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クイースト王国編
080 施設
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今日はクリムゾン施設を見学に行く。
朱王の邸から東区のクリムゾン施設までは、歩きで一時間程の距離。
東区があるという事で西区にも施設がある。
なかなかに遠いが市民街の観光も兼ねて歩きで向かう。
途中子供達へのお土産にお菓子を大量に購入し、施設まで配送も頼んだ。
すぐに準備して向かうとの事。
広大な土地に大きな邸がある貴族街に対し、市民街は家々が密接し、二階建ての家や店が多く建ち並ぶ。
市民街も大通りは人で賑わい、各店の呼び子が大きな声で客寄せをする。
街を歩けば千尋達の姿は少し目立つ。
上質な布で作られた奇抜な服装。
朱王が手掛けた店の服だけに、この世界ではやはり奇抜に映るようだ。
まぁそれでも目立つのはいつもの事。
あまり気にせず街を練り歩く。
見慣れない土地を見回しながら施設へと向かった。
施設は市民街から少し外れた位置にあり、広い土地に大きな建物が建っている。
例えて言うなら小学校とマンションが並んで建っているような形だ。
施設にいる子供達の数はおよそ三百人程。
年齢が十二歳以下の子供達で、十三歳を超えると各職場へ見習い、または自分の就きたい職業の研修として配属される事となる。
冒険者や商人の子供達は親を亡くす事が少なくない。
以前は親を亡くした子供達は奴隷商人に連れられて管理され、様々な客から買い取られていくのが常だった。
買い取られた先ではどのような扱いを受けるかもわからずに連れられていく子供達。
その多くが労働奴隷や家事奴隷。冒険者に同行する戦奴隷もいたそうだ。
四年前までは当たり前だった奴隷制度。
今ではクリムゾンの施設が孤児を一手に集め、教育から仕事に就くまでの生活を保障する。
また、孤児ではなく親がいるのにもかかわらず、貧困から育児ができずに預けられた子供達もいる。
いずれも十五歳までの期間は施設や各職場での保護、管理をするが、十五歳の大人になればそれぞれ好きな仕事を選ぶ事ができる。
もちろん必ずしもクリムゾンの職業に就く必要はない。
誰もが自由に自分の生活していく道を決められるのだ。
ここアースガルドでは十五歳で成人。
以前から成人となれば借金が無ければ自分の意思で奴隷から解放されていた。
何も難しい事はなく役所に届け出れば良いだけだ。
それでも身分や身元の不確かな者は、信用という最も大事な条件が得られず、そのまま奴隷として生活する者も多かった。
その為奴隷制度を廃止するにあたり、奴隷として三年間真面目に働く事で役所の保証を得られる事とした。
クリムゾンではしっかりとした教育を受けた子供達が成人し、大人として仕事に就こうと思えば引く手数多だ。
およそ半数はクリムゾンを出て自分の好きな仕事を始め、就職先にも困らない。
冒険者になる者も少なくないが、戦闘訓練もしているので問題はないだろう。
残りの半数はクリムゾンの組織内で働いている。
各国の宝石店や美容院、ゼスの工場やクリムゾン施設の管理人、教師、そしてクリムゾン部隊だ。
他に朱王の研究施設もゼスにあったりする。
「おー! なんか小学校みたいだね! 野球場もあるしグランドもあるねー」
「やはり子供達にはスポーツも楽しんでもらいたいよね。野球やサッカー、テニスにバスケ、あとバレーなんかもやってるよ」
「子供達が何かやってますね。何してるんでしょうか?」
「あれはストレッチだな。授業前に体をほぐしてるんじゃないか?」
蒼真が言うようにストレッチをしてから体育の授業のようだ。
子供達がこちらに気付いて手を振っている。
まだ小さな子供達なので朱王を知る者はいないようだが。
教師の男性がこちらに深々と頭を下げているところを見ると、彼は朱王を知っているのだろう。
まだ若い十代の教師だった。
学校に入って校長を呼び出す朱王。
「こんにちは。私はこの学校の校長をしているコルモンドです。今日は学校の案内をさせて頂きます」
朱王に深々と頭を下げてから全員に挨拶をするコルモンド。
彼も十代の校長だろう。
コルモンドに続いて学校内を歩いて見て回る。
職員室には教師は一人もおらず、全員が授業に出ているようだ。
この学校では算数と文字の授業のみで他は自由に勉強していいそうだ。
自分の将来の為にと本を読み、自分が目指すべき道を探すのだという。
教室内を覗いても、子供達は真剣に勉強をしていた。
