捨てられオメガの幸せは

ホロロン

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僕はオメガで生まれてきて今まで凄く幸せだったよ。と思うようにして今まで過ごしている。そしてこれからも……優しいアルファのお父さんとお母さん、そして2つ年上のアルファの双子のお兄さんの流星りゅうせい光星こうせいの5人家族だ。みんな僕に優しかった。そう……みんな僕のお金目当てで優しくしてくれているなんだ。そんなの知ってるよ。普通はアルファの家庭にオメガが産まれると周りの世間体を気にしてオメガの施設に預けたり置いてきたりする家があるけど、僕の家族はそんなことしなかった。その代わりに僕を可愛がって優しくしてくれた。それはオメガを捨てる家が多いからって政府がオメガを育てる家庭には普通の3倍の子ども手当を渡すことになったからだ。それでも捨てる人もいる。だけどその手当も18歳まで、でも20歳まで育てるとお祝い金がもらえるらしい……

だから20歳になった僕は双子のお兄ちゃんの同級生と付き合うことになった。仕方なくね…本当は違う人が好きだった。でも僕は家族のために自分の気持ちを初めは押し殺していたが優しくしてくれてるうちに彼を少しだけ好きになっていった。僕が好きだった人は誰かと番になってるかもしれない遠い異国の地で…そう思って自分の気持ちに蓋をして鍵をかけた。自分のわがままな気持ちが溢れないように。
彼が大学を卒業したら番になる約束をしている。それもあと半年……あと半年したら番になろうと……彼の住んでるマンションに度々泊まりに行ったりするうちに半同棲するようになった。

でもある日、僕のヒートの周期と彼の出張が重なってしまった。こんなこと今までなかったからとても不安で、寂しくて……そんな僕に
「ごめん。急いで帰ってくるからね。ちゃんと待っててね」 
抱きしめてそう言って出かけた彼はその日……帰ってはこなかった。
夕方前からヒートで体が疼き彼の服で巣を作りながら僕はずっと彼が帰ってくるのを待っていた。
「早く帰ってきて…」
涙と鼻水でぐしょぐしょに濡れながら薬を飲んで溢れくる欲望を抑えながら……3日後の夕方になりようやく帰ってきてくれたのに彼が言った一言で僕は奈落の底に落とされた。

「運命の番が俺の前にも現れたんだよ。運命の番なんて夢かと思ったけど本当にいたんだわ」
ヒートで苦しんでる僕に向かって笑いながら言ってきた。やっぱり運命の番とのエッチは今までにないくらい最高だの。めちゃくちゃかわいい子だの。もう一生離れられないように番契約も結んだと……

「えっ?つが…い?」
「うん。ごめんね。でもさぁ~やっぱり運命の番には抗えなくて…本当ごめんね。でもその子はお前と違って傷もないし本当に綺麗な子なんだよ。お前も会ってみる?」
別に悪びれた感じがないものの言い方で感情も何もこもってなかった。ただ口先だけで謝っているようなそんな気がした。僕だって好きでこの傷を作ったわけじゃないのに…今さらこの傷のことを言われるなんて…僕は前髪を下ろして額の傷を隠した。そんな僕を横目に彼はクローゼットからスーツケースを取り出して服を詰め出した。

「あーあ、この服使ってるんだ。まぁこっちでいいか?」
クローゼットの中からどんどん服がなくなっていくのを僕は黙ってただ見つめていた。しばらくして荷物を詰め終わった彼が
「じゃあね…しばらくはここにいてもいいけど1ヶ月後には解約するからそれまで片付けて出てってね」
そう言って彼は僕を置いて部屋を出て行った。

その後、なんとか薬を飲みながらヒートが終わるのを待って彼との思い出が詰まった部屋を片付けた。そして…俺もその家を出て行った。部屋の鍵を閉めるときには泣いてしまったけど。結局僕は実家に帰るしかいく場所がなくて家に帰ったのだけど…


「お前、捨てられたんだって?」
「最悪、今まで色々してあげたのが無駄になったじゃん」
「本当だよ。せっかく倉田貿易との繋がりができたのに」
「役立たず」
あの優しかったお父さん、お母さん、お兄さんたちはもうそこにはいなかった。結局僕はただオメガという存在を利用されていただけだったんだ。それでも僕はこの家族ごっこが本当の家族になれると思ったのに…

「お前みたいな役立たずはこの家にはいらないから」
「早く出ていけよ」
「お金にもならない子なんていなくていいから」
「やっぱりオメガなんて育てない方がよかった」
そう言われて出ていくしかなかった。どこにも頼る場所もなく、帰る家もない。僕の存在なんて……
でも待てよ。そんなのおかしいじゃないか?僕が何したんだ?僕は悪くない。絶対に…絶対にみんなを許さない。
僕を捨てた彼も、両親も兄たちも全員が全員、自分の都合のいいようにして俺はオメガだからって世間からも虐げられなきゃいけない人間なんかじゃない。僕は負けない。

でも現実問題、誰にも頼れなく頼る人もいない。こんなことになるならもっと友達をたくさん作っておけばよかった…でも唯一頼れる人がいたのを思い出した。彼がいたから僕は上部だけの友達はいらなかった。
冴島……もしまた会えたら僕を助けてくれるかな?でも…都合が良すぎるか…冴島とは喧嘩別れしたままだったな…僕がわがままだったから…
俺は重たいスーツケースを引きずるようにただ歩いていた。このままオメガの施設に行ったほうがいいのか?それとも……

その時、信号待ちをしていた俺の目の前を小さな男の子がボールを追いかけて赤信号を横切ろうとしていた。
「危ない!」
そう言って俺は車にぶつかりそうな子を庇ったと同時に全身に痛みが走った。あぁ俺は車に轢かれたのか…周りでは悲鳴と叫ぶ声が聞こえている。
このまま死ぬのかな。あの子は無事だろうか?最後に冴島に謝りたかった。いつか生まれ変わったら冴島とあのまま仲良くしたかった。自分の気持ちに蓋をして冴島も苦しめた。

「ごめん。冴島…今までありがとうな……お前の言う通りだったわ…でも僕はそれでも幸せになりたかった…」

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