捨てられオメガの幸せは

ホロロン

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明るい日の暖かさと眩しさを感じて僕は目を開けた。なんだか長い長い夢を見ていたような気がした。車に轢かれて、目が覚めたら10年前に戻っていて、それから冴島に会って冴島に謝ったんだっけ。それから……ってここはどこだ?見慣れない天井が目に入ってきた。なんとなく息がしづらく顔に手を当てると酸素マスクをつけていた。マスクを外し起きあがろうとするが身体に力が入らずに起き上がれない。病院とも違う雰囲気がする部屋だったが僕の腕には点滴の針が刺さっていた。ふとドアがあるのに気がついて見つめていたら、白衣を着た年配の男性が入ってきた。

「あぁ…やっと目が覚めましたか?ご気分はどうですか?記憶はありますか?」
目尻を下げて柔らかく微笑んで聞いてきた。

「ここ……んんっは?」
声が掠れて出にくかった。するとベットのリクライニングを起こして、側にあった水差しから水を注いで渡してくれた。

「ここは聖ルーチアホームです」
「ホーム?」
「はい。オメガ専用の家(施設)になります。行き場をなくしたオメガたちがここで共同生活をしながら番を見つけるんです。中には番に捨てられてしまったオメガたちもいるんですが…その方達は隣の安全な施設にいるので大丈夫ですよ。安心してくださいね」
「僕はどうしてここに?」
水を飲んだからかいくらか声が出るようになった。

「覚えていませんか…そうですよね。ずっと眠っておられましたから、1週間ほど前になりますね。小さな男の子を助けようとして車に轢かれてしまったんです。その時にここのホーム長と息子さんが偶然居合わせてあなたを助けたんです。でも思った以上に怪我が酷くて手術はしましたが意識もないので一時はもうダメかと思ったほどです。それでも息子さんが献身的にあなたの看護をしてくれました。あっ息子さんは留学先から帰ってきたばかりでここのホームの立ち上げにも全面的に協力してくれたんです。今までオメガの施設はあまり環境が良くないところで行きたがらない人が多かったんですが、ここはそんなことないとみんな喜んでいます。特にオメガのマッチングに力を入れてまして発情期をアルファと過ごすこともできますし、望まれれば結婚だって後押ししているんですよ」

「結婚…ですか?」

「はい。中には番になる人を見つけたのに番になる前に捨てられてしまった方もいるので無理にとは言いません。でもやっぱりヒートの時などはパートナーがいた方が心も身体も楽になりますからね」

「そうですか……」

「あっそうそう。右足を骨折していて手術をしていますので1人で起き上がることはしないでくださいね。全身打撲の方は少しは良くなってると思いますが無理はせずにしてください。今ホーム長を呼んで来るのでお待ちくださいね」
そういって静かに部屋を出て行った。
そうか…結局あれは夢だったのか…そりゃそうだよな神様だって人生のリセットボタンは押せないか…なんて失笑してしまった。その時ノック音がして1人の男性がさっきの白衣を着た男性とやってきた。ホーム長だろうか?3つ揃えのスーツを着て髪をオールバックに整えていかにもアルファというオーラまといながら…なのに俺の顔を見ると

「いやあ~南くん、やっと気がついたようでよかったよ」
にこやかに笑みを浮かべてその男性は部屋に入ってきた。

「こんにちは」
僕は覚えがない男性に声をかけられた。
「記憶はどうかな?だいぶ寝ていたようだけど覚えてるか?変なところはないか?」

「はい。大丈夫です」

「そうか。まだ目が覚めたばかりだから落ち着いたら検査をさせてね。あぁ私がセンター長だ。南くんには初めて会うよな。君のことはよく話には聞いてたけど、そうそう息子も心配してて連絡したらすぐに来ると言ってたから、その前に検査しようかって起き上がれるかな?」

「いえ…力が入らなくて」

「そうだよな。1週間近くも眠ってたんだ仕方がないよな。じゃあ大川先生よろしくな」
そう言うと白衣を着た大川先生が準備しますね。そう言って看護師さんを呼んできた。僕はベットに横たわったまま移動してレントゲンを撮ったり、記憶の検査などをした。リハビリの先生とも話をして今後のリハビリについての計画を立ててもらってさっきの部屋に戻ったときにはぐったりしてしまった。

「南、大丈夫か?」
「えっ……」
そこには会いたいと思いながら会えずにいた冴島が立っていた。

「冴島……」
「あぁ久しぶりだな。元気にしてたかって大変だったよな。人助けって南らしいが」
そう言うと冴島は口をつぐんだ。何か言いたそうにして…でもその後は何も言わなかった。僕の頭はプチパニックを起こしていた。なんで冴島がここにいるんだ?アメリカに行ったんじゃ…聞きたいことは山のようにあるのに僕も何も言えなくなった。そんな僕たちの様子を見ていたセンター長が

「全く大樹だいきは何やってるんだ。ちゃんと話してあげないと南くんも戸惑うだろうが、ちゃんと順を追って話してあげなさい。南くんは事故にあってから今日までの1週間の記憶がないんだからな。南くん、身体が辛くなければ大樹の話を聞いてくれないか?」
なんとなく不安になりながらも頷くとセンター長と大川先生は部屋を出て行ってしまった。僕と冴島だけの空間は少し息がしづらかった。

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