日本の子供達にも見習わせたい程に真剣な表情だ。
廊下から覗いているこちら側に気付く事なく授業を受ける。蒼真はまだしも千尋には不可能な事だ。
やはり学年ごとに教室は分けられ、一年生から十年生まであるそうだ。
五歳になる年の春からは一年生。
十年生は研修生になる年。誕生日を迎えればいつから研修に行ってもいいとされている。
各教室や体育館、給食室、調理場などを見学して学校の見学を終え、コルモンドに挨拶をして施設に向かう。
「では施設を見学したらまたお呼びください。西区へと案内致しますので」
何故か案内するというコルモンド。
千尋達はよくわからないまま施設へ向かう。
施設で出迎えたのは施設長のポニパだ。
立場上コルモンドの上司となる。
施設はものすごく大きな建物で、管理職員も大勢いる。
管理職員の普段の仕事は保育士のようなもので、交代勤務で昼夜仕事がある。
夜も働く必要がある為、交代勤務の者は三勤三休。
三日間昼勤をしたあとは三日休み、今度は三日間夜勤をしてまた三日休む。このシフトを繰り返す。
他の仕事に比べて休みが多いが、勤務時間は十二時間。暇な時間に休憩となる。
管理職員も若い者ばかりだが、テキパキと仕事をする様はベテランの域に達している。
この施設には小さな子供が多い。
やはり親を失う子供達が多いのだろう。
かつてはこの子供達は奴隷として買われていったのかと思うと少し考えさせられる。
ポニパに案内してもらい、施設内を見学した。
先程見たのは二歳以下の小さな子供の世話をする部屋で、とても広い部屋だった。
次に案内されたのは二歳以上の子供の世話をする部屋だ。
活発に遊びまわる年頃の子供達。
遊具や玩具で遊び、目まぐるしい程に動き回っていた。
一階にはもう一つ大部屋があり、食堂と調理場があった。
調理場では数人が料理をしていたが、小さな子供達ようの食事を作っているのだろう。
二階からは個室となり、三年生までは四人部屋。
二段ベッドが二つ置かれている。
四年生から六年生までは二人部屋。二段ベッドが一つ置かれ、勉強机も設置されていた。
そして隣の棟も同じ大きさの建物で、高学年の子達の部屋がある。
全員が一人部屋となり、研修生になるまでの四年間過ごす部屋となる。
そのうちの空き部屋となっている部屋は職員さん達の部屋との事。
一通り見学を終えてポニパにお礼を言う。
そろそろコルモンドのところに行こうと思ったところで頼んであったお土産が届いていた。
ポニパにお礼を言われつつコルモンドの元へ向かう。
校長室へとやってきた一行。
そしてポニパもついて来た。
「見学は終わりましたか? では西区の方へ転移しますがよろしいですか?」
「うん。行こうか」
まさかの転移という言葉に驚く千尋達。
朱王やアイリは知っていたようだが。
校長室にある厳重な扉。
コルモンドが魔力鍵を解除して扉を開くと、地面と天井に魔方陣が描かれていた。
魔法陣の外縁には複数の魔石が設置されている。
「では私から行きます」
コルモンドは魔法陣の中央で魔力を放出。
魔方陣と魔石が輝き、天井の魔法陣が地面に向かって降りてくる。
魔法陣が降りると同時にコルモンドの姿が消え、魔法陣は光を失う。
「これは転移装置なんだ。魔法陣の中で魔力を放出すると、魔力のみがまず転移先に移動する。そして天井の魔法陣が降りてくると、転移先の魔力と自分の体が異空間で繋がって入れ替えられるって仕組みだよ」
「こ、これも朱王さん作ったの?」
「私と研究チームで作ったんだ。魔石がなかなか手に入らないからクイーストとゼスにしかないけどね」
「ゼスまで転移できるのか?」
「それは無理だね。もっと大きな魔石じゃないとゼスまでは魔力を移動できないんだ」
アイリも魔法陣へと入って魔力を放出し、転移されていく。
続くミリーとリゼ、千尋、蒼真、朱雀、朱王。
ポニパが最後に扉を閉めて転移する。
転移された先で魔法陣を見ると、誰もいないのに光を発し、東区側と同じように魔法陣が天井から降りてくるのに合わせて人が転移されてくる。
西区も東区と同じように作られており、これといった違いは子供達や教室の顔ぶれのみ。
一通り見学して東区へと再び転移して戻った。
今朝のお土産はポニパが転移して西区にも配るとの事。
店先に並ぶお菓子を全て買い尽くしたので充分足りるだろう。
施設からの帰り道。
「転移装置で思い出したんだけどさぁ、カルハで倒したスペクターって魔獣が瞬間移動をしてたんだけど朱王さんはできる?」
「瞬間移動…… まぁスペクターと同じかどうかは知らないけど似たような事はできるよ。瞬間移動とは言えないかもしれないけど、瞬間移動に見える空間の入れ替えだね」
