233 / 297
魔人領編
217 アイーズ
しおりを挟む
アイーズ初日の夜は、この街でこれまでにない程の盛り上がりを見せたのは当然といえよう。
客人として王女であるアリスの他、大王の守護者であるセシール、人間領からの使者である朱王達が来た事で歓迎ムードでの準備の中、心躍る音楽が流れる事で準備作業から盛り上がり始めていた。
そして準備が終わればすぐに宴会が始まり、アリスを始めとして全員が挨拶をし、酒が回り始めたところからはカラオケ大会だ。
ステージに上がった朱王が歌い、まるでライブでもしているかのように街の人々を煽ってどんどん盛り上げていく。
続いてカミン、フィディックが歌えばアリスとセシールも負けてはいられない。
二人で練習していたのであろう、ユニゾンで歌い出す。
そしてアリス達が歌った曲は以前朱王が千尋達と踊った曲であり、朱雀も巻き込んで踊れば街全体が盛り上がり、みんな立ち上がって思い思いに踊り出す。
曲が終われば歓声と拍手に包まれ、次の曲をとまた朱王がステージに押し上げられた。
グラスを片手に一曲歌いあげ、自分のライブでもやっているかのようにMCを挟みつつ続けてまた何曲か歌っていく。
楽しそうに場を盛り上げ、グラスが空になったところでフィディックと交代してステージを降りた。
その後はドルトルやグレックも歌い出した事で更なる盛り上がりを見せた。
夜も更けてなおも盛り上がるアイーズだが、このまま朝まで騒ぎ続けては人間の老人達の体がもたないだろう。
ドルトルが〆の挨拶をしてこの楽しい宴会は終わりを向かえた。
客人である朱王達は宿泊先に案内してもらい、街の人々は真夜中の片付け作業だ。
朱王達はアイザックの邸内に部屋を借りてベッドに横になり、ベッドが固いと寝袋を持ってきて寝ることにした。
もちろんこの夜も宴会から抜けてミリーに通話したのだが、街の人々に引っ張られて途中で通話を終えてしまっている。
翌朝少し長めに話そうと思う朱王だった。
アイーズにはあと二日滞在する予定であり、翌日は朝から街の様子を見学に行く朱王達。
とても楽しそうな朱王は行く先々で声をかけられ、家の造りを見せてもらったり、洗濯場や調理場の見学、街人に教えられながら農作業体験などもして、アイーズの街の生活スタイルを満喫しているようだ。
昼食はグレックが持ってきてくれた物を広場に設置されてあるテーブルで食べる事にする。
すると街の人々が昼休みに食事を持って集まりだし、木の実やフルーツをもらってデザートに食べる事にした。
食後には集まった人々を集めて、昨日のダンスのレッスンまで始めてしまう朱王。
やはり世界は違えど若者は新しいものが大好きだ。
すぐにできるようにと簡単にアレンジしたダンスを教えていく。
若者達がダンスを覚えようとする中、アリスはソワソワと混ざりたさそうに見つめながらも必死で堪えている。
王女としてその街人の輪の中に入って練習するのはプライドが許さないのかもしれない。
今後、大王領への移動中にでも教えれば喜んでくれるだろう。
この日の夜はカラオケはやめて映画を観る事にした。
クイースト王国の映画の日は昨日と今日。
昨日はアイーズに着いたばかりでパーっと楽しみたかった朱王は、映画をやめてカラオケ大会を実行したのだ。
この日はアイーズの人々にも映画を楽しんでもらおう。
ここ最近では映画を十九時から、二十一時からはクリムゾンで作った番組を放映しているはずだ。
また広場で宴会を開催し、この日はアイーズの酒を飲みながらワイワイと人間領や魔人領の話を交わしていく。
アリスやセシールは人間領の良さを全身を使って表現し、今すぐにでも戻りたいなどと言いながら様々な事を語っている。
しばらく宴会として酒を飲み交わしていたところでモニターに映像が映し出された。
昨夜もカラオケで本人の映像や魔族文字などが表示されていたのだが、この日映るのは人間領に住むクリムゾン隊員だ。
