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ゼス王国編

112 ゼス王国聖騎士

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 訓練場で四組に別れた千尋達と聖騎士達。
 順番に武器の強化をしていこう。

 千尋が担当するのはオズワルドとライナスの二人。
 剣と槍以外は同じような装備の二人だし同時進行してしまおう。
 二人の武器に魔力量2,000をエンチャントし、続いて魔法陣を描く。
 千尋の詠唱に合わせて二人も呪文を詠唱し、魔法陣の発動と共に下級精霊ノームが召喚される。
 二人とも名付けと魔力を渡して精霊契約をし、下級魔法陣グランドを組み込む。
 ついでに盾、左右の手甲、胸当ても同じくエンチャント。
 そして盾にも下級精霊ノームを契約し、どちらも下級魔法陣グランドを組み込む。
 胸当てには上級魔法陣アース、右手甲にはグラビティ、左手甲にはインプロージョンを組み込んだ。



 蒼真が担当するのはオーレリアとハーベスト、ケビンの三人。
 オーレリアは両手の片刃直剣を持つ。
 まずは武器にエンチャントし、下級精霊シルフを契約。
 もちろん下級魔法陣ウィンドも組み込む。
 オーレリアは見た事のあるドロップの愛用者だ。
 確か限定品のラビットシリーズだったか…… ミリーが以前使っていたはずだ。
 とりあえず胸当てにエアリアルを組み込んだ。

 続いて火属性の二人。
 ハーベストの武器は両手直剣だ。
 精霊はサラマンダーと下級魔法陣ファイアを組み込み、上級魔法陣インフェルノは胸当てに組み込んだ。
 糸目のケビンが持つのは双剣だ。
 ゼスの聖騎士で双剣を使うのはケビンのみだが、戦闘能力はどれ程のものだろう。
 双剣に精霊契約と魔法陣を組み込むが、何故かハーベストが羨ましそうに見ていた。
 ケビンは貴族用ドロップを着けていた為、上級魔法陣インフェルノをドロップに組み込んだ。



 アイリ担当のジョシュアとコーネリア。
 二人とも若い為、当然のように持っていた貴族用ドロップに上級魔法陣を先に組み込んだ。
 武器は二人とも両手直剣を持っており、デザインも色以外は一緒。
 これは……

「お二人はお付き合いしているんですか?」

「え!? な、何故わかったんですか!?」

 わからいでか…… 二人揃って属性を新しく選び、二人揃って同じデザインの武器。
 そしてドロップまで同じ物を使用していて、何故わかるのかとはどういうことだろう。
 別に二人が付き合っていようとどうでもいい事なのだが、アイリも恋愛というものにも多少なりとも興味はある。
 少し羨ましく思うアイリだった。
 まぁそれはさて置き、武器にはヴォルトと契約して下級魔法陣サンダーも組み込んで終了。

 アイリからの雷属性講座が開始されるのだった。



 リゼは水属性、氷属性を選択した四人を担当する。
 水属性や氷属性を選択するのであれば、どちらもとってしまう方が戦闘の幅が広がるだろうと説明し、精霊と魔法陣の組み合わせを相談してから始める事にする。
 全員両手直剣を持つ為、武器には選択した方の下級魔法陣、精霊を契約する。
 そして左手の手甲やガントレットには反対の属性の魔法陣と精霊を契約し、防具側の精霊が武器側の精霊の補助として使えるようにした。
 次にユリアス以外は貴族用ドロップを持っていた為、三人ともドロップに上級魔法陣を組み込んだ。
 ユリアスは胸当てに上級魔法陣ブリザードを組み込み、ブルータスとシンディが水量で戦う氷の精霊魔導師、ユリアスとデューイが氷の質で戦う氷の精霊魔導師となった。

 リゼはブルータスとシンディ二人から少し水属性について話を聞くと、クイースト王国に比べてあまり研究は進んでいないようだ。
 この二人はクイーストとの交流を深めて研究させるのも面白いかもしれない。



 全員の強化が終わったところで魔法陣と精霊魔法について簡単に説明し、各々発動練習をしてもらう事にした。

 最初のうちは精霊の制御が難しい。
 渡した魔力を節約して使ってくれる訓練を積んだ精霊と、渡した魔力をそのまま勢いで使う精霊とでは魔法の質も全然違う。
 それが訓練となれば相手の魔法を相殺する必要もある為、威力にムラがあれば間違いなく怪我をしてしまうのだ。
 精霊との信頼関係を築きながら馴染ませていく必要があるだろう。
 そして訓練場に来てすぐに精霊魔導を見せたイアンだが、まだ制御はまともに出来ていない。
 これくらいの威力は出るんだろうなと魔力を控えめに渡して調整しただけだった。





