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第二章 遠征 X ダンジョン + 人気者
16.コオリヒメ
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フリースペースで適当な席へ座ってドリンクを味わっていた俺と虹子だったが、やはりアウェー感が強くて落ち着かない。通っていく奴らはやたらジロジロと物珍しそうにするのも気に食わない。横須賀校は能技大の中でも最大級なこともあって学生数が多く、それだけに人目も多いと言うことだ。
そんな居心地の悪さを感じているところに、チラチラやジロジロなんてもんじゃなく、真っ直ぐにこちらを見ながら一人の学生が歩いてきた。遠目からでもわかる存在感で、振りまく雰囲気が他の学生とは大違いだ。そんな美少女が俺の前まで進んできて足を止めた。
「君が舎人のシックス君ね。
私は三船雪南十六歳、ハンドルは『氷姫』よ。
先日は助けてもらってありがとう。
醜態を晒したことは不本意だったけど、それはそれとしてお礼を言わせて頂くわ」
「あ、ああ、あの氷漬けの……
俺は綾瀬六雨十四歳です。
その後体調は問題なかった?」
「ちょっと君! あまり大きな声で言わないで!
あ、コホン…… ごめんなさい、誰でも知ってることだけどやっぱり恥ずかしいのよ……」
「いや、事情は知らないけどあんな光景、さすがに驚いたよ。
きっとすごくイレギュラーなことが起こったんだろうね。
いまだに注意喚起とか回ってこないし、原因究明に時間がかかってるのかな」
「そうね、私はきちんと事実を伝えたし、記録にも残っているのだから明らかにすべきだわ。
配信を見ていた人も大勢いたはずなのだからいつまでも隠してはおけないはず」
事実を隠している? 一体何のことだろうか。人気探索隊だから配信をしていたのはまあその通りだろうが、そこにも映っていない何かがあると言うことか? 俺自身は配信も見てないし、アーカイブも確認していない。きっと能力暴走が起きる原因があったのだろうなんて軽く考えていたのだ。
「大勢が配信見ていたならちょっとアレだね、アレ……
まあたまには失敗もあるもんでしょ」
「何をいってるのよ、あれはね――
いや、ここでは話せないから私たちのオペルームに来てちょうだい。
アーカイブだけじゃなく生データもあるからそれ見ながらお話するわ」
「でも俺たちはここで待ってるようにって言われてるから……
あの、担当講師の――」
「松原先生でしょ?
君たちを呼んだんだから私たちの担当に決まってるじゃないの。
大丈夫よ、そちらの女の子は私の部屋へ泊ることになったから」
「えっ!? えええー! 私が氷姫様と同室!?
そんな、私みたいな初心者が同室させていただけるなんて、本当にいいんですか!?」
「ちょっとあなた、随分と大げさなリアクションするのね。
そう言えば舎人校の人なのよね? お名前聞いてなかったわ」
「あ、私は友利虹子、十五歳、ハンドルはセブンです。
まだ三級受かったばかりなので不慣れですがよろしくお願いします。
ダンジョン配信見るの大好きで、スノーダイヤモンド様もよく拝見してるんですよ!」
「それは光栄だわ。
でも面と向かってそうはっきり言われると照れるわね。
とにかく明後日まで同室なのでよろしくお願いするわ」
ミーハーな虹子のおかげもあって、俺たち『白湯スープ』と『スノーダイヤモンド』の交流は、それほど悪くないスタートを切ったように感じていた。
そんな居心地の悪さを感じているところに、チラチラやジロジロなんてもんじゃなく、真っ直ぐにこちらを見ながら一人の学生が歩いてきた。遠目からでもわかる存在感で、振りまく雰囲気が他の学生とは大違いだ。そんな美少女が俺の前まで進んできて足を止めた。
「君が舎人のシックス君ね。
私は三船雪南十六歳、ハンドルは『氷姫』よ。
先日は助けてもらってありがとう。
醜態を晒したことは不本意だったけど、それはそれとしてお礼を言わせて頂くわ」
「あ、ああ、あの氷漬けの……
俺は綾瀬六雨十四歳です。
その後体調は問題なかった?」
「ちょっと君! あまり大きな声で言わないで!
あ、コホン…… ごめんなさい、誰でも知ってることだけどやっぱり恥ずかしいのよ……」
「いや、事情は知らないけどあんな光景、さすがに驚いたよ。
きっとすごくイレギュラーなことが起こったんだろうね。
いまだに注意喚起とか回ってこないし、原因究明に時間がかかってるのかな」
「そうね、私はきちんと事実を伝えたし、記録にも残っているのだから明らかにすべきだわ。
配信を見ていた人も大勢いたはずなのだからいつまでも隠してはおけないはず」
事実を隠している? 一体何のことだろうか。人気探索隊だから配信をしていたのはまあその通りだろうが、そこにも映っていない何かがあると言うことか? 俺自身は配信も見てないし、アーカイブも確認していない。きっと能力暴走が起きる原因があったのだろうなんて軽く考えていたのだ。
「大勢が配信見ていたならちょっとアレだね、アレ……
まあたまには失敗もあるもんでしょ」
「何をいってるのよ、あれはね――
いや、ここでは話せないから私たちのオペルームに来てちょうだい。
アーカイブだけじゃなく生データもあるからそれ見ながらお話するわ」
「でも俺たちはここで待ってるようにって言われてるから……
あの、担当講師の――」
「松原先生でしょ?
君たちを呼んだんだから私たちの担当に決まってるじゃないの。
大丈夫よ、そちらの女の子は私の部屋へ泊ることになったから」
「えっ!? えええー! 私が氷姫様と同室!?
そんな、私みたいな初心者が同室させていただけるなんて、本当にいいんですか!?」
「ちょっとあなた、随分と大げさなリアクションするのね。
そう言えば舎人校の人なのよね? お名前聞いてなかったわ」
「あ、私は友利虹子、十五歳、ハンドルはセブンです。
まだ三級受かったばかりなので不慣れですがよろしくお願いします。
ダンジョン配信見るの大好きで、スノーダイヤモンド様もよく拝見してるんですよ!」
「それは光栄だわ。
でも面と向かってそうはっきり言われると照れるわね。
とにかく明後日まで同室なのでよろしくお願いするわ」
ミーハーな虹子のおかげもあって、俺たち『白湯スープ』と『スノーダイヤモンド』の交流は、それほど悪くないスタートを切ったように感じていた。
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