簡単ではあったが挨拶のあと、この映画の見どころや興味を惹く物言いで気分を盛り上げたところで映画が開始される。
これまで観た事のない世界が映し出され、賑やかだった広場は静まりかえり、映画に釘付けとなっているようだ。
ここアイーズでも映画の世界に感動し涙する者が続出。
拍手喝采と感動の涙、そしてこの映画に乾杯を。
この魔人領という閉鎖的な空間に生きてきた彼らの心に新たな芽が生まれた瞬間だろう。
心動かす映画の感想を語り合う人々と、その光景を見つめながら美味しく酒を楽しむ朱王と朱雀、カミンの三名。
アリスやセシール、フィディックも感想を語り合っているのだが、朱王達はただ酒を飲みながら思う。
《これは昨日観たやつだ》
車の移動中に観た映画がたまたま今日クイースト王国で放映されたようだ。
少し期間をおいて観ればまた違った気持ちで観れたのだろうが、二回続けて観たとすればそれほどテンションは上がらないだろう。
それから少ししてクリムゾンの番組が始まった。
その内容は【クイーストの美味しい物を食べ歩こう】というもので、綺麗な料理や可愛らしいお菓子などが映され、美味しそうに食べる映像が流される。
映画のように盛り上がるような事はないのだが、見た事もないような食べ物が映し出され、それを美味しいと食べられる映像を見せられては人間領の料理に興味が湧かないはずがない。
そして朱雀にとっては興味も食欲もそそる番組だったらしく、クイーストに帰ったら絶対に食いに行くなどと言っていた。
三日目に見学したのは魔人領の資源についてある程度把握する為、街の外に出て様々な場所を見て回った。
この広大な魔人領であれば人間領よりも豊富な資源があるのは確実であり、その産出場所がある程度わかっているのであればすぐにでも貿易が始められるだろう。
ここアイーズは人間領に比較的近い位置にあり、この周辺で採れるとすれば輸送もそれほど大変ではない。
鉄鉱石や宝石類、もしくは特殊な魔石などであればその価値は高くなり需要も高い。
街にも製鉄場があり、刃物なども金属で作られていることからどこか採掘場所は見つけているはずだ。
魔石については使い方を知らないようだが、ミスリルがないのであれば仕方がない事だ。
ミスリルは特殊な金属であり鉱石からの抽出に手間が掛かる為、朱王でさえも自分で抽出しようなどとは思わない。
ただ一つ、朱雀丸を削り出したミスリル塊に関しては別であり、ミスリル鉱石から抽出したのではなく、そのままの形状でミスリル塊として手に入れている。
人の手を加えられる事なく自然に抽出されたミスリルなのだ。
もしそれがまた見つかるような事があれば朱王はまた手に入れたいとも思っているのだが、そう簡単に見つかる事はないだろう。
この日一日掛けて資源の確認作業を行った。
これはアリスやセシールにとっても今後の取り引き材料として重要なものであり、朱王の説明を受けながらしっかりとリルフォン内にメモを取っている。
もちろんドルトルとグレックもだ。
少し専門的な内容になれば理解できないだろうと、朱王は映像を記録するよう指示を出し、リルフォン内にフォルダを作成させて個別に引き出しやすいよう整理して説明を続けていた。
結果としては見て回った資源の総量はそれ程多くはなかったが、今後調査を進めれば人間領との取り引きに使える材料は充分にあるだろうという結論に至った。
アイーズの周辺に関してはドルトルとグレックで担当する鉱石や宝石類を分担し、他にも採掘場を増やす事で新たな資源を確保。
運搬などに関しては今後煮詰めていくとしても、まずは調査が重要だろうとして今後獲物探し以外にも街の外へと人員を割いてもらう必要がある。
街が発展すると知れば皆協力的になるだろう。
他の領地でも今後は資源の調査を進めていく必要もあるが、人間領から遠い地であれば運搬の問題がある為それ程急ぐ必要はない。
まずはアイーズ周辺の調査が最優先だろう。
領主であるアイザックの許可なく今後の方針が決まってしまったのだが、その命令が王女からとなればアイザックも従う以外にない。
