3 / 297
異世界での生活
002 魔力
しおりを挟む
昼食が終わり、研究所の管理人に千尋や蒼真事を説明しに向かうリゼ。
宿泊する事、ここでしばらく修行をする事を管理人さんも快く了承してくれた。
理由は地球人からもたらされる知識は、この世界の発展につながる、魔法の研究が大きく進むとの事だった。
実際リゼがこの世界で生み出した魔法、技術も大いに役立っているらしい。
これから魔力を目覚めさせるという事で、また訓練所に戻って来た。
地属性魔法で盛り上げて作られた椅子に二人並んで座り、目を閉じてリゼの言葉を待つ。
リゼが前に立ち二人の額に手をかざして、手のひらに魔力を集める。
「額に何か感じる?」
「暖かい、光のようなものを感じる」
「あぁ。それと……」
「これ、光るキノコかな?」
「やはりキノコだよな」
リゼは恥ずかしそうに頬を染める。
「お昼のスープに入ってたから頭に浮かんだだけ!」
魔力が光るキノコという謎の現象。
咳払いしてリゼは続ける。
「そ、その光に意識を集中して大きくできる?」
意識を光る元キノコに集中する。
「お! できるできる!」
「大きくも小さくもできるな」
「じゃあ今度は全身にその光が膨らむようにイメージしてみて」
千尋は光が全身に広がり少し身体が軽くなったような気がした。
「これで…… いいのかな?」
「千尋、できるの早すぎよ!」
「なに!? もぅできたのか? っっあぁ!! 戻った!」
「蒼真はまた一からやり直して! 集中集中!」
「ぐぬぬ……」
二十分ほどして……
「蒼真もできたわね。じゃあ二人とも少し待ってて。今測定器もってくるから」
リゼは測定器を取りに研究所の方へと向かっていった。
二人とも一度できてしまえば意識しなくても魔力は身体を循環しているようで、これがレベル1の状態となるらしい。
戻ってきたリゼが金属の板を渡してきた。
受け取って少し待つと何も書かれてなかった金属板に文字が現れる。
「ん? なんて書いてあるの?」
訝しげな表情をしながらリゼは答える。
「おかしいわね…… すっごい低いんだけど。壊れてるのかしら、ちょっと貸して!」
リゼは自分の魔力を測定し始めた。
「うん、私の魔力は72,726ガルド。以前測った時は72,758ガルドだったから誤差の範囲内。千尋のはおかしいわね…… 186ガルドって赤ちゃん以下よ? もう一度測ってみて」
衝撃の一言、リゼの言葉にショックを受けつつも再測定。
「やはり186ガルドね…… 千尋の魔力は186ガルド。次に蒼真も測ってみて」
ガルドとは魔力の単位だそうだ。
蒼真も測ってみる。
「あなたも…… 193ガルドね」
二人揃って赤ちゃん以下とは……
「レベル1って大体どれくらいの数値が普通なの?」
恐る恐る聞いて見る。
「赤ちゃんでも個人差はあるみたいだけど、低くても300以上はあるわよ」
「いちお聞くけどリゼのレベル1の時の数値は?」
「私は6,400ガルドあったけど…… あり得ない数値とも言われたわね」
「オ…… オレ達の魔力で魔法って使えるのかな?」
「うーん、今のこの数値だと魔力操作の練習くらいしかできないかもしれないわね。まぁレベルが上がったら数値もすごく上がるかもしれないし魔力操作を頑張りましょう!」
(リゼの目がキョロキョロしてるな……)
「そ、それに魔力の回復量は一分間に30ガルド回復するわけだし、使ってもすぐに全快するじゃない!」
その考えはポジティブすぎないだろうか。
リゼは魔力量の話を終わらせ、魔力操作の説明を始める。
魔力操作の方法は至って簡単。
手のひらに魔力を集中し、光の玉を両手のひらの中央に浮かせて維持するだけ。
魔力は身体から離れると拡散する為、拡散しないように安定させる。