「戦闘で使ったら相当強いんじゃないのか?」
「うーん、それがねぇ、私達は人間だからあまり多用できないんだ。空間の入れ替えには結構な魔力を消費するからね。スペクターなんかは肉体を持たない魔力の塊みたいなものだから、それ程魔力の消費はしないかもしれないけどさぁ」
朱王が簡単に空間の入れ替えについて説明してくれた。
まずは空間を入れ替える際に身体が壊れないように肉体強化するのだが、強化が甘いと大怪我するらしい。
この時の魔力量が入れ替えの際に必要な魔力量になる。
次に自分の移動したい場所に、強化で使用した魔力量と同等の魔力球を配置する。あとは自分の魔力同士を入れ替える。
魔法だからイメージ力が重要との事。
「そうか、残念」
「でも今度教えてー」
「うん、いいよ。ただ瞬間移動よりも今後は飛行手段の方が必要になるかもしれないよ? 竜族とは空中戦になるだろうし、ウェストラルでの海洋戦も陸地がないから飛ぶしかないし」
「ん? 朱王さんは飛べるの?」
「まぁ人並みには飛べるよ」
「いや、飛べる人なんて見た事ないんだが!?」
「…… まぁそれもそうか。私も目立つだろうから飛んで移動とかはしないしね」
「飛べるんなら乗り物要らないじゃん」
「荷物の運搬があるからね。車は必須だよ」
「朱王さんはなんでもありだな」
話を聞きながら呆れ顔で朱王を見る女性陣。
朱雀は自分が飛べるのでなんとも思っていないようだが。
「空を飛ぶのはそのまま魔法で飛べるのかな?」
「飛べなくはないけどコントロールが難しいと思うよ。飛行用の装備を作った方がいいかな」
「実はオレも飛んでみた事があるんだが、その時は軌道は変えにくいし向きも変えれなかったな。魔力の消費も大きいし魔法も複数重ねる必要があったからまともに飛べなかった」
「まじかー、生身じゃ無理かー。んじゃ飛行装備は朱王さん作れるの?」
「作れるけど素材集めしないといけないね。ミスリルと魔石。あとは強力な魔獣の素材が欲しいかな。全員分作りたいし素材もたくさん必要だね。完成するのに時間かかると思うけど千尋君手伝ってくれる?」
「うん! 作る作る! すっげー楽しみ!!」
「じゃあオレは魔獣の素材集めを頑張るか」
「蒼真君ならまぁ勝てるかもしれないけど、クエストで発注されないような強力な魔獣の素材が欲しいからね。素材運びもあるし今度皆んなで倒しに行こう」
「クイーストには超級魔獣がいるよね! やばっ! 今すぐ行きたいくらい!」
千尋の今すぐは却下され、後日超級魔獣に挑む事にする。
朱王の邸から東区のクリムゾン施設までは、歩きで一時間程の距離。
東区があるという事で西区にも施設がある。
なかなかに遠いが市民街の観光も兼ねて歩きで向かう。
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すぐに準備して向かうとの事。
広大な土地に大きな邸がある貴族街に対し、市民街は家々が密接し、二階建ての家や店が多く建ち並ぶ。
市民街も大通りは人で賑わい、各店の呼び子が大きな声で客寄せをする。
街を歩けば千尋達の姿は少し目立つ。
上質な布で作られた奇抜な服装。
朱王が手掛けた店の服だけに、この世界ではやはり奇抜に映るようだ。
まぁそれでも目立つのはいつもの事。
あまり気にせず街を練り歩く。
見慣れない土地を見回しながら施設へと向かった。
施設は市民街から少し外れた位置にあり、広い土地に大きな建物が建っている。
例えて言うなら小学校とマンションが並んで建っているような形だ。
施設にいる子供達の数はおよそ三百人程。
年齢が十二歳以下の子供達で、十三歳を超えると各職場へ見習い、または自分の就きたい職業の研修として配属される事となる。
冒険者や商人の子供達は親を亡くす事が少なくない。
以前は親を亡くした子供達は奴隷商人に連れられて管理され、様々な客から買い取られていくのが常だった。
買い取られた先ではどのような扱いを受けるかもわからずに連れられていく子供達。
その多くが労働奴隷や家事奴隷。冒険者に同行する戦奴隷もいたそうだ。
四年前までは当たり前だった奴隷制度。
今ではクリムゾンの施設が孤児を一手に集め、教育から仕事に就くまでの生活を保障する。
また、孤児ではなく親がいるのにもかかわらず、貧困から育児ができずに預けられた子供達もいる。
いずれも十五歳までの期間は施設や各職場での保護、管理をするが、十五歳の大人になればそれぞれ好きな仕事を選ぶ事ができる。
もちろん必ずしもクリムゾンの職業に就く必要はない。