ドルトルとグレックはまとまった話を今夜アイザックに説明する事としてこの日の確認を終えた。
夜はまた酒盛りをしながらカラオケをして楽しんだ。
街の人々も何人かで一曲ずつ覚えてきたらしく、ハモったりハモらなかったり、上手かったり下手だったりと様々ではあったが、歌う気持ちよさを知ってとても満足そう。
今後もたくさんの曲を覚えて楽しんでもらいたいものだ。
街の人々が歌っていれば朱王も少し抜け出しても連れ去られる事はない。
広場から離れてミリーと通話をし始めた。
ミリー達は今、ゼス王国の観光で飛び回っているようで、毎日違う景色を見ては美味しい物を食べて回っているとの事。
朱王がアイーズに到着した日には車が完成し、思ったより乗り心地が悪くて困っていると笑うミリーはやはり可愛らしかった。
アイーズで楽しい三日を過ごし、出発の際には街人総出で見送ってくれた。
帰りもまた寄りたいなと思いながらも車を走らせる。
すでに坂道も広く拡張されており、問題なく下っていく事ができた。
アイーズから近い場所であればある程度拓けていて走行も問題ないのだが、程なくして人通りが少ないのか道の脇には足の長い草が生えていて見通しが悪くなり、道はあっても草が邪魔をしてどこが道なのかわからない程だ。
そして道幅もそれ程広くはなく、バリウスは地球でいうところの軍用車に近い大きさがありその横幅が足りない。
道の端に大きな石でも埋まっていれば車を壊してしまう可能性もある。
道がある以上草原や林の中を抜けるよりはマシだがそれ程速度を出す事はできないだろう。
およそ20キロの速度で走り進み、八時間走ったとして一日で160キロ。大王領までは約2500キロ程あるという事なので、十五日以上、それも草原が続くとは限らない為二十日以上は掛かるだろうと予想される。
それを見越して食料も大量に積んであり、肉などは現地調達になるが時間が掛かる事以外はそれ程問題はない。
アイーズから徒歩での移動であれば優に二月以上は掛かるとの事だし、まだ車の方が充分に早いのだ。
それ程急ぐ事なくのんびりと向かう事にする。
客人として王女であるアリスの他、大王の守護者であるセシール、人間領からの使者である朱王達が来た事で歓迎ムードでの準備の中、心躍る音楽が流れる事で準備作業から盛り上がり始めていた。
そして準備が終わればすぐに宴会が始まり、アリスを始めとして全員が挨拶をし、酒が回り始めたところからはカラオケ大会だ。
ステージに上がった朱王が歌い、まるでライブでもしているかのように街の人々を煽ってどんどん盛り上げていく。
続いてカミン、フィディックが歌えばアリスとセシールも負けてはいられない。
二人で練習していたのであろう、ユニゾンで歌い出す。
そしてアリス達が歌った曲は以前朱王が千尋達と踊った曲であり、朱雀も巻き込んで踊れば街全体が盛り上がり、みんな立ち上がって思い思いに踊り出す。
曲が終われば歓声と拍手に包まれ、次の曲をとまた朱王がステージに押し上げられた。
グラスを片手に一曲歌いあげ、自分のライブでもやっているかのようにMCを挟みつつ続けてまた何曲か歌っていく。
楽しそうに場を盛り上げ、グラスが空になったところでフィディックと交代してステージを降りた。
その後はドルトルやグレックも歌い出した事で更なる盛り上がりを見せた。
夜も更けてなおも盛り上がるアイーズだが、このまま朝まで騒ぎ続けては人間の老人達の体がもたないだろう。
ドルトルが〆の挨拶をしてこの楽しい宴会は終わりを向かえた。
客人である朱王達は宿泊先に案内してもらい、街の人々は真夜中の片付け作業だ。
朱王達はアイザックの邸内に部屋を借りてベッドに横になり、ベッドが固いと寝袋を持ってきて寝ることにした。
もちろんこの夜も宴会から抜けてミリーに通話したのだが、街の人々に引っ張られて途中で通話を終えてしまっている。
翌朝少し長めに話そうと思う朱王だった。
