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第四章 堅物 X 打算 = 黒猫
45.オドロキのショグウ
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今日は金曜日と言うことで、午後からの探索は虹子と美菜実が同行する日である。そのため早めに研究室へやって来たのだが、それを待ち構えていた救護課の柳原氏の発言に俺は驚きを隠せなかった。
「えっ!? それはどういう……」
「いやあ、言葉のまんまそのまんま。
結局身元は分からないままで引き取り手もいないのですよ。
本人は『お兄ちゃんと一緒がいいー」って言ってますしね」
そんなおっさんが幼女の真似をしているのはスルーするとしても、マルリェがなぜか俺を慕っているようだと聞かされた。たった一度抱えて走っただけなのになんてこった。あの子も紗由と似たような年頃だし妹がもう一人増えたと思えばまあ面倒見るのも難しくはない。
だが親が行方不明でダンジョンに取り残されていたような幼児を、よりによって若年成人二人で生活している家に引き取るなんてこと許されるのだろうか。いくら高科先生が後見人になって行政から生活費が出ると言っても不安しかない。だが最終的には親の身元や所在が判明するまで預かるということで押し切られてしまった。
一番の懸念材料だった紗由は意外にも反対しなかったが、面倒はすべて俺が見ることを約束させられてしまった。あとは検査とカウンセリングのために、週二回は大学の寮へ宿泊することとなり、その時は虹子が一緒に泊まって面倒を見てくれるそうだ。
マルリェの能力は他人の視界を自分のものにすると言うレアなものなので、大学の超能力に関するいくつかの部門が興味を持っているらしい。しかし保護者の同意が得られないので今のところは指を咥えてみている状況だ。もし親が見つかればちょっとした騒動になる可能性もある。
だが俺たちはそれとは別の理由で心配をしており、今日はその話をするため早めに研究室へ来ていた。
「綾瀬君もわかっているように、マルリェの監視は重要事項です。
おそらく例の氷漬け事件から始まる一連の件に関わりがあるでしょう。
もちろん事件自体に本人は無関係でしょうがね」
「両親が実行犯でしょうけど、子連れ夫婦だけでやったとは考えにくいですね。
ネズミの群れを置いたやつも別だろうから、多分共犯がいるはずですよ。
もしかしたらマルリェは人質で両親は脅されて協力していたかもしれないし」
「そうだね、可能性はあるだろう。
でも足がつかないように連れ歩いていた可能性もある。
今のところ狙われているのが横須賀校所属で配信上位のランカーのみ。
それも舎人へやって来た時に限って襲われている」
「その件は横須賀だと闇探索が出来ないからじゃないんですかね?
ダンジョンへ行くのに船が必要じゃないですか」
「そうではなく、舎人をホームとしている探索隊は襲われていないんだよ。
と言ってもまだ二例しか起きてないから今後のことはわからないけどもね。
君たちも十分注意しておくれよ?
いまだにあの触手植物も見つかっていないのだから用心に越したことはない」
「あれはさすがに別件ですよねぇ?
まさかモンスターまで人為的に作り出すなんてできないでしょ?
技術的にと言うより設備や秘密裏にって意味でですけど」
こうして話をしていると、あらゆることが怪しく感じられて仕方がない。壁を作り水を運ぶ能力は、どう考えてもスノーダイヤモンドとサイドワインダーを襲ったやつらの使った能力だろう。そいつら以外にモンスターを集めたりその場に留めておくような能力の使い手もいるはずだ。
さらに言えば、実行犯以外で外部とやり取りしている共犯者がいれば、ダンジョン内に籠っていられるので出入りをチェックされて見つかる心配も少なくなるだろう。ということは探索隊で行動不明なことがあるやつがいれば締め上げてやればいいのかもしれない。
今後しばらくの活動方針がまとまったところでいい時間になったので、マルリェを研究室へ預けて俺達三人はダンジョンへと向かった。
「えっ!? それはどういう……」
「いやあ、言葉のまんまそのまんま。
結局身元は分からないままで引き取り手もいないのですよ。
本人は『お兄ちゃんと一緒がいいー」って言ってますしね」
そんなおっさんが幼女の真似をしているのはスルーするとしても、マルリェがなぜか俺を慕っているようだと聞かされた。たった一度抱えて走っただけなのになんてこった。あの子も紗由と似たような年頃だし妹がもう一人増えたと思えばまあ面倒見るのも難しくはない。
だが親が行方不明でダンジョンに取り残されていたような幼児を、よりによって若年成人二人で生活している家に引き取るなんてこと許されるのだろうか。いくら高科先生が後見人になって行政から生活費が出ると言っても不安しかない。だが最終的には親の身元や所在が判明するまで預かるということで押し切られてしまった。
一番の懸念材料だった紗由は意外にも反対しなかったが、面倒はすべて俺が見ることを約束させられてしまった。あとは検査とカウンセリングのために、週二回は大学の寮へ宿泊することとなり、その時は虹子が一緒に泊まって面倒を見てくれるそうだ。
マルリェの能力は他人の視界を自分のものにすると言うレアなものなので、大学の超能力に関するいくつかの部門が興味を持っているらしい。しかし保護者の同意が得られないので今のところは指を咥えてみている状況だ。もし親が見つかればちょっとした騒動になる可能性もある。
だが俺たちはそれとは別の理由で心配をしており、今日はその話をするため早めに研究室へ来ていた。
「綾瀬君もわかっているように、マルリェの監視は重要事項です。
おそらく例の氷漬け事件から始まる一連の件に関わりがあるでしょう。
もちろん事件自体に本人は無関係でしょうがね」
「両親が実行犯でしょうけど、子連れ夫婦だけでやったとは考えにくいですね。
ネズミの群れを置いたやつも別だろうから、多分共犯がいるはずですよ。
もしかしたらマルリェは人質で両親は脅されて協力していたかもしれないし」
「そうだね、可能性はあるだろう。
でも足がつかないように連れ歩いていた可能性もある。
今のところ狙われているのが横須賀校所属で配信上位のランカーのみ。
それも舎人へやって来た時に限って襲われている」
「その件は横須賀だと闇探索が出来ないからじゃないんですかね?
ダンジョンへ行くのに船が必要じゃないですか」
「そうではなく、舎人をホームとしている探索隊は襲われていないんだよ。
と言ってもまだ二例しか起きてないから今後のことはわからないけどもね。
君たちも十分注意しておくれよ?
いまだにあの触手植物も見つかっていないのだから用心に越したことはない」
「あれはさすがに別件ですよねぇ?
まさかモンスターまで人為的に作り出すなんてできないでしょ?
技術的にと言うより設備や秘密裏にって意味でですけど」
こうして話をしていると、あらゆることが怪しく感じられて仕方がない。壁を作り水を運ぶ能力は、どう考えてもスノーダイヤモンドとサイドワインダーを襲ったやつらの使った能力だろう。そいつら以外にモンスターを集めたりその場に留めておくような能力の使い手もいるはずだ。
さらに言えば、実行犯以外で外部とやり取りしている共犯者がいれば、ダンジョン内に籠っていられるので出入りをチェックされて見つかる心配も少なくなるだろう。ということは探索隊で行動不明なことがあるやつがいれば締め上げてやればいいのかもしれない。
今後しばらくの活動方針がまとまったところでいい時間になったので、マルリェを研究室へ預けて俺達三人はダンジョンへと向かった。
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