誰もが自由に自分の生活していく道を決められるのだ。
ここアースガルドでは十五歳で成人。
以前から成人となれば借金が無ければ自分の意思で奴隷から解放されていた。
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それでも身分や身元の不確かな者は、信用という最も大事な条件が得られず、そのまま奴隷として生活する者も多かった。
その為奴隷制度を廃止するにあたり、奴隷として三年間真面目に働く事で役所の保証を得られる事とした。
クリムゾンではしっかりとした教育を受けた子供達が成人し、大人として仕事に就こうと思えば引く手数多だ。
およそ半数はクリムゾンを出て自分の好きな仕事を始め、就職先にも困らない。
冒険者になる者も少なくないが、戦闘訓練もしているので問題はないだろう。
残りの半数はクリムゾンの組織内で働いている。
各国の宝石店や美容院、ゼスの工場やクリムゾン施設の管理人、教師、そしてクリムゾン部隊だ。
他に朱王の研究施設もゼスにあったりする。
「おー! なんか小学校みたいだね! 野球場もあるしグランドもあるねー」
「やはり子供達にはスポーツも楽しんでもらいたいよね。野球やサッカー、テニスにバスケ、あとバレーなんかもやってるよ」
「子供達が何かやってますね。何してるんでしょうか?」
「あれはストレッチだな。授業前に体をほぐしてるんじゃないか?」
蒼真が言うようにストレッチをしてから体育の授業のようだ。
子供達がこちらに気付いて手を振っている。
まだ小さな子供達なので朱王を知る者はいないようだが。
教師の男性がこちらに深々と頭を下げているところを見ると、彼は朱王を知っているのだろう。
まだ若い十代の教師だった。
学校に入って校長を呼び出す朱王。
「こんにちは。私はこの学校の校長をしているコルモンドです。今日は学校の案内をさせて頂きます」
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彼も十代の校長だろう。
コルモンドに続いて学校内を歩いて見て回る。
職員室には教師は一人もおらず、全員が授業に出ているようだ。
この学校では算数と文字の授業のみで他は自由に勉強していいそうだ。
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教室内を覗いても、子供達は真剣に勉強をしていた。
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やはり学年ごとに教室は分けられ、一年生から十年生まであるそうだ。
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「では施設を見学したらまたお呼びください。西区へと案内致しますので」
何故か案内するというコルモンド。
千尋達はよくわからないまま施設へ向かう。
施設で出迎えたのは施設長のポニパだ。
立場上コルモンドの上司となる。
施設はものすごく大きな建物で、管理職員も大勢いる。
管理職員の普段の仕事は保育士のようなもので、交代勤務で昼夜仕事がある。
夜も働く必要がある為、交代勤務の者は三勤三休。
三日間昼勤をしたあとは三日休み、今度は三日間夜勤をしてまた三日休む。このシフトを繰り返す。
他の仕事に比べて休みが多いが、勤務時間は十二時間。暇な時間に休憩となる。
管理職員も若い者ばかりだが、テキパキと仕事をする様はベテランの域に達している。
この施設には小さな子供が多い。
やはり親を失う子供達が多いのだろう。
かつてはこの子供達は奴隷として買われていったのかと思うと少し考えさせられる。
ポニパに案内してもらい、施設内を見学した。
先程見たのは二歳以下の小さな子供の世話をする部屋で、とても広い部屋だった。
次に案内されたのは二歳以上の子供の世話をする部屋だ。
活発に遊びまわる年頃の子供達。
遊具や玩具で遊び、目まぐるしい程に動き回っていた。
一階にはもう一つ大部屋があり、食堂と調理場があった。
調理場では数人が料理をしていたが、小さな子供達ようの食事を作っているのだろう。
二階からは個室となり、三年生までは四人部屋。
二段ベッドが二つ置かれている。
四年生から六年生までは二人部屋。二段ベッドが一つ置かれ、勉強机も設置されていた。
そして隣の棟も同じ大きさの建物で、高学年の子達の部屋がある。
全員が一人部屋となり、研修生になるまでの四年間過ごす部屋となる。