アイーズにはあと二日滞在する予定であり、翌日は朝から街の様子を見学に行く朱王達。
とても楽しそうな朱王は行く先々で声をかけられ、家の造りを見せてもらったり、洗濯場や調理場の見学、街人に教えられながら農作業体験などもして、アイーズの街の生活スタイルを満喫しているようだ。
昼食はグレックが持ってきてくれた物を広場に設置されてあるテーブルで食べる事にする。
すると街の人々が昼休みに食事を持って集まりだし、木の実やフルーツをもらってデザートに食べる事にした。
食後には集まった人々を集めて、昨日のダンスのレッスンまで始めてしまう朱王。
やはり世界は違えど若者は新しいものが大好きだ。
すぐにできるようにと簡単にアレンジしたダンスを教えていく。
若者達がダンスを覚えようとする中、アリスはソワソワと混ざりたさそうに見つめながらも必死で堪えている。
王女としてその街人の輪の中に入って練習するのはプライドが許さないのかもしれない。
今後、大王領への移動中にでも教えれば喜んでくれるだろう。
この日の夜はカラオケはやめて映画を観る事にした。
クイースト王国の映画の日は昨日と今日。
昨日はアイーズに着いたばかりでパーっと楽しみたかった朱王は、映画をやめてカラオケ大会を実行したのだ。
この日はアイーズの人々にも映画を楽しんでもらおう。
ここ最近では映画を十九時から、二十一時からはクリムゾンで作った番組を放映しているはずだ。
また広場で宴会を開催し、この日はアイーズの酒を飲みながらワイワイと人間領や魔人領の話を交わしていく。
アリスやセシールは人間領の良さを全身を使って表現し、今すぐにでも戻りたいなどと言いながら様々な事を語っている。
しばらく宴会として酒を飲み交わしていたところでモニターに映像が映し出された。
昨夜もカラオケで本人の映像や魔族文字などが表示されていたのだが、この日映るのは人間領に住むクリムゾン隊員だ。
簡単ではあったが挨拶のあと、この映画の見どころや興味を惹く物言いで気分を盛り上げたところで映画が開始される。
これまで観た事のない世界が映し出され、賑やかだった広場は静まりかえり、映画に釘付けとなっているようだ。
ここアイーズでも映画の世界に感動し涙する者が続出。
拍手喝采と感動の涙、そしてこの映画に乾杯を。
この魔人領という閉鎖的な空間に生きてきた彼らの心に新たな芽が生まれた瞬間だろう。
心動かす映画の感想を語り合う人々と、その光景を見つめながら美味しく酒を楽しむ朱王と朱雀、カミンの三名。
アリスやセシール、フィディックも感想を語り合っているのだが、朱王達はただ酒を飲みながら思う。
《これは昨日観たやつだ》
車の移動中に観た映画がたまたま今日クイースト王国で放映されたようだ。
少し期間をおいて観ればまた違った気持ちで観れたのだろうが、二回続けて観たとすればそれほどテンションは上がらないだろう。
それから少ししてクリムゾンの番組が始まった。
その内容は【クイーストの美味しい物を食べ歩こう】というもので、綺麗な料理や可愛らしいお菓子などが映され、美味しそうに食べる映像が流される。
映画のように盛り上がるような事はないのだが、見た事もないような食べ物が映し出され、それを美味しいと食べられる映像を見せられては人間領の料理に興味が湧かないはずがない。
そして朱雀にとっては興味も食欲もそそる番組だったらしく、クイーストに帰ったら絶対に食いに行くなどと言っていた。
三日目に見学したのは魔人領の資源についてある程度把握する為、街の外に出て様々な場所を見て回った。
この広大な魔人領であれば人間領よりも豊富な資源があるのは確実であり、その産出場所がある程度わかっているのであればすぐにでも貿易が始められるだろう。
ここアイーズは人間領に比較的近い位置にあり、この周辺で採れるとすれば輸送もそれほど大変ではない。
鉄鉱石や宝石類、もしくは特殊な魔石などであればその価値は高くなり需要も高い。