光の玉を完璧に安定させることができれば、魔法の精度も格段に上がるとの事。
リゼがやって見せてくれるが、両手のひらの中央でテニスボールほどの大きさの球体が淡く輝いている。
全くブレる事のない透き通った球体だ。
「これを練習してもらうわ。左右の手から放つ魔力の量を一定にする事で安定するから。慣れてきたら左右の手のひらを前方に向けていって……」
左右の手のひらを前方に向ける。
「ここから魔力球を安定させたまま前方、後方に移動させてみるの。身体から距離が離れた魔力は制御が難しくなるから少しずつ慣れていってね」
魔力球がリゼから離れていくが、5メートル以上離れても安定しているようだ。
リゼは魔力制御が得意らしく、長距離からの範囲魔法も高出力で発動ができるらしい。
要は魔力制御が正確なほど魔力が分散されずに遠くの敵への攻撃が可能という事だ。
「私の場合100メートル以上離れても制御できるように練習したわ。ここの広さならそれ以上も可能よ」
「そんなに離れたら制御できてるかわからないと思うけど?」
「魔力制御は少しの淀みでも感じることができるから大丈夫。まずはやってみて」
千尋と蒼真は手を胸の前にかざし、魔力に意識を集中する。
千尋の手から光が浮かび上がる。
「おお、出た!」
「早いわね…… じゃあ次は安定させ…… 安定してるわね」
驚愕しつつボソッと小さいけどと言うリゼ。
確かにパチンコ玉より小さい。
蒼真も千尋の事は気にせず集中する。気になるしツッコミたいが集中する。
………………
…………
……
「見て見て! あんなに遠くまで行ったよ!」
「なんでそんなすぐできるわけ!?」
はしゃぐ千尋と驚愕するリゼ。
集中…………
集中……
集中
「出た!!」
振り向くリゼと千尋。
光り輝き、形の歪んだ魔力球が手のひらの内側で浮かんでいる。
「これを次にどうするんだ?」
「安定させるのよ。少しずつ揺れを抑えて行って…… そうそう、落ち着いてゆっくりと安定させて」
「左右のバランスが難しいな……」
「力まず落ち着いて制御する方がいいわ。そう、上手いわね。落ち着いてー、安定したらそのまま維持よ。上手い上手い、その調子」
「なんか扱いが違わない? オレ、雑! 蒼真には丁寧だし優しい!」
千尋が不満そうにグチる。
「千尋は教え甲斐がないし魔力球も小ちゃいわよ」
ジト目でリゼが千尋を見る。
「なにぃ!? 蒼真のはどうなんだ!?」
魔力球を遠くで安定させたまま蒼真の魔力球を見る千尋。
確かに千尋のより大きくゴルフボールくらいはある。
「ぐぬぬ…… これどうすれば大きくできるの!?」
「魔力の量を増やせばいいだけよ」
千尋は魔力球を一瞬で手元に戻すが、それを見たリゼが頭を抱える。
(なんでそんな簡単に操作できるのよ!?)
驚きを通り越して呆れさえ出てきた。
「魔力量を増やす!」
ボワッと魔力球が膨らみ、またすぐに安定させてゴルフボールくらいになった。
「じ…… じゃあ二人とも魔力球を前に出してみて」
千尋はさも当然のように50メートル程先へ一瞬で移動させた。
蒼真も前方へ向けて魔力球の移動を始める、少しずつ距離を伸ばしていくがすぐにブレてしまう。
ブレを抑えてまた少し前へ、少しずつ距離を伸ばしていく。
集中する蒼真とそれを応援するリゼ。
千尋は不満はあるがまぁできているので維持し続ける。
しかし遠くに安定させ続けるのも飽きてくる。
左右の移動、魔力量の調整、前後の距離の調整などいろいろ試し始めた。
その間ずっと魔力を放出し続けてるわけだが、使い切ることはないし回復が間に合ってるんだろう。
そう思いながら手元に戻した魔力球。
全力で魔力を出したらどうなるんだろうと、試してみる。
(あれ!? 何故オレは寝転がってるんだ!?)
