20 / 36
第20話、ピンクな朽ちた病院
しおりを挟む
◆ ◆ ◆
この世界は地獄だ。プレイヤーのみんなは死んでゾンビ化するのを恐れ、ゾンビプレイヤー達は空腹時に訪れると言う灼熱の痛みに怯えている。即ちこの世界は恐怖に支配されている。
ボクはこの世界に来てから一時の安堵の表情を見れたとしても、喜びの表情をする人を誰も見たことがない。早く双方のプレイヤーが笑いに溢れるようにしたい。そのためにもゲームクリアしないと。
だからボクと御主人様は攻略組として動いている。最初のステージでは、三人が宝玉を探す間、ボクと御主人様がゲイリーの足止めを買って出た。鍛えに鍛えられたボクはまだしも、御主人様があんなに動けるとは思わなかったのでビックリしちゃった。本当に御主人様は何者なんだろう。
そしてとあるプレイヤーがこの呪いのステージで、キーアイテムを見つけたと報告が上がった。第三ステージを安全に進めていくため、慎重に何度も潜らないといけないため、カギは沢山必要になってくる。だから攻略組とサポーターのみんなでカギを取りにまたこのステージを挑む事になっているのだけれど——
現在いつでも脱出が可能になる時間になるまで、御主人様と二人で入り口付近にあるバスの中で仲良く並んで椅子に座って待機中だ。
「御主人様」
「どうかしましたか? 」
「こうして二人きりになるのは久方ぶりですね」
すると御主人様が微笑を浮かべたような気がした。
「そう言えばツカサ、この待ち時間を有効活用するためにも少し検証をしようかと思うのですけれど、よろしいですか? 」
「検証ですか? 」
「えぇ、『プレイヤー同士での攻撃が出来ない』についてです」
その言葉を聞いてドキリとする。だってこれからボク、攻撃されちゃうって事だから。
そこで御主人様が素早く手を振った。次の瞬間、御主人様の手はボクの手に当たる寸前で弾かれる。
「ふむふむ、これぐらい力を込めた攻撃はやはりNGでしたか。それならこれではどうでしょう? 」
御主人様がゆっくりボクに向かって手を伸ばしてくる。そしてその手はボクの頭に触れた。それから撫で撫でが始まる。
久々の御主人様との触れ合いに、ボクの心臓がトクトクと心音を刻んでいく。
「これぐらいは問題ないですか。それならツカサ、私の上に来なさい」
「上、ですか? 」
「えぇ、そして私に引っ付くのです」
今このステージにプレイヤーは、ボクと御主人様しかいない。僅かな時間だけれど、僅かな時間だからこそ、今この時だけホラーゲーム内にいる事を忘れたい。そして御主人様をボクで夢中にさせたい。
椅子に腰掛ける御主人様の上に、ボクは女の子座りをする。そして御主人様の首に両腕を回して抱き締める事でべったり密着。
……人肌が暖かい。
「これも大丈夫ですか」
ボクは一度抱きしめるのを緩めると、御主人様を真正面から見つめる。そしてキスをしたい事を無言だけれど表情で訴えかける。すると御主人様が無言で僅かに口角をつり上げた。キスをして良いと言うのが伝わってきた。でもいつものように、ボクからしないとしてくれない雰囲気でもある。だからボクは御主人様に唇を寄せていく。
『チュッ、クチュ』
触れ合う唇と唇。鳴るリップ音。積極的に唇を触れ合わせていくボクに、……あまり動かない御主人様。
ムー、ボクばっかり動いて御主人様が全然動いてくれない。そこで一度キスを止めると御主人様の顔から少し距離を取る。そして抗議の意味を込めて頬を膨らませた。
「あぁ、ごめんよ。検証をしていたからですね。しかしキスはNGではないのですか。それなら少し過激にやってみますか」
御主人様がボクを抱きしめてくると、そのままの状態で持ち上げる。そして横回転をしてボクと御主人様の上下の位置を変え、抱きしめたままボクを優しく椅子へ降ろす。
「んぅっ」
そして唇を奪われた、優しく、情熱的に、ボクを求めるように。
凄い、いつもはこんなに求めるようなキスはあまりしてくれないのに。御主人様も久々のキスでスイッチが入っているのかな? そんなキスをされたら、ボクもスイッチが入ってしまうよー。
「んっ、くぅっ」
