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第四章 目指せ!フランチャイズで左団扇編
66.新店舗新メニュー
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新店舗の内装は簡素なもので、スペースのほとんどは調理場となっていた。茹で卵を冷やすための水桶もあるし、火元は横長のコンロで炭火焼き鳥屋みたいな感じである。これならスキレットが六つほどおけそうなので、手が早ければ大分捌けるだろう。
元々あった入り口の扉は撤去され、店の中で食べられるようにしてあった。いわゆるイートインのような造りだ。ここで食べてくれれば皿を回収するのが楽だろうし、それなりの対価で用意した皿がきちんと回収できれば商品価格を下げることもできるはずだ。
しかし値下げは考えていないとのことで、フルル曰く、屋台から店舗になり経費が倍以上かかってくる。これを回収するためにはもっと付加価値を付けて客単価を上げる必要があるのだ、と熱弁されてしまった。
まあ言い分ももっともなのでミーヤも一緒に考える、とは言わなかったのに新店舗の椅子に座るよう命令され逃げられない。
「ねえフルル、料理スキルはどのくらいまで上がったの?
もう結構上がったんじゃない?」
「そうね、毎日卵二百個調理していたから、もう30は超えたわよ。
まさかこんな日が来るなんて考えもしなかったわ」
「じゃあマヨネーズを作ってみる?
酒場のおばちゃんには文句言われるかもしれないけど、昼と夜で客層は被らないしさ。
きっとわかってくれるよ」
「今の私で作れるかなあ。
マヨネーズは魅力だけどそれだけが心配ね」
心配するのも無理はない。失敗すれば材料が消えてなくなるのだから慎重にもなる。そんなフルルの顔を見ながらミーヤはポケットから手動ハンドミキサーを取り出した。
「開店祝いと言うことでこれをあげるわ。
ここを握ると先が回転して、あっという間にまぜられるの。
これがあればマヨネーズ作りはそんなに難しくないわ」
「今ここでも試せる?
時間あるなら教えてくれないかしら。
無理そうならあきらめるわ」
「別にあきらめなくてもできるまで頑張ったらいいじゃないの。
卵はたくさんあるんだし」
「ダメよ、今のところ毎日二百個しか無いんだから。
次にモウス村へ行くのは二カ月くらい先のはずなのよ」
そうか、モウスヤケイの数以上には卵は産まれないのだから無駄にはできないのだろう。ならばスガーテル副会長から仕入れるのはどうかと提案してみる。
「それは絶対に無理よ。
もちろんブッポム商人長が嫌がるのは当然だけど、スガーテル副会長だってきっと売らないわ。
みすみす商人長に儲けさせるはずないもの」
「なかなか難しいものね。
それならある数だけで頑張る?
マーケットで買ってきて試すのも有りだと思うわよ?」
「なるほど、副会長から直接買うんじゃなくて、私が練習のためにマーケットで買うってことね。
それなら商人長に怒られないかもしれないわ!」
ミーヤはフルルへ材料を教え、卵の他にオリーブオイルとすっぱい黄色い果実を買ってくるよう頼んだ。もしフルルがマヨネーズのレシピを獲得できれば、さらに客足は伸びるだろう。
結局、残る問題はそのお客さんを捌けるかどうかだ。入り口と出口を分けて番号札制にして、器は自前で用意してもらう。他に何かできることは無いだろうか。しばらく考えていたミーヤだが、どうにも思い浮かばない。このままでは毎日フルルにこき使われてしまう。無給で……
考え事をしているとレナージュが話しかけてきた。もしかしたら退屈してしまっているのかもしれない。現にチカマはうとうとして今にも寝そうである。
「ねえミーヤ? そろそろさ、何か作らないの?
卵は無くても何かあるでしょ?
時間がまだ早いけど、今宿屋へ戻ったら私飲み始めてしまいそうだわ」
「そうよねえ、ここにいても退屈なんでしょ?
それなら細工屋さんへ行ってきてくれないかしら?
注文したいものがあるのよ」
ミーヤはそう言って粘土板へ図を描き始めた。この店にあったものを勝手に使い、さらにそのまま持たせてしまうのだから身勝手な話ではあるが、フルルにタダ働きさせられているのだしこれくらい構わないだろう。
「チカマもレナージュと一緒にお使い行ってくる?
それとも宿屋へ戻って寝ていてもいいわよ?」
「ボクはここにいる。
ミーヤさまのいるところがボクの居場所だから」
「まったくチカマったらさ、ヤキモチ焼いちゃうわね。
それじゃ細工屋まで行ってくるわ」
またまたレナージュに冷やかされたが、もうそんなに気にならなくなっている。だって仲良しなのはいいことなのだから。食いしん坊で甘えん坊でミーヤを慕ってくれるチカマは、本当にかわいくて大切な存在だ。
もちろんマールのことも大好きだから、ジスコへ戻ってきてからはほぼ毎日メッセージを送っている。たわいもないことから料理のことまで内容は色々だ。ああ、マールの作ったウサギのシチューが食べたいよ。いつの間にかそんなことをポツリとつぶやいていた。
しばらく待っているとフルルが戻ってきて、調理用テーブルの上に買ってきた食材を並べていく。
「じゃあ始めましょうか。
まずはここへ卵を割り入れるんだけど、黄身だけ入れて白身はこっちへ入れるのよ?
今やってみるからね」
ミーヤが卵を割って、殻の間を二、三度往復させながら白身を鍋へ落とす。それを見てフルルは腕組みをしたまま動かない。
「ちょっと難しそうね。
卵は十個しか売ってなかったから無駄にはできないのよ」
「それなら手順だけ覚えておいて。
しばらくの間は私が作るわ」
そう言ってから卵を三個使ってマヨネーズを作った。分量はおばちゃんへ教えた時にきちんと量っておいたのでバッチリである。やはり肝は黄身白身の分離と撹拌だろうか。そのための道具を、細工屋さんがすぐ作ってくれるといいのだけど、忙しそうなことを言っていたのが心配だ。
「ねえフルル、細工屋さんへは何を注文したの?
調理道具よね?」
「ええそうよ、スキレットをあと五つ、蒸し器一つかな。
ああ、あとミーヤに言われていた細い針よ」
「OK、私も追加で頼みに行ってもらってるから、きっともっと楽になると思うわ。
でもフルルが倒れる前に人を雇った方がいいかもしれないわね」
「そう都合のいい働き手なんていないし、店の借り賃もあるからあまり余裕はないわ。
卵がもっと…… せめて倍くらいあればねえ」
いやいや、二百個で充分忙しかったのにさらに倍なんて考えたくもない。まあ屋台と違ってスキレットが最低でも四つは置けるから、フルルの手が早ければ回るとは思うけど…… 足りなくなってミーヤたちが駆り出させるのが目に見えている。それだけは回避したい気持ちでいっぱいだ。
「こっちはいつから開けられそうなの?
野外食堂は明日までなんでしょ?」
「そうなのよ、こっちはまだかかりそうだから数日開いてしまいそうね
その間にも卵は毎日二百個生えてくるから、回収と保管も大変だわ」
卵が生えてくると言うのは面白い表現である。でもこの世界では卵を産む生物はモウスヤケイの他にいないし、子供を産む生物もいないはず。ということは、鳥の体の中から卵が生み出されているとは考えていないのだろう。
「マヨネーズの作り方はこれで大丈夫?
レシピを羊皮紙に書いておこうか?」
「そうしてもらった方がいいかもしれないわ。
夜中に思い立って作り始めても、完全に覚えていなかったらミーヤを迎えに行ってしまいそうだもの」
それは非常に困るので、ミーヤは羊皮紙を取り出してマヨネーズのレシピを記載していった。ついでももう一品、ムラングのレシピも書いておく。
「それじゃもう一つ作るわよ?
今そこへレシピを書いたムラング、商人長の館へ持って行ったの覚えてるかしら?」
「もちろん! あれとてもおいしかったけど私でも作れるものなの?
全然自信ないけど……」
「フルルならきっと平気よ。
自信を持ってがんばりましょ」
ミーヤはそう言ってメレンゲ作りを実践して見せた。あとはオーブンで焼くのだが、この店にはない。と言うことはスキレットか鍋で焼くしかないと言うことになる。とりあえずスキレット二つ重ねで試してみようと思ったが、やはりオーブンが無いとフルルが覚えるときに困るだろう。
「ねえ、ここにオーブンはないの?
あったら今すぐ焼けるんだけど」
「あー、奥の住居に会ったわね。
今薪をくべてくるわ」
ここは店舗兼住宅だったようで奥には別のキッチンも有り、当然のようにかまどがもう一つあった。これなら野菜を蒸すこともできそうだ。そうするとスキレットで作る簡単オムレツも出来てちょっとしたテイクアウト店のようになる。いくら珍しいからと言って、目玉焼きとゆで卵のみの店では神人プロデュースが泣くと言うものだ。
「ミーヤ! 火が入ったけどどのくらいにするの?
強くしてしまって平気かしら?」
「薪が崩れて炎が出なくなったくらいがいいわね。
あんまり温度が高くない方がいいのよ」
確か酒場のおばちゃんやおじさんは、弱火にするとか強火にするとか考えながら薪をくべるとちょうどよくなると言っていた。あの力はスキルがどのくらいになれば使えるのだろうか。
フルルの料理スキルは、30を超えたと言っていたのでミーヤよりも少しだけ高い。それでもできないことなら40か50と言ったところだろう。このままフルルが飽きずに店を続けて行けば、いつかその域に達することになるのかもしれない。
火の加減がちょうどよくなるのを待っている間にレナージュからメッセージだ。どうやら細工屋へ注文した用具が明日には出来上がるらしい。その代り改良型のシャワーとドライヤーは先送りだ。
ようやく火加減が整ったようなので鉄板へ小さく並べたメレンゲを焼いてみる。そう言えば絞り袋もあった方が良かった。でも口金だけあっても袋がないからうまくできないかもしれない。これは今後の課題と言うことで覚えておこう。
焼き上がりには一時間ほどかかるのでひたすら待つ。その間にチカマは完全に寝てしまっているし、レナージュは戻ってきて早く何か食べさせろとせかしてくる。それにしても、スマメの時刻表示は意外にも日々の生活に溶け込んでいる。時間時刻の概念があるから規則正しい生活を送る人が多い。欲を言えば、タイマー機能があればもっといいのだが。
焼き上がりを待ちつつ、色々なことを考えて楽しくなってくるミーヤだった。
元々あった入り口の扉は撤去され、店の中で食べられるようにしてあった。いわゆるイートインのような造りだ。ここで食べてくれれば皿を回収するのが楽だろうし、それなりの対価で用意した皿がきちんと回収できれば商品価格を下げることもできるはずだ。
しかし値下げは考えていないとのことで、フルル曰く、屋台から店舗になり経費が倍以上かかってくる。これを回収するためにはもっと付加価値を付けて客単価を上げる必要があるのだ、と熱弁されてしまった。
まあ言い分ももっともなのでミーヤも一緒に考える、とは言わなかったのに新店舗の椅子に座るよう命令され逃げられない。
「ねえフルル、料理スキルはどのくらいまで上がったの?
もう結構上がったんじゃない?」
「そうね、毎日卵二百個調理していたから、もう30は超えたわよ。
まさかこんな日が来るなんて考えもしなかったわ」
「じゃあマヨネーズを作ってみる?
酒場のおばちゃんには文句言われるかもしれないけど、昼と夜で客層は被らないしさ。
きっとわかってくれるよ」
「今の私で作れるかなあ。
マヨネーズは魅力だけどそれだけが心配ね」
心配するのも無理はない。失敗すれば材料が消えてなくなるのだから慎重にもなる。そんなフルルの顔を見ながらミーヤはポケットから手動ハンドミキサーを取り出した。
「開店祝いと言うことでこれをあげるわ。
ここを握ると先が回転して、あっという間にまぜられるの。
これがあればマヨネーズ作りはそんなに難しくないわ」
「今ここでも試せる?
