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第一章 異世界転生と最初の村編
9.商売上手
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想像していた物とは異なり、キャラバンの店舗は荷馬車がそのまま使われている構造だった。ミーヤはゴザとかが敷かれていてそこへ並べられた商品をしゃがみこんで物色、なんて蚤の市のような風景を頭に描いていたのだ。でも実際にはそうではなく、荷馬車の後幕が解放されて梯子がかけられており、客が荷台へ入って中に置かれた商品を見ると言う方式である。これはこれで、急な雨でも商品がダメになったりしないし、盗みを働くことも難しいだろう。
その中で、一か所だけはテーブルを出して商品が並べられており大勢の村人が群がっていた。ミーヤも気になって覗いてみると色とりどりのお菓子が並べられている。ミチャがお菓子もあると言っていたことを思い出し、値札を見てみると思いのほか手ごろな価格だ。並べられているお菓子は、キャラバンが帰ってしまったら次はいつ口にできるかわからないようなものばかりである。
物価がわからないうちは無駄遣いしないと心に決めていたミーヤだったが、目の前の誘惑には抗えずついつい飴玉50個入りの袋を受け取って代金を支払うのだった。すぐに一つ取り出して口に入れると、異世界に来て初めて味わう甘いだけの食べ物だ。果物にも甘いものはあるが、それは瑞々しかったりかじるものだったりするので飴玉とは全く違う。どちらがおいしいとかではなく別物なのだ。
砂糖は貴重品と言っていた割にこんな砂糖の塊が安く売られているなんてどういうことなのか疑問に思わないわけではないが、そんなことは作る人が考えればいいことだ。ミーヤは自分に関係ないことで悩むのは馬鹿らしいと、それ以上考えるのをやめた。
隣のテーブルには焼き物の器と魚の干物があった。カナイ村の食器はほぼすべてが木製で、たまに金属製があるだけなので陶器は初めて見た。きれいな絵が描かれていたので欲しくなったが、飴玉に比べるとトンデモない価格だったので我慢することにする。
代わりに、魚の干物は納得できる金額だったので数枚買い込んだ。とはいえ一枚で飴玉50個と大差ない。でも魚自体初めて見たのでつい嬉しくなってしまったのだ。ただし魚の種類はさっぱりわからず、少なくとも今まで見たことの無い姿形をしていた。
食べる物はこのくらいにして、本命の衣類を見に行くことにする。荷馬車の出入り口を覗きながら探していくと衣類を取り扱っている荷馬車は簡単に見つかった。そのままウキウキしながら乗り込んで物色してはみたものの、ミチャの持っていたワンピースのような薄手の生地でできたものは無く、麻でできた厚ぼったい衣類ばかりだった。
ガッカリしながら馬車から出て、ついでにと隣の馬車へ向かうと馬車の間に女性が立っている。見た目からはとても売り子に見えないが何をしているのだろう。
透き通るような白い肌、草木のようなデザインのシャツにパンツルック、背中には弓をかけている。革製の小さな胸当てに、分厚くて頑丈そうな板状の革を腰に沿って三枚ぶら下げているが、これも防具なのだろうか。もしかしたらこれが冒険者!? 凛とした佇まいに見とれそうになるが、目が合ってしまったので慌てて目をそらしてしまった。良く見たらあの耳ってきっとエルフだわ、と声には出さずに隣の荷馬車へ向かった。
次の馬車にも女の子がいた。マールと同じくらいか少し上だろう。まあどちらにしても生後数カ月のミーヤよりは年上に決まってる。
「ここは何を売っているお店?
衣類があると嬉しいんだけどな」
「残念ながら普通の衣服は無いわね。
でも一応着るものはあるから見ていかない?