起き上がる千尋。
「気付いた? それはマインドダウンよ。魔力を一気に放出したから気を失ったのよ」
「どれくらい倒れてたの?」
「5分ちょっとね。魔力が全快すれば目が覚めるわ」
気を付けようと思う千尋だった。
その後もしばらく練習を続け、蒼真が距離1メートルほどで安定させれるようになったところでリゼから今日は終わりにしようと告げられた。
宿舎に案内され、生活の為のシャワーや水回りの使い方を教わった。
水は井戸水を蛇口に触れる事で汲みあげる事が出来るらしい。
この世界で開発された魔法の道具らしく、魔力を流すと水が出てくる。
シャワーは高さ2メートルほどのところに水槽があり、そこに水を満たす。
水槽の中央に金属の皿が取り付けられており、そこにヒートストーンという石を置く事でお湯にするそうだ。
ヒートストーン。
これは魔獣から手に入れることができる魔石との事。
魔獣を倒すと死骸が残り、そこに地属性の魔力を流す事で魔獣は結晶化するそうだ。
ヒートストーンはゴブリンの魔石らしい。
他にもホブゴブリンの魔石は火を放ち、リザードマンの魔石は冷やす事ができる魔石だとか。
いずれもファイアストーン、クールストーンと、安直なネーミングだった。
魔石はミスリルという金属に触れると発動し、一定時間効果があるそうだ。
確かにそんな魔石があるなら科学が発展する必要はないよなと思ってしまう。
そしてトイレは水洗だ。
これは千尋達より前に来た地球人がこの世界に広めたそうだ。
(トイレットペーパーもあるし、この肌触り、この柔らかさ…… たぶん日本人だな)
リゼも今夜は研究所の宿舎に泊まるからと、宿に荷物を取りに行った。
現在十六時半。
時計も地球人が着けていた物を、ここのような研究施設で魔法解析して作られた魔法で動く時計だ。
食堂は十八時から二十時までやっているらしいし、まだ時間もあるので暇がある。
リゼから自主練するように言われていたので蒼真は一人で練習を始める。
ふと遠くを見るとローブを着た研究者達がこちらに気付いて声をかけてきた。
男女二人ずつの四人組。
男の一人が蒼真の魔力制御を見てくれるようだ。
他は赤い長髪の女性ライル、緑色の髪をポニーテールにしている女性はレティ、濃紺色の天パの男性アルフ。
三人は簡単に自己紹介すると千尋にいろいろと質問してきた。
やはり地球の事は気になるのだろう。
学生とはどんな事を学ぶのかとか、テレビって板にいろいろ映るってどういう事だとか、魔法が無くても生きていけるのかとか、聞かれる内容は地球では考える事もないようなものだったので、回答に困る千尋だった。
まぁ暇だったし身振り手振りしながら全て答える。
三人とも大いに盛り上がりながら千尋の話を聞いていた。
気が付くとあっという間に十八時になっていた。
リゼが戻ってきて「人気者ね」と揶揄いつつ要らん事を言う。
「この二人ねぇ、千尋の魔力が186ガルドと蒼真が193ガルドだったのよ!」
千尋と蒼真を指差しながら言う。
吹き出す四人には爆笑されてしまった。
地球から来た人間は魔力が高いのが当たり前というのが常識らしいから仕方ない。
赤ちゃんよりも低いとなれば笑うしかない。
蒼真の練習見てくれていたコーザが言う。
「地球からここに来るのは今まで一人ずつだったが、今回の蒼真と千尋は二人同時に来た。それが原因で魔力に不具合が生じたんじゃないか?」
コーザは三十代と思われる男性で、落ち着いた雰囲気と知能の高さが伺える。
リゼが顎に指を当てて答える。
「可能性は高いわね。魔力量の上昇率も違うのかもしれない。レベル2以降とんでもなく上昇するかもしれないわね」
(だといいけど)と笑う千尋。
気にせず練習する蒼真は距離を大きく伸ばせたらしく、今も真剣に練習している。
リゼはそれを見て驚いていた。
リゼもこの世界にやって来た時に練習したのだが、魔力を安定させるだけで二日はかかった。
自分の事を思い出しながら彼らの魔力操作の高さ、成長速度は驚くものだった。
みんな食堂で晩御飯を食べるという事で一緒に向かい、蒼真も腹が減っていたらしく練習を辞めてついて来た。
「千尋、馴染みすぎ」
「蒼真は真剣すぎ」
食事をしながら蒼真も皆んなと話しをし、地球の話を聞かれる千尋と異世界の話を聞く蒼真という形ができあがっていた。
(情報収集する時は蒼真に任せよう)
千尋はそう心に決めた。
