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第三章 異変 X 罠 + 新種
33.ホメラレテ
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気まずい空気が流れる中、俺はサイドワインダーによって足止めされていた。もちろんどちらも配信は停止中である。どうやら、俺がこいつらが狙われているなんて言ってしまったせいで、機密事項漏洩かなにかに関わっていると思われたらしくオペに確認しているようなのだ。
「あのさ、松原って講師に聞いてもらえたらわかると思うよ?
スノーダイヤモンドでもいいけどさ」
「横須賀校の講師やメンバーと知り合いと言うことですか?
それにしたって、この件は校外持ち出し禁止事項のはずです。
舎人校の君が知ってていいことでは無いはずなのに……」
「そうはいっても舎人で起きた事件だしねぇ……」
どうやら確認に時間がかかっているようで、すぐに解放とはいかないらしい。紗由には軽はずみな発言のせいだとか、折角視聴者数が伸びていたのに中断する羽目になって大損だと叱られてしまうし散々である。肝心の映像については大きな問題もなく順調に配信できていたようで何よりだ。
「シックス君、学校から返事が来て事情はわかったわ。
でもこの件に関して公の場で発言することは避けてください。
今後必要な場合は、学校内の秘匿回線やメッセージでお願いします」
「それはごもっともでした、すいません。
気になることもあるんでこちらの担当講師から問い合わせるようにしますね。
それじゃ今日はこの辺で……」
「君は確かもっと下層へ行くことを予定していたんじゃないのか?
なんで十六階層で鉢合わせしたんだろう」
「ああ、それはちょっと怪しげな気配があったので戻ってきたんだ。
それと十八階層で巨大な食虫植物みたいなモンスターに行く手を塞がれてしまったしね」
「まさかそれって足柄ダンジョンが封鎖された原因になったやつじゃないか?
イソギンチャクみたいなやつだろ?
足柄では地表まで出て来てしまって騒動になってるらしいよ」
「やっぱヤバイやつだったんだな。
逃げて来て正解だったよ。
ちょっと俺では倒せそうになくて全力で走ってきたんだ」
「舎人にも表れたとなると横須賀もうかうかしていられないわね。
生態系の変化なのかもしれないけど、これ以上は生物学者の判断が必要だわ。
私たちも上がって横須賀へ引き上げましょう」
気まずさは無くなったが、それとは別で四人パーティーに俺一人が混ざっての行動はなんだか気恥ずかしい。結局このまま豚なんて取れそうにないし、手ぶらで帰るわけにもいかないから今日もネズミで我慢することになるのか。だがそんな落胆をひっくり返すように、この日初めてカピバラ以外の獲物が現れた。
「このワニ、俺が頂いちゃって構わないですかね?
出来れば夕飯用に仕留めたいんですよ」
「もちろん、私たちはここを出たら舎人校で後片付けをして明朝には帰りますから。
それにしてもワニは珍しいですね、お手伝いしましょうか?」
「いえいえ、こんなの屁でもないですから。
それじゃ失礼してっと」
俺は一気に走り寄るとワニのアゴをスタンガンでひっぱたき、怒りにまかせて口を開けたところへ電撃を喰らわせた。スタンガンの一撃で全身を痙攣させたワニをひっくり返して腹にナイフを突き立てて終了だ。そのまま手際よく捌いてはらわたを抜いて血抜きをする。
道の脇へ寄せたはらわたに固形燃料を混ぜてから火をつけて処分し、それを見張りながら大きさを測ってみると体長百五十センチとまあまあなサイズだった。これくらいなら一人で持って帰るにもちょうどいい。
バックパックからタイヤ付きのキャリーバーを伸ばし、ワニを括り付ければ準備オッケーだ。バックパックの後ろにタイヤ付きの背負子が取り付けられたような形状となって、多少重いものでも楽々運ぶことができる。横須賀の連中にはわからないだろうが、獲物を持ちかえるテクニックも舎人では探索者としての基本能力の一つである。
「いやあ見事なもんだったね。
最初にワニの口をこじ開けて中から攻撃通すのなんてお見事だわ」
「それに背負子もすごいな、これはエレベーターのある横須賀では発展しなかったアイテムだよ。
今後の標準装備にしてもいいんじゃないかってくらい完成度が高いね」
「ダンジョン内で運搬するにも便利ですからね。
興味あったら真似してみてください、作るのも簡単だし」
「うんうん、ぜひ真似させてもらおう。
このバックパックは標準品ではないようだけど君が作ったのかい?」
「いえ、ほとんどは妹が作って、俺はこのキャリーとか少しだけ。
ワンオフなんてこう見えてもコストは結構かかってるんですよ」
なぜか装備品のことにやたら食いつかれて戸惑いながらも、褒められて照れるやら恥ずかしいやら慣れないことに戸惑うばかりだった。
「あのさ、松原って講師に聞いてもらえたらわかると思うよ?
スノーダイヤモンドでもいいけどさ」
「横須賀校の講師やメンバーと知り合いと言うことですか?
それにしたって、この件は校外持ち出し禁止事項のはずです。
舎人校の君が知ってていいことでは無いはずなのに……」
「そうはいっても舎人で起きた事件だしねぇ……」
どうやら確認に時間がかかっているようで、すぐに解放とはいかないらしい。紗由には軽はずみな発言のせいだとか、折角視聴者数が伸びていたのに中断する羽目になって大損だと叱られてしまうし散々である。肝心の映像については大きな問題もなく順調に配信できていたようで何よりだ。
「シックス君、学校から返事が来て事情はわかったわ。
でもこの件に関して公の場で発言することは避けてください。
今後必要な場合は、学校内の秘匿回線やメッセージでお願いします」
「それはごもっともでした、すいません。
気になることもあるんでこちらの担当講師から問い合わせるようにしますね。
それじゃ今日はこの辺で……」
「君は確かもっと下層へ行くことを予定していたんじゃないのか?
なんで十六階層で鉢合わせしたんだろう」
「ああ、それはちょっと怪しげな気配があったので戻ってきたんだ。
それと十八階層で巨大な食虫植物みたいなモンスターに行く手を塞がれてしまったしね」
「まさかそれって足柄ダンジョンが封鎖された原因になったやつじゃないか?
イソギンチャクみたいなやつだろ?
足柄では地表まで出て来てしまって騒動になってるらしいよ」
「やっぱヤバイやつだったんだな。
逃げて来て正解だったよ。
ちょっと俺では倒せそうになくて全力で走ってきたんだ」
「舎人にも表れたとなると横須賀もうかうかしていられないわね。
生態系の変化なのかもしれないけど、これ以上は生物学者の判断が必要だわ。
私たちも上がって横須賀へ引き上げましょう」
気まずさは無くなったが、それとは別で四人パーティーに俺一人が混ざっての行動はなんだか気恥ずかしい。結局このまま豚なんて取れそうにないし、手ぶらで帰るわけにもいかないから今日もネズミで我慢することになるのか。だがそんな落胆をひっくり返すように、この日初めてカピバラ以外の獲物が現れた。
「このワニ、俺が頂いちゃって構わないですかね?
出来れば夕飯用に仕留めたいんですよ」
「もちろん、私たちはここを出たら舎人校で後片付けをして明朝には帰りますから。
それにしてもワニは珍しいですね、お手伝いしましょうか?」
「いえいえ、こんなの屁でもないですから。
それじゃ失礼してっと」
俺は一気に走り寄るとワニのアゴをスタンガンでひっぱたき、怒りにまかせて口を開けたところへ電撃を喰らわせた。スタンガンの一撃で全身を痙攣させたワニをひっくり返して腹にナイフを突き立てて終了だ。そのまま手際よく捌いてはらわたを抜いて血抜きをする。
道の脇へ寄せたはらわたに固形燃料を混ぜてから火をつけて処分し、それを見張りながら大きさを測ってみると体長百五十センチとまあまあなサイズだった。これくらいなら一人で持って帰るにもちょうどいい。
バックパックからタイヤ付きのキャリーバーを伸ばし、ワニを括り付ければ準備オッケーだ。バックパックの後ろにタイヤ付きの背負子が取り付けられたような形状となって、多少重いものでも楽々運ぶことができる。横須賀の連中にはわからないだろうが、獲物を持ちかえるテクニックも舎人では探索者としての基本能力の一つである。
「いやあ見事なもんだったね。
最初にワニの口をこじ開けて中から攻撃通すのなんてお見事だわ」
「それに背負子もすごいな、これはエレベーターのある横須賀では発展しなかったアイテムだよ。
今後の標準装備にしてもいいんじゃないかってくらい完成度が高いね」
「ダンジョン内で運搬するにも便利ですからね。
興味あったら真似してみてください、作るのも簡単だし」
「うんうん、ぜひ真似させてもらおう。
このバックパックは標準品ではないようだけど君が作ったのかい?」
「いえ、ほとんどは妹が作って、俺はこのキャリーとか少しだけ。
ワンオフなんてこう見えてもコストは結構かかってるんですよ」
なぜか装備品のことにやたら食いつかれて戸惑いながらも、褒められて照れるやら恥ずかしいやら慣れないことに戸惑うばかりだった。
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