おっと、私はフルル、このキャラバンで売り子をしているの」
フルルと名乗った女の子は、クリクリっとした瞳が愛らしく、長い黒髪を両側で三つ編みにしたおさげが良く似合っていてかわいい娘だ。顔にはそばかすが目立つがそれもチャームポイントだと感じ、まるで黒い髪をした赤毛のアンといったところだ。
「私はミーヤ・ハーベス、ミーヤって呼んで。
まだ知らないことばかりだけどよろしくね」
「ミーヤね、こちらこそよろしく。
ねえその額の宝石って、もしかして神人様なの?」
やはりこの目立つ石は神人の証として誰でも知っているものなのか。それならばごまかすことなど出来やしない。ミーヤは諦めて素直に頷いた。
「でも様とかいらないよ? 私だって普通の女の子なの。
だからこの作業着よりもかわいければもう何でもいいから見せてくれないかな?。
できればちょっとひらひらした感じが好みなんだけど」
「今回はそういうの無かったわね。
見た目も大切だけど、こういう街から遠い村では丈夫な物の方が売れるらしいからさ」
なるほど、それももっともな話だ。でもやっぱり女の子ならおしゃれをしたいのが本音である。かと言って遠くから売りに来ている店でなんでも揃うはずもなく、ミーヤはがっくりとうなだれてしまった。
「これなんてどうかな?
衣服じゃないけど着るものには違いないし、デザインはかわいいと思うよ?」
フルルがそう言って勧めてくれたのは、革でできたスリーピース? 一風変わったものだった。
「これは女性用の革鎧なんだけど、売られている鎧のほとんどは男女兼用なのよ。
だから女性専用品は珍しいんだから。
そんな職人のこだわりが込められている逸品よ!
しかも物理攻撃を約一割低減してくれるんだってさ」
そう言われるとすごくいいものに見えてくる。デザインは本当にすごくかわいいし、防御効果があるのも魅力的だ。村では鎧なんて着ている人はいないので必要かどうかと考えると答えは明らかだ。そもそも普段は作業着以外を来ている人すらいない。だが買い物とは必要かどうかだけで決めるものではない。
「でもこれって、胸をちょっと強調しすぎじゃない?
はしたないと言うか恥ずかしいかも。
それに下は一見スカートだけど、中は丸見えじゃないの」
それは革でできたブラジャー形状の胸当て、胴は編上げのコルセット、スカートはさっきの女性冒険者のものと似ていて、板状の革が短冊状にぶら下げられているのだが、形状は何となく中世のヨーロッパ的なドレスに近いように見える。決定的に違っているのは革でできていることと、スカートと言うよりブラインドを巻いているような構造のため中が丸見えであることだ。
「買わなくてもいいから試着だけでもしてみてよ。
お客さん誰も来なくて退屈だったんだよね」
「まあ退屈しのぎの相手くらいなってもいいよ。
私も防具って初めて見たから興味あるしね」
こうしてミーヤはフルルに荷馬車へ連れ込まれ作業着をはぎ取られた。まずはコルセットからつけるらしく、フルルが巻いてくれた後に自身で編上げの締め具合を調整する。その後に革ブラを装着すると、これでもかと言うくらいにバストが強調された。最後にスカートを巻きながらコルセットへ引っ掛けていくと着替えの完了だ。
「これ結構いいかもしれないなあ
見た目よりも軽いし、動きにくさもないんだね。
でも胸が目立ちすぎるのとスカートの中が丸見えなのがちょっとね……」
こんな事ならキャラクターメイキングで胸を大きくし過ぎなければ良かったと思わなくはないが、一度くらい豊満なバストを所有してみたかったのだから仕方ない。
「なに言ってんのよ。
胸なんて大きい方がかわいいし、男の子だって好きに決まってるわ!
下はスカートの中にもう一枚履いてもいいけど、こっちは好みなので必要に応じてって感じね」
「でもこんな凝った造りだと相当高いんじゃないの?
私お金はあまり持ってないよ?」
「これは、えっと……
9000ゴードルね、この手のものにしてはお買い得よ?」
「残念だけど手持ちが足りないわ。
でもすごくステキだった、ありがとうね」
そこへキャラバンの隊長らしい人物が近寄ってきた。先ほど遠目から見ただけで他とは違う佇まいで、気品と風格を兼ね備えているような中年男性である。
「あ、商人長!
この女性用革鎧って安くなりませんか?