街にも製鉄場があり、刃物なども金属で作られていることからどこか採掘場所は見つけているはずだ。
魔石については使い方を知らないようだが、ミスリルがないのであれば仕方がない事だ。
ミスリルは特殊な金属であり鉱石からの抽出に手間が掛かる為、朱王でさえも自分で抽出しようなどとは思わない。
ただ一つ、朱雀丸を削り出したミスリル塊に関しては別であり、ミスリル鉱石から抽出したのではなく、そのままの形状でミスリル塊として手に入れている。
人の手を加えられる事なく自然に抽出されたミスリルなのだ。
もしそれがまた見つかるような事があれば朱王はまた手に入れたいとも思っているのだが、そう簡単に見つかる事はないだろう。
この日一日掛けて資源の確認作業を行った。
これはアリスやセシールにとっても今後の取り引き材料として重要なものであり、朱王の説明を受けながらしっかりとリルフォン内にメモを取っている。
もちろんドルトルとグレックもだ。
少し専門的な内容になれば理解できないだろうと、朱王は映像を記録するよう指示を出し、リルフォン内にフォルダを作成させて個別に引き出しやすいよう整理して説明を続けていた。
結果としては見て回った資源の総量はそれ程多くはなかったが、今後調査を進めれば人間領との取り引きに使える材料は充分にあるだろうという結論に至った。
アイーズの周辺に関してはドルトルとグレックで担当する鉱石や宝石類を分担し、他にも採掘場を増やす事で新たな資源を確保。
運搬などに関しては今後煮詰めていくとしても、まずは調査が重要だろうとして今後獲物探し以外にも街の外へと人員を割いてもらう必要がある。
街が発展すると知れば皆協力的になるだろう。
他の領地でも今後は資源の調査を進めていく必要もあるが、人間領から遠い地であれば運搬の問題がある為それ程急ぐ必要はない。
まずはアイーズ周辺の調査が最優先だろう。
領主であるアイザックの許可なく今後の方針が決まってしまったのだが、その命令が王女からとなればアイザックも従う以外にない。
ドルトルとグレックはまとまった話を今夜アイザックに説明する事としてこの日の確認を終えた。
夜はまた酒盛りをしながらカラオケをして楽しんだ。
街の人々も何人かで一曲ずつ覚えてきたらしく、ハモったりハモらなかったり、上手かったり下手だったりと様々ではあったが、歌う気持ちよさを知ってとても満足そう。
今後もたくさんの曲を覚えて楽しんでもらいたいものだ。
街の人々が歌っていれば朱王も少し抜け出しても連れ去られる事はない。
広場から離れてミリーと通話をし始めた。
ミリー達は今、ゼス王国の観光で飛び回っているようで、毎日違う景色を見ては美味しい物を食べて回っているとの事。
朱王がアイーズに到着した日には車が完成し、思ったより乗り心地が悪くて困っていると笑うミリーはやはり可愛らしかった。
アイーズで楽しい三日を過ごし、出発の際には街人総出で見送ってくれた。
帰りもまた寄りたいなと思いながらも車を走らせる。
すでに坂道も広く拡張されており、問題なく下っていく事ができた。
アイーズから近い場所であればある程度拓けていて走行も問題ないのだが、程なくして人通りが少ないのか道の脇には足の長い草が生えていて見通しが悪くなり、道はあっても草が邪魔をしてどこが道なのかわからない程だ。
そして道幅もそれ程広くはなく、バリウスは地球でいうところの軍用車に近い大きさがありその横幅が足りない。
道の端に大きな石でも埋まっていれば車を壊してしまう可能性もある。
道がある以上草原や林の中を抜けるよりはマシだがそれ程速度を出す事はできないだろう。
およそ20キロの速度で走り進み、八時間走ったとして一日で160キロ。大王領までは約2500キロ程あるという事なので、十五日以上、それも草原が続くとは限らない為二十日以上は掛かるだろうと予想される。
それを見越して食料も大量に積んであり、肉などは現地調達になるが時間が掛かる事以外はそれ程問題はない。
