『神々による異世界創造ゲーム』~三十路女が出会った狐耳メイドは女神さま!? 異世界転生したケモミミ少女はスローライフと冒険を楽しみたい~

釈 余白(しやく)

文字の大きさ
上 下
71 / 162
第四章 目指せ!フランチャイズで左団扇編

62.逆恨み節

しおりを挟む
「だからよ! アタシがすぐにヒール掛けたのが良かったんだよ!
 なんつーか判断力? 冷静だったのはあたしだけだからな!
 ミーヤは泣いてるだけだし、レナージュはガタガタ震えてたしな!」

 いやまあ言っていることはあっているのだがいまいち納得しがたい。イライザだって決して平常心ではなかった。ただ、あの状況下でまともな行動をしていたのがイライザだけだったのは確かだ。

 だから当然感謝はしている。しているけど…… さっきまであんなに落ち込んでいたのに、酒が入ったらもうこれだ。心配して損した、とむくれてみる。

「ミーヤあ、まあ飲めよ!
 みんな無事に帰ってこられて良かったよな!
 また行こうぜ!」

「イライザご機嫌
 ちょっとうるさい」

「そうよね、チカマが退院したら急に元気になっておかしいよねー
 イライザったら変なのー」

「細けえこたあいいんだよ!
 今が楽しきゃそれでいいのさ」

 まあとにかく全員が生きて帰ってこられたのは本当に良かった。あの黒い大きな奴が降りて来たら、全員あの世行きだったのは間違いない。あの怪物? についてローメンデル卿なら何か知っているだろうか。まさかあの人は倒したことがあるのだろうか。

「イライザ、もういい加減にしなさいよ!
 ミーヤはあんなに落ち込んでいたあなたのこと、ものすごく心配してたんだからね」

「いやあ、悪かったな、それはもちろんわかってるさ。
 でもチカマが完全に元気になったの見たら安心しちまってよ。
 もう飲んだくれたくて仕方ないってわけだ」

 わかってやっているならもう何も言うまい。みんなのことを心配してくれていたのは確かだし、旅の最中も頼り切っていたのはミーヤたちなのだから。

「ちょっとアンタたち? 帰ってきたばかりで疲れてるだろうけどね。
 少しでいいから手伝っておくれよ。
 もう! 神人様のせいで忙しいったらありゃしない」

 その原因と言うか要因は、確かにミーヤにあるようなものなのだけど、そのおかげで忙しくなって儲かってる人から言われるのは納得しがたい。

「まあ運ぶだけなら少しくらい手伝ってもいいけど……
 ちゃんと賃金は貰うわよ?」

 レナージュはホントお金に細かい。この間の……

「あっ! レナージュ! 分配分配!
 いくらくらいせしめたのよ?」

「ああ、明日冒険者組合へ魔鉱を売りに行くでしょ?
 そこでまた依頼料はいるから、その後でいいかなって思ってた。
 金額はお楽しみってことで、期待しておいてよ?」

 どうやら相当な額が入ってきているらしい。レナージュの表情でそれは丸わかりだ。まあでもお金がすべではないし、仕方ないから今は目の前で困っている人を助けることにしよう。

「助かるよ、神人様、おちびちゃんには料理を運んでもらおうかね。
 あっちの酔っ払い二人は使い物にならないから、樽を持たせて部屋に行っててもらおうか。
 神人様は早くこっちへ来てマヨネーズ作っておくれよ、もう足りなくなりそうなんだ」