そのうちの空き部屋となっている部屋は職員さん達の部屋との事。
一通り見学を終えてポニパにお礼を言う。
そろそろコルモンドのところに行こうと思ったところで頼んであったお土産が届いていた。
ポニパにお礼を言われつつコルモンドの元へ向かう。
校長室へとやってきた一行。
そしてポニパもついて来た。
「見学は終わりましたか? では西区の方へ転移しますがよろしいですか?」
「うん。行こうか」
まさかの転移という言葉に驚く千尋達。
朱王やアイリは知っていたようだが。
校長室にある厳重な扉。
コルモンドが魔力鍵を解除して扉を開くと、地面と天井に魔方陣が描かれていた。
魔法陣の外縁には複数の魔石が設置されている。
「では私から行きます」
コルモンドは魔法陣の中央で魔力を放出。
魔方陣と魔石が輝き、天井の魔法陣が地面に向かって降りてくる。
魔法陣が降りると同時にコルモンドの姿が消え、魔法陣は光を失う。
「これは転移装置なんだ。魔法陣の中で魔力を放出すると、魔力のみがまず転移先に移動する。そして天井の魔法陣が降りてくると、転移先の魔力と自分の体が異空間で繋がって入れ替えられるって仕組みだよ」
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「私と研究チームで作ったんだ。魔石がなかなか手に入らないからクイーストとゼスにしかないけどね」
「ゼスまで転移できるのか?」
「それは無理だね。もっと大きな魔石じゃないとゼスまでは魔力を移動できないんだ」
アイリも魔法陣へと入って魔力を放出し、転移されていく。
続くミリーとリゼ、千尋、蒼真、朱雀、朱王。
ポニパが最後に扉を閉めて転移する。
転移された先で魔法陣を見ると、誰もいないのに光を発し、東区側と同じように魔法陣が天井から降りてくるのに合わせて人が転移されてくる。
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一通り見学して東区へと再び転移して戻った。
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「戦闘で使ったら相当強いんじゃないのか?」
「うーん、それがねぇ、私達は人間だからあまり多用できないんだ。空間の入れ替えには結構な魔力を消費するからね。スペクターなんかは肉体を持たない魔力の塊みたいなものだから、それ程魔力の消費はしないかもしれないけどさぁ」
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この時の魔力量が入れ替えの際に必要な魔力量になる。
次に自分の移動したい場所に、強化で使用した魔力量と同等の魔力球を配置する。あとは自分の魔力同士を入れ替える。
魔法だからイメージ力が重要との事。
「そうか、残念」
「でも今度教えてー」
「うん、いいよ。ただ瞬間移動よりも今後は飛行手段の方が必要になるかもしれないよ? 竜族とは空中戦になるだろうし、ウェストラルでの海洋戦も陸地がないから飛ぶしかないし」
「ん? 朱王さんは飛べるの?」
「まぁ人並みには飛べるよ」
「いや、飛べる人なんて見た事ないんだが!?」
「…… まぁそれもそうか。私も目立つだろうから飛んで移動とかはしないしね」
「飛べるんなら乗り物要らないじゃん」
「荷物の運搬があるからね。車は必須だよ」
「朱王さんはなんでもありだな」
話を聞きながら呆れ顔で朱王を見る女性陣。
朱雀は自分が飛べるのでなんとも思っていないようだが。
「空を飛ぶのはそのまま魔法で飛べるのかな?」
「飛べなくはないけどコントロールが難しいと思うよ。飛行用の装備を作った方がいいかな」
「実はオレも飛んでみた事があるんだが、その時は軌道は変えにくいし向きも変えれなかったな。魔力の消費も大きいし魔法も複数重ねる必要があったからまともに飛べなかった」
「まじかー、生身じゃ無理かー。んじゃ飛行装備は朱王さん作れるの?」
「作れるけど素材集めしないといけないね。ミスリルと魔石。あとは強力な魔獣の素材が欲しいかな。全員分作りたいし素材もたくさん必要だね。完成するのに時間かかると思うけど千尋君手伝ってくれる?」
「うん! 作る作る! すっげー楽しみ!!」
「じゃあオレは魔獣の素材集めを頑張るか」
「蒼真君ならまぁ勝てるかもしれないけど、クエストで発注されないような強力な魔獣の素材が欲しいからね。素材運びもあるし今度皆んなで倒しに行こう」
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