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5.成長した勇者
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このファンシーで平和にしか見えないもふもふの国、ここを救うと言うか、そもそもどんな危機が迫っていると言うのだろう。その言葉だけでは危機感も感じられないし何の判断もできない。
「いくつか聞きたいんだけど、いったいどんな危機が迫っているの?
それになんで僕に助けを求めるのか、僕になにができるのか。
このくらいは聞かせてくれない?」
「もちろんご説明します。
すでに申し上げたようにここはぬいぐるみたちが暮らすもふもふの国です。
周囲は海に囲まれて外敵もなく平和に暮らしてきました。
ところが十数年前異変が訪れたのです!
ある日海岸に不思議な固い物体が流れ着きました。
それはほとんどが板状ですが色々な色形(いろかたち)のものです。
毎日のように流れ着くその物体はすぐに放っておける量ではなくなりました。
国王と女王は大臣たちと共に対処について話し合い、海岸の砂浜へ埋めることにしたのです。
毎日のように打ち上がるその物体を埋める作業が数年続いたある日……」
いよいよ話の核心となるのか王女の顔に緊張感が走り、僕もつられて息を呑む。
「海の底から黒い影のようなものが現れて、埋める前の物体に吸い込まれ始めたのです。
そしてその物体は形を変えて陸地を動き回るようになりました」
「ええっ!? そんなものはどこにもなかったけど?
それとももういなくなったのかな?
いやでも王様も女王様もいないということは……?」
「はい、国王たち、つまり私の両親は動き回る物体に連れ去られました。
まだ小さかった私は大臣に連れられて助けを探す旅に出たのです。
そして言い伝えにあった『ぬいぐるみの勇者』を探し出すことが出来ました」
「そっか、見つかったなら良かった。
このまま一体どうなってしまうのかなってすごくドキドキしたよ」
「ええ…… 見つかりはしたのですが、勇者はまだ幼かったのです。
私たちはその時が来るまで待つしかありませんでした。
ですがもふもふの国の住人は別の世界に長くいると人型に戻れなくなってしまいます。
タイムリミットが近づき、私は王女として国を護るため戻ってくるほかありませんでした」
今王女は『私は』戻ったって言ったけど大臣はそのまま残ったってこと? だいたい勇者を探しにどこへ行ってたんだろう。もしかして――
「お察しかもしれませんが、私たちが勇者を探しに行ったのは人間の国です。
そしてその勇者こそが網浜ナオ君! あなたなのです!」
えええっ!? 話の流れからもしかしてそうかなとは思っていたけど、いざ名指しされるとやっぱりビックリだ。なんで僕が勇者なんて大層な役に指名されたんだろう。
「そもそもさ、君たちはいつ僕を見つけたの?
僕は王女にも大臣にもあったことなんて――
いや、まてよ……?」
「なにか思い出しましたか? お隣のナオ君?
あの時はとても助かりました」
「もしかして1年生のときに隣の席だった…… えっと……
そう、丸川亜矢さん!?」
「はい、その通りです。
見た目は結構違っていると思うのでわからないかと思ってました。
丸川亜矢は人間の世界での偽名で、マルカーヤが本名ですけどね」
マルカーヤ…… まるかあや…… まるかわあや!? なるほど! いやそれはともかく、そんな前から勇者として目を付けられていたなんて驚きだ。
「国へ戻った私はナオ君が勇者にふさしい力をつけるのを待っていました。
それまで大臣には君の成長を見守ってもらっていたのです」
「それじゃ人知れず大臣だけは僕を見張ってたのか……
でもさっき、人間の国にずっといると人の姿でいられないって言ってたよね?」
「はい、ですのでぬいぐるみに姿を変えて残り連絡を取っていたのです。
ただ大臣は人間界で力が弱まっていたからかワッペンになってしまいましたけどね」
僕は再び声を出して驚いていた。つまり僕が作った初めてのあみぐるみである立方体と交換したネコのワッペンは大臣だったのだ。
僕は丸川亜矢、いやマルカーヤ王女の顔を見ながら、あのワッペンを棄てたりなくしたりせず大切に保管しておいて良かったとつくづく思っていた。
「いくつか聞きたいんだけど、いったいどんな危機が迫っているの?
