ホラーホラーオンライン 〜ホラーゲームに挑戦したら化け物達に追いかけ回され、しかも脱出不能で〜

立花 黒

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第19話、あなたは死んだ

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 そこで視界にノイズが走る。
 そしてこのステージを始めたと同時に見せられた時と同じように、突然視界が真っ暗になる。

 これはカットイン!?
 なぜ今になって?

 様々な考えがよぎる中、もしかしたら新たなプレイヤーが助けに来てくれたのではと一瞬期待してしまう。

 しかしこのゲームがそんな生易しい物ではない事を、これから起こる事で嫌という程思い知らされる。

 暗闇の中、怪物ゲイリーのくぐもった低い声が断続的に聞こえる。
 これって、鼻歌を歌ってるのかな?
 そして視界がゆっくりと開いていく。

 これって!?
 目の前の悲惨な惨状に吐き気を催し、嫌悪感で心が蝕まれる。

 この肉片は、恐らく二番目に殺されて解体されていた男の人の身体。ゲイリーの手により開かれた胸元に、クリアアイテムの宝玉らしき物が埋め込まれた。
 次に視界が男の人の腕に移動すると、タンタンタンタンッと鉈を振り下ろし細かく切断していく。

 酷い映像。
 目を逸らしたいけど、直接映像が頭に流れ込んで来ているため、瞬きすら出来ない。

 そこで鼻歌を歌っていたゲイリーの視界が真っ赤に染まる。
 視界を上下に揺らしながら鼻をくんかくんか鳴らしていたかと思っていたら、おもむろに立ち上がり鉈を腰紐に通す。
 そして走り出した。

 真っ赤な視界のまま、ぶら下がる肉の塊を体当たりで吹き飛ばしながらドンドン進む。
 これっていったい!?
 鼓動が早くなっていく。

 ゲイリーが肉を押し分けた先に、しゃがみ込む男性の姿が入った。

 この男の人って、たしかプレイヤーの人。
 その男性は目を閉じたまま、その場でしゃがみ込み続けている。
 そんな彼をゲイリーは頭を鷲掴みにして無理矢理立たせると、握り込んだ岩の塊のような拳でお腹を殴った。
 と同時に男の人は、夥しい量の吐血をする。
 そして返り血を浴びるゲイリーが拳を引き抜くと、そこに穴が出来ていた。

 これって、どう言う事!?
 心臓が早鐘を打ち、呼吸が苦しくなる。

 それにさっきから手の指を使って目を開けようとしてるのだけど、強制的に閉じられていて全く開かない。

 ——っえ、それってつまり、指が動く!?
 身体・・は動かせている!

 そこで再度ゲイリーが、鼻をくんかくんかさせ始める。

 これって、もしかして目が見えない状態で、逃げないといけないって事!?

 慌てて走ろうとして、足元の何かに足を引っ掛けてコケてしまう。
 やっ、やっぱり!
 どうしよう!?
 時間が来たから、強制イベントが始まった! でも前が見えないから——
 どうしよう!?
 先程から殆ど前に進めていないのに、視界のゲイリーが走り始める。
 どうしよう!?
 闇雲に逃げて助かるの?
 どうしよう!?
 ゲイリーがドンドン前に進んで行く中、さっきお腹に穴が空いた人はまだ生きてるみたいで、ゲイリーが掴んでいる左手の方から時々変な声が聞こえている。
 どうしよう!?
 だれか、誰か助けて!
 どうしよう!?
 私の所にきてしまう!
 どうしよう!?
 私はここで死んでしまうの?

 ……私はここで、殺される。

 そして脚が鉄の棒のように固まってしまう中、逆さ吊りの人を掻き分け視界が開けた。
 心臓の鼓動が最高潮に高鳴る。

 そこには目を閉じ棒立ちになってしまっている、男の人の姿が映っていた。
 それを見て、ゲイリーがせせら笑う。

 わっ、私じゃなかった。

 そこで男の人は、背を向け走り始めた!
 肉の塊に当たりながらも、懸命に走り続ける。

 それをゲラゲラ笑いながら見ているゲイリーが、追いかけ始める。

 にっ、逃げて! 早く逃げて!

 赤い視界が揺れる中、逃げ惑う男の人の背中をずっと追い掛ける。
 ——これって、今までなら男の人にすぐ追いついていたはずなのに、距離が一向に縮まらない。
 もしかしてゲイリー、わざとゆっくり追いかけているのでは!?

 そして考えつく。
 今この瞬間に、私は逃げれるのではないの!?
 それに宝玉を手にゴールをすれば、確か生き残っている人たちもゴールするとあったような!

 絶望の中で、ほんの僅かだけど希望が見えてきた。
 私はその希望にすがりつく事によって、勇気を奮い立たせる。

 私は記憶と第六感を頼りに、この部屋の入り口付近でゲイリーが解体していた男性の元を目指す。そう、目指すのよ!
 そうだ、まずは部屋の壁を見つけて、それから壁を辿って行けば、いつかは入り口に行けるはず。
 そしたらそこから宝玉を探して——

 男の人を追っていたゲイリーの視界が、突然止まる。
 再度くんかくんかさせ始めたかと思うと、手にしていた男の人を離して鉈を持つ。
 そしてゲイリーは、今までと別の方向へ走り始めた。

 えっ、これってどう言う事?
 まさか、まさかまさか。

 猛スピードで進む真っ赤に染まる視界の中、次々と肉が押し退けられていく。

 そして——

 手探りで進む、私の後ろ姿を映し出した。

 いや、やめて!
 来ないで! 来ないぐぅぇっ!

 胸に衝撃が走った。
 真っ赤な視界の中では、ゴスロリ服を着た女の子が背中から鉈で胸を貫かれている。

 衝撃を感じたところから、熱と鋭い痛みを感じ始める。
 そこで視界の中の私は貫かれたまま持ち上げられ始めたため、必死に胸から突き出た鉈の刃部分を両手で掴む。

「あっ、あっあ"ぁっ、ぁぁ——」

 でも空気が漏れるみたいにどんどん力が抜けていく。
 そしてゲイリーが真上に突き上げた鉈の上で力なく串刺しになったところで、その真っ赤に染まる視界が完全に静止する。
 途端胸の痛みが消失する。

 えっ、なに?
 何が起こっているの?

 そしてハッキリ見えていた私が串刺しにされている姿が、薄っすらとしたものに変わる。
 次にYou are deadと中央付近に赤黒いメッセージが現れた。

 私は死んだ、つまり——

 次にその下部に小さな文字で、称号【鳥籠のヒナ】が【背中に傷を負いし者】へと変更される事が知らされる。

 いや、なりたくない!
 私は人間なのよ!

 そこで下の方にテロップが、点滅を繰り返しながら表示される。
『這いずる街へ転送されます』と。

 だれか、だれか助けて!
 私はなりたくない、私は——
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