時間あるなら教えてくれないかしら。
無理そうならあきらめるわ」
「別にあきらめなくてもできるまで頑張ったらいいじゃないの。
卵はたくさんあるんだし」
「ダメよ、今のところ毎日二百個しか無いんだから。
次にモウス村へ行くのは二カ月くらい先のはずなのよ」
そうか、モウスヤケイの数以上には卵は産まれないのだから無駄にはできないのだろう。ならばスガーテル副会長から仕入れるのはどうかと提案してみる。
「それは絶対に無理よ。
もちろんブッポム商人長が嫌がるのは当然だけど、スガーテル副会長だってきっと売らないわ。
みすみす商人長に儲けさせるはずないもの」
「なかなか難しいものね。
それならある数だけで頑張る?
マーケットで買ってきて試すのも有りだと思うわよ?」
「なるほど、副会長から直接買うんじゃなくて、私が練習のためにマーケットで買うってことね。
それなら商人長に怒られないかもしれないわ!」
ミーヤはフルルへ材料を教え、卵の他にオリーブオイルとすっぱい黄色い果実を買ってくるよう頼んだ。もしフルルがマヨネーズのレシピを獲得できれば、さらに客足は伸びるだろう。
結局、残る問題はそのお客さんを捌けるかどうかだ。入り口と出口を分けて番号札制にして、器は自前で用意してもらう。他に何かできることは無いだろうか。しばらく考えていたミーヤだが、どうにも思い浮かばない。このままでは毎日フルルにこき使われてしまう。無給で……
考え事をしているとレナージュが話しかけてきた。もしかしたら退屈してしまっているのかもしれない。現にチカマはうとうとして今にも寝そうである。
「ねえミーヤ? そろそろさ、何か作らないの?
卵は無くても何かあるでしょ?
時間がまだ早いけど、今宿屋へ戻ったら私飲み始めてしまいそうだわ」
「そうよねえ、ここにいても退屈なんでしょ?
それなら細工屋さんへ行ってきてくれないかしら?
注文したいものがあるのよ」
ミーヤはそう言って粘土板へ図を描き始めた。この店にあったものを勝手に使い、さらにそのまま持たせてしまうのだから身勝手な話ではあるが、フルルにタダ働きさせられているのだしこれくらい構わないだろう。
「チカマもレナージュと一緒にお使い行ってくる?
それとも宿屋へ戻って寝ていてもいいわよ?」
「ボクはここにいる。
ミーヤさまのいるところがボクの居場所だから」
「まったくチカマったらさ、ヤキモチ焼いちゃうわね。
それじゃ細工屋まで行ってくるわ」
またまたレナージュに冷やかされたが、もうそんなに気にならなくなっている。だって仲良しなのはいいことなのだから。食いしん坊で甘えん坊でミーヤを慕ってくれるチカマは、本当にかわいくて大切な存在だ。
もちろんマールのことも大好きだから、ジスコへ戻ってきてからはほぼ毎日メッセージを送っている。たわいもないことから料理のことまで内容は色々だ。ああ、マールの作ったウサギのシチューが食べたいよ。いつの間にかそんなことをポツリとつぶやいていた。
しばらく待っているとフルルが戻ってきて、調理用テーブルの上に買ってきた食材を並べていく。
「じゃあ始めましょうか。
まずはここへ卵を割り入れるんだけど、黄身だけ入れて白身はこっちへ入れるのよ?
今やってみるからね」
ミーヤが卵を割って、殻の間を二、三度往復させながら白身を鍋へ落とす。それを見てフルルは腕組みをしたまま動かない。
「ちょっと難しそうね。
卵は十個しか売ってなかったから無駄にはできないのよ」
「それなら手順だけ覚えておいて。
しばらくの間は私が作るわ」
そう言ってから卵を三個使ってマヨネーズを作った。分量はおばちゃんへ教えた時にきちんと量っておいたのでバッチリである。やはり肝は黄身白身の分離と撹拌だろうか。そのための道具を、細工屋さんがすぐ作ってくれるといいのだけど、忙しそうなことを言っていたのが心配だ。
「ねえフルル、細工屋さんへは何を注文したの?