御主人様の舌に、ネチョネチョと水気を帯びた音を立てながらボクも積極的に舌を絡ませ唾液も交換していく。そして御主人様から両耳を塞がれ、自身で瞳を閉じる事により、よりキスに集中。キスは唇や舌だけではなくて、歯茎や顎の上、そして喉の周辺までねっとり激しく刺激するように行われていく。そして頭の毛先から脚の爪先までの身体中と言う身体中が敏感になっていたボクは、遂にキスだけで——
身体の奥からじんわりとした快感が、押し寄せてきて……気持ち良いが……ずっと……続く。
御主人様、……大好き。
そして完全にスイッチが入ってしまっているボクは、先程から自己主張をしている御主人様の箇所に手を伸ばそうとするのだけれど——
バチンと何かに弾かれる。えっえっ? と思っていると、御主人様が口を開く。
「ツカサ、これ以上はゲームクリアするまでお預けのようですね」
「そっ、そんな…… 」
そんな、もう完全に火が点いちゃったのに。ゲームクリアまでお預けだなんて。
……この世界は地獄だ。早く、早くボクが攻略してやる!
この世界は地獄だ。プレイヤーのみんなは死んでゾンビ化するのを恐れ、ゾンビプレイヤー達は空腹時に訪れると言う灼熱の痛みに怯えている。即ちこの世界は恐怖に支配されている。
ボクはこの世界に来てから一時の安堵の表情を見れたとしても、喜びの表情をする人を誰も見たことがない。早く双方のプレイヤーが笑いに溢れるようにしたい。そのためにもゲームクリアしないと。
だからボクと御主人様は攻略組として動いている。最初のステージでは、三人が宝玉を探す間、ボクと御主人様がゲイリーの足止めを買って出た。鍛えに鍛えられたボクはまだしも、御主人様があんなに動けるとは思わなかったのでビックリしちゃった。本当に御主人様は何者なんだろう。
そしてとあるプレイヤーがこの呪いのステージで、キーアイテムを見つけたと報告が上がった。第三ステージを安全に進めていくため、慎重に何度も潜らないといけないため、カギは沢山必要になってくる。だから攻略組とサポーターのみんなでカギを取りにまたこのステージを挑む事になっているのだけれど——
現在いつでも脱出が可能になる時間になるまで、御主人様と二人で入り口付近にあるバスの中で仲良く並んで椅子に座って待機中だ。
「御主人様」
「どうかしましたか? 」
「こうして二人きりになるのは久方ぶりですね」
すると御主人様が微笑を浮かべたような気がした。
「そう言えばツカサ、この待ち時間を有効活用するためにも少し検証をしようかと思うのですけれど、よろしいですか? 」
「検証ですか? 」
「えぇ、『プレイヤー同士での攻撃が出来ない』についてです」
その言葉を聞いてドキリとする。だってこれからボク、攻撃されちゃうって事だから。
そこで御主人様が素早く手を振った。次の瞬間、御主人様の手はボクの手に当たる寸前で弾かれる。
「ふむふむ、これぐらい力を込めた攻撃はやはりNGでしたか。それならこれではどうでしょう? 」
御主人様がゆっくりボクに向かって手を伸ばしてくる。そしてその手はボクの頭に触れた。それから撫で撫でが始まる。
久々の御主人様との触れ合いに、ボクの心臓がトクトクと心音を刻んでいく。
「これぐらいは問題ないですか。それならツカサ、私の上に来なさい」
「上、ですか? 」
「えぇ、そして私に引っ付くのです」
今このステージにプレイヤーは、ボクと御主人様しかいない。僅かな時間だけれど、僅かな時間だからこそ、今この時だけホラーゲーム内にいる事を忘れたい。そして御主人様をボクで夢中にさせたい。
椅子に腰掛ける御主人様の上に、ボクは女の子座りをする。そして御主人様の首に両腕を回して抱き締める事でべったり密着。
……人肌が暖かい。
「これも大丈夫ですか」
ボクは一度抱きしめるのを緩めると、御主人様を真正面から見つめる。そしてキスをしたい事を無言だけれど表情で訴えかける。すると御主人様が無言で僅かに口角をつり上げた。キスをして良いと言うのが伝わってきた。でもいつものように、ボクからしないとしてくれない雰囲気でもある。だからボクは御主人様に唇を寄せていく。