アイーズから徒歩での移動であれば優に二月以上は掛かるとの事だし、まだ車の方が充分に早いのだ。
それ程急ぐ事なくのんびりと向かう事にする。
0
お気に入りに追加
1,013
あなたにおすすめの小説
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
西谷夫妻の新婚事情~元教え子は元担任教師に溺愛される~
雪宮凛
恋愛
結婚し、西谷明人の姓を名乗り始めて三か月。舞香は今日も、新妻としての役目を果たそうと必死になる。
元高校の担任教師×元不良女子高生の、とある新婚生活の一幕。
※ムーンライトノベルズ様にも、同じ作品を転載しています。
フェラテク勉強中。合格出来なくて、イカせて貰えない息子の話。
丹砂 (あかさ)
BL
Twitter(@aksXaX) 上でフォロワーさん向けに不定期に更新しているお話しです。
唐突に始まって唐突に終わります。
『フェラ』に『足こき』なので今回は穏やか……?
いや、やっぱり読む人を選ぶマニアックさかもしれないです💦 何でもオーケーな方だけお願いします。
義父(恋人・執着S)× 息子(恋人・無自覚M気質)
ストーリーなしエロだけど、一応「お義父さん大好きでようやく恋人になれた息子が、頑張る方向を間違えて、思わぬ方向へ行っちゃった」て感じです。
プレー中はいじめられているので、一見すると可哀想? でも愛ありです❣️(ここは譲れないところ!)
プレー外ではイチャラブもあります❣️(作者の脳内設定では……💦)
【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!
Bu-cha
恋愛
ずっと好きだった初恋の相手、社長の弱みを握る為に頑張ります!!にゃんっ♥
財閥の分家の家に代々遣える“秘書”という立場の“家”に生まれた加藤望。
”秘書“としての適正がない”ダメ秘書“の望が12月25日の朝、愛している人から連れてこられた場所は初恋の男の人の家だった。
財閥の本家の長男からの指示、”星野青(じょう)の弱みを握ってくる“という仕事。
財閥が青さんの会社を吸収する為に私を任命した・・・!!
青さんの弱みを握る為、“ダメ秘書”は今日から頑張ります!!
関連物語
『お嬢様は“いけないコト”がしたい』
『“純”の純愛ではない“愛”の鍵』連載中
『雪の上に犬と猿。たまに男と女。』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高11位
『好き好き大好きの嘘』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高36位
『約束したでしょ?忘れちゃった?』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高30位
※表紙イラスト Bu-cha作
妹と違って無能な姉だと蔑まれてきましたが、実際は逆でした
黒木 楓
恋愛
魔力が優れていた公爵令嬢の姉妹は、どちらかが次の聖女になることが決まっていた。
新たな聖女に妹のセローナが選ばれ、私シャロンは無能な姉だと貴族や王子達に蔑まれている。
傍に私が居たからこそセローナは活躍できているも、セローナは全て自分の手柄にしていた。
私の力によるものだとバレないよう、セローナは婚約者となった王子を利用して私を貶めてくる。
その結果――私は幽閉されることとなっていた。
幽閉されて数日後、ある魔道具が完成して、それによって真実が発覚する。
セローナが聖女に相応しくないと発覚するも、聖女の力を継承したから手遅れらしい。
幽閉しておいてセローナに協力して欲しいと私に貴族達が頼み始めるけど、協力する気は一切なかった。
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる