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第五章 疑惑 = 希望 + 変貌
63.ホウラクゲンバ
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今日はどうも先客が頑張っているようで、二十五階層を過ぎても大したモンスターがいない。地面は荒れていて戦った痕跡が残されていたが真新しいとも言い難く、もしかしたら今日ではなく昨日の物とも考えられる。今朝からではなく泊まりで潜っている可能性もありそうだ。
『やっぱりセンサ追加して熱反応も検知できるようにした方がいいかなぁ。
赤外線とソナーだけだと生物かどうか判断が難しいよね。
こないだみたく人型ならわかりやすいけどさ』
「あんな気味悪いのもうごめんだよ。
誰があんなもん置いてんだか、見つけたら説教してやりたいぜ」
『ただ警戒を促すにしては熱源埋め込んだりして手が込んでたもんね。
あの場所に足止めしてなにか狙ってるのかと思ったけどそれもないし。
謎が多すぎだったよ』
「だから捜査も適当になってるんじゃないか?
いくらなんでも数日で進展なしはおかしいだろ。
せめて持ち込んだやつくらいわかっても良さそうなもんだ」
『でも現地で膨らませたのならわかんないでしょ。
ま、あんまり気にしすぎても仕方ないし、わかるまで忘れておけば?』
「何事にもしつこいイモウトにしては珍しい。
そんなあっさり忘れろなんて、なにか引っかかって気にしてるってことか」
『まあね、ちょっとだけだけどさ。
それにしてもモンスターが全然いないね』
こないだのマネキンについては紗由の言う通り気にしすぎても仕方ないし、今は探索に集中しないと事故の元だ。いくら現段階でモンスターが少ないからと言って、この先いつ何が起こるかわからないのだから気を抜いてはいけない。
気を引き締め直してやって来た三十三階層、どうやら今日もトラブルに巻き込まれそうな気配だ。少し先に岩が崩れている箇所があり、そこには識別反応が確認できる。
「三、いや四人か? 崩落で埋まっているのか?
とりあえず救助へ行ってみるが、救命隊への連絡をよろしく」
『なんかすでに動いてるみたいだね。
自力でSOS出してるような形跡はないんだけどな。
HMDRが壊れて識別信号が途切れて緊急出動したのかもね』
「埋まってるパーティーの詳細が判ったら一応教えてくれ。
わかったらその担当講師に連絡も頼む」
『りょうかーい』
だが悲しいかな、俺の能力では崩れた岩を取り除くことは出来ないし、基礎的な筋力も足りていない。左手の超振動だけが頼りだが、下側に刺激を加えて上から崩れてしまったらどうにもできない。できることと言えば生存確認をするくらいか。
俺はバックパックからチューブスピーカーを取り出して岩の隙間から差し込んでいった。これはファイバースコープのように隙間へ差し込み、先端のカメラの代わりに取り付けられたスピーカーとマイクで会話するものだ。
「おーい、意識あるやつはいるかー?
聞こえたら声を出すか石を引っ掻くとかして音を出してくれ。
誰かこっちの声は聞こえないか?」
呼びかけたがなんの音も聞こえない。だが諦めずに何度も繰り返していたらカリカリと言う音が聞こえてきた。どうやら口はきけないが意識はある者がいるようだ。
「今救命隊が向かっているから気をしっかりするんだ。
きっと助かるから諦めるんじゃないぞ!」
その呼びかけに、またカリカリと石を引っ掻く音が聞こえてくる。しかしそれが何を意味するのかは分からず、俺が出来るのは声をかけて励ますことだけだった。できることがあまりにも少なく自己嫌悪に陥りそうだが、今それを嘆いても仕方がない。
『シックス、救命隊は今三十階層に入ったところ。
あと数十分で到着すると思うからなんとか繋ぐんだよ。
その人たちは飛鳥山隊所属ってわかったから、担当講師と詰所へ連絡しておいたからね』
「了解だ、生きてりゃなんとかなるからな。
飛鳥山隊なら気力体力も十分だろうから期待できるぜ。
聞こえたか? もうすぐ救助が来るから頑張ってくれよ」
そうやってしつこいくらいに声を掛けながら、念のため周囲を観察していた俺は、この崩落現場の奥から近寄ってくるなにかに気が付いた。それはどう考えても友好的には見えない二足歩行の何かだった。
『やっぱりセンサ追加して熱反応も検知できるようにした方がいいかなぁ。
赤外線とソナーだけだと生物かどうか判断が難しいよね。
こないだみたく人型ならわかりやすいけどさ』
「あんな気味悪いのもうごめんだよ。
誰があんなもん置いてんだか、見つけたら説教してやりたいぜ」
『ただ警戒を促すにしては熱源埋め込んだりして手が込んでたもんね。
あの場所に足止めしてなにか狙ってるのかと思ったけどそれもないし。
謎が多すぎだったよ』
「だから捜査も適当になってるんじゃないか?
いくらなんでも数日で進展なしはおかしいだろ。
せめて持ち込んだやつくらいわかっても良さそうなもんだ」
『でも現地で膨らませたのならわかんないでしょ。
ま、あんまり気にしすぎても仕方ないし、わかるまで忘れておけば?』
「何事にもしつこいイモウトにしては珍しい。
そんなあっさり忘れろなんて、なにか引っかかって気にしてるってことか」
『まあね、ちょっとだけだけどさ。
それにしてもモンスターが全然いないね』
こないだのマネキンについては紗由の言う通り気にしすぎても仕方ないし、今は探索に集中しないと事故の元だ。いくら現段階でモンスターが少ないからと言って、この先いつ何が起こるかわからないのだから気を抜いてはいけない。
気を引き締め直してやって来た三十三階層、どうやら今日もトラブルに巻き込まれそうな気配だ。少し先に岩が崩れている箇所があり、そこには識別反応が確認できる。
「三、いや四人か? 崩落で埋まっているのか?
とりあえず救助へ行ってみるが、救命隊への連絡をよろしく」
『なんかすでに動いてるみたいだね。
自力でSOS出してるような形跡はないんだけどな。
HMDRが壊れて識別信号が途切れて緊急出動したのかもね』
「埋まってるパーティーの詳細が判ったら一応教えてくれ。
わかったらその担当講師に連絡も頼む」
『りょうかーい』
だが悲しいかな、俺の能力では崩れた岩を取り除くことは出来ないし、基礎的な筋力も足りていない。左手の超振動だけが頼りだが、下側に刺激を加えて上から崩れてしまったらどうにもできない。できることと言えば生存確認をするくらいか。
俺はバックパックからチューブスピーカーを取り出して岩の隙間から差し込んでいった。これはファイバースコープのように隙間へ差し込み、先端のカメラの代わりに取り付けられたスピーカーとマイクで会話するものだ。
「おーい、意識あるやつはいるかー?
聞こえたら声を出すか石を引っ掻くとかして音を出してくれ。
誰かこっちの声は聞こえないか?」
呼びかけたがなんの音も聞こえない。だが諦めずに何度も繰り返していたらカリカリと言う音が聞こえてきた。どうやら口はきけないが意識はある者がいるようだ。
「今救命隊が向かっているから気をしっかりするんだ。
きっと助かるから諦めるんじゃないぞ!」
その呼びかけに、またカリカリと石を引っ掻く音が聞こえてくる。しかしそれが何を意味するのかは分からず、俺が出来るのは声をかけて励ますことだけだった。できることがあまりにも少なく自己嫌悪に陥りそうだが、今それを嘆いても仕方がない。
『シックス、救命隊は今三十階層に入ったところ。
あと数十分で到着すると思うからなんとか繋ぐんだよ。
その人たちは飛鳥山隊所属ってわかったから、担当講師と詰所へ連絡しておいたからね』
「了解だ、生きてりゃなんとかなるからな。
飛鳥山隊なら気力体力も十分だろうから期待できるぜ。
聞こえたか? もうすぐ救助が来るから頑張ってくれよ」
そうやってしつこいくらいに声を掛けながら、念のため周囲を観察していた俺は、この崩落現場の奥から近寄ってくるなにかに気が付いた。それはどう考えても友好的には見えない二足歩行の何かだった。
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