こちらのお方は神人様なんですけど、お金が足りないみたいなんです!」
神人として持ち上げられてるのか、貧乏だとけなされているのかわからないが、お金がないと大声で吹聴されるのはとにかく恥ずかしい。どうやらフルルはあまり気を使って話すタイプではないようだ。
「おお、あなたが神人様ですか。
たった今村長殿とその話をしてきたところなんですよ。
よろしいでしょう、その鎧は半額で構いません、ぜひ使ってみてください」
もし半額すら持っていなかったらどうするつもりだったのだろうか。とはいえここまで値引きされてしまってはもはや購入するしかない。なんだかうまく乗せられたな、と思いつつ料金を支払うミーヤだった。
その中で、一か所だけはテーブルを出して商品が並べられており大勢の村人が群がっていた。ミーヤも気になって覗いてみると色とりどりのお菓子が並べられている。ミチャがお菓子もあると言っていたことを思い出し、値札を見てみると思いのほか手ごろな価格だ。並べられているお菓子は、キャラバンが帰ってしまったら次はいつ口にできるかわからないようなものばかりである。
物価がわからないうちは無駄遣いしないと心に決めていたミーヤだったが、目の前の誘惑には抗えずついつい飴玉50個入りの袋を受け取って代金を支払うのだった。すぐに一つ取り出して口に入れると、異世界に来て初めて味わう甘いだけの食べ物だ。果物にも甘いものはあるが、それは瑞々しかったりかじるものだったりするので飴玉とは全く違う。どちらがおいしいとかではなく別物なのだ。
砂糖は貴重品と言っていた割にこんな砂糖の塊が安く売られているなんてどういうことなのか疑問に思わないわけではないが、そんなことは作る人が考えればいいことだ。ミーヤは自分に関係ないことで悩むのは馬鹿らしいと、それ以上考えるのをやめた。
隣のテーブルには焼き物の器と魚の干物があった。カナイ村の食器はほぼすべてが木製で、たまに金属製があるだけなので陶器は初めて見た。きれいな絵が描かれていたので欲しくなったが、飴玉に比べるとトンデモない価格だったので我慢することにする。
代わりに、魚の干物は納得できる金額だったので数枚買い込んだ。とはいえ一枚で飴玉50個と大差ない。でも魚自体初めて見たのでつい嬉しくなってしまったのだ。ただし魚の種類はさっぱりわからず、少なくとも今まで見たことの無い姿形をしていた。
食べる物はこのくらいにして、本命の衣類を見に行くことにする。荷馬車の出入り口を覗きながら探していくと衣類を取り扱っている荷馬車は簡単に見つかった。そのままウキウキしながら乗り込んで物色してはみたものの、ミチャの持っていたワンピースのような薄手の生地でできたものは無く、麻でできた厚ぼったい衣類ばかりだった。
ガッカリしながら馬車から出て、ついでにと隣の馬車へ向かうと馬車の間に女性が立っている。見た目からはとても売り子に見えないが何をしているのだろう。
透き通るような白い肌、草木のようなデザインのシャツにパンツルック、背中には弓をかけている。革製の小さな胸当てに、分厚くて頑丈そうな板状の革を腰に沿って三枚ぶら下げているが、これも防具なのだろうか。もしかしたらこれが冒険者!? 凛とした佇まいに見とれそうになるが、目が合ってしまったので慌てて目をそらしてしまった。良く見たらあの耳ってきっとエルフだわ、と声には出さずに隣の荷馬車へ向かった。
次の馬車にも女の子がいた。マールと同じくらいか少し上だろう。まあどちらにしても生後数カ月のミーヤよりは年上に決まってる。
「ここは何を売っているお店?
衣類があると嬉しいんだけどな」
「残念ながら普通の衣服は無いわね。
でも一応着るものはあるから見ていかない?
おっと、私はフルル、このキャラバンで売り子をしているの」
フルルと名乗った女の子は、クリクリっとした瞳が愛らしく、長い黒髪を両側で三つ編みにしたおさげが良く似合っていてかわいい娘だ。顔にはそばかすが目立つがそれもチャームポイントだと感じ、まるで黒い髪をした赤毛のアンといったところだ。
「私はミーヤ・ハーベス、ミーヤって呼んで。
まだ知らないことばかりだけどよろしくね」
「ミーヤね、こちらこそよろしく。
ねえその額の宝石って、もしかして神人様なの?」
やはりこの目立つ石は神人の証として誰でも知っているものなのか。それならばごまかすことなど出来やしない。ミーヤは諦めて素直に頷いた。
「でも様とかいらないよ? 私だって普通の女の子なの。
だからこの作業着よりもかわいければもう何でもいいから見せてくれないかな?。
できればちょっとひらひらした感じが好みなんだけど」
「今回はそういうの無かったわね。
見た目も大切だけど、こういう街から遠い村では丈夫な物の方が売れるらしいからさ」
なるほど、それももっともな話だ。でもやっぱり女の子ならおしゃれをしたいのが本音である。かと言って遠くから売りに来ている店でなんでも揃うはずもなく、ミーヤはがっくりとうなだれてしまった。
「これなんてどうかな?
