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第六章 欲望 X 策謀 = 絶望 + 希望
73.テガカリ
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ダンジョンへ入ってからはとにかくひたすら走った。飛鳥山一番隊は特殊捜査官の薄い十五階から調査していくと言っていたので、俺は遠慮なく二十三階層まで潜りつづける。
「紗由、現着した。
地形に不審な点があるか確認してくれ。
パッと見では全く分からないからお前が頼りなんだ」
探索中はコードネームで呼び合うという大原則すら忘れて俺は頼みの綱である妹へ呼びかけた。しかしそんなすぐに地形照合が終わったり痕跡が見つかったりするはずがない。
『おにい落ち着いて。
せっかく入れたんだからしっかりじっくりと見ていこ?
周辺に不審な物体、生物の気配は無し。
ビーコン信号とマップ照合結果は…… この間と同じだよ』
「つまり違和感のあるままってことだな?
地面が少し高くなってるってことなんだろ?
どこか掘ってみたら空洞があるのかもしれない、やってみる」
『ちょっとまって、掘りかえす前にどこかに砂鉄の痕跡ないかな?
連れ去られた時にまだ意識があったなら何か残してるかもしれないよ』
なるほど、そんなこと考え付かなかったが確かにそれはありそうだ。俺は地面を這いつくばりながら目の前を煌々と照らしつつ、弱めの磁石を使いながら砂鉄を探した。
すると俺と虹子が打ちこんだばかりの新しいビーコン、つまりはあの日欠落していた場所に砂鉄が散らばっているのが見つかった。現存しているビーコンを探すのに磁力と砂鉄を使ったのだから、失われた部分に砂鉄が放置されていてもおかしくはないかもしれない。
しかし、作業中に必要もないことをするはずがない。念のため欠落ビーコンが確認できた場所数カ所を見ていくと、いくつかのポイントのうち最初に見つけた場所のみにまとまった量の砂鉄が確認できた。
「なあ、まとまった量の砂鉄が一カ所見つかったんだ。
そこはこないだビーコンが欠落していた場所なんだが偶然ってことはないよな?
位置情報を共有したから記録しておいてくれ。
俺は今から掘ってみるからな」
『りょうかい、ちゃんと記録したよ。
もしかしたら下に空洞があって、最悪閉じ込められてるかもだからね。
小さな穴を開けてカメラが差し込めるといいんだけど……
間違っても一気に爆破とかしないでよ?』
「まかせろ、そんなのわかってるっての。
もし空洞があってもソナーじゃわからねえよな?」
『部屋の壁くらいの厚さならわかるけどね。
もし周辺の岩をコピーするって能力だとしたら無理だと思う、ごめん』
なんで俺は紗由に謝らせてんだと自己嫌悪していたが、そのことを謝るのは虹子を無事に助け出してからだ。俺はとにかく早くあいつの顔を確認して決着を付けたかった。
広い洞窟の中にほんの一握り見つかった痕跡、その地面を掘り進めていくと空洞が見つかった。どうやら当たりを引いたようだ。
最初に開けた穴よりも一回り大きなドリルへと交換してから掘り進めていき、ファイバースコープが入る大きさになった所で内部を確認してみる。すると内部にはぽっかりと通路のような穴が開いていたではないか。
「よし、やっぱりここから虹子は連れ出された可能性が高いな。
こんな固い岩盤を掘り進めるなんてとんでもない能力か怪力だな。
まってろよ、もうすぐ助けてやるからな」
俺はさらに穴を広げていき、探索用ロボットを転がして落とした。後はある程度自動で動きながら内部を探ってくれるし、何かあれば紗由がリモート操作してくれる。
「今コロボ落としたから確認頼む。
位置情報が取れるようなら送ってくれ」
『任せておいて!