それになんで僕に助けを求めるのか、僕になにができるのか。
このくらいは聞かせてくれない?」
「もちろんご説明します。
すでに申し上げたようにここはぬいぐるみたちが暮らすもふもふの国です。
周囲は海に囲まれて外敵もなく平和に暮らしてきました。
ところが十数年前異変が訪れたのです!
ある日海岸に不思議な固い物体が流れ着きました。
それはほとんどが板状ですが色々な色形(いろかたち)のものです。
毎日のように流れ着くその物体はすぐに放っておける量ではなくなりました。
国王と女王は大臣たちと共に対処について話し合い、海岸の砂浜へ埋めることにしたのです。
毎日のように打ち上がるその物体を埋める作業が数年続いたある日……」
いよいよ話の核心となるのか王女の顔に緊張感が走り、僕もつられて息を呑む。
「海の底から黒い影のようなものが現れて、埋める前の物体に吸い込まれ始めたのです。
そしてその物体は形を変えて陸地を動き回るようになりました」
「ええっ!? そんなものはどこにもなかったけど?
それとももういなくなったのかな?
いやでも王様も女王様もいないということは……?」
「はい、国王たち、つまり私の両親は動き回る物体に連れ去られました。
まだ小さかった私は大臣に連れられて助けを探す旅に出たのです。
そして言い伝えにあった『ぬいぐるみの勇者』を探し出すことが出来ました」
「そっか、見つかったなら良かった。
このまま一体どうなってしまうのかなってすごくドキドキしたよ」
「ええ…… 見つかりはしたのですが、勇者はまだ幼かったのです。
私たちはその時が来るまで待つしかありませんでした。
ですがもふもふの国の住人は別の世界に長くいると人型に戻れなくなってしまいます。
タイムリミットが近づき、私は王女として国を護るため戻ってくるほかありませんでした」
今王女は『私は』戻ったって言ったけど大臣はそのまま残ったってこと? だいたい勇者を探しにどこへ行ってたんだろう。もしかして――
「お察しかもしれませんが、私たちが勇者を探しに行ったのは人間の国です。
そしてその勇者こそが網浜ナオ君! あなたなのです!」
えええっ!? 話の流れからもしかしてそうかなとは思っていたけど、いざ名指しされるとやっぱりビックリだ。なんで僕が勇者なんて大層な役に指名されたんだろう。
「そもそもさ、君たちはいつ僕を見つけたの?
僕は王女にも大臣にもあったことなんて――
いや、まてよ……?」
「なにか思い出しましたか? お隣のナオ君?
あの時はとても助かりました」
「もしかして1年生のときに隣の席だった…… えっと……
そう、丸川亜矢さん!?」
「はい、その通りです。
見た目は結構違っていると思うのでわからないかと思ってました。
丸川亜矢は人間の世界での偽名で、マルカーヤが本名ですけどね」
マルカーヤ…… まるかあや…… まるかわあや!? なるほど! いやそれはともかく、そんな前から勇者として目を付けられていたなんて驚きだ。
「国へ戻った私はナオ君が勇者にふさしい力をつけるのを待っていました。
それまで大臣には君の成長を見守ってもらっていたのです」
「それじゃ人知れず大臣だけは僕を見張ってたのか……
でもさっき、人間の国にずっといると人の姿でいられないって言ってたよね?」
「はい、ですのでぬいぐるみに姿を変えて残り連絡を取っていたのです。
ただ大臣は人間界で力が弱まっていたからかワッペンになってしまいましたけどね」
僕は再び声を出して驚いていた。つまり僕が作った初めてのあみぐるみである立方体と交換したネコのワッペンは大臣だったのだ。
僕は丸川亜矢、いやマルカーヤ王女の顔を見ながら、あのワッペンを棄てたりなくしたりせず大切に保管しておいて良かったとつくづく思っていた。
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