時間は十九時半。
コーザ達とまた明日話をしようと約束して、彼らは自分達が宿泊する宿に帰って行った。
「オレ達も宿舎に行こうよ」
「風呂入りたい」
「私もあなた達の隣の部屋だから何かあったら声かけてね」
三人はそれぞれの部屋に入り、蒼真はすぐにリゼの部屋をノックした。
出てきたリゼに汗かいたから着替えが欲しいと言うと、明日買いに行こうと言われる蒼真。
今日はとりあえず…… と、水属性魔法と風属性魔法を織り交ぜた洗浄魔法をかける。
ズブ濡れになる事もなく、サラッとした着心地になる服に蒼真も驚く。
お礼を言って蒼真は部屋に戻り、シャワーを浴びた。
リゼはこの世界に来てから日記を毎日書くようにしている。
研究所に来てからはどんな研究をしたとか短い日記だったが、今日は地球から二人の男達が現れたため書く事は多い。
サラサラとペンが進む…… が、また扉をノックする音がする。
扉を開けてみるとまた蒼真が立っていた。
「すまない、もう一度さっきの魔法をかけてくれるか?」
シャワーを浴びた後らしく髪が濡れている。
また洗浄魔法をかけてついでに髪も風で乾かす。
「ありがとう」
(お、蒼真が笑顔になった)
嬉しそうな姿を見て笑顔でどういたしましてと応えるリゼ。
蒼真は少し潔癖なところがあるみたいだ。
これも日記に書いておこうと思うリゼだった。
外の風を浴びたくてテラスに向かった蒼真。
テーブルの上のライトストーンが光を放っている。
シャワーを浴びたのだろう、髪を濡らしたまま椅子に座った千尋がいた。
夜空を見上げる彼は何を考えているのか。
振り返らずに千尋は声をかける。
「ねぇ、あっちではオレ達が行方不明って騒いでるんだろうね」
「間違いなくそうだろうな」
家族や友達、みんなに迷惑をかけるだろうと考えると申し訳なく思う。
そんな事考えてもどうする事もできないわけだが。
「受け入れ難いが夢とも思えない。オレ達はここで生きる為にやれる事をやるしかないよな」
明日また訓練に励もうと思う二人。
しばらく夜空を見上げながら他愛もない話をして、眠くなってきたところで部屋に戻った。
シャンプー類や歯ブラシなど生活に必要な物もこの世界に揃っている。
先に来た地球人達が広めたものなのだろう。おかげで生活に特に不便はなさそうだ。
ベッドに横になり今日の出来事を思い出しながら静かに眠りに落ちていった。
宿泊する事、ここでしばらく修行をする事を管理人さんも快く了承してくれた。
理由は地球人からもたらされる知識は、この世界の発展につながる、魔法の研究が大きく進むとの事だった。
実際リゼがこの世界で生み出した魔法、技術も大いに役立っているらしい。
これから魔力を目覚めさせるという事で、また訓練所に戻って来た。
地属性魔法で盛り上げて作られた椅子に二人並んで座り、目を閉じてリゼの言葉を待つ。
リゼが前に立ち二人の額に手をかざして、手のひらに魔力を集める。
「額に何か感じる?」
「暖かい、光のようなものを感じる」
「あぁ。それと……」
「これ、光るキノコかな?」
「やはりキノコだよな」
リゼは恥ずかしそうに頬を染める。
「お昼のスープに入ってたから頭に浮かんだだけ!」
魔力が光るキノコという謎の現象。
咳払いしてリゼは続ける。
「そ、その光に意識を集中して大きくできる?」
意識を光る元キノコに集中する。
「お! できるできる!」
「大きくも小さくもできるな」
「じゃあ今度は全身にその光が膨らむようにイメージしてみて」
千尋は光が全身に広がり少し身体が軽くなったような気がした。
「これで…… いいのかな?」
「千尋、できるの早すぎよ!」
「なに!? もぅできたのか? っっあぁ!! 戻った!」
「蒼真はまた一からやり直して! 集中集中!」
「ぐぬぬ……」
二十分ほどして……
「蒼真もできたわね。じゃあ二人とも少し待ってて。今測定器もってくるから」
リゼは測定器を取りに研究所の方へと向かっていった。
二人とも一度できてしまえば意識しなくても魔力は身体を循環しているようで、これがレベル1の状態となるらしい。
戻ってきたリゼが金属の板を渡してきた。
受け取って少し待つと何も書かれてなかった金属板に文字が現れる。
「ん? なんて書いてあるの?」
訝しげな表情をしながらリゼは答える。
「おかしいわね…… すっごい低いんだけど。壊れてるのかしら、ちょっと貸して!」
