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第三章 異変 X 罠 + 新種

24.ソレゾレ

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 遠征の疲れもあって、だらだらと丸三日過ごしてしまったわけだが、お土産に貰ってきた魚を食べきったことで気持ちが切り替わった気分になる。確かに珍しい食材ではあるのだが、さすがに三日連続だと飽きが来るもんだ。

 虹子は別口で持たせてもらった食材を家に持って帰り、両親と楽しい食卓を囲んだようだ。自慢げに送られてきた写真には、丁寧に調理された何品かの魚料理が並べられていた。うちではそんな手間をかけることは出来ないのでごく普通の焼き魚である。

 そんな余韻を楽しみながらも日々は過ぎて行き、いよいよ虹子の入学日が迫ってきた。ダンジョンにも大分慣れてきたことだし、入学早々に決めるべき進路に関してもすでに考え始めているようだ。ちなみに俺の担当講師はモンスター素材研究と活用なのだが、俺自身はダンジョン未到達区域の探索とルート調査を専門とする、いわゆるビーコン打ちである。

「なあ虹子、お前はどんなの専攻するつもりなんだ?
 おばさんと同じ資源調査なのか?
 とは言っても今の舎人には向いてないテーマだけどな」

『そうよね、やっぱり能力が活かせる内容にすべきなのかな。
 でも今更鉱物資源探索なんて難しいしなぁ。
 どうしたら自分の能力を活かせるのかも考えていきたいよ』

「あんまり能力に固執するのは良くないと思うよ?
 磁力って特徴が目立つけど、別に鉄をくっつけなくなっていいわけ。
 遠征で身に着けたテクで動態検知もできるし、ビーコンの残置確認にも使えそう。
 未到達区域でのマーキングとか個体識別マーカーの遠隔打ち込みもできるだろ?
 めちゃくちゃ多機能で汎用性もあって有用な能力だよ」

『なんかリクって褒めるの上手だね、照れちゃうよ……
 自分のほうが凄いのにさ、モンスターにやられてもビクともしないとか』

「あんなの役に立たないよ。
 俺たちはファンタジーに出てくる冒険家じゃないんだからさ。
 生体研究やダンジョン究明をするための科学者なんだってことを忘れちゃだめだよ。
 戦って強いに越したことはないけど、倒すことを目的にしたら本末転倒ってわけ」

『考えは立派だと思うけど、あまりに固過ぎるところはロマンが無くてダメだと思う。
 もっと人生楽しまなきゃ損だよ』

 人生自体に損得勘定が必要なのかはわからないが、話がどんどん逸れていっている事だけはわかる。つまりこれ以上真面目な話をしていても仕方がないと言うことだ。結局明日は入学説明会があるとのことなので探索は休み、俺も一緒に学校へ行くことにして虹子との通話を終えた。

 そう言えば最近は全然講義にも顔出していないし研究室にも立ち寄っていない。部屋の中に採取済みのモンスター素材を分投げたままだし、これから片付けて明日持っていくことにした。しかし部屋を眺めた瞬間に何もする気が起きず、典型的な現実逃避を見習うようにここ最近の探索記録を見返していた。

『おにい、ホームサーバにアバターのサンプルをいくつかアップしたから見て。
 そんで次の探索までにどれがいいか決めておいてね』

「アバターなんてどれでもいいよ。
 どうせ自分では見えないんだしさ。
 紗由が一番いいと思うやつにしておけよ」

『りょかい、それじゃ一番バズりそうなやつにしとくね。
 そう言えば、スノーダイヤモンドのチャンネルに横須賀遠征の動画がアップされてた。
 うちらの名前は出してなかったけど、微妙な匂わせがあったから注目されちゃうかもよ?』

「マジかよ…… 虹子はともかく、俺は能力が地味だし使ってるようにも見えないからなぁ。
 編集でうまくカットされてるといいんだけどどうだった?」

『戦闘シーンで普通に映ってたよ。
 もちろん顔は処理されてたけど舎人の学生にはバックパックでばれそう。
 そこまで知られてるかわからないけどね、地味だし』

「同じ研究室でも無けりゃ人の装備までわかんないだろ。
 学内パーティーでもないから高科先生以外はパーティー名も知らねえしな」

「そっか、じゃあ次からの配信で身バレすることもないし、なんでもアリだね。
 どんなアバターにしようかかんがえとこ。
 それとも虹子に新型被せて配信に使った方がウケるかな」

「そりゃウケるだろうけど、能力からすぐに身バレするんじゃねえの?
 その辺はうまく処理できるのか?」

「あの鉄格子みたいなのまでは消せないからムリかな。
 やっぱりおにいに頑張ってもらうしかないね。
 よろしくね、カワイイカワイイおにい・・・

 妹との通話を終えた俺は、最後の最後にカワイくなんて言われて嫌な予感しかなかった……
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