「わかったわ、ホントここはお客使いの荒い酒場ね。
 チカマ、これを奥のテーブルへ運んであげてね、途中で食べちゃダメよ?」

「ボクそんなに食いしん坊じゃない。
 ミーヤさまが作ったなら食べちゃうけど」

「ふふ、いい子ね、後で作ってあげるから今は頑張って働いてちょうだいな。
 おばちゃん? 次ができるわよ、どこへ運べばいいの?」

 おばちゃんはもうどこで注文を受けたのか覚えていないらしい。とりあえず奥から順番に運んでみたが、他のテーブルからこっちが先だ、いやこっちだと怒号が飛び交う。

「ねえ、今番号札作るから次からそれを持たせてちょうだいよ。
 注文は叫ぶんじゃなくてここまで来てもらうこと」

「まーたおかしなこと考えたねえ。
 それでどうしようってのさ」

「注文を受けた時に番号札を渡すのよ。
 半券はここへ置いて、注文と一緒に置いておくの。
 出来上がったら番号を呼んで取りに来てもらえば運ばなくていいのよ?」

「ここに粘土板があるから注文を書いとけばいいかね?」

「そうね、バッチリだわ!」

 これはフードコートでよく使われてる手法だ。この世界でも役に立ちそうだけど、野外食堂ならもっと効果があるだろう。酒場だと一杯ずつ、一品ずつ清算してもらうアイリッシュバーみたいなキャッシュオンのほうがあっているかもしれない。

 いやいや、自分の店でもないのにあれこれ考えすぎるのは悪い癖だ。今まで人の役に立った経験が少なすぎて、いざ役に立つと思うと試したくなって仕方ない。これってもしかしてちやほやされたいのだろうか。承認欲求的な考えでミーヤのことを見てもらいたいとでも考えているのか?

 しかしそんなことを考えている暇もなく、注文がどんどん入ってくる。木片で十番までの番号札を作ったはずなのにもう無くなってしまった。夫婦二人でこれを捌くのはもう無理だろう。

「おばちゃん、もう捌ききれないから従業員雇った方がいいよ。
 賃金の代わりにご飯食べさせるだけでも集まるんじゃない?」

「なるほどねえ、それも悪くないかもしれないね。
 とにかく忙しくて目が回りそうだよ」

「ボクもお腹すいた。
 何か食べるまでもう働かない」

 ここでチカマが音を上げて脱落を宣言する。でも番号札制にしてからは、忙しさも少し収まってきた。さてと賄(まかない)を作るとしますか。

 この間は材料が足りなくて作れなかったけど、ここならなんでもそろっている。さっそく調理を始めよう。まずはパンを羊の乳でふやかして―― 玉ねぎのみじん切りは、あめ色まで炒めてから入れた方が甘みが出て好みだ。生のままだと肉汁と水分が合わさってジューシーになるからどちらがいいかは人それぞれだろう。

 次に卵を加えてから良くこねて、大きさは手のひらくらいで楕円形に成型する。チカマはいっぱい食べそうだから二個用意しておこう。オーブンへ入れる前にフライパンで両面を焼いて焼き目をつけておくと仕上がりが早い。あとは浅い鍋をかぶせて焦げないようにしてからオーブンで焼き上げたら―― 

 なにかよくわからない肉を粗挽きにした合挽きハンバーグの完成!

「うわあ、これこの間のとちょっと違う?
 おいしそうだね、ミーヤさま」

「ちょっとアンタ! なに勝手に新メニュー作ってるんだい?
 それを覚えるアタシの身にもなっておくれよ!?」

 いやいや、別におばちゃんは覚えなくていいから…… と言っても、後で何時間も付き合わされるのは目に見えている…… ちょっと失敗したかも、と思ったが、チカマが満面の笑みで頬張っているのを見ると、やっぱり作ってよかったと感じるのだ。

「んうんむわー! これ中にチーズ入ってた!
 ミーヤさま! すごくおいしいよ!」

「気に入ってくれたなら良かったわ。
 チカマに喜んでもらえたなら、作った甲斐があったってものね」

「いやあ、これもウンマイねえ。
 肉を細かく刻んでるのかい。
 随分手間がかかるから店では出していらんないね、こりゃ」

 セーフ! ミーヤは心の中で目一杯のガッツポーズをしたのだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

素材採取家の異世界旅行記

木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。 可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。 個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。 このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。 裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。 この度アルファポリスより書籍化致しました。 書籍化部分はレンタルしております。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

処理中です...