リゼは自分の魔力を測定し始めた。
「うん、私の魔力は72,726ガルド。以前測った時は72,758ガルドだったから誤差の範囲内。千尋のはおかしいわね…… 186ガルドって赤ちゃん以下よ? もう一度測ってみて」
衝撃の一言、リゼの言葉にショックを受けつつも再測定。
「やはり186ガルドね…… 千尋の魔力は186ガルド。次に蒼真も測ってみて」
ガルドとは魔力の単位だそうだ。
蒼真も測ってみる。
「あなたも…… 193ガルドね」
二人揃って赤ちゃん以下とは……
「レベル1って大体どれくらいの数値が普通なの?」
恐る恐る聞いて見る。
「赤ちゃんでも個人差はあるみたいだけど、低くても300以上はあるわよ」
「いちお聞くけどリゼのレベル1の時の数値は?」
「私は6,400ガルドあったけど…… あり得ない数値とも言われたわね」
「オ…… オレ達の魔力で魔法って使えるのかな?」
「うーん、今のこの数値だと魔力操作の練習くらいしかできないかもしれないわね。まぁレベルが上がったら数値もすごく上がるかもしれないし魔力操作を頑張りましょう!」
(リゼの目がキョロキョロしてるな……)
「そ、それに魔力の回復量は一分間に30ガルド回復するわけだし、使ってもすぐに全快するじゃない!」
その考えはポジティブすぎないだろうか。
リゼは魔力量の話を終わらせ、魔力操作の説明を始める。
魔力操作の方法は至って簡単。
手のひらに魔力を集中し、光の玉を両手のひらの中央に浮かせて維持するだけ。
魔力は身体から離れると拡散する為、拡散しないように安定させる。
光の玉を完璧に安定させることができれば、魔法の精度も格段に上がるとの事。
リゼがやって見せてくれるが、両手のひらの中央でテニスボールほどの大きさの球体が淡く輝いている。
全くブレる事のない透き通った球体だ。
「これを練習してもらうわ。左右の手から放つ魔力の量を一定にする事で安定するから。慣れてきたら左右の手のひらを前方に向けていって……」
左右の手のひらを前方に向ける。
「ここから魔力球を安定させたまま前方、後方に移動させてみるの。身体から距離が離れた魔力は制御が難しくなるから少しずつ慣れていってね」
魔力球がリゼから離れていくが、5メートル以上離れても安定しているようだ。
リゼは魔力制御が得意らしく、長距離からの範囲魔法も高出力で発動ができるらしい。
要は魔力制御が正確なほど魔力が分散されずに遠くの敵への攻撃が可能という事だ。
「私の場合100メートル以上離れても制御できるように練習したわ。ここの広さならそれ以上も可能よ」
「そんなに離れたら制御できてるかわからないと思うけど?」
「魔力制御は少しの淀みでも感じることができるから大丈夫。まずはやってみて」
千尋と蒼真は手を胸の前にかざし、魔力に意識を集中する。
千尋の手から光が浮かび上がる。
「おお、出た!」
「早いわね…… じゃあ次は安定させ…… 安定してるわね」
驚愕しつつボソッと小さいけどと言うリゼ。
確かにパチンコ玉より小さい。
蒼真も千尋の事は気にせず集中する。気になるしツッコミたいが集中する。
………………
…………
……
「見て見て! あんなに遠くまで行ったよ!」
「なんでそんなすぐできるわけ!?」
はしゃぐ千尋と驚愕するリゼ。
集中…………
集中……
集中
「出た!!」
振り向くリゼと千尋。
光り輝き、形の歪んだ魔力球が手のひらの内側で浮かんでいる。
「これを次にどうするんだ?」
「安定させるのよ。少しずつ揺れを抑えて行って…… そうそう、落ち着いてゆっくりと安定させて」
「左右のバランスが難しいな……」
「力まず落ち着いて制御する方がいいわ。そう、上手いわね。落ち着いてー、安定したらそのまま維持よ。上手い上手い、その調子」
「なんか扱いが違わない? オレ、雑! 蒼真には丁寧だし優しい!」
千尋が不満そうにグチる。
「千尋は教え甲斐がないし魔力球も小ちゃいわよ」
ジト目でリゼが千尋を見る。
「なにぃ!? 蒼真のはどうなんだ!?」
魔力球を遠くで安定させたまま蒼真の魔力球を見る千尋。
確かに千尋のより大きくゴルフボールくらいはある。
「ぐぬぬ…… これどうすれば大きくできるの!?」
「魔力の量を増やせばいいだけよ」
千尋は魔力球を一瞬で手元に戻すが、それを見たリゼが頭を抱える。
(なんでそんな簡単に操作できるのよ!?)
