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第3章

第33話、ユウトの武器

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「——ウト! ユウト! 」

 真琴の声が聞こえる。
 そこで覚醒した俺は、ぺったんこになってしまっている落ち葉を敷き詰めただけの布の上に寝ている事に気づく。
 そうだ、ここはダンジョンの中で——、もしかして敵襲!?

 ガバッと起き上がると、俺を起こした真琴が両手で顔を隠しながら——

「えっと、その、とにかくパンツを履いてくれないかな! 」

 と恥ずかしそうに言った。

 どう言う事?
 下半身を見てみると俺はミニスカートを履いている?
 そうか、まだ女装中だったのだ。
 そしてそのミニスカートの先、俺の膝小僧のあたりには黒のボクサーパンツが見えている。

 えっ? パンツがずらされている!

「少しうとうとしてたら、気付いた時にはその子が立っていたんだ! 」

 その子?
 言われて真琴が指差している方を見る。
 すると俺たちから少し離れた位置に、かぐやカットで碧色へきしょくな髪の毛が身長よりも長いため、地面に触れてしまっている全裸の幼女が立っていた。
 ただ全裸と言っても幼女であるため、そこの部分はさして気にならない。
 しかしその眠そうなエメラルドグリーンの半眼でジッと俺を見つめるその姿と、可愛らしいのにどこかふてぶてしくも感じるその雰囲気に、ある者を連想させた。

 しかも悲しい事に、ソウルリストが『白濁液ごっくん』である。

 とそこで、興奮冷めやらない真琴は続ける。

「今はないけどたしかに髪の中から、ピンク色の髪の毛の束が出てきて、君のスカートの中に差し込まれていたんだ! 」

 え? どゆこと?
 それにピンクの髪の束?

「そそ、それで髪の束の先の方が、口に変わって……それで、その、君のその、大事なところは大丈夫!?
 食いちぎられてない!? 」

 えっ!
 そこで血の気が引く。
 急いでスカートを捲り股間を確認するが、普通に付いていた。
 と言うより——

「……キミはセンジュ、だよね? 」

『御主人様、おはよう』

 やっぱりセンジュだった。
 バングルが一晩寝て起きたら、幼女に変身しちゃってました。

「それと御主人様、攻撃されたけど反撃していい? 」

「えっ? 真琴、攻撃しちゃったの? 」

「だって、キミの股間かお尻の穴が攻撃されたかと思って」

 構えを解かない真琴に対して、センジュが一歩前に出ると髪の毛先をゆらりと真琴の方に向ける。
 そして纏まった大小の毛の束は、真琴が言うように蛇みたいに口が開くとギラリと牙を見せた。

「ダメダメ、二人共攻撃しちゃダメだよ!
 取り敢えず落ち着いて、ちょっと俺の話を聞いて! 」

 そして幼女、センジュを見据える。

「センジュ、君はなにをしていたの? 」

『別になにも』

 センジュは顔を逸らし答えた。
 よくよく見れば、なんかスカートの中に粘液みたいのが付いてるし、絶対に嘘を言ってるよね?
 と言うか——

「それよりなんで女の子の姿になっているの? 」

『人型になったのは仕様。幼いのは仕方がない。年月が経てば大きくなるから待って。
 それとこの容姿、御主人様の影響を受けてだと思う』

 たしかに可愛いと思う。仮に娘が出来たらこんな感じの子がいいな、といった俺好みの思わずなでなでしたく姿である。
 するとそこで、真琴がわなわな震えながら口を開く。

「きっ、君は、幼女が好きだったのか!? 」

「違うよ! 確かに俺の好みだけど、違う意味でだからね! 娘としてみた親心、そう親心だよ! 」

 実際には子供いないわけだから、少し違うのかもしれないけど。

「しかしアイテムとはいえ、いきなり裸とは……」

 俺の呟きを真琴が拾う。

「ユウト、それは仕方がない話だよ」

「えっ? 」

「ラノベでは初登場や変身時に裸になる女の子が、必ず一人はいるからね」

「そうなんだー、と言うか、ラノベってどんだけハレンチなんだよ!
 少し興味を持ち出していた俺が、ガッカリしてるよ! 」

 すると俺を見る真琴の瞳がジト目になる。

 うっ、たしかに俺も異世界に来てからかなりエッチな展開になってるので、人様の事をとやかく言える立場ではないですけど——
 ……えっ、えーい!