『チュッ、クチュ』
触れ合う唇と唇。鳴るリップ音。積極的に唇を触れ合わせていくボクに、……あまり動かない御主人様。
ムー、ボクばっかり動いて御主人様が全然動いてくれない。そこで一度キスを止めると御主人様の顔から少し距離を取る。そして抗議の意味を込めて頬を膨らませた。
「あぁ、ごめんよ。検証をしていたからですね。しかしキスはNGではないのですか。それなら少し過激にやってみますか」
御主人様がボクを抱きしめてくると、そのままの状態で持ち上げる。そして横回転をしてボクと御主人様の上下の位置を変え、抱きしめたままボクを優しく椅子へ降ろす。
「んぅっ」
そして唇を奪われた、優しく、情熱的に、ボクを求めるように。
凄い、いつもはこんなに求めるようなキスはあまりしてくれないのに。御主人様も久々のキスでスイッチが入っているのかな? そんなキスをされたら、ボクもスイッチが入ってしまうよー。
「んっ、くぅっ」
御主人様の舌に、ネチョネチョと水気を帯びた音を立てながらボクも積極的に舌を絡ませ唾液も交換していく。そして御主人様から両耳を塞がれ、自身で瞳を閉じる事により、よりキスに集中。キスは唇や舌だけではなくて、歯茎や顎の上、そして喉の周辺までねっとり激しく刺激するように行われていく。そして頭の毛先から脚の爪先までの身体中と言う身体中が敏感になっていたボクは、遂にキスだけで——
身体の奥からじんわりとした快感が、押し寄せてきて……気持ち良いが……ずっと……続く。
御主人様、……大好き。
そして完全にスイッチが入ってしまっているボクは、先程から自己主張をしている御主人様の箇所に手を伸ばそうとするのだけれど——
バチンと何かに弾かれる。えっえっ? と思っていると、御主人様が口を開く。
「ツカサ、これ以上はゲームクリアするまでお預けのようですね」
「そっ、そんな…… 」
そんな、もう完全に火が点いちゃったのに。ゲームクリアまでお預けだなんて。
……この世界は地獄だ。早く、早くボクが攻略してやる!
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
ゾンビだらけの世界で俺はゾンビのふりをし続ける
気ままに
ホラー
家で寝て起きたらまさかの世界がゾンビパンデミックとなってしまっていた!
しかもセーラー服の可愛い女子高生のゾンビに噛まれてしまう!
もう終わりかと思ったら俺はゾンビになる事はなかった。しかもゾンビに狙われない体質へとなってしまう……これは映画で見た展開と同じじゃないか!
てことで俺は人間に利用されるのは御免被るのでゾンビのフリをして人間の安息の地が完成するまでのんびりと生活させて頂きます。
ネタバレ注意!↓↓
黒藤冬夜は自分を噛んだ知性ある女子高生のゾンビ、特殊体を探すためまず総合病院に向かう。
そこでゾンビとは思えない程の、異常なまでの力を持つ別の特殊体に出会う。
そこの総合病院の地下ではある研究が行われていた……
"P-tB"
人を救う研究のはずがそれは大きな厄災をもたらす事になる……
何故ゾンビが生まれたか……
何故知性あるゾンビが居るのか……
そして何故自分はゾンビにならず、ゾンビに狙われない孤独な存在となってしまったのか……

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜
古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。
かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。
その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。
ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。
BLoveさんに先行書き溜め。
なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる