その条件とは………相馬のショタ化であった!

処理中です...