 しばらく訓練を見ていると、映画を観終わったのかバルトロが訓練場へと戻ってきた。
 そこで見た聖騎士達の魔法に度肝を抜かれて叫ぶ。

「イアーーーン!! 儂のは!?」

 髭面のおっさんのくせに子供か!! と思うような言い草だ。
 まぁ驚いたのはよくわかるのでツッこまない千尋。
 イアンも訓練中なので千尋がバルトロの元へ向かう。

「バルトロさんのは朱王さんが魔剣作ってるあるから今ここでは出来ないよー。今見てるこの聖騎士のより強い武器だから期待していいよ!」

「本当か!? 朱王様がそのような物を儂に用意してくれているのか!!」

「あれ? バルトロさん聖騎士長だし歳上なのに朱王さんを様付けするんだね。なんで?」

「む? ここゼス王国の貴族は全員朱王様の恐ろしさを知っているからなぁ。朱の裁きという言葉を聞いた事はないか?」

「んー…… ない!」

「そ、そうか」

 朱の裁きについては後に語る事にしよう。
 ウズウズしたバルトロは明日まで待てそうにはないなと思う千尋。

「じゃあ訓練終わったら朱王さん家にバルトロさんも一緒に行こっか。朱王さんから魔剣もらうといいよ」

「いいのか!? 是非行きたい!」

 もう千尋の中ではこのおっさんの頭の上に音符マークが出ているようにしか見えないが、まぁ喜んでいるし良しとしよう。





 十六時まで訓練を続け、聖騎士長から本日の訓練の終了が告げられる。

「そうだ。千尋、オレが全部持ってたんだが聖騎士にもリルフォンを配らないとな」

「あー、忘れてたね」

 と、聖騎士十一人とバルトロにリルフォンを配る。
 色は好きな物を選ばせた。
 リルフォンには取扱説明機能も入っているのでただ配るだけでいい。
 もらったリルフォンを耳に取り付けると叫ぶ程に驚いていたが。

 あとは上位騎士達は未だに映画を観ているのだが、あちらも解散させるべきだろう。

「あ、女性の方は私達と朱王さんの城へ来ないかしら。貴族用ドロップを持っているみたいだし煌めきの魔石を追加してもらわない?」

 とのリゼの提案。
 是非! との事でバルトロと女性聖騎士達を連れて朱王城へと帰る事にした。
 他の男性聖騎士達には映画を観ている上位騎士達を解散させて帰宅するよう命じた。

 朱王城へは聖騎士達がいる為、空を飛ばずに歩いて帰る事になる。
 サフラ達幹部とはリルフォンで連絡をとって全員これから帰宅するとの事。





 朱王城に帰るとすでに幹部達も帰って来ていた。
 飛行装備で帰ってきたのだから当然といえば当然か。

「皆様おかえりなさいませ。それとお客様でしょうか、ようこそおいで下さいました。食事のお支度はまだできておりませんのでご入浴をなさってはいかがでしょうか」

 普段から食事前に風呂は済ませている為、装備を私服に着替えてから風呂に入る事にする。
 そしてバルトロと女性聖騎士四人は客として迎えられ、部屋を割り振られてお泊まりする事になった。
 装備を着たままのバルトロ達の服はダンテが用意してくれたようだ。
 各々着替えて大浴場へと向かった。



 食事前にロビーでくつろいでいると朱王とハクアがやって来る。
 どうやらミリーの部屋から戻って来たようだ。
 バルトロ達聖騎士は朱王と挨拶を交わしつつ、武器の強化の礼などを告げていた。

「朱王さん、ミリーは大丈夫だった?」

「うん、まぁ痛みが落ち着いたのか今もぐっすり眠っているよ。明日には目を覚ますといいんだけどね」



 朱王はバルトロと女性聖騎士が集まっている意味を察して部屋へと戻り、バルトロ用の魔剣とミスリル加工用の工具を持ってきた。

「これはバルトロ用に作った片手用直剣、魔剣リジルだよ。溜め込める魔力量はおよそ4,000ガルド。大事に使ってね」

「ありがとうございます、朱王様。この剣を我が家の家宝とし……」

「家宝じゃなくて実用してね!?」

 間髪入れずにツッこんでおく朱王だった。
 精霊契約と他の装備は明日の朝にでも強化する事にして、能力のエンチャントと下級魔法陣だけでも組み込んでおこう。
 バルトロの契約したい精霊はシルフ。
 それならばと千尋が暴風をエンチャントし、下級魔法陣はウィンドを組み込んだ。

 女性聖騎士の貴族用ドロップには煌めきの魔石を追加。
 オーレリアの限定品ドロップの追加した穴には、他のドロップの削り粉をブラストして煌めきの魔石を機能させた。
 全員の髪や目が煌めきを放つ。
 そして千尋の魔法のヘアオイルを使ってのブロー魔法も施してある為、普段以上にフワフワサラサラのキラキラなのだ。
 女性が喜ばないわけはない。
 皆んな嬉しそうなので、ヘアオイルを作った千尋も満足だ。



 さらに増えたこの人数で酒を飲みながら食事を摂り、蒼真の要望である聖騎士の訓練に参加許可ももらえた。
 蒼真達のパーティーメンバーであればいつでも来てくれて構わないとの事で、随分と気に入ってくれたようだ。

 そして少し時間は遅くなってしまったが、使用人達の今日のご褒美である映画鑑賞会の時間となった。
 朱王城での映画鑑賞会は昨日から始まったのだが。
 この城には使用人も多い為、蒼真もポップコーン作りが大変だ。
 いつも手伝ってくれる朱雀がいないので、この日は魔法で一気に作りあげる。
 山盛りにした材料の空間を制御し、一気に火属性魔法で加熱してポップコーンを作り出す。
 そして回転しながら舞い上がるポップコーンの渦に塩を撒き入れて容器に次々と小分けにしていく。
 これはランの風魔法による制御が複雑な操作を可能にしたのだが、バルトロや聖騎士達、幹部達にとっても驚くべき事だった。
 超威力を可能とする精霊魔法を制御し、家庭的な魔法にまで抑え込む。
 緻密な魔力制御と精霊との信頼関係を元に作りあげたポップコーン魔法だ。
 そして千尋とリゼ、アイリは炭酸ジュース作り。
 リゼとアイリで甘い炭酸水を作り出し、千尋がフルーツを地属性魔法で絞っていく。
 ストローを指したら完成だ。

 朱王城にある舞台のような部屋にはミスリルの巨大モニターが設置され、映画館と変わらない臨場感を楽しめる。
 音の魔石も広場で使う強力なものを用意し、音による迫力も充分。
 室内の照明が落とされて映画が始まる。

 この日も使用人を含めて百人以上が映画の世界に酔いしれた。
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