驚きを通り越して呆れさえ出てきた。
「魔力量を増やす!」
ボワッと魔力球が膨らみ、またすぐに安定させてゴルフボールくらいになった。
「じ…… じゃあ二人とも魔力球を前に出してみて」
千尋はさも当然のように50メートル程先へ一瞬で移動させた。
蒼真も前方へ向けて魔力球の移動を始める、少しずつ距離を伸ばしていくがすぐにブレてしまう。
ブレを抑えてまた少し前へ、少しずつ距離を伸ばしていく。
集中する蒼真とそれを応援するリゼ。
千尋は不満はあるがまぁできているので維持し続ける。
しかし遠くに安定させ続けるのも飽きてくる。
左右の移動、魔力量の調整、前後の距離の調整などいろいろ試し始めた。
その間ずっと魔力を放出し続けてるわけだが、使い切ることはないし回復が間に合ってるんだろう。
そう思いながら手元に戻した魔力球。
全力で魔力を出したらどうなるんだろうと、試してみる。
(あれ!? 何故オレは寝転がってるんだ!?)
起き上がる千尋。
「気付いた? それはマインドダウンよ。魔力を一気に放出したから気を失ったのよ」
「どれくらい倒れてたの?」
「5分ちょっとね。魔力が全快すれば目が覚めるわ」
気を付けようと思う千尋だった。
その後もしばらく練習を続け、蒼真が距離1メートルほどで安定させれるようになったところでリゼから今日は終わりにしようと告げられた。
宿舎に案内され、生活の為のシャワーや水回りの使い方を教わった。
水は井戸水を蛇口に触れる事で汲みあげる事が出来るらしい。
この世界で開発された魔法の道具らしく、魔力を流すと水が出てくる。
シャワーは高さ2メートルほどのところに水槽があり、そこに水を満たす。
水槽の中央に金属の皿が取り付けられており、そこにヒートストーンという石を置く事でお湯にするそうだ。
ヒートストーン。
これは魔獣から手に入れることができる魔石との事。
魔獣を倒すと死骸が残り、そこに地属性の魔力を流す事で魔獣は結晶化するそうだ。
ヒートストーンはゴブリンの魔石らしい。
他にもホブゴブリンの魔石は火を放ち、リザードマンの魔石は冷やす事ができる魔石だとか。
いずれもファイアストーン、クールストーンと、安直なネーミングだった。
魔石はミスリルという金属に触れると発動し、一定時間効果があるそうだ。
確かにそんな魔石があるなら科学が発展する必要はないよなと思ってしまう。
そしてトイレは水洗だ。
これは千尋達より前に来た地球人がこの世界に広めたそうだ。
(トイレットペーパーもあるし、この肌触り、この柔らかさ…… たぶん日本人だな)
リゼも今夜は研究所の宿舎に泊まるからと、宿に荷物を取りに行った。
現在十六時半。
時計も地球人が着けていた物を、ここのような研究施設で魔法解析して作られた魔法で動く時計だ。
食堂は十八時から二十時までやっているらしいし、まだ時間もあるので暇がある。
リゼから自主練するように言われていたので蒼真は一人で練習を始める。
ふと遠くを見るとローブを着た研究者達がこちらに気付いて声をかけてきた。
男女二人ずつの四人組。
男の一人が蒼真の魔力制御を見てくれるようだ。
他は赤い長髪の女性ライル、緑色の髪をポニーテールにしている女性はレティ、濃紺色の天パの男性アルフ。
三人は簡単に自己紹介すると千尋にいろいろと質問してきた。
やはり地球の事は気になるのだろう。
学生とはどんな事を学ぶのかとか、テレビって板にいろいろ映るってどういう事だとか、魔法が無くても生きていけるのかとか、聞かれる内容は地球では考える事もないようなものだったので、回答に困る千尋だった。
まぁ暇だったし身振り手振りしながら全て答える。
三人とも大いに盛り上がりながら千尋の話を聞いていた。
気が付くとあっという間に十八時になっていた。
リゼが戻ってきて「人気者ね」と揶揄いつつ要らん事を言う。
「この二人ねぇ、千尋の魔力が186ガルドと蒼真が193ガルドだったのよ!」
千尋と蒼真を指差しながら言う。
吹き出す四人には爆笑されてしまった。