調理道具よね?」
「ええそうよ、スキレットをあと五つ、蒸し器一つかな。
ああ、あとミーヤに言われていた細い針よ」
「OK、私も追加で頼みに行ってもらってるから、きっともっと楽になると思うわ。
でもフルルが倒れる前に人を雇った方がいいかもしれないわね」
「そう都合のいい働き手なんていないし、店の借り賃もあるからあまり余裕はないわ。
卵がもっと…… せめて倍くらいあればねえ」
いやいや、二百個で充分忙しかったのにさらに倍なんて考えたくもない。まあ屋台と違ってスキレットが最低でも四つは置けるから、フルルの手が早ければ回るとは思うけど…… 足りなくなってミーヤたちが駆り出させるのが目に見えている。それだけは回避したい気持ちでいっぱいだ。
「こっちはいつから開けられそうなの?
野外食堂は明日までなんでしょ?」
「そうなのよ、こっちはまだかかりそうだから数日開いてしまいそうね
その間にも卵は毎日二百個生えてくるから、回収と保管も大変だわ」
卵が生えてくると言うのは面白い表現である。でもこの世界では卵を産む生物はモウスヤケイの他にいないし、子供を産む生物もいないはず。ということは、鳥の体の中から卵が生み出されているとは考えていないのだろう。
「マヨネーズの作り方はこれで大丈夫?
レシピを羊皮紙に書いておこうか?」
「そうしてもらった方がいいかもしれないわ。
夜中に思い立って作り始めても、完全に覚えていなかったらミーヤを迎えに行ってしまいそうだもの」
それは非常に困るので、ミーヤは羊皮紙を取り出してマヨネーズのレシピを記載していった。ついでももう一品、ムラングのレシピも書いておく。
「それじゃもう一つ作るわよ?
今そこへレシピを書いたムラング、商人長の館へ持って行ったの覚えてるかしら?」
「もちろん! あれとてもおいしかったけど私でも作れるものなの?
全然自信ないけど……」
「フルルならきっと平気よ。
自信を持ってがんばりましょ」
ミーヤはそう言ってメレンゲ作りを実践して見せた。あとはオーブンで焼くのだが、この店にはない。と言うことはスキレットか鍋で焼くしかないと言うことになる。とりあえずスキレット二つ重ねで試してみようと思ったが、やはりオーブンが無いとフルルが覚えるときに困るだろう。
「ねえ、ここにオーブンはないの?
あったら今すぐ焼けるんだけど」
「あー、奥の住居に会ったわね。
今薪をくべてくるわ」
ここは店舗兼住宅だったようで奥には別のキッチンも有り、当然のようにかまどがもう一つあった。これなら野菜を蒸すこともできそうだ。そうするとスキレットで作る簡単オムレツも出来てちょっとしたテイクアウト店のようになる。いくら珍しいからと言って、目玉焼きとゆで卵のみの店では神人プロデュースが泣くと言うものだ。
「ミーヤ! 火が入ったけどどのくらいにするの?
強くしてしまって平気かしら?」
「薪が崩れて炎が出なくなったくらいがいいわね。
あんまり温度が高くない方がいいのよ」
確か酒場のおばちゃんやおじさんは、弱火にするとか強火にするとか考えながら薪をくべるとちょうどよくなると言っていた。あの力はスキルがどのくらいになれば使えるのだろうか。
フルルの料理スキルは、30を超えたと言っていたのでミーヤよりも少しだけ高い。それでもできないことなら40か50と言ったところだろう。このままフルルが飽きずに店を続けて行けば、いつかその域に達することになるのかもしれない。
火の加減がちょうどよくなるのを待っている間にレナージュからメッセージだ。どうやら細工屋へ注文した用具が明日には出来上がるらしい。その代り改良型のシャワーとドライヤーは先送りだ。
ようやく火加減が整ったようなので鉄板へ小さく並べたメレンゲを焼いてみる。そう言えば絞り袋もあった方が良かった。でも口金だけあっても袋がないからうまくできないかもしれない。これは今後の課題と言うことで覚えておこう。
焼き上がりには一時間ほどかかるのでひたすら待つ。その間にチカマは完全に寝てしまっているし、レナージュは戻ってきて早く何か食べさせろとせかしてくる。それにしても、スマメの時刻表示は意外にも日々の生活に溶け込んでいる。時間時刻の概念があるから規則正しい生活を送る人が多い。欲を言えば、タイマー機能があればもっといいのだが。
焼き上がりを待ちつつ、色々なことを考えて楽しくなってくるミーヤだった。
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