「それよりさ、早く服を着させよう! 」

 ヴィクトリアさんなら虚空から洋服を出しそうだし。

『これならどう? 』

 そう述べクルリとその場で回転をしたセンジュは、次の瞬間には翠色すいしょくに染まる着物を着ていた。
 ちなみに帯は、橙色をベースに緑が取り入れられた可愛らしい色彩である。



『これも御主人様のセンス』

 たしかに、超俺好みの服装である。
 しかもセンジュにとても似合っている。
 まぁー俺の白濁球を糧に成長しているため俺に影響されているらしいから、俺のドストライクをずっと突いてくるのは当然と言えば当然なんだろうけど、……その仕様に万歳である。

「しかしそもそもなんで、突然センジュが人型になったんだろう? 」

『エヘェン、それはレベルアップ効果』

 なるほど、たしかに昨晩レベルアップしたとか言っていたね。

「ちなみにまだレベル上がったりするの? 」

『この感じだと、まだ上がある予感。
 でも次のアップまでまだまだ遠い予感』

 センジュ、成長の果てに人間通り越して二面樹だけにはならないでね。

「ちなみに、このバングルの方はどうなっているの? 」

 そう、センジュの本体? であるバングルは、依然として俺の腕に引っ付いていた。

『それはバックアップ電池みたいな物。
 疲れたらそこに接続して充電スル。
 ただし直接白濁液取り込んでたら、接続しなくてもいけそうな予感』

 なんか携帯機器みたいな仕様だね。

「つまり俺は、充電器を持ち運ばされてるみたいなもんなんだね」

『センジュいなくても、本体だけで攻撃出来るよ? 』

 本体? つまりバングルで攻撃?

「えっ? それどうやるの!? 」

『ちょっと待って』

 突然俺の腕のバングルの形がグネグネ歪み出したかと思うと、ドバッと広がり硬質化。
 そうして指の第二関節から肘の辺りまでを覆い尽くす、籠手のような形状に変形した。

 これって防具だよね?

『御主人様の指先にリンクしてる。
 だから指先を動かしたら、籠手からツタが飛び出して同じように動く』

 まじですか!?
 壁に向かい、ワクワクしながら試しに人差し指を伸ばしてみる。
 しかし何も起こらない。
 ん? どういう事?
 いや、俺のやり方が悪いのかもしれない。
 とにかくもう一度チャレンジしてみよう!

 今度は磁力を操作する赤い変な兜を被ったアメコミヒーローが、ビッと伸ばした全ての指先からエネルギーを出してるような感じで、力を込め思いっきり五指を伸ばしてみた。

 すると籠手先に空いた穴から五本のツタが飛び出した。
 そのツタは硬い岩盤にドスドスッと穴をあける。

「やった、出来たぞ!
 しかもなんか凄い攻撃力だし! 」

『ご褒美ちょうだい』

「よしきた! 」

 俺は放物線を描くようにして白濁球を1つ飛ばす。
 するとセンジュの長い髪の毛が、一掴み分くらいの束になると、束の毛先部分がツタの先端と同じ形状の口になり見事キャッチ、一飲みにした。

『うまうま』

 よし、次は五本を複雑に動かしてみよう!
 ——しかし実際にやってみると、動きがかなりぎこちなく実戦投入には程遠い動きとなってしまった。

 と言うか、これ結構握力いるね。
 そこで空いた右手で左手を支えるようにして構えてみる。
 うん、この方が楽だな。
 そこでセンジュの髪の毛が先ほどの白濁液を味わうようにして、まだモゴモゴさせているのが目に入る。

「そうそうあとこのツタって、センジュみたいに先端に口を作ってヘビみたいに噛み付いたり出来るの? 」

『出来るよ、それもイメージが大切』

 さて、どうイメージしよう?
 爪が口の境目で、上顎と下顎に分かれる……要は爪が剥げるイメージにしてるか。
 実際になったら痛そうだけど、ホラー作品とかでは時々観る場面だし想像はしやすいかな?
 よし、気合を入れてパカっと開くイメージをしてみるぞ!

 そしてやってみると、一回で成功した。
 よし、あとはこれらを自在に操れるよう動かしていって、それと同時に長時間動かせるように時間見つけて握力鍛えよ。
 そこでセンジュから補足が入る。

『あと盾の役目も出来るけど、火には強くない。
 それと思い通りに動かすため、御主人様の神経とリンクさせてるから、ツタ部分は攻撃受けたら同じように痛むはずだから気を付けて』

「なんか色々扱い方教えてくれてありがと。
 センジュはいい子だね」

「多分それも御主人様の影響。
 ……御主人様に喜んで貰うと、センジュも嬉しくなる』

 そんなセンジュの頭をナデナデしながら白濁球をあげる。
 髪を優しくナデナデすると、気持ちよさそうな表情で喉を鳴らすセンジュ。

 恐らく髪の毛一本一本にも神経が通っているようなものなんだろう。
 そうして髪をひと掬いし手元に寄せてナデナデしていると、反るようにしてふわふわ浮き立つ髪の毛が——

「ふんがぁっ」

 俺の左右の鼻に挿入された。
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