地球から来た人間は魔力が高いのが当たり前というのが常識らしいから仕方ない。
赤ちゃんよりも低いとなれば笑うしかない。
蒼真の練習見てくれていたコーザが言う。
「地球からここに来るのは今まで一人ずつだったが、今回の蒼真と千尋は二人同時に来た。それが原因で魔力に不具合が生じたんじゃないか?」
コーザは三十代と思われる男性で、落ち着いた雰囲気と知能の高さが伺える。
リゼが顎に指を当てて答える。
「可能性は高いわね。魔力量の上昇率も違うのかもしれない。レベル2以降とんでもなく上昇するかもしれないわね」
(だといいけど)と笑う千尋。
気にせず練習する蒼真は距離を大きく伸ばせたらしく、今も真剣に練習している。
リゼはそれを見て驚いていた。
リゼもこの世界にやって来た時に練習したのだが、魔力を安定させるだけで二日はかかった。
自分の事を思い出しながら彼らの魔力操作の高さ、成長速度は驚くものだった。
みんな食堂で晩御飯を食べるという事で一緒に向かい、蒼真も腹が減っていたらしく練習を辞めてついて来た。
「千尋、馴染みすぎ」
「蒼真は真剣すぎ」
食事をしながら蒼真も皆んなと話しをし、地球の話を聞かれる千尋と異世界の話を聞く蒼真という形ができあがっていた。
(情報収集する時は蒼真に任せよう)
千尋はそう心に決めた。
時間は十九時半。
コーザ達とまた明日話をしようと約束して、彼らは自分達が宿泊する宿に帰って行った。
「オレ達も宿舎に行こうよ」
「風呂入りたい」
「私もあなた達の隣の部屋だから何かあったら声かけてね」
三人はそれぞれの部屋に入り、蒼真はすぐにリゼの部屋をノックした。
出てきたリゼに汗かいたから着替えが欲しいと言うと、明日買いに行こうと言われる蒼真。
今日はとりあえず…… と、水属性魔法と風属性魔法を織り交ぜた洗浄魔法をかける。
ズブ濡れになる事もなく、サラッとした着心地になる服に蒼真も驚く。
お礼を言って蒼真は部屋に戻り、シャワーを浴びた。
リゼはこの世界に来てから日記を毎日書くようにしている。
研究所に来てからはどんな研究をしたとか短い日記だったが、今日は地球から二人の男達が現れたため書く事は多い。
サラサラとペンが進む…… が、また扉をノックする音がする。
扉を開けてみるとまた蒼真が立っていた。
「すまない、もう一度さっきの魔法をかけてくれるか?」
シャワーを浴びた後らしく髪が濡れている。
また洗浄魔法をかけてついでに髪も風で乾かす。
「ありがとう」
(お、蒼真が笑顔になった)
嬉しそうな姿を見て笑顔でどういたしましてと応えるリゼ。
蒼真は少し潔癖なところがあるみたいだ。
これも日記に書いておこうと思うリゼだった。
外の風を浴びたくてテラスに向かった蒼真。
テーブルの上のライトストーンが光を放っている。
シャワーを浴びたのだろう、髪を濡らしたまま椅子に座った千尋がいた。
夜空を見上げる彼は何を考えているのか。
振り返らずに千尋は声をかける。
「ねぇ、あっちではオレ達が行方不明って騒いでるんだろうね」
「間違いなくそうだろうな」
家族や友達、みんなに迷惑をかけるだろうと考えると申し訳なく思う。
そんな事考えてもどうする事もできないわけだが。
「受け入れ難いが夢とも思えない。オレ達はここで生きる為にやれる事をやるしかないよな」
明日また訓練に励もうと思う二人。
しばらく夜空を見上げながら他愛もない話をして、眠くなってきたところで部屋に戻った。
シャンプー類や歯ブラシなど生活に必要な物もこの世界に揃っている。
先に来た地球人達が広めたものなのだろう。おかげで生活に特に不便はなさそうだ。
ベッドに横になり今日の出来事を思い出しながら静かに眠りに落ちていった。
0
お気に入りに追加
1,016
あなたにおすすめの小説
兎人ちゃんと異世界スローライフを送りたいだけなんだが
アイリスラーメン
ファンタジー
黒髪黒瞳の青年は人間不信が原因で仕事を退職。ヒキニート生活が半年以上続いたある日のこと、自宅で寝ていたはずの青年が目を覚ますと、異世界の森に転移していた。