今のところビーコン拾えてるから深いところへ行かないよう祈っててね』
「そうだな、神なんていないってわかってるからお前に祈るよ。
頼む、なんとか見つけてやってくれ……」
紗由がやさしく一言『うん』とだけ返してきたが、俺はなんだかいろいろこみあげてくるものがあって、まともに返事をすることが出来なかった。
「紗由、現着した。
地形に不審な点があるか確認してくれ。
パッと見では全く分からないからお前が頼りなんだ」
探索中はコードネームで呼び合うという大原則すら忘れて俺は頼みの綱である妹へ呼びかけた。しかしそんなすぐに地形照合が終わったり痕跡が見つかったりするはずがない。
『おにい落ち着いて。
せっかく入れたんだからしっかりじっくりと見ていこ?
周辺に不審な物体、生物の気配は無し。
ビーコン信号とマップ照合結果は…… この間と同じだよ』
「つまり違和感のあるままってことだな?
地面が少し高くなってるってことなんだろ?
どこか掘ってみたら空洞があるのかもしれない、やってみる」
『ちょっとまって、掘りかえす前にどこかに砂鉄の痕跡ないかな?
連れ去られた時にまだ意識があったなら何か残してるかもしれないよ』
なるほど、そんなこと考え付かなかったが確かにそれはありそうだ。俺は地面を這いつくばりながら目の前を煌々と照らしつつ、弱めの磁石を使いながら砂鉄を探した。
すると俺と虹子が打ちこんだばかりの新しいビーコン、つまりはあの日欠落していた場所に砂鉄が散らばっているのが見つかった。現存しているビーコンを探すのに磁力と砂鉄を使ったのだから、失われた部分に砂鉄が放置されていてもおかしくはないかもしれない。
しかし、作業中に必要もないことをするはずがない。念のため欠落ビーコンが確認できた場所数カ所を見ていくと、いくつかのポイントのうち最初に見つけた場所のみにまとまった量の砂鉄が確認できた。
「なあ、まとまった量の砂鉄が一カ所見つかったんだ。
そこはこないだビーコンが欠落していた場所なんだが偶然ってことはないよな?
位置情報を共有したから記録しておいてくれ。
俺は今から掘ってみるからな」
『りょうかい、ちゃんと記録したよ。
もしかしたら下に空洞があって、最悪閉じ込められてるかもだからね。
小さな穴を開けてカメラが差し込めるといいんだけど……
間違っても一気に爆破とかしないでよ?』
「まかせろ、そんなのわかってるっての。
もし空洞があってもソナーじゃわからねえよな?」
『部屋の壁くらいの厚さならわかるけどね。
もし周辺の岩をコピーするって能力だとしたら無理だと思う、ごめん』
なんで俺は紗由に謝らせてんだと自己嫌悪していたが、そのことを謝るのは虹子を無事に助け出してからだ。俺はとにかく早くあいつの顔を確認して決着を付けたかった。
広い洞窟の中にほんの一握り見つかった痕跡、その地面を掘り進めていくと空洞が見つかった。どうやら当たりを引いたようだ。
最初に開けた穴よりも一回り大きなドリルへと交換してから掘り進めていき、ファイバースコープが入る大きさになった所で内部を確認してみる。すると内部にはぽっかりと通路のような穴が開いていたではないか。
「よし、やっぱりここから虹子は連れ出された可能性が高いな。
こんな固い岩盤を掘り進めるなんてとんでもない能力か怪力だな。
まってろよ、もうすぐ助けてやるからな」
俺はさらに穴を広げていき、探索用ロボットを転がして落とした。後はある程度自動で動きながら内部を探ってくれるし、何かあれば紗由がリモート操作してくれる。
「今コロボ落としたから確認頼む。
位置情報が取れるようなら送ってくれ」
『任せておいて!
今のところビーコン拾えてるから深いところへ行かないよう祈っててね』
「そうだな、神なんていないってわかってるからお前に祈るよ。
頼む、なんとか見つけてやってくれ……」
紗由がやさしく一言『うん』とだけ返してきたが、俺はなんだかいろいろこみあげてくるものがあって、まともに返事をすることが出来なかった。
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