衣服じゃないけど着るものには違いないし、デザインはかわいいと思うよ?」
フルルがそう言って勧めてくれたのは、革でできたスリーピース? 一風変わったものだった。
「これは女性用の革鎧なんだけど、売られている鎧のほとんどは男女兼用なのよ。
だから女性専用品は珍しいんだから。
そんな職人のこだわりが込められている逸品よ!
しかも物理攻撃を約一割低減してくれるんだってさ」
そう言われるとすごくいいものに見えてくる。デザインは本当にすごくかわいいし、防御効果があるのも魅力的だ。村では鎧なんて着ている人はいないので必要かどうかと考えると答えは明らかだ。そもそも普段は作業着以外を来ている人すらいない。だが買い物とは必要かどうかだけで決めるものではない。
「でもこれって、胸をちょっと強調しすぎじゃない?
はしたないと言うか恥ずかしいかも。
それに下は一見スカートだけど、中は丸見えじゃないの」
それは革でできたブラジャー形状の胸当て、胴は編上げのコルセット、スカートはさっきの女性冒険者のものと似ていて、板状の革が短冊状にぶら下げられているのだが、形状は何となく中世のヨーロッパ的なドレスに近いように見える。決定的に違っているのは革でできていることと、スカートと言うよりブラインドを巻いているような構造のため中が丸見えであることだ。
「買わなくてもいいから試着だけでもしてみてよ。
お客さん誰も来なくて退屈だったんだよね」
「まあ退屈しのぎの相手くらいなってもいいよ。
私も防具って初めて見たから興味あるしね」
こうしてミーヤはフルルに荷馬車へ連れ込まれ作業着をはぎ取られた。まずはコルセットからつけるらしく、フルルが巻いてくれた後に自身で編上げの締め具合を調整する。その後に革ブラを装着すると、これでもかと言うくらいにバストが強調された。最後にスカートを巻きながらコルセットへ引っ掛けていくと着替えの完了だ。
「これ結構いいかもしれないなあ
見た目よりも軽いし、動きにくさもないんだね。
でも胸が目立ちすぎるのとスカートの中が丸見えなのがちょっとね……」
こんな事ならキャラクターメイキングで胸を大きくし過ぎなければ良かったと思わなくはないが、一度くらい豊満なバストを所有してみたかったのだから仕方ない。
「なに言ってんのよ。
胸なんて大きい方がかわいいし、男の子だって好きに決まってるわ!
下はスカートの中にもう一枚履いてもいいけど、こっちは好みなので必要に応じてって感じね」
「でもこんな凝った造りだと相当高いんじゃないの?
私お金はあまり持ってないよ?」
「これは、えっと……
9000ゴードルね、この手のものにしてはお買い得よ?」
「残念だけど手持ちが足りないわ。
でもすごくステキだった、ありがとうね」
そこへキャラバンの隊長らしい人物が近寄ってきた。先ほど遠目から見ただけで他とは違う佇まいで、気品と風格を兼ね備えているような中年男性である。
「あ、商人長!
この女性用革鎧って安くなりませんか?
こちらのお方は神人様なんですけど、お金が足りないみたいなんです!」
神人として持ち上げられてるのか、貧乏だとけなされているのかわからないが、お金がないと大声で吹聴されるのはとにかく恥ずかしい。どうやらフルルはあまり気を使って話すタイプではないようだ。
「おお、あなたが神人様ですか。
たった今村長殿とその話をしてきたところなんですよ。
よろしいでしょう、その鎧は半額で構いません、ぜひ使ってみてください」
もし半額すら持っていなかったらどうするつもりだったのだろうか。とはいえここまで値引きされてしまってはもはや購入するしかない。なんだかうまく乗せられたな、と思いつつ料金を支払うミーヤだった。
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