右も左もわからない青年を助けたのは、垂れたウサ耳が愛くるしい白銀色の髪をした兎人族の美少女。
青年と兎人族の美少女は、すぐに意気投合し共同生活を始めることとなる。その後、青年の突飛な発想から無人販売所を経営することに。
そんな二人に夢ができる。それは『三食昼寝付きのスローライフ』を送ることだ。
青年と兎人ちゃんたちは苦難を乗り越えて、夢の『三食昼寝付きのスローライフ』を実現するために日々奮闘するのである。
三百六十五日目に大戦争が待ち受けていることも知らずに。
【登場人物紹介】
マサキ:本作の主人公。人間不信な性格。
ネージュ:白銀の髪と垂れたウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。恥ずかしがり屋。
クレール:薄桃色の髪と左右非対称なウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。人見知り。
ダール:オレンジ色の髪と短いウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。お腹が空くと動けない。
デール:双子の兎人族の幼女。ダールの妹。しっかり者。
ドール:双子の兎人族の幼女。ダールの妹。しっかり者。
ルナ:イングリッシュロップイヤー。大きなウサ耳で空を飛ぶ。実は幻獣と呼ばれる存在。
ビエルネス:子ウサギサイズの妖精族の美少女。マサキのことが大好きな変態妖精。
ブランシュ:外伝主人公。白髪が特徴的な兎人族の女性。世界を守るために戦う。
【お知らせ】
◆2021/12/09:第10回ネット小説大賞の読者ピックアップに掲載。
◆2022/05/12:第10回ネット小説大賞の一次選考通過。
◆2022/08/02:ガトラジで作品が紹介されました。
◆2022/08/10:第2回一二三書房WEB小説大賞の一次選考通過。
◆2023/04/15:ノベルアッププラス総合ランキング年間1位獲得。
◆2023/11/23:アルファポリスHOTランキング5位獲得。
◆自費出版しました。メルカリとヤフオクで販売してます。
※アイリスラーメンの作品です。小説の内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
駆け落ち男女の気ままな異世界スローライフ
壬黎ハルキ
ファンタジー
それは、少年が高校を卒業した直後のことだった。
幼なじみでお嬢様な少女から、夕暮れの公園のど真ん中で叫ばれた。
「知らない御曹司と結婚するなんて絶対イヤ! このまま世界の果てまで逃げたいわ!」
泣きじゃくる彼女に、彼は言った。
「俺、これから異世界に移住するんだけど、良かったら一緒に来る?」
「行くわ! ついでに私の全部をアンタにあげる! 一生大事にしなさいよね!」
そんな感じで駆け落ちした二人が、異世界でのんびりと暮らしていく物語。
※2019年10月、完結しました。
※小説家になろう、カクヨムにも公開しています。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
家族全員異世界へ転移したが、その世界で父(魔王)母(勇者)だった…らしい~妹は聖女クラスの魔力持ち!?俺はどうなんですかね?遠い目~
厘/りん
ファンタジー
ある休日、家族でお昼ご飯を食べていたらいきなり異世界へ転移した。俺(長男)カケルは日本と全く違う異世界に動揺していたが、父と母の様子がおかしかった。なぜか、やけに落ち着いている。問い詰めると、もともと父は異世界人だった(らしい)。信じられない!
☆第4回次世代ファンタジーカップ
142位でした。ありがとう御座いました。
★Nolaノベルさん•なろうさんに編集して掲載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる